【連載】アーチェリー部女子王座直前対談 第1回 渋谷樹里×髙橋梨杏

特集中面

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第一回となる今回は、次の女子主将であり、一昨年ぶり2回目の王座出場となる渋谷樹里(スポ3=エリートアカデミー)と、昨年に続き2回目の王座出場となる髙橋梨杏(スポ2=神奈川・横浜)の2人。王座出場経験のある2人だが、それぞれどんな思いで臨むのか、その心境をうかがった。
※この対談は6月1日に行われたものです。

お互いについて

――お互いの他己紹介をお願いします

髙橋 3年生の渋谷樹里さんです。次の女子主将で、私が高校生の時、早稲田に入ることが決まった時から優しくしてくれている大好きな先輩です。

渋谷 2年生の髙橋梨杏です。いつも明るい雰囲気で、うまくいくときはもちろんですけど、うまくいっていないときもいろんな人に声掛けとかしてくれて、盛り上げてくれるような存在です。

――アーチェリーを始めたきっかけを教えてください
渋谷 出身地が滋賀県なんですけど、来年滋賀県で国体があって。その国体に向けて小学生が、小学校高学年とか中学から始めても遅くないようなマイナースポーツを中心にいろんな体験をする機会があって、そこでアーチェリーをして楽しいと思って始めました。

髙橋 始めたのは高校生からで、中学校の時はバトミントン部に入っていました。高校はバトミントン部が強いところだったので、そこでバトミントンをやって埋もれるなら違うことをやろうと思って。最初は弓道をやりたいと思っていたんですけど、弓道部がなくてアーチェリー部があったので、同じ弓だし、と思って始めました。

――弓をやりたかった理由は

髙橋 家の近くに弓道場があって、弓道をずっとやってみたいなと思っていたんですけど年齢制限があって入れなくて、そういうのもあって憧れがありました。

――出会った時のお互いの印象は

髙橋 すごく大人に見えました。私が高校3年生の時の全日本選手権(全日本)で、お話したのが初めてだったんですけど、最初受付をするときにたまたま前に樹里さんと、昨年度卒業された廣木さん(廣木円華、令5人卒=茨城・水戸二高)が並んでいて。私は友達と一緒にいたんですけど、「あっ、樹里さんだ!」って、でも話しかけられなくて。友達は滋賀の子だったので「樹里ちゃーん!」って言ってて、めっちゃ先輩だ、どうしようって思いながら、話しかけられなかった(笑)。

渋谷 私も全日本で初めて知ったというか、名前は知っていたんですけど会ったことはなくて、初めて自己紹介してもらって話しているときに、にこにこしてかわいい感じの子だなーって(笑)。それが印象です。

――今の印象はどうですか

髙橋 最初からずっと優しくて、でもたまにいじられたりとか、結構ガッていじられるので、アカデミーの先輩、上級生とかからはたぶんいじられるキャラなんですけど、愛佳さん(髙見愛佳、令6スポ卒=エリートアカデミー)とかには…

渋谷 「樹里がいじってるの珍しい」って言われる(笑)。

髙橋 ほんとそれくらいいじってくれる、かまってくれる先輩です。うれしいです(笑)。

渋谷 (笑)

髙橋 しゃべってくれてうれしいです。本当です(笑)。

渋谷 私からの印象は、結構私からわーわー話しかけるんですけど、迷惑じゃないかなとか思いながら(笑)。でもにこにこ聞いてくれたり、結構そのノリに乗っかってくれて。結構楽しくアーチェリーできています。

次期主将として、チームを引っ張る渋谷

王座に向けて

――次に王座に向けての質問に移ります。昨年の王座から今年4月のリーグ戦の前までについて、まず渋谷さんに質問します。昨年の王座は選考から漏れてしまって出場されなかったですが、このとき気持ちの面ではどうでしたか

渋谷 大学に入学してからずっと調子が悪かったんですけど、去年の(王座の)選考終わりくらいから、徐々に自分のアーチェリーとちゃんと向き合ってできていて、わかってきたというか、自分なりにうまくできそうな感じが見えてきてたので、そんなに落ち込むこともなく、ちゃんと目標をもって淡々とできていたかなと思います。

