昨年の日本学生対校選手権(日本インカレ)400メートル覇者であり、今シーズン悲願の45秒台を叩き出した眞々田洸大(スポ4=千葉・成田)、そして関西実業団陸上選手権を皮切りに大会ごとに自己記録を塗り替えるなど、前半シーズン快進撃を見せた髙須楓翔(スポ2=千葉・成田)。第5回はこの成田高出身コンビにお話を伺った。前半シーズンの早大を特に盛り上げた2人が日本インカレを目前にして語る想いとはーー。
※この取材は8月24日に行われたものです。
「自分が何をすべきかということが明確になった」(髙須)
対談中の髙須
――他己紹介をお願いします
眞々田 (髙須は)みんなの弟みたいな(笑)。高校の頃から一緒に陸上をやってきていますし、髙須の性格はよく分かっているのかなと思っています。人一倍負けず嫌いというのもそうですし、抜けていて少しバカっぽいところがありながらも、陸上をやっている時の目はどの選手よりも力強いなとひしひしと感じます(笑)。
髙須 ひしひしと(笑)。
眞々田 そう。ひしひしと。
髙須 眞々田先輩は高校も一緒で、高校の頃からずっとお世話になってきているので・・・もうお兄ちゃんですね。
眞々田 お兄ちゃん!?(笑)。
髙須 もうブラザーっす(笑)。
一同 (笑)
髙須 本当にずっとお世話になっています。今回関カレ(関東学生対校選手権)のマイル(4×400メートルリレー)では高校ぶりに一緒に走れたのですが、そこで1位に届かなかったので、全カレ(日本学生対校選手権)ではそのリベンジという意味も込めて、(眞々田さんは)優勝に導いてあげたい人です。
――成田高校時代のお互いの印象を教えてください
眞々田 (髙須が)高校を入学する前から「髙須ってやつはすごいぞ」と先生から聞いていたので、どんなポテンシャルのやつが来るのかとは思っていましたが、正直中学3年生の「すごい」に収まるのだろうなと思っていました。入学したら、ポテンシャルというのは秀でていたところはあったので、ずっとすごい選手だなと思っていました。大会や新人戦でお付きすることもあったのですが、悔しさや嬉しさという感情には人一倍素直でした。トイレにこもって泣いて出てこないこともありましたし(笑)。(自分が)3年、(髙須が)1年という関係ではありましたが、常に練習ではライバルっぽい存在ではあったかなと思います。
髙須 眞々田先輩は雰囲気から優しそう人だなと思っていました。ちょうどコロナの時期ということもあって、県大会は(一緒に)走れていないのですが、全国リレーで一緒に走った時は、一緒にいて居心地がいい先輩だったなという印象が強いです。
――高校から大学にかけて、お互い変わったなという部分はありますか
眞々田 いい意味で(髙須は)変わっていないなと思います。やはり高校は一緒に過ごす時間が少なかったので、寮生活を今こうしてしている中では、髙須のおもしろさがより見えてきたり、より髙須の中身を知る時間が増えたりはしています。高校の時に作られた髙須がさらに大きくなっているなと思います(笑)。
髙須 僕もいい意味で大学で印象は変わらないです。ほとんど眞々田先輩と一緒にはなってしまうのですが、高校よりも眞々田先輩と話す機会が増えて、『優しい印象』という高校で思っていたことが、より明確になったなと思います。
――成田高校出身の選手は、明るい方が多いイメージがあります
眞々田 たまたま・・?(笑)。
髙須 たまたまですね(笑)。
眞々田 同じ時間を過ごしてきたからこそ、似たところが多いのかなというのはあります(笑)。
――続いて競技についてお伺いします。まず前半シーズンの振り返りをお願いします
眞々田 僕は、昨年の日本インカレで優勝してから、国際大会に照準を当てていました。世界リレーに名前だけ入って補欠にとどまってしまったので、そこに関しては悔しい気持ちでした。関東インカレも2冠するつもりでいましたが、400メートルは挑戦した中での失敗。マイルリレーも惜しくも届かず3位でした。それに加えて日本選手権でも、0.03秒届かず決勝に行くことができなかったので、詰めの甘さが自分の中でも出てしまったかなというのが正直なところです。ですが前半シーズンを経て、自分のアベレージが上がっているということには気づいていました。戦うピースがそろっていながら、ここ一番というところで発揮できなかったかなというのが前半シーズンの振り返りです。
