【連載】競走部 日本学生対校選手権(全カレ)前特集『NOW OR NEVER』第7回 池田海主将×小林樹季主務

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 最終回は池田海主将(スポ4=愛媛・松山北)と小林樹季主務(社4=東京・早実)の2人が登場 。早大の顔として選手とスタッフを率いてきた2人が、この1年間どのようなことを心がけてチームを引っ張ってきたのか。そして最後の全カレを目前にした今、彼らが考えることとは――。

※この取材は9月7日に行われたものです。

「1年生の時から主務になることを意識していた」(小林主務)

対談中の小林主務

――他己紹介をお願いします

池田 1年生の時からマネジャーで、ずっと頼りになる存在です。色々な局面において上とつながり続けてきたから、その分自分よりリードして動いてくれて、主将として活動する上で色々助けられている部分が多いです。第一印象と今の印象で変化しているところはあまりなくて、頼りになる、安心できる存在なのが大きいと思います。

小林 1年生の頃からうちの代の主将は海君になりそうだなと感じながら3年間を過ごしてきました。うちの学年や歴代の主将と比べた時に、ビジョンをしっかりと示すことができるのが海君の強みかなと思います。チームとしてこうあるべきだという言動を主将が強く示してくれるのは、着いていく側としても大きいですし、競技面の向き合い方としても誰よりも真剣に取り組んでいる姿はかっこいいです。ただ寮に入ると、意外と抜けている部分が多いのがギャップ萌えするところかなと思います(笑)。

池田 迷惑をかけまくっちゃってる可能性が高いと思います。今言ってくれたビジョンの話についてですが、向かうべきところを伝え続けることができている要因の1つとして、自分が苦手な部分をカバーしてくれていることがあるのかなと感じています。

――変な質問になりますが、抜けているところとビジョンを示すかっこいいところ、どちらが池田主将の素なのでしょうか

池田 個人的にはどちらが本当という分け方はしていないです。そういう場、そういう場において必要な行動を取っているつもりです。抜けている云々は必要な行動ではないですが(笑)。だから無理しているとかは全くないですし、あまりどっちが本当とかはないです。

――寮の居心地がいいということですね

池田 それはそうです。寮は大好きです(笑)。

――池田主将は1年生の頃から主将になる雰囲気があったと仰っていましたが、小林主務は1年生の頃から主務になることは見据えていたのでしょうか

小林 男女の差があるわけではないですが、マネジャーの中で同期の男子が自分だけで、歴代の主務も男性が多かったので最初は意識していました。実際入ってみても、自分が系属の早実出身だったことも大きかったと思うのですが、先輩とも他の同期と比べて早く馴染むことができました。そこから色々上ともコミュニケーションを取りながら、学年のことを引っ張っていくような立場になると思い始めました。そういったことを1年生の頃からやっていて、1年生の秋からは副務もやらせてもらって今結果的に主務をやらせてもらっています。

――お互いの尊敬しているところはありますか

池田 一番僕にないと思うのは許容量が大きいと感じています。主務だから部の仕事ももちろんあるんですけど、外の人と関わる仕事が多い中で、仕事に対して偏りを持たせないように全部に対応できているところが尊敬する部分です。

小林 キャパは確かに海君はパンクしがちだからね(笑)。マネジャーはカバーする範囲が広いことが求められるから、自然とそうなっていったかな。反対に自分からすると、発言力は尊敬するところかなと思います。自分は言葉にすることが苦手なタイプなので。集合練習の前の主将が話す時も、内容がしっかりある話を毎日話していて、日頃から競技や部活動に対してよく考えているところがすごく伝わってきます。それを言葉にして他の部員に発信できるのは尊敬しています。

――集合前の挨拶の内容は事前に決めておくのでしょうか

池田 念入りに考えていくことはないです。ただ主将になった時から、伝えたいことは一貫してあって。その時々でそれがちょっとずつ変わっていくので、伝え方を意図的に変えたり、今日はこういう雰囲気だから(変えてみるか)みたいな時もあります。僕が2年生の時の主将だった三浦さん(三浦励央奈氏、令5スポ卒)の影響は特に大きくて、いつも話を聞くのが楽しみでワクワクしていました。自分もなぞるつもりはなかったのですが、皆が興味を持って聞いて、知りたいと思える伝え方を考えてはいます。苦戦はもちろんしていますが。

