【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『求』【第2回】野村健太×印出太一

特集中面

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 第2回には、印出太一(スポ3=愛知・中京大中京)と野村健太(スポ4=山梨学院)の愛知出身コンビが登場。和気藹々(あいあい)と行われた本対談では、中学・高校時代の思い出から、4年生にとって最後のシーズンとなる東京六大学秋季リーグ戦(リーグ戦)への思いまで幅広く話を伺った。

※この取材は9月5日に行われたものです。

他己紹介をしてください!

――最初にお互いの他己紹介をお願いします!

野村 3年の印出太一君です。太一とはいい意味で先輩後輩の壁をあまり感じなくて、キャッチャーとしても本当に頼りになる存在なので、すごく信頼しています。

印出 野村さんはグラウンドや寮生活で壁を感じさせないというか、お兄ちゃん的な感じで本当に仲良くしてくださるので、後輩としても話しやすい存在です。野球においても、春のリーグ戦とかを観ていただければわかるんですが、チームで一番飛ばす力があります。長打力が一番の持ち味かなと思いますね。

――お二人ともチーム内ではどのようなキャラなのでしょうか

野村 太一は分析キャラです。キャッチャーなので分析とかをしっかりしているイメージですし、勉強も優秀だと思いますね。

印出 森田さん(森田朝陽主将、社4=富山・高岡商)とかは言葉でガーッと「みんな行くぞ!」みたいな感じなんですけど、野村さんは反対で、後輩とかも含めて周りにたくさん声を掛けてくれて、自分たちもそれに合わせてという感じです。キャプテンとは違う方法で違う雰囲気というか、縁の下の力持ち…っていう感じではないくらい存在感はあるんですけど(笑)、言葉でグイグイ行くよりかは自分が積極的に声を出して、姿で後輩をリードしてくれる存在だと思います。

――野球に関して、互いに「ここが羨ましい」と感じるところは

野村 やっぱり安打がすごく出るので、塁に出るというところに関しては本当に羨ましいなと思ってます。

印出 飛ばす力、野村さんの力そのまま欲しいなと思います。あと野村さんの声って、グラウンドで結構通るんですよ。なので、その声欲しいなって。

野村 (笑)。

印出 僕の声あまり通らないんで、羨ましいです。

――お二方とも愛知県のご出身ですが、互いを初めて認識されたのはいつ頃でしょうか

野村 大学に入学する頃だったかと思いますね。僕の後輩の栗田(栗田勇雅、スポ3=山梨学院)が早稲田に来るかもっていうタイミングで、太一の名前が出ていたのでそこで知りました。

印出 野村さんは先に高校で山梨に行かれて、僕は全然中学の時すごくなかったんですが、野村さんのことは結構知ってましたね。

野村 ほんとに??(笑)

印出 知ってましたよ!面識があった訳ではないし、直接対戦してもないですけど知ってはいましたね。僕は途中でチームがシニアからボーイズに変わっちゃったので、そこから試合する機会とかはなくなったんですが、元々知っていました。

――初対面の際の第一印象と今の印象とで違いはありますか

野村 すごく賢そうだなって思いましたね、最初は。やっぱり中京大中京から来ていて、自分も愛知県民として中京大中京がどれだけ優秀な高校かを知ってるので、太一と初めて対面した時は「賢そうだな…」って思いました。今は賢さ+可愛げがあるなって感じですね。

――では、賢そうという第一印象は変わってないということでしょうか

野村 そうですね、まあずる賢いっていうのもあるんですけど(笑)。そこも太一らしくていいかなと思います。

印出 僕は、入学したての頃はあまり野村さんと話すことはなかったです。最初は体も大きいし、その時からずっとAチームでやられていたので、第一印象としてはちょっと怖いかなと思って…(笑)。まあみんな怖く見えてるんですけど、話してお世話になってからは結構可愛がってもらっています。イメージが逆転したというか、めっちゃいい先輩です。