髙須 僕は、関東インカレまではあまり調子が上がらず、200メートルの選手には選ばれなかったのですが、4継(4×100メートルリレー)やマイルで上手く自分が何をすべきかということが明確になりました。自分の中で変えなくてはいけないものが明確に分かってから、日本選手権や関西実業団で20秒台のタイムが安定して出せたので、前半シーズンの後半は上手くまとまって良かったなと思います。
――眞々田選手にとって、前半シーズン結果が上手く出せなかったときにモチベーションとなっていたものは何でしたか
眞々田 これまでの大学陸上を振り返るというのが自分の中で一番のモチベ―ションになっていました。先輩方や監督、コーチ陣が作り上げてきた早大の400メートルというものを、自分が最終学年となった今、作っていくべきだなということは思っていました。失敗していても全てただ終わってしまったものと考えるのではなく、冬季の頃から、このプランでペースを進めていくということが明確になっていたので、そこにより近づけていくことが自分の使命だと思っていました。大会を経て1つずつ修正して、1週間ピークは遅れてしまったのですが、早慶戦(早慶対抗陸上)で少しそこがつながってきているなということは感じています。モチベーションは、支えてくださる方の後押しや存在が結構大きいかなと思います。
――早慶戦で45秒台の自己ベストを更新されたことについて、改めて振り返っていかがでしょうか
眞々田 1週間早ければ・・といったところに尽きます。自分のこれまでの消化率を見て、あのタイムが出るということは練習のころから自分の中で自信があったので、やっとそれが1つの形になったのが早慶戦の試合でした。それこそ早慶戦に挑むにあたって、日本選手権でギリギリ決勝に行けなかったという悔しさがあったため、次でどうにかしないと自分の作っていきたい陸上の全てが崩れてしまうなという覚悟がありました。あの1本にかける想いは強かったかなと思います。
――髙須選手は関西実業団選手権以降、大会ごとに自己ベストを更新されていました。振り返っていかがですか
髙須 レースを1本1本重ねていくごとに、自分で掴んできた200メートルでのコツというのが少しずつ分かるようになってきたのが要因で、大会ごとにベストが更新できたのかなと思います。
――多くのシニアの大会に出た中で得た収穫や課題を教えてください
髙須 まだ200メートルは西裕大(令6教卒=現MINT TOKYO)さんや杜真寿さん(千田杜真寿、スポ4=茨城キリスト教学園)から映像を見てもらう際に、コーナーの走り方が技術的にまだ足りないと言っていただけるので、そこの部分の修正をしています。自分のベースが上がった中で、技術面はまだまだ伸びしろがあると言ってくださっているので、その部分を埋めて全カレまでには走れるようにしていきたいと思います。
――髙須選手の活躍を眞々田選手はどのようにご覧になっていましたか
眞々田 それこそ関東インカレでマイルや4継にかけてくれて、チームの状況としてみれば、フレッシュな選手が走れるということに関して非常にありがたいことでした。そこでしっかり活躍してくれて、それを機に髙須自身が強くなってくれたというのは非常にうれしいです。ですが逆に同じルートを辿ってこれまで陸上をやってきているので、髙須が活躍するからこそ自分も活躍したいなと思うきっかけにはなっていました。日本選手権で1000分の何秒差で決勝に行った時も、髙須が頑張っているから僕も行かなきゃいけないなと思っていました。いい刺激をくれる存在だなと思います。
――今年は、髙須選手の同期の選手の活躍も素晴らしかったと言えます。髙須選手はどのようにご覧になっていましたか
髙須 素直に嬉しい反面、負けていられないなという気持ちもあります。特に、関口(裕太、スポ2=東京学館新潟)は一緒に練習することも多くて、スピード系の練習では結構置いていかれるので、いいライバルでありいい同期です。森田陽樹、創理2=埼玉・早大本庄)も少しケガしていたので今シーズンは少し心配だったのですが、そのケガを乗り越えて自己ベストを出し、トワイライト(トワイライトゲームス)で一緒にマイルを走った時には『森田復活したな』というのを感じました。全カレのマイルでも心強い仲間だなと思います。
――関東インカレでは高校時代ぶりにお二人がバトンパスをされていました。どのような気持ちでしたか
