【連載】『令和7年度卒業記念特集』第62回 富田剣斗/バドミントン

卒業記念特集2026

バドミントンが大好きな自分に嘘はつけなかった

「もう一度、挑戦したいと思ったんです」。高校で競技生活に一区切りをつけるつもりだった彼にとって、大学での再出発は想定外だった。しかし、周囲に誘われて足を運んだ練習で、胸の奥にしまっていた想いが再び動き出す。「やっぱり好きなんだなと実感しました」。その気持ちに正直になった瞬間、4年間の物語が始まった

 数ある試合の中でも、記憶に強く刻まれているのは最終学年の春リーグ最終日だ。ダブルスではパートナーが負傷により棄権。チームに重くのしかかる状況の中で、勝負は最終戦へともつれ込んだ。責任とプレッシャーを背負いながらも、最後まで戦い抜いた。その一勝が決まった瞬間、仲間たちの歓喜が一斉に広がる。「みんなが喜んでくれたあの瞬間は一生忘れません」。

 大学での4年間は、技術的にも精神的にも大きな変化をもたらした。特にダブルスへの挑戦は、新たな自分との出会いでもあった。「最初は何をすればいいのかも分からなかった」と振り返るが、先輩からの助言を受けながら一歩ずつ成長を重ねた。また、精神面では“平常心”の重要性を体得したという。「以前は気持ちが前に出すぎてしまうことが多かった。でも練習量が増えたことで、自信を持って試合に臨めるようになりました」。積み重ねが心の安定につながっていた。

 彼が語るチームの魅力は「多様性」だ。異なるバックグラウンドを持つ選手たちが同じ場所で競い合い、支え合う。「それぞれの違いを認め合える環境があるのは、このチームの強みだと思います」。その中で過ごした日々は、競技力以上に人としての成長を促した。

 最上級生として迎えた1年は、これまでとは異なる視点をもたらした。自分のプレーだけでなく、後輩たちの存在にも意識が向くようになったという。「どうしたら力になれるかを考えるようになりました」。相手の立場に立つことの大切さを学び、チーム全体を見る目が養われた。

 後輩たちに伝えたいこととして挙げたのは「主体性」。与えられるのを待つのではなく、自ら考え行動する姿勢だ。「自分もそうやって学んできました」。その言葉には、経験からにじみ出る説得力がある。

 

「この4年間を一言で表すなら?」という問いに、迷いなく返ってきたのは「出会い」という言葉だった。仲間、指導者、環境――その一つ一つが自分を形づくってきた。「本当に多くの人に支えられてきました」。中でも大きな存在として挙げたのは指導者の存在だ。競技だけでなく、留学など新たな挑戦にも背中を押してくれた経験は、かけがえのない財産となっている。

 チームで過ごした時間は、本人にとって「家族のような存在」だった。「気づけば一番長く一緒にいるのがチームメイトでした」。その日常の積み重ねこそが、特別な4年間を作り上げていた。

 今後については、「これからも競技には関わっていきたい」としながらも、勝敗へのこだわりからは少し距離を置く考えだ。「これからは楽しむことも大切にしたい」。競技との向き合い方もまた、新たなステージへと移り変わっていく。

 最後に、自分自身へ向けた言葉としてこう締めくくった。「出会いを大切に、いろいろなことに挑戦し続けてほしい」。
 4年間で得た無数の出会いと経験。それらを胸に、次の舞台でも歩みは止まらない。

                               (記事 藤井一成 写真 栗原礼佳)