――愛知県出身のお二人ですが、野村選手が山梨学院高、印出選手が愛知・中京大中京高に進学されました。様々な選択肢があった中で、その高校を選択した理由を教えてください

野村 中学の時に父親に甲子園に連れて行ってもらったんですけど、そのときに「甲子園ってすごくいい所だな」「僕も絶対に出たいな」と思って、それを目標に中学生のときからずっと野球をしていました。高校進学の際にもやっぱり「甲子園に出たいな」と思って、とりあえず甲子園に一番近いところを推薦してくださった高校から自分と父親で選んで、たどり着いたところが山梨学院でしたね。少数精鋭ですし、山梨は高校生も多くないので、正直に言えば東海大甲府高を倒したら甲子園みたいな部分もあって(笑)。そこが一番近道かなと思って山梨学院を選びました。

印出 いや、ずる賢いやん。

一同 (笑)。

野村 でも、結果的に甲子園に3回出られたので、選択したこと自体は間違ってなかったのかなと思っています。

印出 僕は、漠然と県外に行きたいと思っていました。イキッてたので(笑)。寮生活しながら甲子園行く!みたいな、中学生のときって漠然と思いがちなんですよね。いろいろ中学のときの監督さんと話して、県外に行くリスクと県内に残る可能性を考えながら進路を選んでいました。そのときに、中京の高橋監督(高橋源一郎監督)が結構早い段階で「ぜひ来てくれないか」と声を掛けてくださって。自分は本当に実力がなかったので、結構思い切ったスカウトだったと思います。最終的には監督さんの思いと、巡り合わせ、縁みたいなもので選びました。高校の監督さんが来た時に自分が少し活躍したことで縁を感じたり、逆に行きたかった高校でも結果を出せなくて「こことは縁がないのかな」と思ったりしたこともありましたね。最終的には監督さんに伝えられた思いで、自分は中京に決めました。

――元々「〇〇高に行きたい!」といった思いや憧れはなかったのでしょうか

印出 小学校から中学校の時は「桐蔭(大阪桐蔭高)行きたい!」みたいな思いはありました。でも、監督が実際に呼んで試合をしてくださったときに結果がことごとく良くなくて。「自分は桐蔭には行っちゃダメなんだ」と思って監督と考えていた時に中京が来てくれたので、監督の思いに応えようと思って中京に行きましたね。

打率が残らないといけない(印出)

質問に答える印出

――ここからは、印出選手個人の質問に移りたいと思います。改めて春季リーグ戦の打撃を振り返っていかがですか

印出 最初のうちはヒットが出ていたんですが、自分の中でしっくり来ていない中で、騙し騙し毎カード切り抜けていたという感じでした。自分の状態が仕上がっていなかった分、相手投手のレベルが上がってきたり疲労が溜まってきたりで崩れてしまった部分があります。そこが自分の中では春の反省点かなと思います。

――守備についてはいかがでしょうか

印出 やっぱり勝てないとキャッチャーとしては意味がないと思います。どれだけ盗塁を刺してもボールを止めても、点を取られたら一緒ですし、ピッチャー陣で勝たせるというのが自分の仕事だと考えています。野手が打ってピッチャーを盛り立てる方向でやっているんですけど、キャッチャーとしては打ちながら失点は最小で抑えないとバッターもその気がなくなってしまうと思います。なかなか大変なんですが、とにかく点を取られないように、特にリーグ戦は工夫したいなと思っていますね。

――春のリーグ戦を終えてから、今まで打撃ではどのようなことに重点を置かれたのでしょうか

印出 打率が残らないとなって思いがあるので、毎回3割というのをボーダーにしているんですけど、春は2割5分5厘でした。前半は若干粘っていた部分はあるんですけど、後半の試合でそういう数字になってしまったと思います。オープン戦であっても1試合2本、2試合で3本以上必ず出すようにしていけば基本的に3割くらい残る計算になるので、そこは一つ数字の面で意識していました。

