4番打者かつ正捕手と、攻守でチームの中核を担う印出太一(スポ3=愛知・中京大中京)。「自分の打撃が敗因」と勝ち点を逃した明大戦を悔いつつも、賜杯を奪還すべく、気持ちを新たに次戦へ臨むようだ。今回はこれまでの振り返りに加え、最終シーズンとなる4年生についても話を伺った。
※この取材は10月10日に行われたものです。
「バットで貢献できなかった」
立大2回戦で二塁打を放った印出
――ここまでの試合を振り返って率直な感想
明大戦はリーグ戦の中でもすごく大事なところだったので、勝たなきゃいけなかったという思いは強いです。しかし、東大と明大、立大戦を通して全体的に投手陣が踏ん張っていると思います。総合的に見ても防御率が低い方ですし、春は2戦目で点差を離されて序盤から中盤で試合が決まってしまうようなことが多かったイメージです。今季はその部分でピッチャー陣が粘ってくれて、3カードで勝ち点2の5勝という結果になっていると感じています。勝ち点には届かなかったのですが、一つ明大から勝ちを獲ったというのは春からの進歩なのかなと思いますね。
ーーまだ2カード残っている状態ですが、ここまでで一番印象に残っている試合はありますか
やっぱり明大1戦目ですね。何としても明大に勝つんだという思いでやってきた中で、それでも勝ち点を取れず本当に悔しいんですが、試合を通してチームがより強くなった感じがしました。あそこで1つ勝つか2連敗するかでは大きな違いがあると思いますし、まだ優勝の可能性を残すためにもあの勝利は絶対に必要だったので、明大に一つ負けを付けたという点で印象深いですね。
ーー明大戦では先に1勝した中で、2、3戦目で連敗となりました。個人的に勝ち切れなかった要因はどこにあると考えていますか
やはり自分の打撃が大きな要因ですね。ピッチャーは頑張っていましたし、計算していた範囲での失点だったと思います。野手がもっと打てば勝てた展開もあったので、自分が打てなくて打線がつながらず、得点力に欠けた点が要因かなと思います。もっと自分がチャンスメイクしていれば吉納(吉納翼、スポ3=愛知・東邦)の一本で試合が変わったかもしれないですし、ランナーがいる時に自分が返せば、ああいう点差にはなりませんでした。自分がバットで貢献できなかったことが、明大戦での2敗につながったかなと思っています。
ーー次に打撃についてお聞きします。現在の打率としては.238ですが、この数字についてはどう考えていますか
数字が全てというか、見ての通り全くいい数字ではないので、ここ3カードまで終えてやはり悔しいです。今は仲間にカバーしてもらって勝っている部分がかなり大きいのですが、自分が打たないと勝てない試合が必ず出てきますし、打てばそれだけチームが勢いに乗れると思います。これまで数字にこだわると言ってきましたが、残り2カードでは一試合一試合どこで打つか、どの場面でチームにプラスになる打撃ができるかが大事になってくると考えています。もちろん数字を残すことが一つのボーダーラインなので、こだわり続けて練習していくんですが、試合になったらそんな数字のことを気にしてもしょうがないと思います。数字云々ではなくチームのためにという気持ちを強く持ち、練習からしっかり準備してリーグ戦に臨みたいですね。
ーーここまでの試合では熊田選手(熊田任洋副将、スポ4=愛知・東邦)、吉納選手が打撃を引っ張っている印象です。今季のこの2人に関してはどのような印象を持っていますか
熊田さんは足がありますし、しっかりとボールにコンタクトできる力があると思います。単打でも足で稼ぎますし、ホームランも出ているので、最後のシーズンということでネクストで見ていて気迫のようなものを感じます。吉納は今一番当たっていますし、これまでのリーグ戦でも大事なところで翼が打ってくれて勝った試合はいくつもあると思います。自分は打順が3、4、5番と並んでいる真ん中にいるので、そこで自分が打てないとブレーキになってしまうんですよね。熊田さんが出たところを自分もしっかりつないで、3、4、5番で得点していければ、チームにも流れができると思います。自分も昔蛭間さん(蛭間拓哉、令5スポ卒=現埼玉西武ライオンズ)の後ろを打たせていただいたことがあって、蛭間さんがガツンといくと自分も勇気をもらって打席に入れたことがありました。そういう役割も自分は担っていると思いますし、2人に続くことができるようにしたいなという感じです。