眞々田 チーム状況から考えて髙須を選んだということもあったので、結果的にそのバトンが一緒につなげられて。さらに、高校の時は髙須が3走で僕がアンカーだったのですが、関東インカレでは僕が1走で、髙須が2走という早大の流れを作るのを僕らができると言ったことに関して、非常に感慨深いものがありました。高校時代に2番ですごく悔しかったので、そのリベンジをする機会が2人の中だけにはなってしまうのですが、あるなと感じながら走りました。
――菅平合宿の手ごたえはいかがですか
眞々田 菅平合宿に臨む前は、毎年しっかり自分の中でテーマを決めて、合宿に挑むということは意識しています。消化率としてはほぼ100パーセントに近い状態でした。また、別の地に行くからこそ得られることであったり、気持ちを入れ替えられたりということもあるので、個人としても、チームの中でも1年をかけてチームとして作りたいものに対して振り返りや話し合いができた実りのある合宿だったなと思います。
髙須 練習を消化するという面ではほとんどできました。ですが、最初の2日間くらいは意識する対象が曖昧になっていたなという部分もあって、前半は少しまとまりがなかったです。後半になるにつれて、色々な先輩からアドバイスももらえてできるようになったので良かったのですが、最終日から2日前に膝を痛めてしまったので、そこは無理をしすぎてしまったなという反省もあります。
「自分の背景にいる人たちを思い浮かべながらレースをしたい」(眞々田)
対談中の眞々田
――前半シーズンについて副将の立場から振り返っていかがでしょうか
眞々田 関東インカレは男子トラック優勝ができたのですが、総合優勝が目標ではあったので悔しい気持ちはもちろんありました。そこで詰め切れていない部分があり、チームを引っ張っていくべき存在である4年生が活躍しきれなかったというところに関しては、気を引き締めてやっていこうという課題になりました。ですが逆に六大学(東京六大学対校)や早慶戦という今まで勝てていなかった対校戦で勝つことができたことに関しては、そういう大会では、池田(池田海主将、スポ4=愛媛・松山北)や伊藤大志(伊藤大志駅伝主将、スポ4=長野・佐久長聖)などが中心になって先頭に立って応援をしていて。そういった雰囲気に関しては、僕がいた4年間の中でもいいものをつくり上げている主将、駅伝主将だなと思います。前半シーズンを振り返ったら、チームの見え方が良いなと言う感じがあるので、そこがしっかり結果に結びつけられるともっと良いのではないかと思います。
――日本インカレまで3週間程にはなりますが、チーム状況はいかがですか
眞々田 多種目優勝や総合優勝を狙うことのできるメンバーは間違いなく揃っていると思います。取りこぼしなく、しっかり自分の力を発揮することができて、対校戦で自分がチームに貢献してやろうという想いをどれだけ強く持てるのかといったところで、インカレに向けては非常に良いかたちで来れているのではないかなと思います。
――権田浬(スポ1=千葉・佐倉)選手や森田選手が日本インカレA標準を切り、マイルメンバーが充実してきたように伺えます。眞々田選手はどのようにご覧になっていますか
眞々田 いい意味でこの2人の間で切磋琢磨(せっさたくま)しており、お互いが力を伸ばし合えているなと思って見ています。権田に関しての強みは、大舞台でしっかり強みを発揮できることです。森田に関してはもちろんケガがあったのですが、1人でも自分のことを追い込んで、1レース1レースの課題を見つめることができ、それに加えて次のレースでしっかりアプローチできることが強みだと思います。去年の今頃は上の強い先輩が抜けたら400メートルはどうなってしまうのだろうという不安はあったのですが、(日本インカレの)A標準を3人とも切れて、非常に高いレベルで3枚出場しインカレに挑むことができます。僕としても誇りに思う後輩たちですし、その中で僕自身もいつまでも余裕を持っていることはできないので、一緒に戦っていきたいと思わせてくれる後輩の活躍だったなと思います。
――現状はどのような点を意識して練習していますか
眞々田 重点としては、自分のレースに近づけていくというところを意識しています。早慶戦のレースは、後半は1年かけて作りたいレースペースで上がってこれたので、あとは前半を結び付けるといったところだけだと思っています。前半の流れは非常に重視しています。また、インカレとなるとフルで走っても5本走ることになるので、この時期は本当に追い込んで走っています。
