【連載】ア式蹴球部 早慶クラシコ&総理大臣杯前対談 第9回 北村公平×山市秀翔

特集中面

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対談第9回は神奈川・桐光学園出身の先輩後輩コンビ、北村公平(文構4=神奈川・桐光学園)と山市秀翔(スポ3=神奈川・桐光学園)の二人。

ーー今シーズンここまでを振り返っていかがですか。
北村 チームとしては、プレシーズンがすごくうまくいってた中でシーズン開幕してから、思わしくないような戦いが続いてますけど、その中でもアミノバイタルカップ粘り強く戦って総理大臣杯の出場権を獲得したように、なんとかしようという姿勢は今年のチームを通じてあるのかなと、そこは手応えとしてはあります。ここからチームとしては課題ばかりではありますけど完成系に向けて積み上げていけたらなというの思ってます。個人としては、昨年と比べると、チャンスはいただいてたかなという半年間だったなとは自覚はしてます。ただ、それを自分自身がつかめなかったなという感覚はありますし、今の立ち位置にはおおよそ納得感はあります。自分自身のこれが実力だなというところも、感じてはいるんですけど、そういう現状とか現実に争い続けるっていうところは、今年自分自身意識しないといけないとこだし、まだあと4か月ぐらい、最後まで戦い続けたいなと思ってます。
山市 公平くん言ってくれた通り、シーズン前は結構うまくいってたんですけど、その分ちょっと浮つきながらシーズン入っちゃったのかなというのは、今の結果を見ると思います。チームが勝ててないのは、自分が結果を出してないからだと思ってます。そこに関しては本当に申し訳ないなと思います。アミノもチームとしては勝ち上がりましたけど自分はそういう大事な時にケガしてしまったので、ここからはケガせずにシーズン通して戦いできるようにしたいです。

ーープレシーズンとの違いはどの部分に感じますか
北村 僕の中ではターニングポイントはリーグの開幕戦だったのかなと思ってます。天皇杯予選の国士館戦と駒澤戦(3月開催)はすごく良くて、今年のチームどこまでいけるんだろうぐらい正直思ってしまったのも事実です。ただリーグの開幕戦で、全員固くて外から見てて、うまくいってないなと感じた開幕戦で、そこからもうずっと流れが良くない方向に行ってしまってたので、雰囲気とか定量的に見えない部分だと思うんですけど、勢いとかはなんとなくなったのかなみたいな風に感じてしまった開幕節でした。
山市 シーズン前だから、ポジション争いとかも、奪いに行くぞっていう気持ち入ってて、みんな声とか熱量を注いでたのかなと感じます。今も感じますけど、プレシーズンの時よりかは感じないので、そこは変わったなっていう風に思います。

対談中の山市

ーーリーグ順位は7位(取材時点)ですが現在地点はどこにあると感じますか
山市 7位
北村 本来はもっと上にいるべきですけど、今年の現状を踏まえるとここかなと思います。しかも7位とはいえ負けると11位まであるし、勝てば上もある。そういう混戦の中での戦いになるので、今出てる結果そのままが、本当に自分たちの実力なのかなと思います。

ーー今シーズンここまでで特に印象に残った試合だったり出来事はありますか
山市 自分は拓大戦(第8節)ですね。ベンチからのスタートで、気持ちは入ってましたけど、100パーセントの準備できてんのかってなったらそうじゃなかったですし、その中でケガをしてしまったので印象に残ってます。それでもケガの期間で自分にベクトル向けて、見つめ直す期間にできたなというのは思ってるんで、そこはよかったです。
北村 僕は候補が何個かあるんですけど、やはり早慶戦(第3節)かなと思ってます。自分の立ち位置とか実力みたいなところを改めて確認、認識できた試合でした。関東のリーグ戦はあの試合がデビュー戦でした。いいレビューではなかったですけど、今年のターニングポイントって言われたら、そこになるかなと思います。ここからどこまで行けるかも、あの試合があったからと言えるかどうか、そこにかかってると思いますしあの試合をターニングポイントにできるかどうかは、今日以降の北村公平にかかっている部分だなと感じています。

