春は打撃が開花し守備の要だけではないことを証明した山縣秀(商4=東京・早大学院)、ここぞの場面で長打力が光った吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)、圧倒的な出塁率の高さで首位打者の座を勝ち取った尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)。リーグ優勝の嬉しさをかみしめつつ、日本一に向かってトップレベルの練習に挑み続ける3人の思いを伺った。
※この取材は9月10日にオンラインで行われたものです。
嬉しい気持ちとともに、悔しい思いをプラスに(山縣)
――他己紹介をお願いします
尾瀬 山縣選手はやっぱり尊敬する偉大な先輩です。どういうところを尊敬するかというと、とにかく優しくて、いっぱいご飯に連れていってくれるので。素晴らしい先輩です。
山縣 吉納翼は、とにかくマイペースで、サウナや温泉が好きです。あと、魚卵をすごく食べています。羨ましくなるほどの強肩が魅力で、バッティングの面でも飛ばす力はチームで一番なので、 そこを武器にしているすごい選手だなと思っています。
吉納 尾瀬雄大は見ての通り生意気です。後輩としては可愛い部分もありますが、ちょくちょくなめた態度が腹立つので、ご飯とか急にたかってきたりするところもあるんですけど、統括して可愛い後輩です。
尾瀬 ありがとうございます。これもやっぱり吉納さんの人柄(笑)。やっぱり吉納さんがいい人なので、自分もそういう感じでいけるっていう(笑)。
吉納 そういうことです。
尾瀬 素晴らしい関係性だと思います。
吉納 そういうことです。
――お三方のプライベートでの関わりはいかがですか
山縣 自分は、2人ともご飯に行くくらいです。翼とはサウナやお風呂に行ったりして、 たまにそのままご飯行ったりとそんな感じですかね。
尾瀬 ご飯ぐらいです。吉納さんには、東伏見に伏見団子というお店があるんですけど、 その団子を買いに行くことがあります。
吉納 いや、それで言うと、「俺買ってくるからお金ちょうだい」と言ってたかられるので、 もう基本的になめてます。生活でも野球でもなめられてます。
――六大学オールスターでの他大学との選手との思い出や、どんな選手と話をしたのかお伺いしたいです
山縣 ジンギスカンパーティーをしました。隣に松下(歩叶、法大3年)と吉鶴(翔瑛、法大4年)がいたので、その2人と特に喋っていました。それが楽しかったです。
吉納 僕は左隣に外丸(東眞、慶大3年)がいて、右隣に浅利(太門、明大4年)がいました。外丸とはジャパン(大学日本代表)が一緒の期間から基本的になめられています。でもいろいろ会話が弾むので楽しかったですし、浅利に関してはめちゃくちゃお酒を飲まされたので、 その恨みを明治戦で打てたらいいなという風に思います(笑)。
尾瀬 オールスターの思い出は、みんなといっぱい喋りました。あと、 宗山選手(塁、明大4年)にサインをもらいに行きました。
――改めて春季リーグ戦を振り返っていかがですか
山縣 優勝できたことが一番価値あることだったと思います。個人の成績などは置いておいて、チームとして初めて優勝したというその嬉しさが一番強いです。そのプレッシャーというか、優勝したから秋に向けて夏の練習を少し厳しくすることがあったので、優勝するとはこういうことなんだなと思いました。
吉納 僕もまず優勝して非常に嬉しい気持ちとともに、やっぱり連覇を掲げているので、そこに対しての目標が近づいた分、より打倒早稲田で他大学はやってくると思います。そこをしっかり意識して、チーム全体としてこの夏を乗り越えられたのはよかったなと思います。まず、春にいいスタートが切れてよかったんじゃないかなと思います。
尾瀬 春は優勝して、自分も首位打者をとって完璧なシーズンでした。ですが、それゆえにこの夏は少ししんどくて。やっぱりあれ以上のバッティングはないと思うと自分の中でもすごくしんどかったですが、その中でも頑張ってきたので、秋も同じようにいい成績が残せればいいなと思っています。
――続いて全日本大学野球選手権を振り返っていかがですか
山縣 最後、決勝で悔しい思いをして終わりましたが、そこまでの戦い方としてはしっかり早稲田らしい野球ができていたと思います。 そういうプラスの場面もあった分、最後の決勝は勝てた試合だったと、多分誰もが思った試合だったと思います。 今までずっと苦しい試合が続いて、最後の試合、相手のミスで先制して、そこで畳みかけられなかった自分たちの課題や弱さが出てきたので、そういうところをしっかり秋に繋げられれば、この全日本選手権の負けもプラスになってくるんじゃないかなと思います。悔しい思いはしましたが、そこを秋に繋げられるようにやっていけたらいいかなと思います。
吉納 僕は山縣も言った通り、非常に悔しい気持ちではありましたが、 初めて神宮で普段戦わない相手と戦った中で、非常に難しい状況の中でもみんなが実力を発揮していたと思います。ただ、やっぱり準優勝というところを見ると、秋にはしっかり優勝を目指していかないといけないなと思いました。
尾瀬 自分は全日本は全く打てず、決勝戦もいいところで(打順が)回ってきましたが、チャンスで打てなくて、すごく悔しい気持ちが残っています。秋にリベンジしたいなと思います。