――部員日記で池田主将の言葉が引用されているところを拝見したことがあります

池田 聞いてくれる人がいるのはもちろん感じていて、どう思ってくれているを色々な場面で知ることはあります。それを後輩に言ってくれたり、発信してくれたりするのが僕は嬉しいです。

――4年間様々な特徴を持った主務を見てきた中で、小林主務ならではの特徴があれば教えて下さい

池田 最初の方は対応力がある分、自分でやろうとしている節がありました。同期のマネジャーは彼一人ではなく、全員が強みを持っているのでしっかりそれを分担していくことで全体の仕事のクオリティを高めているのは強みだなと感じています。

小林 仕事を分担するのは1年間、監督(大前祐介監督、平17人卒=東京・本郷)やコーチから色々アドバイスをいただきました。僕の代のマネジャーがちょっと多くて、人数が多い代が抜けて後輩が苦労することがないように、積極的に後輩に仕事を分担したり任せたりすることは意識していました。

池田 ただ環境が違うから、比べることは難しいですね。それぞれの環境で全員が最大限努力し続けているのはどの代も共通していると思います。

「エンジの熱さを全員が全力でぶつけにいく」(池田主将)

対談中の池田主将

――大前監督から六大学対校陸上(六大学)のスポンサー集めを学生が主体となって行なったとお聞きしましたが、主務として振り返っていかがです

小林 六大学に関しては僕は副幹事という立場でしたので、自分自身が色々仕事をしたわけではなくて、どちらかというと運営全体の統括をしていました。協賛については、他のうちのマネジャーや他大学の運営メンバーが主体となってやってくれました。六大学を大きくして、日本の陸上界を引っ張っていくような大会にしたいと昨年の頃から掲げ始めていました。そのために協賛してもらって、どういったメリットがあるのかといったことをまとめて、資料を作りました。どれくらい(お金を)いただくかは学生が考えられるのですが、そこからアプローチすることは大人の力を借りることが多かったです。

――池田主将は日本選手権で復帰するまで振り返っていかがでしたか

池田 自分のやるべきことをやり続けていたら、必ず自分の立てた目標は達成できると感じていました。13カ月くらい試合に出ていなくて、結局その期間は全体のメニューの中で走るメニューには一回も入れなかったです。普通に考えたらそういう立場にいる選手は勝つか勝てないかでいったら、勝てないはずなのですけど、僕の中ではその感覚は全くなくて自信だけはありました。それは根拠のない自信ではなくて、闇雲ではなく自分が計画したことを積み上げてきたからこそくるものでした。ただ代替わりした時は主将と選手のバランスがうまく掴めなくて、2つに分けて考えてしまっていました。主将だから選手としてやることができているし、選手としてちゃんと活動ができているから主将としてチームを引っ張ることができていると考えるようになってから、歩みを進められたという感覚はあります。

――日本選手権のレースに立った時の感情はいかがでしたか

池田 一番は嬉しかったです。悪化と回復を繰り返していたので、先が見えない部分もありました。その中で一歩踏み出せたみたいな感覚がスタートラインに立った時はあって、もう一段上がることができるという感覚はありました。

――小林主務はそんな池田主将をどのようにみていましたか

小林 1年間、レースに出られなくて本人も相当悩みながら辛い思いをしていたと思います。僕は日本選手権の時車を運転していて、海君のレースを現地で見ることができなかったですが、日本選手権の舞台に立ったところを見れたのはすごく嬉しかったです。先ほどやるべきことをやっていればという話をしていましたが、練習で走っていなくても競技への向き合い方や考え方の部分からくる存在感はチームに対して大きいものがあったと感じています。

――日本選手権後の池田主将の状態はいかがでしょうか

池田 日本選手権に関しては急ピッチで合わせて出たので、かなりダメージがありました。2週間程度休んで練習を始めたという感じなのですけど、すごく順調です。100パーセント復帰というよりは、階段を上がり続けている状況ですが、確実に練習を積めていると思います。

――少し話が前後してしまいますが、主将として主務として後輩との接し方で気を付けているところはありますか

小林 僕に関しては主務としては意識していることはあまりないです。ただ4年生として、4年間この部に在籍している中で色々経験もしましたし、部に対しての向き合い方は後輩の誰よりも培ってきたものがあると思います。マネジャーの後輩にはマネジャーはこういう姿であるべきだよということはしっかり伝えて、それが途切れることがないようにしています。