――この期間成績はどうでしたか

渋谷 点数的には秋ごろから徐々に点数を打てるようになってきて、リーグ戦は両方ともよかったとは言えないですけど、良い方向に向かってきているかなと思います、

――髙橋さんに質問します。昨年の王座から今年4月のリーグ戦の前までの期間、自身の成績を振り返っていかがですか

髙橋 王座が終わって夏の練習が始まったくらいで、高校生の時けがをした右肩をまた痛めてしまって、痛い中でずっと射っていたので、なかなか点数が出ないというか、射つのが怖いと思う時期がずっと続いていて。病院に通い始めて11月はまるまる1か月射たずに療養期間という形で、12月も練習量をぐっと落として、1日100本とか。本当に全然練習していなくて、年明けから少しずつ練習に復帰しようと決めていたので、試合は全然出ていなかったです。インドア(全日本室内選手権)も全然思うように打てなくて、春合宿からリーグ戦も当たりそうで当たらないというか、あと一歩が足りないなという状態が続いていたので、もどかしいというか、全然振るわない1年間だったなと。でも、今現在は多少自分の中で当たるポイントというか、そういうのを見つけることはできているので、無駄ではなかったと思うんですけど、この1年間本当に苦しかったです。

――練習量を落とした12月は1日100本とおっしゃっていましたが、普段は1日何本くらい射つのですか

渋谷 みんなその時期はノルマを1日400~500本とか射つんですけど、その期間ずっと(髙橋は)、ちょっと射ってほかの人のアドバイスを待ってくれたりとかしながらインナー鍛えたりとかして、あまり射ってはいなかったですね。

――その期間、髙橋さんの気持ちの面ではどうでしたか

髙橋 的を狙うのが怖くて、すぐ的外を射っちゃうというか。思ったように射てないのが悔しいと思うと同時に、なんでこうもうまくいかないんだろうとか。周りの高校で一緒に練習していた子たちや仲良くしていた子たちがうまくなっていく中で、私が全然点数出せなくて、結構焦りもありましたし、試合に出れるレベルじゃないくらいまで落ちたので、メンタル的には、結構直近なんですけど3月とか4月とかは試合の後泣くみたいな。もう家帰って悔しくて泣くみたいなことが続いていたので、結構落ちてたかなと。1年の時の王座までの期間、よかった期間は本当にもう、最強とか思っていたので。「どう射っても当たるわ」と(笑)思っていたからこそ、気持ち的に落ちましたし、今までで一番ネガティブな時期だったかなと思います。

――4月のリーグ戦での調子はいかがでしたか

渋谷 4月の頭くらいから結構調子が良かったので、結構自分の思うように射てて。点数的にも625とかだったと思うんですけど、自分の中では満足しきれるほどではないですけど、ほどほどに良い感じだったなと思えるような感じで。2戦目は力みも入っちゃったのか点数もよくなかったんですけど、それでも今までの1,2年生の時にうまくいかなかった点数よりははるかに高い点数をとれたので、よかったかなと思います。

髙橋 私は、リーグ戦1戦目はその時期にしては、前後が良くなかったにしては結構良いほうの点数が射てていたので、結構戻ってきたかなと思っていて、ちょっと自信もついていて。このままいけば大丈夫と思っていたんですけど、2戦目は左肘を痛くしてしまって、痛み止めでどうにかあまり違和感なく射てるみたいな感じだったので、どうしてもかばってしまうというか。そういうのがあったので点数的にもあまりよくなかったです。(痛みは)今はましにはなっているんですけど、関節が痛くて、病院に行っても何もなくて、ちょっと炎症を起こしているみたいと言われたので、リハビリをしつつみたいな感じです。

――王座のメンバー選考を振り返って

渋谷 なんだろうな…。王座選考自体は3回あって、3回とも梨杏と同じ的で射っていたんですけど、3回とも点数的に自分では大丈夫だと思えるくらいは安定して射てていたので、そのなかでもちゃんと王座につなげていけるようにポイントだけ絞って射つようにしてたので、課題も見つけつつ楽しく射てたかなという。一緒に射ててたのもあるんですけど。結構選考ってピリピリしがちなんですけど、ほどほどに緊張感をもって楽しく話しながら射てたので、今までの選考よりだいぶラフではあったかな。