――続いて、この夏に重点的に取り組んだところと成長した部分について教えてください
山縣 この夏はまず体を戻したくて、体作りをしっかり行いました。夏バテした中でもしっかりご飯を食べて、ウエートなどで春の体に戻すことから始めました。一番力を入れたのはバッティングです。守備ができて負けないのは当たり前ですが、やっぱり打たないと勝てないと思うので、上位打線を打っている中で少しでも点に絡めるようなバッティングをできるようにということを意識して取り組みました。
吉納 僕は、プロを目指している中で、走攻守において全てレベルアップしないといけないということで、シンプルに足を早くしたいというところに重点を置いてトレーニングに励みました。その結果、30㍍走のタイムだったり、盗塁に対しての意識が高まったりしたので、そこは秋に向けて成長した点だと思っています。
尾瀬 この夏は、変わらずバットをいっぱい振ってきました。
――南魚沼キャンプで重点的に取り組んだことについて教えてください
山縣 ほとんど一緒なんですけど、特打と素振りなど、バッティングの数が増えました。どれだけバットを振るかで打てるかどうかが変わってくると思うので、バットを振る量を増やして頑張りました。
吉納 僕は実戦がメインでした。その中で自分が自信を持っている選球眼というところに関して逆に球を見に行きすぎてしまう部分があるので、ストライク、ボールの区別をしっかりつけ、実戦でのボールへの積極性を磨き上げることができたと思います。
尾瀬 キャンプもたくさんバットを振りました。
とにかくバットをいっぱい振って(尾瀬)
――ここからは個別に質問します。まず、尾瀬選手に伺います。春季リーグ戦での打撃の調子を維持するために、リーグ戦中に意識していたことを教えてください
尾瀬 全部同じことを言うんですけど、とにかく疲れてもバットを振って、 バット振って、バット振ってという感じです。
――春季リーグ戦の早慶戦で本塁打がありましたが、本塁打についてはどのような意識を持っていますか
尾瀬 ホームランは完全にたまたまです。でも、たまたまでもホームランが出るようにというか、ホームランが打てないわけではなくて良い感じに当たればホームランになるので、普段は全然ホームランを狙わないですけど、 それが早慶戦でできてよかったなと思います。
――以前のインタビューで、山縣選手に対して、「自分が打ったら送ってくれるし、自分が出塁しなかった時は出塁してくれるから信頼している」と話されていましたが、今目の前で直接伝えたいことはありますか
尾瀬 ちゃんとバントして送ってくれって感じです(笑)。それをしてくれればいいです(笑)。
――以前から、試合の1打席目で出塁することが課題であると話されていました。 その課題の達成状況はすごく高いように見えますが、現在の新しい課題はありますか
尾瀬 課題はいっぱいありますが、やっぱり春がすごく(調子が)良かった分それと比べたら劣る部分がいっぱいあるので、 少し難しいですが、とにかくバットをいっぱい振ってという感じです。
――春はヒットを打った後にパフォーマンスをされていましたが、今季もパフォーマンスはされますか
尾瀬 パフォーマンスは、ちょっと待っていてください(笑)。最初はしないです。 また(調子が)良くなってきたらやるかもしれないです(笑)。
吉納 最初からやります。こいつは(笑)。
尾瀬 最初はやりません。
吉納 最初からやります。
尾瀬 ちょっといい感じに波に乗ってきたら見れるかもね(笑)。
一同 (笑)
――続いて山縣選手に伺います。全日本大学選手権後に大学日本代表に追加招集されましたが、選ばれたときの率直な気持ちと、実際に世界の舞台でプレーしてみていかがでしたか
山縣 選ばれたときは嬉しかったので車の中でガッツポーズして騒いでいました(笑)。実際にプレーしてみて、日本の野球の丁寧さがそのまま勝敗に響いたなと感じました。海外の選手は個々の力はありましたが、日本は個々の力があった上に丁寧に野球をやっていて、相手がミスをしたような場面で日本はしなかったため勝てたと思うので、そういうところが野球で一番大事になってくると感じました。
――先日プロ志望届を提出されましたが、志望届を出そうを思ったきっかけを教えてください
山縣 きっかけは元々小さい頃からプロ野球選手になりたかったという夢を追うためです。実際に出そうと思ったのは、社会人チームの監督に「プロ志望届は今まで頑張ってきたご褒美」というお話をいただいて、そこからプロでやっていけたらいいなと思ったので、大学3年になったときに志望届を出すことを決めました。
――プロへの特別な思いはありますか
山縣 小さい頃から見ていて、プロ野球選手になろうと思ってやってきたので、もしプロ野球選手になれたら信じられないですね。
――この夏のオープン戦でも「相手にとって嫌な打者」を体現されている印象を受けますが、秋に向けて変えたことや意識していることはありますか
山縣 監督に「もっとバットを短く持った方がいいんじゃないか」とアドバイスを受けたので、今はそれをやっているところです。秋はそれで結果が出ればいいですが、自分で一番良い感覚で打てるところを見つけられればいいので、そこを探せるように意識しています。
――バットを短く持つというのはコンパクトに振るためですか
