【連載】春季早慶戦直前特集 『ONE』 第13回 小宮山悟監督

特集中面

 ここまでの東京六大学春季リーグ戦(リーグ戦)で全チームから勝ち点獲得に導いた小宮山悟監督(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)。昨秋はあと1勝で優勝を逃し、今季は「死に物狂いで天皇杯を撮りに行く」と強く意気込んだ。悲願の優勝まで残すは早慶戦のみ。冷静かつ的確な采配で7季ぶりVを。

※この取材は5月26日にオンラインで行われたものです。

1試合ごとに選手が自信をつけて試合に臨んでいる

――ここまでの春季リーグ戦では全チームから勝ち点を獲得し、首位を走っています。ここまでの春季リーグ戦の手応えの方はいかがですか

 1試合ごとに選手が自信をつけて試合に臨んでいるという、そんな感じには見受けられます。

――各カードごとに振り返りをしていただきます。立大とのカードでは開幕戦白星を収め、2戦目を落とすも、3戦目でビックイニングを作り、勝ち点を獲得しました。振り返っていかがですか

 投手陣が頑張ってくれたというのが(勝ち点獲得の)一番の要因です。打線の方も「よーいドン」で活発にというわけにはいかないと思ってましたから、 投げる方でなんとかゲームをものにしたいというつもりで臨んだ立教戦でした。しんどい試合、もつれる展開になりましたけど、ピッチャーが頑張ってくれたのでなんとかという感じです。

――明大とのカードについて伺います。初戦は逆転勝利、2戦目は落としましたが、 3戦目の方は延長11回を勝ち切り、2021年秋以来の勝ち点を獲得しました。振り返っていかがですか

 選手たちには耳にタコができるぐらい打倒明治という風に言い続けました。昨年なんとかしたいという中で、 1つ取ってほっとしたわけではないですけど、その後に2つ取られて勝ち点を落とすということがかなりこたえています。そういう点で言うと、初戦を取って2戦目を落としてしまったので、ちょっと嫌な雰囲気にはなったと思いますが、樹(伊藤、スポ3=宮城・仙台育英)が本当によく投げてくれました。今シーズンを振り返ってもターニングポイントになった試合だと思ってます。あの試合でやっぱり11番が最後まで1人で投げ抜いて、延長で勝ち点をものにするというこれ以上ない形で勝利をものにできたので、 あそこでチームに勢いがついたというカードになったと思います。

――東大とのカードについてお伺いします。2試合ともに打線が爆発し、投手陣の方も2試合ともに無失点に抑え、完封勝利を収めました。振り返っていかがですか

 東大は負けてはいけない相手なので、その相手に対して油断せずにどれだけしっかりとした野球ができるかというつもりで望んだ試合でした。我々はとにかく取れるだけ点を取って、1点もやらずに2試合を完璧な戦いをするという目標でやって、それがしっかりとできたというところでチーム力も相当上がったなという手応えをつかみました。

――法大とのカードについて伺います。1戦目では篠木健太郎(4年)投手を打ち崩しての逆転勝利。2戦目では2点のリードを守り切って勝利を収めました。 早慶戦にもつながる勝ち点勝ち獲得となったと思いますが、振り返っていかがですか

 特に2戦目についてですが、相手の走塁ミスなど隙をつくという野球ができました。4カード目で優勝が少し見え始めたぐらいの試合でしたから、多少力が入りすぎて思うようにならないような感じのゲームにはなりましたけど、連勝でものにできたというのは大きかったと思っています。

1打席目、1人目でどれだけしっかりとしたバッティングができるか

――続いて今季の打撃面のことについて伺います。1、2番の尾瀬雄大選手(スポ3=東京・帝京)と山縣秀選手(商4=東京・早大学院)が好調です。後を打つ吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)、印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)も得点圏での一打が出ていますが、小宮山監督自身は今季の打撃陣についてはどのように見ていますか

 十分すぎるぐらい機能してるという風に思っています。もちろん打たれまいと投げるボールをそう簡単に打てるわけではないので、そういう中でどうすれば得点を奪えるかということを考えた時に、細かなことも含めて、こちらの考え通りに選手がしっかりとしたパフォーマンスを見せてくれてると思っています。欲を言えば、もう少し早いイニングから点を取れればいいんでしょうけど。そうは言うもののトータルで見た時に、それぞれの選手が3、4打席の中でしっかりとしたものを見せてくれていると思っています。