――オープン戦の際に、新潟でのキャンプにおいて「あ、これだな」とつかんだものがあると話をされていました。具体的に教えてください

印出 リーグ戦が終わった時期が、一番打撃の調子が良くなくて。そこから秋に向けて試行錯誤していく中で「これだ」というのがなかなか見つかりませんでした。バッティングってそういう感覚みたいなものなので、はまってしまえば結構打てるみたいな部分があると思います。なかなかそこを見つけるのが難しいんですけど、人の話を聞きながらいろいろと打ち方を試していったら「ああ、これだな」と見つかったものがありました。試行錯誤していたら見つかったという感じですね。

――調子が良くないと感じる時には、ひたすら一人で詰め込むのでしょうか。それとも周囲にアドバイスを求めていくのでしょうか

印出 自分は結構質より量派なので。自分はプロでもないし何が正解かなんてわからないので、いろんな人に話を聞いています。「ここがこうなっているんじゃない?」と思うことは人それぞれ違うので、それを基にひたすら量をこなして正解を探す感じですね。効率は良くないかもしれないですけど、それが一番自分にとってつかみやすい方法だと思っています。

――守備で重点を置いたことは何でしょうか

印出 オープン戦で失点がかなり多く、それも1試合2試合という話ではありませんでした。リーグ戦仕様の継投じゃないにしろ、打者として打って3割、良くて4割くらいの中で、それだけ打たれて失点してしまうと野球にならなくなってしまいます。現時点から能力が急激に上がることはないので、夏の間は今持っている能力で、どういうふうに打ち取るかを考えながらやっていました。かなり打たれて大量失点した部分もあるんですけど、それによってわかったことも少なからずあるので、そこをリーグ戦では活かしていければと思います。

――春季リーグ終了時と現在を比べて、どこか伸びたと感じる点はありますか

印出 ウエイトトレーニングをしたり、タンパク質をしっかり取ったりして、体をもう一度つくり直そうという思いがありました。特に夏はへばったら練習どころじゃないですし、リーグ戦で戦える体をつくろうと意識してきた中で体重がしっかり増えてきたので、その点は数字で現れているように結果が出ているかなと思います。

――春季リーグの際に「早稲田は先行逃げ切りのチームだと思う」というお話がありました。オープン戦などを通じて、チームがどのような勝ち方をしていくかについて何かイメージはありますか

印出 オープン戦の結果やリーグ戦の結果を踏まえて、1得点で相手と1-0の試合ができるかといったら、その確率は結構低いと思っています。もちろんそこを目指しつつ、攻撃陣が先に点を取ってあげてピッチャーを盛り立てて、なんとかピッチャーが自分の持っている力を最大限出せる環境を、野手がつくってあげられればと考えています。言ってしまえば先行逃げ切り型で、後ろに伊藤樹(スポ2=宮城・仙台育英)とかいいピッチャーが投げることが考えられるので、先にリードして先制、ダメ押し、ダメ押しという攻撃ができれば、このチームらしい勝ち方ができるかなと思っています。

とにかく気持ちを前面に出して(野村)

質問に答える野村

――次に野村選手に伺います。最初に、野球を始めた年齢ときっかけを教えてください

野村 僕は元々ソフトボールをやっていました。ソフトボールは(幼稚園の)年中から始めて、父親がソフトボールの監督をしていたんですが、姉2人も父親のもとでソフトボールをやっていました。毎晩(姉たちの)練習に付き合っていた影響でまずソフトボールを始めて、本格的に野球を始めたのは小学校3年生の時ですね。最初はプロ野球選手になりたいという夢があって始めました。

――ポジションはどこをやっていましたか

野村 小学校のときはピッチャーとサードですかね。中学校でもピッチャーとサードをやって、高校はサードやってファーストやって外野やってという感じでした。大学でもずっと外野をやっていて、3年の夏のキャンプくらいでファーストになりました。