ーーここまで4年生の活躍によって勝利した試合が何度かありました。最後のシーズンということで、春よりも4年生の力を感じることはあるのでしょうか
まだ秋があると考えて春を戦っていたわけではありませんが、まだやり直せるみたいなところはあったと思います。秋は負けてしまえば4年生の代は終わってしまうし、天皇杯を獲ると森田さん(森田朝陽主将、社4=富山・高岡商)を中心にミーティングでも言っていたので、その執念のようなものを自分たちも感じています。どうしてもエースの加藤さん(加藤孝太郎、人4=茨城・下妻一)や熊田さん、島川さん(島川叶夢、スポ4=熊本・済々黌)、代打で仕事してくれる野村さん(野村健太、スポ4=山梨学院)など、4年生の力でこのチームが今グッと上向きになっているのは間違い無いと思います。その力を借りながら、自分たちも遅れをとらないように食らいついていかなきゃなという思いですね。
ーー守備において満足いっていない点はありますか
やはり盗塁をもう少し刺せるようにしなきゃなと感じていますね。送りバントという作戦をとらずに盗塁を仕掛けてくることは非常にリスキーですが、盗られてしまうとアウトカウントも増えず、一気に得点圏に進まれることになります。盗塁は決まるか決まらないかで流れがかなり大きく左右されますし、そこで刺せれば逆にランナーなしになるので、最高か最悪かの2択だと考えています。ランナーがいる中で自分が刺せればピッチャーが落ち着くことができるかもしれないですし、失点を防げる可能性も高まるので、簡単に盗塁を許さないことはキャッチャーとして大事だと思います。一つも許さないという思いでやらないと、決められた一つで負ける試合がいつか来てしまうので、盗塁はしっかりケアしていかないとなと感じています。
ーー春季よりも「ここで粘れるようになったな」と伸びを感じる点はありますか
2戦目の投手陣ですね。春とガラッとメンバーが変わっていて、澤村さん(澤村栄太郎、スポ4=早稲田佐賀)や前田さん(前田浩太郎、スポ4=福岡工)、越井(越井颯一郎、スポ1=千葉・木更津総合)や香西(香西一希、スポ1=福岡・九州国際大付)の登板機会が増えている中で、投手陣全体が加藤さんに続けるようにと思ってやってきた結果が今につながっていると思います。立大2回戦でも樹(伊藤樹、スポ2=宮城・仙台育英)が初完投で投げ切ったことはチームとしてとてもいいニュースだと思いますし、そこが春との違いなのかなと感じます。2戦目でもロースコアの試合をできるようになったというのは、当たり前ではあるんですが、春と比べると大きな変化なのかなと思いますね。
ーー今秋は加藤選手だけでなく、山場となる明大戦などでも下級生の登板が目立っています。捕手として特に下級生の投球をどう見ていますか
越井や香西に関しては1年生の秋から投げていて、4年生が最後のシーズンで1年生が投げるということは普通のことではないと思います。それだけのプレッシャーが1年生にはあると思いますが、そういうプレッシャーによって持っている能力を満足に出し切れないことがあってはいけないと考えています。その1試合でリーグ戦が終わってしまうことも考えられるので、そこは自分が少しでもリラックスというか、打者に集中して投げられるようにしなければいけないと思います。2戦目は自分がマウンドに行くことが多いと思うんですが、投手と話していて「いつもと違うな」とか、ささいな変化を感じたらすぐ行くようにしていますし、行くことによって感じられることもあります。その点は細心の注意を払っていて、後から「あそこで行っておけば良かった」とならないように、下級生の時は意識していますね。あとは思い切りやらせるというのが自分の仕事だと思います。