山縣 芯に当てる確率を高くするためということなので、短く持って(芯に)当たる確率が上がるのであれば良いことなのかなと思っています。
――この秋が山縣選手にとってラストシーズンになりますが、秋への思いを聞かせてください
山縣 最後なので悔いのないようにというのはもちろん、後輩たちに何か残したいですし、みんなと野球ができる最後のシーズンなので、今回は優勝して笑って終われるように頑張っていきたいです。
――続いて吉納選手に伺います。自身初の国際大会を経験されましたが、大学日本代表での活動を振り返っていかがですか
吉納 個人成績に関しては打撃を試している中で臨んだので、なかなか思うようにはいかなかったですが、その中でもチームに貢献できたプレーや見つかった課題があったので、良い期間でした。また、選抜チームということでチームに馴れることから始まり、何もかもが初めてだったので良い経験になりましたし、2大会制覇ということで日本の野球を世界に広げることができて嬉しく思います。
――先日プロ志望届を提出されましたが、本格的にプロ志望を考えたのはいつですか
吉納 大学に入るときから早稲田の選手としてプロに行くと決めていたので、志望届を出せる期間になってから、迷いなく出しました。
――ドラフトまで残り1か月半となりましたが、どのようなところをアピールしていきたいですか
吉納 プロに行きたいという気持ちもありますが、まずは早稲田で優勝するために自分ができることをやるだけです。それがプロの方々の良い評価につながれば良いので、秋はプロというのをあまり意識せずにやっていきたいと思います。
――この秋がラストシーズンになりますが、特別な思いはありますか
吉納 最後は笑って終わりたいので、日本一になるためにリーグ戦で一番にならなければいけないと思いますし、後輩たちに強い早稲田を継承してもらうためにも、まずは僕たち4年生の力を見せて、目指される選手像になれたらいいなと思います。
秋こそ日本一を奪おうとチーム全員が向かっている(吉納)
――お三方への質問に戻ります。秋に向けた現在のご自身の調子はいかがですか
尾瀬 あまり良くないですが、気持ちで頑張ります。
山縣 自分もとても良いというわけではないですが、(オープン戦で)死球が当たって良い感じに力が抜けて良くならないかなと思っています(笑)。
吉納 調子は普通ですが、リーグ戦で本調子になるのが一番なので、しっかりと準備してやっていけている段階です。
――現在のチームの雰囲気については
山縣 リーグ戦前で少しピリピリしていますが、全員がこの秋優勝するという気持ちを持って練習に取り組めていると思うので、良い感じです。
――連覇のカギはどのようなところにあると思いますか
尾瀬 春と同じように主力が活躍すれば優勝できると思います。
――今シーズンのチームの目標を教えてください
吉納 新チームになってからは4冠を掲げていた中で選手権は準優勝に終わり、その夢は途絶えてしまいました。しかしリーグ戦を連覇して、秋こそ日本一を奪おうとチーム全員が向かっているので、そこは必ず達成したいと思います。
――ご自身の目標について教えてください
尾瀬 個人の目標は特にないです。チームが勝てば何でも良いです。
山縣 チームに貢献できるように一試合一試合頑張ります。
吉納 チームの優勝に僕のバットで貢献できるようにし、それが目指している三冠王やベストナイン受賞につながれば良いなと思うので、まずはしっかりとチームに貢献したいです。
――最後に今シーズンの意気込みをお願いします
尾瀬 4年生とできるのは最後なので、4年生が笑って引退できるように頑張ります。あと、4年生と一日でも長く野球をしたいので、(リーグ戦で)優勝して、神宮大会(明治神宮野球大会)に行って最後まで一緒に野球したいと思います。
山縣 ラストシーズンなので悔いのないように頑張ります。
吉納 もう一回みんなで優勝して、そして日本一になってそのときこそ(尾瀬)雄大をおいしいご飯に連れていけるように頑張ります。
――ありがとうございました!
(取材・編集 近藤翔太、本田里音、沼澤泰平)
◆尾瀬雄大(おせ・ゆうだい)
2003(平15)年8月14日生まれ。172センチ、80キロ。東京・帝京高出身。スポーツ科学部3年。吉納選手から「日本一になって雄大をおいしいご飯に連れていけるように」とコメントされた尾瀬選手。普段から先輩たちには可愛がられているようで、インタビュー中も仲の良さがあふれていました!
◆山縣秀(やまがた・しゅう)
2002(平14)年5月1日生まれ。176センチ、80キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。春は打率3割6分6厘の成績をマークし、今夏は侍ジャパン大学日本代表でも活躍した山縣選手。選出された際には「車の中でガッツポーズして騒いでいました(笑)」と話してくださいました!
◆吉納翼(よしのう・つばさ)
2002(平14)年8月16日生まれ。180センチ、87キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部4年。六大学オールスターでは侍ジャパン大学日本代表でも一緒に戦った外丸選手と話をしたと振り返ってくださった吉納選手。「基本的になめられています」と話してくださりましたが、インタビューでは後輩たちから頼れる先輩という様子が伝わってきました!