――昨年の選考はかなり緊張感があったと聞きました

渋谷 そうですね、去年もですけど一昨年とかも、ずっと点数が競ってて、上の点数帯の人たちが1点2点差くらいで詰まってたので、余計に緊張感はありました。今年は結構部員が少ないということもあって、なかなかメンバーもリーグ戦でギリギリそろうという感じだったので、みんなで頑張ろうというところです。

髙橋 3回の選考を通して、満足のいく点数は射てていないですし、3回目に関しては肘が痛いというのが自分の中にずっとあったので、どうしてもその2回までに比べて30点くらい点数が落ちてしまったんです。それで「やば、終わった」と思って、4番かと思って、ちょっとへこんだんですけど、選考までの間、4月に入るまで、やれることはやったし、結果は結果だし、王座は出れるし。王座で、本番で、自分の力を出せればいいかなと思えたので、まあ点数的には不十分で満足はいかなかったですけど、ちゃんと自分がやりたいことを試しながらできた選考だったなと思うので、よかったんじゃないかと思います。

――ご自身のアーチェリーの強みは

渋谷 結構切り替えはうまいほうかなと思います。ミスがでちゃったときも、ずるずるいくんじゃなくて結構良い方向にもっていくために、思い切ってやってみるとかは結構できてるかな。

髙橋 振るのうまい(笑)。

渋谷 あんまりよくないけど(笑)。まあカバーはできてると思います。

髙橋 私は…射つのが早いとかですか?

渋谷 思い切りがいいとか。

髙橋 ああ、思い切り射てるのと、あとは72射だとそうでもないときもあるんですけど、トーナメントだったりとかになると、結構射つのが早い方なので、パンパンてテンポよく射てるのが強みなんじゃないかなと思います。早く射った方が当たります。

渋谷 緊張すると狙いこんじゃう人も多いんですけど、だから団体戦の時とかは3人で2分間って決まっているので、その中で早く射ってくれるからだいぶ時間に余裕が持てます。

――ご自身の課題はありますか

渋谷 私はまだうまくいかないときに迷いが出ちゃうことが多くて、狙っている間にこうしたほうがいいんじゃないかとか、いろんな考えがよぎっちゃったときにやっぱりミスが出やすいので、自分を信じて射てるように、王座に向けて頑張っていけたらなと思います。

髙橋 私は狙っている間に、どうしても肩壊しているときだったりとか痛かった時のことがフラッシュバックする場面がときどきあって、射つのが怖いって思ったりとかどうしようって思うことがまだあるので、樹里さんも言ったように自分を信じて射つ、強い気持ちでちゃんとずっと射ち続けることを最後まで、気持ちを切らさず射ち続けることが課題かなと思います。

――王座メンバーの雰囲気はいかがですか

渋谷 私は結構ふわっとした感じの雰囲気というか、なんかちょっと言葉で表すのが難しいんですけど、結構個性は豊かなので、それぞれもめるとかはないんですけど、なんだろうな…。

髙橋 なんか、色がわからないですよね。

渋谷 全体でこの色っていうよりかは、それぞれの個性を発揮しているようなチームかなと思います。

髙橋 一昨年だったら先輩とか、誰かこの人が中心みたいな感じで、毎年その人が引っ張っていくみたいな色があったりしたんですけど、それがまったくないというか。

渋谷 それぞれの主張が…悪い意味じゃなくて、いいところを出せていけたら。

髙橋 良い意味でみんな染まらず、みんな良いところを出せるのがすごいですね。

渋谷 なんか、ちょっと不思議な感じではある(笑)。個性豊かなチーム(笑)。

髙橋 くせ強が集まってる…向こう2人が癖強いから(笑)。でも、いい意味で個性がしっかりあって。

渋谷 結構よくしゃべる感じの人たちが集まってる。いい方向にもっていけたらと思います。

持ち前の明るさでチームに貢献する髙橋

 