――今季の打線の特徴として、終盤での得点力が挙げられますが、どのようにお考えでしょうか

 常に彼らに言ってるんですけども、1打席目、1人目でどれだけしっかりとしたバッティングができるかっていうのは、そのゲームを自分たちのペースに持っていけるかどうかに関わると。やっぱり手探りで入ったゲームの中で、相手のピッチャーにいいようにやられてる感じが見受けられるので、その辺のところを早慶戦に向けて改善点ということで彼らには注文出してますので、外丸(東眞、3年)、渡辺(和大、2年)両投手に対して早いから襲いかかることはできるだろうという風に思ってます。

――続いて今季の投手陣のことについて伺います。まず、先発投手のことについて伺います。第1先発の伊藤樹選手はエースらしい投球が続いています。第2先発の宮城誇南選手(スポ2=埼玉・浦和学院)も法大2回戦で6回無失点に抑えるなど調子を上げている印象です。2選手をどのように見ていますか

 2人とも及第点を与えていいと思ってます。さらに樹に関しては、 明治3回戦が彼にとってひょっとしたら野球人生のターニングポイントになったゲームかもしれない。それぐらいのピッチングをしてくれたので、早慶戦でも同様の投球を2人に期待しています。 いいかたちで慶応打線を抑えて、我々がいい形で締めくくる。そんな投球を期待してます。

――続いて中継ぎ陣について伺います。今季防衛率0.00の香西一希選手(スポ2=福岡・九州国際大付)と安田虎汰郎選手(スポ1=東京・日大三)を中心に盤石の救援陣という印象ですが、小宮山監督はどのように見ていますか

 点を取られたのは中森(光希、文構4=大阪・明星)だけで、中森も投げたゲームがちょっと可哀想な部分があったので。ただ、全体を通して本当に投手陣はここまでケチのつけどころがないと思っています。早慶戦でも同じようにしっかりとしたピッチングをしてもらえるだろうという風に思ってます。

勝って天皇杯を奪い返す

――続いて早慶戦の話題に移ります。2季連続で優勝の懸かる早慶戦となりましたが、その点についてはどのように感じていらっしゃいますか

 秋は南魚沼の夏合宿を経て、チーム力が上がって、ある程度のところまでたどり着けてはいるんですけど、毎年春は思うようにならないという中で、 昨年は春もしっかりとした野球をと唱えて5連勝で始まったのに、つまずいて思うようにならなかったというシーズンでした。この春に関しては昨年の反省を踏まえて、とにかく目の前の対戦校相手にどれだけ勝利に対する執着心を持って、1球に対する執着心を持ってゲームに臨めるかというところでやっていますので、ここまで10試合戦えてるのかなという風に思います。

――今季の慶大の印象はいかがですか

 もうとにかく永遠のライバルなわけで、慶応に勝たなければならないという思いでリーグ戦を戦いますので。それで言うと、昨年の秋は(優勝に)王手をかけながら連敗し、慶応にやられてる現状を考えれば、この春、慶応相手に昨年の秋の借りを返す必要がありますから、そのためにもあなどれない相手ということで、 今まで以上に、対戦してきた4校以上にデータを洗いざらい調べて、どうすることが一番いいのかということを考えて、臨むつもりではあります。

――優勝の懸かる早慶戦を控える中で、現在のチームの雰囲気や状態はいかがですか

 (早慶戦)1週間前の昨日今日の週末の状況で言うと、変に緊張するでもなく、普段通りの形で練習はできてるかなという風に思いますね。 昨日オープン戦がありましたけども、そのオープン戦の中でも考えてるような野球ができなかったので、そういう中で相手のミスにつけ込んで得点を奪って勝つには勝ったけれども、本来目指してる野球ではない形でした。1週間かけて神宮の舞台に立ったら、緊張もあるでしょうし、優勝が懸かりますから気持ちの高ぶりもあるでしょうし、 そういう中で自由自在に自分の体をコントロールできるような、そういう形に持っていくようにしたいなと思っています。

――最後に優勝の懸かる早慶戦への意気込みの方をお願いいたします

 これはもう勝って天皇杯を奪い返すという思いでいます。昨秋に優勝を逃したということも含めて、毎年あと一歩のところまで来ている現状を考えると、このチャンスをものにできなかったら偉いことだという風に思ってますので、死に物狂いで天皇杯を取りにいきます。なりふり構わず勝ちを取りにいく姿をお見せできればなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 近藤翔太)

◆小宮山悟(こみやま・さとる)

1965(昭40)年9月15日生まれ。千葉・芝浦工大柏高出身。1990(平成2)年教育学部卒業。現早大野球部監督。