髙須 コーナーの走りについて西さんから教えていただいたことを落とし込んで自分のものにしていく期間にしています。今まだできてはいないのですが、日本インカレまでには間に合うと思うので、しっかりそこで発揮できるように練習しています。
――マイルリレー優勝、ひいては学生記録更新を遂げるために必要なこととはなんでしょうか
眞々田 やはり早大らしいレースをするといったところだと思います。1走者からしっかり自分たちのレースを作りたいです。マイルは去年、バトンでミスってしまって、アクシデントが付き物ではあるので少しでもそれをなくすといった意味でも、自分たちが先導するレースが非常に大事になってくると思います。学生記録は夢物語ではなく現実的なものであると思うので、守りに入らずにしっかり攻めつつ、チームの一体感を高められれば叶うのではないかなと思っています。
――4継に関して、優勝や学生記録更新という点で重要になってくるポイントは何でしょうか
髙須 4継はバトンパスがタイムや順位の面で非常に重要になってくるので、そういった突き詰められるところはチーム全体で話し合って、いいものを作り上げていくという点が重要になってくると思います。まずは練習でしっかり区間のタイムを縮めるためにどうするかを話して、本番は練習通り走ることが重要だと思います。
――日本インカレを控える中で、改めてご自身の走りの強みはどういう点でしょうか
眞々田 1年かけて作りたいレースをしっかり再現できるところは自分の強みだと思っています。インカレとなるとタイムももちろんそうですが、勝負が非常に大事になってきます。今シーズンはまった試合は、特に後半がしっかり走れた印象が強いです。自分の強みとしては落ち着いたレースかつ最後しっかり走り切るレースかなと思います。
髙須 前半からスピードを上げて攻めるレースをし、後半もそのスピードを上手く保持しながら最後まで行けるところが強みではないかなと感じています。その強みを生かしつつ、今やってきていることへの修正できる力も強みの一つだと思っています。
――眞々田選手は最後の日本インカレ、髙須選手は初めての日本インカレとなります。最後に日本インカレに向けた意気込みをそれぞれお願いします
眞々田 数字的な目標とするならばもちろん(400メートルで)2連覇といったところもそうですし、早稲田記録は個人でしっかり狙っていきたいなと思っています。今年はより(早稲田記録を)狙って勝ちたいという思いが強いです。マイルに関しては結構苦しい思いをしてきているのが早大のチームだと思うので、自分が4年生でチームを作ってきた中で優勝することができれば、今いるチームだけでなくお世話になった先輩方に対しても恩返しができる結果になると思います。自分の背景にいる人たちを思い浮かべながらレースをしていきたいです。対校戦が最後にはなるので、自分の早大でやりたい陸上というものがしっかり完結できるようなレースをしたいと思います。
髙須 4継やマイルは関東インカレでも走らせてもらったのですが、その時に思っていたのが自分にできることを最大限にパフォーマンスするだけだということでした。そのメンタルで今回の全カレも、選手として決まったらやっていきたいです。必ずどちらも優勝を導くレースをしようと思っています。個人の方は、多分緊張はすると思うので、その中でも自分のやってきたことや今まで作り上げてきたものを、しっかり発揮したいです。鵜澤さん(鵜澤飛羽、筑波大)が出場すると思うので、日本のトップと戦える良い機会にはなると思います。そこはしっかりとチャレンジして1位を譲らず、僕が1位を取るんだというくらいの気持ちでいこうと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 草間日陽里)
◆眞々田洸大(ままだ・こうだい)(※写真右)
2002(平14)年7月26日生まれ。179センチ。千葉・成田高出身。スポーツ科学部4年。対談史上初!?ご自身の書き慣れたペンを持って対談に参加してくださった眞々田選手。達筆に書かれた字に、その後に対談をした選手の方々から「上手すぎる・・・」と称賛の声が上がっておりました!
◆髙須楓翔(たかす・ふうと)
2004(平14)年9月5日生まれ。177センチ。千葉・成田高出身。スポーツ科学部2年。眞々田選手を含め複数の選手と『ペヤング焼きそば獄激辛』を食べるゲームをしたという髙須選手。髙須選手は負けが多くたくさん食べたそうで、実際に食べた時の味を伺うと「あれは本当にやばいです!(笑)水が本当に足りないです!」と声を大にして教えてくださいました!