――質問の途中ですが、お二人に伺います。お二方とも幼い頃から野球を続けられてきていますが、本気で「野球を辞めたい」と思った時期はあったのでしょうか

野村 ありました、高校1年生のときですね。きつすぎて。「もう辞めたい、無理」って親に電話しました。でも、なんだかんだ「頑張れ」みたいなことを言われて、ブチッて電話切られたんですよ。

印出 スパルタやん。

一同 (笑)。

野村 もうやるしかねえと思って。結構頑張りましたね、高校の3年間は。

印出 僕もありますね、辞めたいと思うことはあります。結果が出ないことが辛くて。中学校のときとか、数えるくらいって言ったら大袈裟かもしれないですけど、全然打てませんでした。成長期で身長が伸びたこともあって、全てかみ合わなくて全然うまくいかず、もう辞めたいと思っていました。それで、めちゃくちゃ仲のいい友達がバスケをやってたので「バスケいこうかな、背高いし」と思ったこともあるんですけど、ここまでやらせてもらったから野球をやるしかないと思って。じっとしていたらマイナスな気持ちになっちゃうので、とにかく体を動かしていたような感じです。そこが原点で「質より量」みたいな考え方が自分の中でできたと思いますね。

――野村選手への質問に戻ります。今春は立大1回戦でリーグ戦初本塁打、慶大1回戦では猛打賞を記録しました。春季リーグ戦の総括をお願いします

野村 リーグ戦を総合的に見ると、やっぱりまだまだ結果を出せたんじゃないかと思います。

――春季リーグ戦で特に記憶に残っている試合はありますか

野村 やっぱり初本塁打とかの立大戦が思い出深いなと思いますね。本塁打は打った時の感触もバッチリでした。

――全早稲田戦ではOBの方々と戦いましたが、学生と社会人のレベルの差をどう感じましたか

野村 やっぱりすごく差はあったんじゃないかと思います。一番僕自身が感じたのは、打者が甘い球を一発で仕留められて、ミスショットしないなという点ですね。大学野球はリーグ戦で負けても次がありますが、やっぱり社会人野球はトーナメント一発勝負の中でやっているので、確実性といった部分では社会人の選手は長けているなと感じましたね。

――話をされたOBの方はいらっしゃいますか

野村 瀧澤さん(瀧澤虎太朗、令3スポ卒=山梨学院)とか、あとは僕が下級生の時の上級生の先輩方にはほとんど挨拶しました。

――何かアドバイスなどをもらいましたか

野村 「4年生は気持ちだから、技術じゃなくて気持ちでいけ」とみなさん言っていましたね。

――夏のオープン戦のここまでの手応えはいかがですか

野村 感覚的には悪くはないんじゃないかなと感じていますが、まだ上を目指せると思っています。もう開幕まで残り少ないですが、自分のベストパフォーマンスを出せるように、残りの練習とオープン戦もやっていけたらいいなと思っています。

――明治安田生命とのオープン戦では4番に座りましたが、ご自身でやりやすいなと感じる打順はありますか

野村 1年生の時からずっと6番を打っているので、6番か5番かのどっちかですかね。5番とか6番は一番プレッシャーがないというか(笑)。ないというのはおかしいですけど、たまに結構いい場面で回ってくることもあるので、そういったときはしっかり結果を出したいなと思っています。

――個人としての課題は何だと考えていますか

野村 とにかく気持ちを前面に出して結果を出すしかないと思っているので、練習あるのみと思っています。

――反対に、この夏で成長した部分は

野村 打撃もそうですが、守備面でも成長したと思います。夏のキャンプでも捕り込み練習とかで守備力を強化できましたし、打撃も走塁も向上したかなと感じています。

――現在特に意識して取り組んでいることはありますか

野村 打撃でいうと、僕はバットの軌道がどうこうというわけではなくて、構えが型にはまれば自分のスイングができると思っています。最近は余計なことを考えずに、構えだけを意識して打席に入っています。

――構えの部分で具体的に意識していることはありますか

野村 自分でもよくわかりませんが、なんか感覚的にはまる時があるんですよね。意識していることといえば、構えた時に左足をオープン気味に開くと結構しっくりくるなと思うことが多いので、そのフォームを常にできるようにしていきたいです。

変わっている部員は……?