ーーここから個人としてこだわっていきたいところはありますか
北村 まず一つは、そのチームに向き合い続けるっていうことですね。今苦しい状況にありますし、投げ出そうと思えばいくらでも、それは簡単です。でも今年が創部100周年で、101年目以降につなげていくという使命を、僕はピッチ内外で背負っている自覚がありますし、もちろんピッチ内もそうですけど、ピッチ外でも次につなげていけるように、生きざまというか、立ち振る舞いで示していけたらいいなと思ってます。プレーのところは自分自身は今三番手という立ち位置。海本(慶太朗、スポ2=大宮アルディージャU18)と袈依廉(ヒル袈依廉、スポ4=鹿児島城西)にないものは持ってるなと思ってますけど、それだけでも足りないし。でもそこもめげずに、折れずに、続けていくことでしかないと思ってるので今、目の前にある課題に対しても向き合い続けていきたいなと思ってます。
山市 球際・切り替え・運動量、あと気持ちです。怪我してからの期間でもう一度、少し自分の武器を見失っていた時期があって、その中で色んな人と話したりとか、外から見たりとかして、自分がこの先プロになって日本代表になりたいという目標を掲げている中で、どこでやってくんだと、山市秀翔はどこでやってくんだとそうなった時に、テクニックで売っていくのかと言われたらそれは自分の中ではクエスチョンマークです。それならサッカーのベースとなる、球際・切り替え・運動量と、あと声と気持ち。山市秀翔はここで売っていくんだ。そういうのを再認識できました。なのでこれからもこだわり続けていきたいです。

対談中の北村

ーー今期ここまでお互いの姿はどう映ってますか
山市 やりすぎっすよ、ほんとに。まずサッカーの面では今まであんまり出れてない中で、サッカーもグッと伸ばしてきてた中で慶大戦があって、自分の中では悔しい結果だったと思うんですけど、リバウンドメンタリティは彼の強みだと思ってるんで、ここからさらにサッカーのプレーの面では、そういう悔しい気持ちってさっき言ってましたけど、それを生かして欲しいですし、できてなかったら自分が桐光学園の監督のように言います。ピッチ外ではいろんなところに顔出してるから、早慶戦だったりとか、就活、自分もそうだし、マネージャー人とかのメンタルケアというか相談とか、話とかしてくれたりとか、もう本当になんて言うんですか、一家に一台北村公平って感じです。そのぐらいすごい大切な存在です。
北村 表現上手いなぁ。僕から見た山市に関しては、相変わらずだなとは思いつつ、ケガ期間にポイントがあったなっていうところがあって、今はピッチに戻ってきてますけど、やっぱりチームにパワーを与えてくれる、このチームに血を巡らせてるのは、山市だなというのを、本当に感じてます。そこは4年としては情けない話ですけど、でもこうやって山市がチームに対して、すごく前向きな、ポジティブなエネルギーを出してくれてるのは、本当に間違いないし、そこも含めてさっき言ってましたけど、ケガの期間ですごく整ったなというか、また成長して帰ってきてくれたなっていう印象がありますね。あと背負っている番号が、やっぱり重いというか、3年でそれ(10番)をつけるというのは重いよなとは思います。でも高校時代から見てますけど、山市秀翔はそれを背負っていけるだけの男だと思うので、多少結果に対して感じてる部分もあるかもしれないですけど。でも俺からすると、その目に見えるゴールとかアシストっていう結果よりもチームにもたらしてる雰囲気とか、周りを明るくできる力だったり、そういうところって、そのゴールとかアシスト以上にチームには大切な部分だと思うので。同じ言葉で返すことになっちゃいますけど一家に一台山市秀翔って感じです。でも相変わらずなんか繊細なとこもあるんで。そういうところも高校時代から変わらないですね。総じて可愛いっすよ。
山市 結論、可愛いらしいっす。

ーーどんな先輩、どんな後輩ですか
北村 基本なめてるよね?
山市 いやいやそんなことないです。
北村 でも本当にすごいのは、節々にはちゃんと尊敬を感じるというかなんか行き過ぎてない。いや行き過ぎてるんだけど、ちゃんと締めるとこ締めてる。そこはまじですごいと思う。それが多分後輩力が高い要因なんだろうなと思います。
山市 実際自分の人生の中で出会った人の中で指折りのリスペクトできる人なので。ほんとにすごいっすよ。
北村 嬉しい。

ーー出会った頃から変わったところとか変わってないところはありますか
北村・山市 何も変わってない。
北村 慕ってくれるとか、そういうところの変化も全くないですし、相変わらず噛みつきまくってますね。でもありがたいですけどね。これだけ噛みついてくれる子あんまいない。
山市 でも変わったというか、見えてなかったものが見えたのはピッチ外のところですね。高校時代あまり見えてなかったですね。そういう部分は私生活の部分で見える化したじゃないですか。もう部屋入っても毎回パソコン見てるなと。
北村 私生活の部分はお互いだね、山市のストイックさというか。飯食うのほんとに遅いしね。寮のご飯って時間決まってはいるんですけど、多分どの時間に行っても山市います。
山市 バカタレ、そんなことないわ。

