【連載】アーチェリー部女子王座直前対談 第2回 塚本美冴×三村遥

特集中面

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第二回に迎えるのは、塚本美冴(スポ4=東京女学館)と三村遥(先理2=東京・国際基督教大高)の2人。大学からアーチェリーを始めた塚本は、悔しい思いを味わった昨年に続き、2度目の全日本学生王座決定戦(王座)出場となる。三村は初の王座出場であり、初めての全国の舞台となる。王座に向けて、2人の心境に迫った。
※この取材は6月9日に行われたものです。

お互いについて

――お互いの他己紹介をお願いします

塚本 三村遥です。去年の10月に入部した後輩です。いつも明るく笑顔で部活に参加していて、たぶん王座でも笑顔でチームを盛り上げてくれる存在なんじゃないかなと思ってます。

三村 美冴さんは、私が入った時から点数面とかで女子チームを引っ張ってくれていて、美冴さんとか樹里さん(渋谷樹里、スポ3=エリートアカデミー)を中心に女子が盛り上がっている感じかなと思います。大学から始められたんですけど、本当に上手で、本当に目標にしている人です。

――アーチェリーを始めたきっかけを教えてください

塚本 高校まで水泳をやっていて、大学では続けないで何か新しいスポーツをやってみたいなと思って。水泳は自分の中でやりきったという感じがあって、水泳ではない新たなスポーツで、全国大会とかより上を目指せることをしたいなと。その中で高校生の時に親に相談した時に、ふとアーチェリーやってみたらといわれたのがきっかけで、それで大学に入学してアーチェリー部の体験に行ってみたら楽しそうで、始めました。

三村 高校の時にアーチェリー部があって一回入部していたんですけど、顧問の先生が東京オリンピックの関係で教師を引退なされということで、その関係で高1のとき、私の代でアーチェリー部は廃部だとなって。高1の1月から私ニュージーランドに留学していて、それで戻ってきて、私の中では私と同期の子たちはまだ射ってる予定だったんです。でもコロナとかいろいろあって結局20人くらいいた同期のうち2人くらいしか射ってなくて。アーチェリー部が好きだったんです、アーチェリーが好きというよりは。なのでそこで一回アーチェリーをやめて高2からはハンドボールをやってて。それで大学入学して、半年くらいは何もやらず(笑)。サークルもあまり行かずみたいな生活だったんですけど、いろいろ夏休み考えて、夏休みの終わりごろにアーチェリー部に体験させてもらって、10月から入部したという感じです。…複雑なんですけど。

――お互いの最初の印象は

塚本 ほんとの最初の印象は、体験に来てくれたとき。もともとちょっとアーチェリーをやっていたというのはあるんですけど、久しぶりにしても、本当に姿勢が良くてフォームがきれい。

三村 やった(笑)

塚本 しかもすごい楽しそうに射ってて、なんかすごい前向きで明るい子だなって印象です。

三村 私も体験の時にちょっとほめてくださったのを覚えていて、春くらいには50メートルだねって言ってくれてすごい嬉しくて、それがすごい励みになって頑張れていたところもあった感じです。

――今の印象は

塚本 今の印象は…変わってないです(笑)。

三村 あまり変わってない(笑)。でも思ったよりすごいおしゃべりな方だなって感じます(笑)。

――渋谷さんと髙橋さん(髙橋梨杏、スポ2=東京・横浜)は、塚本さんと三村さんは癖が強いとおっしゃっていたのですが、お二人から見た渋谷さんと高橋さんの印象はいかがですか

塚本 アーチェリー部の女子はみんな明るいなというのは共通で、2人も明るいなと思うし、あとは2人はやっぱり高校からの経験もあるし、アーチェリーに対してすごい知識の引き出しがあるというか。みんなあるんですけど、部員の中で見たときにアーチェリーの知識が深いところが、特徴じゃないですけど、2人の良い点なのかなと思います。

三村 私も困ったことがあったら樹里さんか、りあんぬ(髙橋のあだ名)に聞くっていう感じで、何でも返ってきますし答えが。すごい頼もしい…2人も癖強いと思います(笑)。