――リーグ戦の質問に移る前に、少し野球とは離れたお話を伺いたいと思います。部の中で特に「変わっているな」「キャラ濃いな」と思う方を一人挙げ、その理由を教えてください

野村 ………香西(香西一希、スポ1=福岡・九州国際大付)じゃね?

印出 確かに、絶対(笑)。

野村 絶対香西ですね、僕は。

――それはどうしてですか

野村 いや、なんかもう何を考えてるかわからなくて。

印出 天然でふわふわしてる訳じゃないんだけど、なんか…なんだろ(笑)。僕はよくバッテリー組むのでわかるんですが、めちゃくちゃ野球に対しては真面目だし、自分の考え方とかも持ってるんですけど、喋っているときになんかちょっと…(笑)。

野村 そうそう、ちょっと「ん?」みたいな。

印出 目の奥笑ってない系です。

一同 (笑)。

印出 ちょっと怖いんですよね、まだAチームに来てそんなに経ってないので、余計に謎が多いです。

――続いて、印出選手はどなたを挙げられるのでしょうか

印出 変わってる人か……(熟考)。

――印出選手が模索されている間に、野村選手に伺います。他に変わっている方、第一印象とギャップがあった方はいらっしゃいますか

野村 岡西(岡西佑弥、スポ1=智弁和歌山)ですね。岡西はめちゃめちゃ面白いです。なんかもう、すごいガツガツ来てくれて。

印出 ノムさん、ナメられてないすか。僕めっちゃナメられてるんですけど。

野村 ナメられてるかもしれないけど(笑)、大人しいよりガツガツ来てくれた方が僕も話しやすいし、可愛げがあるなと思うので。岡西は面白いですね、ほんとに。

――タメ語で話しかけてくる後輩はいますか

野村 それはもう……(印出を指差す)。

一同 (笑)。

印出 すいません(笑)!

野村 他にも翼(吉納翼、スポ3=愛知・東邦)とか、結構いますね。小澤(小澤周平、スポ2=群馬・高崎健康福祉大高崎)とかも最近はタメ語ですし、仲良くやらしてもらってますね。

印出 あ、僕は小澤が変わってると思います。なんか能天気っていうか、何を考えているかわからないんじゃなくて、多分何も考えてない。空っぽです。

一同 (笑)。

印出 オープン戦とかを見ていたらわかるんですけど、結構小澤がエラーしたりとか、守備がはまったりしていた時期があって。試合後、普通へこむ人はへこむと思うんですけど、なんかあいつは「今日やっちまったわ!」「マジで、捕れねえ!」とか言ってて(笑)。もう、めっちゃ適当なんですよ。

――小澤選手にはクールな印象があるのですが…(笑)

印出 すかしてんの?あれ。

野村 すかしてんのかな…(笑)。

印出 まあ、すかしてるとまでは言わなくても、あんまりガッツポーズとかはしないキャラですね。結構なビックプレーをしても、なんか「うんうん」って感じで終わる時もあります。何も考えてないですね、あれは。野球をナメてます(笑)。

――次に、これまでの野球人生で最も辛かった練習、「これはやばかった」という練習を教えてください

印出 あるでしょ、山梨学院。

野村 いや、もういっっっぱいあるよ。一番は、やっぱり毎年長崎でやる冬合宿ですね。バスとフェリーで移動に10時間くらいかけて行くんですけど、その日の朝7、8時くらいにグラウンドに着いて、着いてからすぐにインターバル走をまず40本くらいやります。ほぼボールを使わないし、インターバル走も10キロくらいの丸太を持ちながらずっと走ってるんですよ。その後山に行って、合計400段くらいの階段があって、先まで行くと2本に別れてるY字路みたいな所を部分ごとに30本、40本、30本みたいな。それを一生やって1日終わるみたいな感じでした。7日間くらいそれをやって、ボールを触ったのはキャッチボールとノックで少しってくらいです。バッティングはした記憶がないですね。たしか高2から2回行きました。あとは峠に行って…。