――渋谷さんは一昨年ぶり2回目の王座になると思いますが、王座への思いを聞かせてください

渋谷 2年前は1年生だったので、あとの先輩たちは2,3,4年生で。今年は半分より上の学年にいるので、塚本さん(塚本美冴、スポ4=東京女学館)はいるんですけど、このチームを引っ張るじゃないですけど、いい意味で支えられたら。梨杏はけっこう団体戦もやったことあるんですけど、塚本さんと、三村遥(先理2=東京・国際基督教大高)の2人は試合という試合で団体戦はやったことがないので、その二人が安心して射てるように、しっかりチームの中で雰囲気づくりに貢献していけたらと思います。

――チームの雰囲気づくりで心掛けていることはありますか

渋谷 誰でも緊張すると思うんですけど、その中でもコミュニケーションは大切にしたいと思っているのと、あとはみんな顔がこわばっちゃうと思うので、自分がまずは笑顔でやっていきたいなと思います。

――髙橋さんは昨年に続いて2回目の王座になると思いますが、王座への思いを聞かせてください

髙橋 去年は3、4年生の先輩と一緒に団体戦を組ませてもらって、去年ほんとに自分の中で無双してたので、点数もよかったですし、練習の時からよい点数をずっと射てていて。勝てるわ、と思ってたので、去年は心から楽しい団体戦ができたなと思っています。今までやった団体戦の中で一番楽しい団体戦になったなと思っていたので今年もそういうふうに楽しみながら、いろいろ痛めたり、けがもしてますけど、それを言い訳にしないように点数も出しつつ、チームの雰囲気を積極的に明るくできるようにしていけたらいいなと思います。それにメンバーに稚さん(園田稚、スポ4=エリートアカデミー)がいなかったからだって言われたくないので。言い方悪いかもしれないですけど、稚さんがいなくてもちゃんと勝てるよっていうのを見せられる機会だと思うので、そういうプライドをもって試合に臨めたらいいかなと思います。

――王座に向けて仕上がりはいかがですか

渋谷 私はリーグ戦の第1戦あたりが感覚的にはよかったんですけど、今も別に悪いとかではないんですけど、ちゃんと最後こうやって射つんだっていう自分なりのポイントがまだ見つけ切れていない感じがするので、20パーセントくらい…もう少し上げていけたらと思います。

髙橋 自分の中でやることは決まっているので。これをやったら絶対当たる、ちゃんとまとめられるっていうポイントはわかっているので、それをもっと精度を上げるというか詰めていけたらいいかなと思うので、気もちの面とかも含めて、あと30パーセントくらい?(笑)。70パーセントくらい仕上がってきてるんじゃないかと思います。

――最後に王座への意気込みをお願いします

渋谷 毎年今年は王座制覇するんだってみんな言うと思うんですけど、今年、もちろん稚さんがいないというのはみんなの心理的に大きい部分ではあると思うんです。でも早稲田の雰囲気は変わらないと思うし、自分たちの雰囲気を大事にしつつもやっぱり勝ちは目指していきたいと思うので、今年こそは王座制覇できるように頑張りたいと思います。

髙橋 さっきも言ったんですけど、稚さんがいないから負けたとか、メンバーが稚さんじゃなかったから負けたとか言われないように、しっかり早稲田で強いのは稚さんだけじゃないっていうのをちゃんと見せながら、みんなで勝ちを取りに行きたいというか。その最前線にいるのは自分たちなので、最後の最後まで貪欲に勝ちにこだわっていきたいと思います。

(取材、写真、編集 神田夏希)

対談を終えた渋谷と髙橋

◇渋谷樹里(しぶや・じゅり)(※写真左)

2003(平15)年4月29日生まれ。エリートアカデミー/東京・足立新田高出身。スポーツ科学部3年。最近の趣味はスタバの新作フラペチーノを飲むこと!

◇髙橋梨杏(たかはし・りあん)(※写真右)

2004(平16)年12月21日生まれ。神奈川・横浜高出身。スポーツ科学部2年。最近ハマっている食べ物は、納豆巻きと、アサイーの粉を混ぜたヨーグルトだそうです!