池田 自分が考えてきたことを発信し続けることを意識しています。そしてそれを受け取ってもらえるような下地を作ることも意識しています。あと特に意識していることがあって。4年間競走部で生活してきて、その中で学んだこともたくさんある4年生が一番エンジについて、競走部について知っているので、後輩たちが変わろうとした時に手助けになれるようにすることを特に意識しています。

――それでは全カレに向けて今のチーム状況を伺ってもいいですか

池田 男女、スタッフ含めて目標を意識できていると感じています。その中でそれぞれの色が出ている部分があって、向いている方向は全員が一致していると思います。ついこの間夏合宿があったのですが、その1個前の合宿からチームとしての思いの強さが上がってきています。

小林 それぞれが全カレに向けて何をしなければならないのかを意識することができていると感じています。対校選手は点を取る、エントリーされていないメンバーは全カレ前の競技会で記録を出して勢いをつける、スタッフも準備や当日どうしたら選手が一番のパフォーマンスを発揮できるのかを考えています。それぞれの立場で全カレに向けてチームがいい状態で迎えられるように考えてできているのはいい状態かなと思います。

――お二人から見た注目選手はいますか

池田 自分ですね。今季2戦目でこれまでやってきたことを全部出すので、それがどこまでいくか輝くのかを見てほしいです。

――ワクワクしていますか

池田 もちろんです。本当に楽しみです。これまでは一人の選手としてやってきたところが強かったのですけど、チームで臨む最後の大会なので、自分の感覚が広がって他の選手にもつながっているというか。みんなと神経がつながっていて自分一人の戦いではなくて、チームとしての戦いという感覚が強いです。今(注目選手を)自分と言いましたけど、つまりチーム全体という意味もあります。エンジの熱さを全力で全員がぶつけにいくのでぜひ見ておいてほしいです。

小林 僕もマネジャーとして選手みんなとコミュニケーションを取っているので、全員楽しみですしワクワクしています。強いて言うならば、早実の同期である大竹(春樹、商4=東京・早実)と中村(真由、政経4=東京・早実)の2人です。大竹の方はエントリー資格ぎりぎりのところで自己ベストを2年ぶりに更新して、まだ出走するかは決まっていないのですけど、4継(4×100メートルリレー)のメンバーに入ってきました。中村はケガで苦しんでいた期間も長かった中で昨年自己ベストを更新して、今年に入ってからは100メートルも11秒台に乗って200メートルも自己ベストを何度も更新しています。2人とも僕が競走部でマネジャーをやりたいというきっかけをくれた選手なので、気持ちは強いかなと思います。

――最後に全カレに向けて意気込みをお願いします

小林 最後の全カレというところで、4年間勝つことを目標にやってきました。そこに対しての気持ちは一番強いものがあるし、最後笑って終わりたいです。自分が4年間培ってきたマネジャーとしての経験をフルに出して、チームに直接点をもたらすことはできないけれども、それと同等のパフォーマンスを発揮できるように準備からしっかり取り組んでいきたいです。

池田 スローガンとして掲げている『早稲田人たる覚悟』の早稲田人とは何かを全員が考えてきたし、問い続けてきました。そしてそれを自分なりに考えた覚悟を全員が持っています。特にそれをだれよりもやってきた人たちが、今回揃っていると感じています。何かを成し遂げなくてはいけないという強い思いを持って、本当に無我夢中に自分のやることをやってきたので、その結果がどうなるかを見ていってほしいと思います。

 

――ありがとうございました!

(取材・編集 飯田諒)

◆池田海(いけだ・かい)(※写真右)

2002(平14)年4月26日生まれ。188センチ。愛媛・松山北出身。スポーツ科学部4年。絵を描くのが趣味で、最近は人物画に取り組んでいる池田選手。うまくなる秘訣は、「陸上と一緒で、好きだから」とのこと。まさに『好きこそものの上手なれ』を体現する池田選手でした!

◆小林樹季(こばやし・たつき)

2003(平15)年3月7日生まれ。172センチ。東京。早実出身。社会科学部4年。サッカーを観るのが好きだという小林主務。先日行われた、ア式蹴球部との早慶戦記念対談には、ノリノリで参加したそう。ただ大会の帯同で途中で抜けたとのことで、残念がっていました!