――本当にグラウンドにいない合宿ですね(笑)

野村 そうなんですよ。なんか標高1000mくらいの峠に行くんですけど、そこで300、400mくらい、標高1400mくらいになるような坂を登る練習もあって。てっぺんで監督が「何秒前〜」みたいな感じでタイムを測っていて、それを20本くらい走りました。もうマジで息吸えないんで、酸素スプレーを持って死にそうになりながら走ってましたね(笑)。ほんとにやばいっす。

印出 僕は中学校のときとかは結構走るチームだったんですけど、まあ中学で走るのはあるあるなんで。高校では根性ランみたいなのはあまりなくて、すごい走るっていうチームではなかったですね。なので、死にそう、息吸えないみたいな練習はなかったんですけど。

野村 (笑)。

印出 さっきも中学校のときに「質より量」となった話をしたんですが、もう四六時中、学校に行っているとき以外はバットを振っていました。半分やれと言われていた部分はあったんですけど、それがめちゃめちゃきつかったです。学校から15時半くらいに帰ってきて、その後少し食べて、車の中で寝ながら行って、16時半とかに着くんですよ。そこから22時くらいまでひたすら1レーン打ち続けて、1日で多分700〜1000球くらいボールを打っていましたね。それで22時までやって帰ってきて、また学校行ってみたいな繰り返しでした。土日にも中学校の練習があって、一日練とか試合をして、帰ってきたらまた18時くらいから22時くらいまでやるというのを一生繰り返してました。その瞬間がきついというよりかは、中2の春から始まったんですけど、中2から中3までずっときつかった思い出があります。なのに、そこまでやって結果が出なかったんで「もう辞めたい!」と(笑)。

一同 (笑)。

印出 マジで辞めたいと思ってましたね。もう何の結果も出ないし、何の時間なんだよって感じで(笑)。本当に辞めたかったんですけど、なんとかやるしかないから頑張るかと思って踏ん張って、高校生のときにそれが基となって形になったのかなという部分はあります。その時間がすごく大事だったと今思えばそうなんですけど、その時は「もうマジで辞めてえ…」と思いながらやってました(笑)。

――それだけの数を振って、手は無事だったのでしょうか

印出 元からマメができにくいというのはあるんですけど、おかげで今はちょっとやそっとじゃめくれなくなりました。もう何回振ったかなんて覚えてないですし、たまに監督が来るんですが、来たときはもうやばかったですね。連続ティーみたいな練習があるんですけど、基本的に多くても10、20球くらいが相場なのに、3カゴとかやるんで。

野村 え、ガチ??

印出 もう記憶なくなるんすよ(笑)。自分の手にバットがあるのかもわからなくなるくらいなんで、息は吸えるんですけど、腕の感覚がなくなりますね。全身がバットになったみたいな感じです。

――今もう一度やるとしたら、野村選手が経験された走る練習か、印出選手の振る練習のどちらを選択しますか

野村 いや、振りたいっす!!

印出 僕は走るの嫌ですよ(笑)。

野村 走るのだけはやばい。走るのだけはえぐいっす。

4年生にいい涙で卒業してもらいたい(印出)