ーー下級生の中には初先発、初登板を経験した選手もいます。実際に球を受けていて「緊張しているな」と思うことはあるのでしょうか
主に越井、香西なのですが、高校からの経験もあるのでそれなりに耐性はあると思います。でも大学はバッターのレベルも全然違いますし、上手くいっていた高校時代とはまた話が変わる部分もあると感じています。そんな中でもブレずに、一人一人のバッターに集中して、自分の仕事をするんだという思いは受けていて伝わってきますし、下級生だからといってバタバタしていないなという感じは周りから見ていてもあると思います。全力で腕がちぎれるくらい振るんだという闘志みたいなものを感じますし、その結果が1年生の活躍につながっていると思いますね。
ーー具体的にマウンドではどんな話をされているのでしょうか
間をとって落ち着かせるためのタイムでは、その時の会話はたわいもないもので、時間をとにかく空けたいという思いで声を掛けに行っています。あとは戦術的な問題で「こういうふうに次のバッターと勝負したい」「長打は絶対に打たれたくないから、長打を出すくらいなら四球を与えるくらいの気持ちで低めを狙って投げてくれ」など、バッテリーとして伝えたいことがある場合には、作戦的なことを伝えに行っています。場面によりますが、基本的には間をとりにいくか、作戦を伝えるかという感じです。
「なんとしても優勝を決めたい」
明大2回戦で適時打を放つ印出
ーー残りあと2カードとなり、優勝のためには勝ち点を落とせない試合が続きます。この後戦う法大と慶大、それぞれの印象を教えてください
法大は選手一人一人のポテンシャルが本当に高いチームですし、爆発力がある打線だと思います。長打もあれば足もある選手もいて、個人的には明大よりも長打力があるイメージなので、特に四球などでランナーを出さないことと、長打をとにかく打たれないことが大事になると考えています。法大は長打が出てくると勢いづいてくるチームですし、ピッチャー陣も力のある選手がそろっている印象が去年からあります。慶大に関しては、今季特に打線のつながりがすごくいいかなという印象です。慶大は打線を抑えて外丸投手(外丸東眞)から点を取ることが必須であり、それができれば勝てるし、できなければ負けるだけだと思います。慶大には一人一人のバッターが粘り、しぶとい打撃をしてくる印象があるので、こっちがポキっと折れてしまったら一気にやられてしまうと思います。そこに細心の注意を払わないとなと考えていますね。
ーー現在のチームの雰囲気を教えてください
立大戦でまず落とせないところを2つ獲ることができ、あとは法大と慶大しか残っていない状態です。早慶戦に優勝の可能性を残すためには法大戦で2連勝することが大切ですし、慶大との試合よりも、法大戦が明大戦の次の山場なのかなと思っています。早慶戦も絶対に負けられないので大事なことに変わりはないのですが、リーグ戦前から明大と法大の山場を越えないと優勝はないなと思っていたので、かなり大事な試合になるとチーム全体で考えていますね。
ーー最後に、この後の2カードに向けて意気込みをお願いします
なんとしても早慶戦で先輩方と優勝を決めたいという想いが強いので、自分自身はもうチームが勝つためにできることを全てやりたいと思います。自分の結果もチームの結果につながるので大切なのですが、とにかく4年生のために勝つという気持ちを持って戦いたいです。チームのためにできることをグラウンドで全てやり切って、絶対に法大と慶大から4連勝を奪い取るつもりでこれから準備したいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 湊紗希)
◆印出太一(いんで・たいち)
2002(平14)年5月15日生まれ。185センチ。90キロ。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。4年生と臨む最後の早慶戦、かつ悲願の賜杯奪還へ熱い思いを語ってくれた印出選手。「勝つためにできることを全てやりたい」。自身初のリーグ戦優勝へ、印出選手の全力プレーから目が離せません!