ーー先ほど監督さんのお話も出てきましたが高校のエピソードは何かありますか
山市 本当にめちゃくちゃ尊敬してる。もう俺と公平君はだいぶ良くしてもらってるので。本当に頭上がんないというか。自分がケガした期間に連絡したりとか気にしてくれたりとかして。迷った時とかはちょっと電話しちゃいますね。
北村 本当に今でも大きな節目があると連絡しますし監督の存在はここの二人にとってはすごいでかいですね。
山市 自分にとってはサッカーを教えてくれた人なので。
北村 ヤマが高校時代でスタメンになったタイミングが、明確にここっていうところがあって。コロナ期間ですね、僕が3年でヤマが2年。
山市 公平くん主将っす、ハイスペック。
北村 その時に3月から6月までの3ヶ月間、中断で何もできなかった時期があって、山市はそこまで新人戦出てるかなみたいな感じだったんです。だけど、彼はコロナ期間毎日意味わかんない量走っていて、当時自分が活動記録みたいなのを毎日監督に提出したんです。山市だけ数字がおかしくて、15キロ走りましたみたいな。そんなやついないですよ。毎日でしたから。それをやり続けた結果、コロナ明けって周りはコンディションすごく下がってたんですけど、山市だけめちゃめちゃ元気で、それが監督の目にも留まって。そこからはもう山市秀翔の時代が始まったと思います。

ともに先発出場を果たした第3節の慶大戦

ーーチームメイトとしては今年ラストイヤーになると思います、 なにか成し遂げたいことはありますか
山市 俺、日本一っすね。一緒にしときたいですね。
北村 僕もそうですね。実は一緒に試合に出ることを一つ目標にしてたんですけど、そこを達成できたのは、その瞬間本当に嬉しかったです。なので次は一緒に優勝したいなと思います。

ーーアミノバイタルカップの戦いを外から見て、どう振り返りますか
北村 苦しかったですよね、ほんとに。ただ、良くも悪くも一応(総理大臣杯)出れたので。そういう意味では粘り強さというか、持ってるなとも感じました。今年のチームはそういうところがあるのかなと。決められたら負けっていうシーンが多分3回くらいあったんですけど、それいけるんだみたいな感じでしたね。
山市 俺が出てない時に落ちてるゴミとかしっかり拾ってたので繋がりました。

ーー去年の総理大臣杯はどうでしたか
山市 もう悔しい限りですね。高校の時新人戦見たなので一度日本一は取ったんですけど、ガチ日本一はどこでも取れてないので、大学こそ絶対取るっていう強い気持ちでこの大学の門を叩いたんですけど、関学大に負けた時はもうほんとに悔しかったですし、だからこそ今年にかける思いは、誰よりも強いと思ってます。

ーー全国の舞台で楽しみにしてることはありますか
山市 自分は2回戦が慶応か同志社だと思うんですけど。同志社に同期でやってたやつがいるので、しっかりそいつを倒して泣き顔が見たいです。
北村 3年生10番対決だね。僕はもう単純に日本一に挑戦できるのが楽しみです。今年のチームがどれだけ全国で通用できるのか、高いレベルに挑戦できるところは、個人としてもチームとしてもすごく楽しみです。

ーー総理大臣杯への意気込みをお願いします
北村 チームとしてはもう本当に日本一。そこはブレないと思いますし、個人としてもそこに出場したいし、出場できる最大限の準備をしていきたいなと思ってます。
山市 チームとしては日本一で、それをしっかり口だけじゃなくてしっかり行動で、結果で見せたいです。個人としては日本一になるために自分の持てる力を全て出し尽くしたいです。

慶大戦に敗れて座り込む山市

ーー第3節の慶大戦をどう振り返りますか
北村 僕のミスというか、本当に未熟さがそういう結果(1ー4)にしてしまったなという自覚と責任、意識があって、ああいう形で失点してしまうと、なかなか流れを取り戻すことは難しいですし、ただあれがなければと考えると、こっちもすごいチャンスは作ってたですし、全然わからなかったのかなという正直な感想持ってます。でもあの試合にケガで出れなかったメンバー、例えば神橋(良汰、スポ4=川崎フロンターレU18)とかいませんでしたし、そういう選手たちが戻ってきて、本当に今年の早稲田で正面から戦えれば、勝算もあるのかなというのは同時に感じました。
山市 自分はあの試合はサイドハーフで出て、公平くんからいいボール来たりとか、何度か決定機はあったんですけどそれ全部外して、大差で負けたので、誰もが注目している試合で、ああいう不甲斐ない試合をしてしまったことは本当に申し訳ないと思ってます。それでもリーグは続いてるし、早慶戦クラシコでもまた戦えるし。みんな悔しい気持ちを持ってると思うので、気持ちをぶつけたいなと思ってます。