王座に向けて

――王座に向けての質問に移ります。まず王座の選考を終えて、今の気持ちはいかがですか。

塚本 去年に引き続き、王座の選手になることができてすごい嬉しいというのが一番大きくて。でも去年は私の同期の園田稚(スポ4=エリートアカデミー)がメンバーにいたので、なんかわからないことがあれば稚に聞いて頼ろうとか、先輩もいらっしゃったし、そういう部分もあって、自分のことに集中できるという気持ちが去年は大きかったです。でも今年は園田は世界で戦ってるし、先輩もいないという状況で、うれしくて頑張りたいという気持ちも強いけど、一方で自分かしっかりしなきゃなという不安な面もあります。

三村 割とあっという間だったなという感じがして。アーチェリー部に入部して、30メートル、50メートル、70メートルときて、すぐリーグ戦(関東学生リーグ戦)があって、すぐ王座選考があって、もうすぐ王座みたいな。割とスピード感に今あたふたしている感じなんですけど、王座を経験するというのは貴重な体験だと思いますし、誰もができることではないから、ありがたい機会をいただいたなと思っています。

4年生として、責任感をもって臨む塚本

――塚本さんにお聞きします。昨年王座に初めて出場されましたが、そのときの感想を聞かせてください

塚本 一言でいえば、自分が思っていたような点数が出せなくて、自分がやりたいことがまったくできなくてすごい悔しかったです。何も自分がやりたいことができず、二日目の団体戦のメンバーにも入ることができず、応援することしかできなくて、自分の力を出し切れなかったというのが感想です。

――昨年の王座から4月のリーグ戦前まで、ご自身の成績はいかがでしたか。

塚本 王座はターゲットという70メートルの種目なんですけど、別のフィールドという種目では、インカレ(全日本学生個人選手権)で優勝できなかったのは悔しいんですけど、銀に入れたりとか。インドアでも長崎にインカレ(全日本学生室内個人選手権)に出場できて、目標だった決勝トーナメント進出もできたし、そこで一回勝てたという点では自分としては満足できる成績を残せたのかなと思っています。でもターゲットという王座と同じ種目では、インカレでもあまり自分の思うように射てなかったり、点数もそこまで伸ばすこともできなかったので、ターゲットの面ではそこまで満足のいく結果は残せなかったかなと思います。

――この期間、ご自身の気持ちの面ではいかがですか

塚本 落ち込むというよりは、何とかして点数を出そうという気持ちが強かったので、ずっと前向きに頑張れたんじゃないかなと思います。

――三村さんにお聞きします。10月に入部されてから、リーグ戦前までのご自身の調子はどうですか

三村 どうですかね…

塚本 入部した直後のインドアの試合とかでも、大学でアーチェリー再開して2か月とは思えないくらいのちゃんとした点数は射ててたと思うよ。

三村 そうですね、正直春合宿くらいまでは70メートルも射ってなかったですし、50メートルを1人でずっと射っててそんなに点数も出てなかったんですよ。リハビリ期間というか、高校で一度やめてから元に戻す…元に戻すっていうほどやってなかったですけど(笑)、アーチェリーの感覚をつかむっていう期間だったかなと思います。だからそこまで点数も意識して射ってなかったですし、まずは70メートルを射てるようになろうというのを目標にやっていました。

――4月のリーグ戦の調子は

塚本 私はよくもなく悪くもないというくらいで、ちゃんと射ったらもう少し点数は出たのかなというところもあるんですけど、調子悪かったらこれくらいまで点数落ちるかもしれないという最低ラインまで下がることもなく、最低この辺は射ちたいなという目標は達成できるくらいの状態でした。

三村 早稲田の射場以外で射つのが初めてくらいだったので、早稲田の射場と射った感じが全然違うなあ夢の島は、というのは感じて。あと風とかにも対応できなかったですし、点数面では、まあ1日目に比べたら2日目は伸びたんですけど、それでもやっぱりチームに貢献出来る点数は出せなかったのかなと思ってます。初めての試合とかだったので、もうちょっと前もって経験を積んでおきたかったなとは思います。

――リーグ戦前まではリハビリ期間とおっしゃっていましたが、そこから王座の選考までにどのように調子を上げていかれたのですか

塚本 私が言っていいのかわからないんですけど、王座の選考で毎回自己ベスト出すみたいな、もうすごかったです。

三村 リーグ戦から毎週ずっと王座選考が続いていて、そこまでずっと自己ベストを4週間5週間くらい更新していたんですよ、奇跡的に。調子はずっと上がっていたのかなと思ってて。きっかけは、70メートルに慣れてきたのもあると思いますし、その時期に、後輩で経験者2人の男の子が入ってきて一緒にリーグ戦も戦ったんですけど、その子たちとかに結構教えてもらってて。最近どう思うとか、もっとこうしたほうがいいところあるかなとかすごい聞いてて。それまで先輩とかにも聞いていたんですけど、聞く人が2人増えたというのは私の中では大きくて、いろんな人にたくさん教えてもらった成果が出たのかなというのが一番です。