笑顔で取材に応じる二人

――それでは、野球に話を戻したいと思います(笑)。リーグ戦が迫っている中、現在のチームはどのような雰囲気でしょうか

野村 朝陽(森田主将)が春に体調を崩してしまったというのもあって、熊田(熊田任洋副将、スポ4=愛知・東邦)が中心としてチームを動かしていました。でも、熊田任せのチームにしちゃ駄目だなと4年生は感じていて、熊田に限らず4年生全体がチームづくりをしていこうと話し合いをしました。一昨日もみんなで「こういう状況でなかなか勝てないけど、勝てるチームの雰囲気づくりを大切にやっていこう」という話をしましたね。今日の試合(東芝戦)後のミーティングでは、熊田が「今日は試合前の練習の入りがすごく良かった」と話していて、チームも少しずついい方向に進んでいるというのは間違いないと思います。あと少ししかない期間で技術を向上させるのは難しいんですが、雰囲気や気持ちの部分では上げられると考えていますし、少しでも下級生がやりやすい環境を4年生がつくれたらいいなと思っています。

印出 チーム全体の感じとしては、野村さんが言った通りだと思います。下級生としては、一番長い間お世話になった一つ上の先輩とできる最後の秋で、その先輩たちと勝ちたいというのは、試合に出ている自分や吉納、山縣(山縣秀、商3=東京・早大学院)らに限らずみんな思っていることだと思います。4年生がこういう風にやっていこうという思い、最後だという思いを持って気持ちでぶつかっていく姿に、自分たちが遅れたらいけないと思います。そこで足を引っ張ったら自分たちはいる意味がないので、その思いに引っ張られながら応えていきたいと思っています。下級生としてはそういう思いで、なんとか最後の秋にいい形で卒業してもらえるように、自分の役割を全うするだけだと感じています。自分たちが試合に出れば出るほどベンチに入れない4年生が増えていくので、事実上ベンチに入れずに第一線で野球ができなくなってしまった4年生の思いと、一緒に野球をしてきたメンバーへの思いを、下級生としてグラウンドで感じながらプレーしないといけないと思っています。

――リーグ戦における自身の役割について、どのように考えていますか

野村 僕は言葉で言うよりも自分でというか、姿勢のようなもので盛り上げることしかできないと思います。熊田がしっかり喝を入れてくれますし、僕はその波に乗って活気のあるチームをつくっていくために、率先して声を出したり、いいプレーがあったらしっかり褒めたりなどをこれからも磨けていけたらと思います。

印出 基本は熊田さんやノムさん、森田さんら4年生がチームのトップとしていろんな役割を担ってくれているので、3年生が一番それに応えることが大事だと思います。4年生に付いていく雰囲気をつくるのは3年生だと考えていますし、自分が言葉でいろいろ言うようなことはないので、とにかく4年生のために結果を出すことにこだわる姿が大切なのかなと思います。それが4年生や下級生にも伝わればベストだと思うので、そこに集中したいなという感じですね。

――改めて、森田主将と熊田副将はどのような方なのでしょうか

野村 朝陽は本当に情熱があるなと感じていて、一つの目標に対して魂を込めて、気持ちを込めてみんなを鼓舞していける印象です。熊田は1年生のときから試合に出ていて、もちろん言葉でチームを引っ張る部分もあるんですけど、一番は自分の背中で、プレーでみんなを引っ張っているなと思います。

印出 ノムさんも言うように、森田さんは熱い男だと思います。体調不良などがあってもグラウンドに戻ってきて、最後の秋にかける思いを試合に出る出ないに関係なく自分たちに伝えてくれているので、それに応えたいなとみんな考えています。熊田さんに関しては、チームのことをいろいろ考えてやられているのかなと感じています。特にプレーの部分で「ここはこうした方がいい」と声が上がるときは、大体熊田さんがいるなと思います。自分や上級生に限らず下級生にも目を向けながら、全体が良くなるようにチーム全体を見ながら野球をされているんだなという印象です。

――よく「早大は秋に強い」と言われますが、お二人はその要因は何だと感じていますか

野村 気持ちじゃないですかね。毎年4年生の勝利に対する執念のようなものは、ベンチで一緒に戦う中で肌で感じてきました。先輩方も言っていましたが、結局は4年生の力が大事なのかなと思っています。

印出 自分も同じように思っていますし、秋には必ず4年生の中に爆発してる人がいるというか。それに下級生やチーム全体が引っ張られている部分もあると感じますし、そういった4年生の力や思いという点で、秋の早稲田は違うのかなと思います。