ーー早慶クラシコの思い出だったり、印象に残ってること何かありますか
北村 早慶クラシコ勝利の瞬間を求めて、戦ってるのでやっぱり勝利の瞬間は印象に残っています。僕目線だと、運営面に関して1年目から関わってましたけど年を重ねるごとに、良いものを作りたいという思いも強くなってるし、その舞台に立ちたいっていう思いも毎年強くなってるし、本当に早慶両校の中で誰よりも思いが強い自信があります。
山市 自分は1年生の時、メンバー外で、2年生の時出場して、率直に最高だなと感じました。西が丘で自分が味方に声出してるんですけど、全く伝わらない、全く声が通らないっていう感覚は、すげえなと感じました。ただ去年は試合こそ出ましたけどシュート1本だけ打って、クロスバーだったことしか覚えてなくて、僕と交代で入った右京(平野、令5人卒=現横河武蔵野FC)くんが、点決めて勝ってめっちゃ嬉しかったんですけど、めっちゃ悔しかったです。今年は自分がゴールとアシストして球際・切り替え・運動量で圧倒したいです。

ーー改めて、早慶クラシコはどういう舞台ですか
山市 お祭りですね。こんな軽々しくお祭りとか言っていいのかわかんないですけど、そのぐらい誰しもが熱狂できる。もう嫌なこととか辛かったこととか忘れて、試合だけを集中して、楽しめるような舞台だなっていうのは、やってる選手も見てる人も感じる。それはやっぱり祭り以外の何物でもないという風に思います。だからこそしっかり盛り上げたいです。先輩方が作ってくれたものを大切にしたいという思いも強くあります。
北村 一言で形容するのは正直無理ですね。人生において後にも先にもこんなに自分の全精力を注いで、長時間かけて作り上げてきたものってないんじゃないかなと思うぐらい、自分にとっては重要な場所、重要なイベントで、自分自身も本当に最大限のパワーを注げるのはこの舞台しかないなって思ってます。だから主務としての立場もありますけど、最高のものを作り上げたいし、その舞台に立ちたいです。

ーーその舞台で自分のどこを見てほしいですか
山市 球際・切り替え・運動量。観てる人たちにこいつ気持ちありすぎだろみたいに思ってもらえたらうれしいです。
北村 僕も基本的に山市と同じで、根性とかそういうところは見てもらいたいですし、あとは全体を作り上げてる人間としては、やっぱりただの90分じゃない、早慶250名弱の部員が本当に一つになって、熱狂する空間を作り上げてるという、雰囲気を皆さんには感じ取っていただきたいです。自分は早慶戦に関する全てのものを作ってる感覚があるので、例えば山市の活躍も言うなれば、自分がその作り上げた早慶戦の一部というか、中に含まれてることだし、そうだとすると、なんかどこか一つでもいいなと思ってもらえれば僕はもうそれだけで嬉しいというか、作り上げてきた意味はあるなと思ってます。プラスアルファ自分がそこで出れたら一番嬉しいです。

ーー早慶クラシコの90分の中で注目してほしい選手がいれば教えてください
北村 山市ですね。さっきも3年生10番みたいな話をしましたけど、他のチームの10番像とはちょっと確かに違うかもしれない。それでも球際・切り替え・運動量、気持ち、これを体現するのは他の10番にはいないです。その山市らしさを90分間の中で、本当に存分に発揮してほしいし、楽しんでほしいし、暴れまくってほしいと思ってます。
山市 自分は公平くんです。一緒に出たいというか、本当にビッグイベントだし、なおかつ、この舞台を作り上げてきた長なので。高校時代からの先輩後輩でもあるので、一緒に出て活躍したいです。

ーー早慶クラシコへの意気込みをお願いします
北村 まずは体調崩さない。自分のまず主務としての仕事はこの早慶戦って舞台を成功させること、完成させることだと思ってるので、そこに対しては、自分が心身ともに崩れることなくというのは、意識したいなっていうのと、当日に関しては、自分がどのポジションにいようが、楽しみたいと思ってますし、一番は本当に試合に出て慶応を倒して紺碧の空を歌う。本当に単純ですけど、それが意気込みです。
山市 自分の気持ちのこもったプレーを見に来てくれたいろんな人に届けたいというか、君のプレーで元気出たわみたいな、そういういうことを思ってもらえるような、試合をしたいです。

今後へ向けての意気込みを書いていただきました!

◆北村公平(きたむら・こうへい) 写真右
2002(平14)年8月27日生まれ。神奈川・桐光学園出身。174センチ。文化構想学部4年。国立開催に向けて誰よりも力を注いできた北村選手。当日は彼の活躍全てに注目です。

 

◆山市秀翔(やまいち・しゅうと) 写真左
2004(平15)年1月20日生まれ。170センチ。神奈川・桐光学園出身。スポーツ科学部3年。球際・切り替え・運動量を体現するア式の10番。国立競技場では彼らしさを全身で感じ取ってみてください!

(取材・編集 和田昇也)