目覚ましい成長を見せている三村

――リーグ戦のチームとしての雰囲気はいかがでしたか

塚本 みんなの点数が落ち込むこともあったんですけど、声かけしあったりとか励ましあったりしあって、後ろ振り返るよりは次ちゃんと当てようとか切り替えていこうみたいな前向きな気持ちで、よい雰囲気で戦えたのではないかと思います。

――お2人のアーチェリーの強みは

塚本 私の強みは、練習と本番の差が良くも悪くもあまりないことかなと思っていて。緊張したら点数下がるとかあるかもしれないんですけど、私は試合の前の週の練習で射ってた点数がそのまま試合で出るというところ、びっくりベストみたいなことはないんですけど、安定していることが自分の強みかなと思います。

――あまり緊張はされないですか

塚本 私は緊張してるつもりなんですけど、ほかの人からは絶対してないって(笑)。あまり出てないのかなと思います。

三村 私も試合の方が楽しく射ててるかなと思ってて、練習の時はいろいろ考えて射っちゃって。毎回考えながら射つので毎回ちょっとずつ違うみたいな感じなんですけど、試合の時は何も考えず的だけ見て射つので、試合の方が調子いいのかなというのは強みかなと信じてます。

――試合だと今までやってきたことを考えちゃいそう…

塚本 私は逆に考える余裕がないのかもしれないけど、射つ、以上みたいな(笑)。

三村 試合は時の流れが速いというか、気づいたら終わってるみたいなこともあるので、必死で射って、とりあえず一生懸命射って。

塚本 6本ちゃんと射つ、それだけですね。

三村 そうですね。

――塚本さんは先ほど、去年の王座では思うように点数が出せなかったとおっしゃってましたが、王座の緊張感は普段と違いますか

塚本 王座の緊張感というよりかは、もともとちょっと自分が王座前から完全に思った通りに射てている感じがなくて、一致してない感じを引きずったまま王座に行ってしまって。その結果一致してない、よくわからない状態、そのままって何もできずに終わっちゃったという感じです。

――ご自身の課題はありますか

塚本 一般的に、こう射ったら当たるみたいなきれいなフォームを身につけたいとは思っているんですけど、そこに改善する勇気がなくて自分の独自路線を突き進んでることが今の課題かなと思ってて。さらに上を目指すにおいては、もっと論理的に正しいフォームをちゃんと見につけられるようにしていくことが今後の課題かなと思ってます。

三村 私は筋力といいますか、アーチェリーは重い弓を引いた方が風の抵抗とかに負けなくてちゃんと当たるんですけど、それがまだ引けていないので、筋トレとかして筋力をつけることが今一番課題かなと思っています。

――王座メンバーの雰囲気はいかがですか

塚本 よくも悪くも、ぎすぎすとかはなく、かぶっちゃうんですけど明るくて前向きです。

三村 そうですね。

塚本 ネガティブなこともあまり言わないし、という感じです。

三村 声掛けとかもちゃんとしてる感じなので。

塚本 私が静かになっちゃう時は、3人の後輩が盛り上げてくれたりとかして、いい雰囲気です。

――渋谷さん、髙橋さんは、誰かがこの王座のチームを引っ張っていく感じではないとおっしゃっていました

塚本 私がちょっと頼りないのもあるんですけど。

三村 いやいやいや。

塚本 引っ張ってというよりはみんなで、ふわっと(笑)。

三村 誰かが先頭という感じではないですよね。

塚本 去年とかは髙見さん(髙見愛佳、令6スポ卒=エリートアカデミー)とかがすごいまとめてくださって、先輩を頼りにさせていただいてたんですけど、ちょっとそういう空気ではないかなと。

――王座のメンバー選考は振りかっていかがですか

塚本 ギスギスはあまりなくて…。

三村 すごい楽しかったです。

塚本 初日があまりうまくいってなくて、どうしようかなと、うまく射てない自分にもやもやしていたりしたんですけど、2日目3日目はそこまで悪い感覚じゃなくまあまあで射てて、ああ終わったという感じでした。