――他大学で特に意識するチームや選手はいらっしゃいますか

野村 明治大学の西川黎選手です。野球に限らずプライベートでも仲が良くて遊びにも行くので、最後は一緒に試合に出られたらと思っています。

印出 慶応の外丸東眞投手です。去年の秋に打って、今年の春やり返されたのでもう一回やってみたいという気持ちがありますね。

――最初のカードは東大戦ですが、リーグ戦初戦において難しさを感じるのはどういった点でしょうか

野村 やっぱり開幕戦は浮ついてフワフワするというか、入り方がわからないみたいなところがあります。いつも以上に力んでしまい、その結果として送球やバッティングにも乱れが出てきてしまうので、東伏見でしっかりと神宮を意識して練習できれば、初戦の入りでも自分たちの力が出せると思います。

印出 決勝や優勝決定戦よりも初戦の方が緊張するので、その緊張との戦いだなと思います。緊張しないというのは無理なので、いい緊張感になるように今やれることをしっかりやって、心の整理をすることが大事だと思います。

――改めて野村選手にとってはラストシーズン、印出選手にとっては長く関わってきた先輩とプレーする最後のシーズンとなります。何か特別な思い入れはありますか

野村 今までずっとケガが多く、リーグ戦途中で離脱したり、リーグ戦開幕直前で肩を脱臼したりしたので、最後はけがなく完走できたらいいなと思います。

印出 やっぱり一番お世話になった先輩方のラストシーズンなので、何とか最後4年生が泣いて卒業することがないように、まあ優勝して泣いちゃうかもしれないんですけど、いい涙で卒業してもらいたいなと思います。最後の早慶戦で優勝の可能性を残すか、優勝を決めて最後の早慶戦で全てを出し切って優勝できたと4年生に思ってもらえるように、自分たちがサポートするという気持ちでこの秋やっていこうと思います。

――優勝という言葉も出たように、チームの目標は優勝だと思います。個人としての目標は何でしょうか

野村 個人の目標は、打率3割を残すことです。このリーグ戦ではしっかり確実性を上げていきたいと思います。

印出 個人としてはベストナインと首位打者を獲れるように頑張りたいのと、あと守備面でチームの防御率を3点台に抑えることを目標にやっていきたいです。打撃で3点以上取れるチームだと思うので、3点で必ず抑えることを徹底したいと思います。

――最後に、秋季リーグ戦に向けての意気込みをお願いします!

野村 僕たちは最後のリーグ戦になるので、今までの4年間の集大成として結果が出せるようにやっていきたいですし、4年生が結果を出せたらリーグ優勝、日本一までつながっていくと思います。開幕まで残り少ないですが、4年生中心に勝てるチームづくりをやっていけたらいいなと思います。

印出 4年生はラストシーズンですが、自分らも先輩と野球できる最後の機会ということに変わりはないので、自分がしっかり結果を残して、グラウンドで先輩方に恩返しや感謝の気持ちを表現できればと思います。結果を出して、優勝に貢献できるようにやっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集  丸山勝央、湊紗希)

仲むつまじい2人の、今季の活躍に注目です!

◆印出太一(いんで・たいち)(※写真左)

2002(平14)年5月15日生まれ。185センチ。90キロ。愛知・中京大中京高出身。スポーツ科学部3年。捕手。右投右打。秋季リーグ戦では優勝を果たし、長く関わってきた4年生に「いい涙で卒業してほしい」と語ってくれた印出選手。攻守でチームを支え、早大を悲願の賜杯奪還へ導く姿に期待です!

◆野村健太(のむら・けんた)(※写真右)

2001(平13)年8月27日生まれ。181センチ。山梨学院高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投右打。8月の全早稲田戦で、OBとの実力差を痛感したという野村選手。先輩方のアドバイス通り、最後は気持ちでリーグ戦を走り抜きます!