三村 私は4的をしてくれた先輩たちがすごい落ち着いている方たちだったので、一緒におしゃべりとかしながら楽しく選考できたのかなと思います。安心感がありました。

――塚本さんは4年生で昨年に続き2度目、最後の王座になりますが、思いは

塚本 最後というところに対する強い思いはなくて、2回目ということで、去年あまり射ちたいようには射てなかったところがあるので、今年は自分ができる100%を王座で出し切れたらなと思います。

――三村さんは初めての王座ですが、思いは

三村 初めての王座、初めての全国大会なのですごい緊張しているんですけど、まずはチームに貢献できるように初日頑張って、2日目は団体に入っても入らなくても、チームを盛り上げられるようにいつも笑顔で頑張っていこうかなと思います。

――王座に向けて仕上がりは

塚本 個人的なことになってしまうんですけど、先週の木曜日まで教育実習に行っていて、最低限の練習はしていたんですけど、王座に向けてみんなほどまだ練習できていなくて。まだ若干調子を戻している段階で、最悪の状態ではないし一番良い状態でもない真ん中くらいなので、より良い状態にこれから持っていきたいなという感じです。一日の中でもよい時悪い時とかいろいろあって、完璧ではないです。

三村 2週間前くらいにリムっていう大事なパーツが変わって、それを変えて結構当たりとかが良くなったんですけど、王座に向けていろいろ調整とかいつも以上に練習を積んでいるなかで、学校の勉強とかの兼ね合いで体調を崩しがちで。今も崩してるんですけど。そうですね、ここ2、3日はあまり当たっていないですし、でもそうも言ってられないので頑張るしかないんですけど、まずは体調面を調整して王座に向けて大きく射つことを目標に頑張っていきたいと思います。

――王座まであと少しですが、残りの期間のプランはありますか

塚本 できるだけ調子を上げるために練習をたくさんするんですけど、練習しすぎて試合当日筋肉痛になってうまく射てないことがたまにあるので、筋肉痛にならないようにほどほどに、その時できる最善の状態で試合を迎えられるようにする、プランです(笑)。

三村 私はテストとかがあって、あと1回しかないんですけど、そこで考えすぎずにとりあえず大きく射つ、とりあえずまとめて真っすぐ射つという基本的なことを意識して、複雑に射形とか変えずに頑張りたいと思います。

――王座への意気込みをお願いします。

三村 早稲田大学として出る大会なので、選考が始まるまではずっと自分がうまくなりたくてアーチェリーしてる感じだったんですけど、今はチームに貢献するためにどうやったら点数出せるだろうとかそういうことを考えてやっていて、チームに点数面でも雰囲気面でも貢献できるように精いっぱい力を出し切りたいと思っています。

塚本 アーチェリーの面としては、後悔なくやりきったと思えるように射つこと、射って、最終的には王座制覇したいという思いが強いので、王座制覇を成し遂げるという意気込みと、もう一つは、自分は最上級生なので、点数面だけではなくてチームを少しでも引っ張っていけるように頑張りたいと思います。

――チームとしての目標、個人としての目標があればそれぞれお願いします

塚本 チームとしての目標は、王座制覇すること。

三村 王座制覇!

塚本 個人としては…私たまに射ってて、これ外すかもなと思ってそのまま外すことがあるので、ちゃんと当たると思った良い射を選んで当てるということを、王座の中でずっと貫き通せるようにしたいなというのが、目標に一つにあります。

三村 全体の目標はさっき言った王座制覇。個人としての目標は、すごい緊張してるし不安もあるんですけど、それに負けずに大きくまっすぐ射ちたいなと思ってて。それと引いてから長くなると前に倒れることがあって、前に倒れて右に飛んでいくとかそういうことが多いので、それをなくしたいなと思います。テンポよく、大きく、真っすぐ射ちたいです。

(取材 梶谷里桜、神田夏希 写真 梶谷里桜、編集 神田夏希)

対談を終えた塚本と三村

◇塚本美冴(つかもと・みさえ)(※写真左)

東京女学館高出身。スポーツ科学部4年。試合の日の朝ご飯は納豆ご飯とみそ汁、昼ご飯はあんぱんと決めていて、王座当日も監督・コーチにあんぱんをリクエストするそうです!

◇三村遥(みむら・はるか)(※写真右)

東京・国際基督教大高出身。先進理工学部2年。よく川沿いを散歩しているそう。韓国ドラマが好きで、シンパシーを感じた『二十五、二十一』というフェンシングのドラマをお勧めしてくれました!