【連載】『令和7年度卒業記念特集』第43回 渋谷樹里/アーチェリー

卒業記念特集記事2026

つらかったのも忘れるくらい最高な1年間

今年度アーチェリー部女子主将を務め、創部史上初の全日本学生女子王座決定戦(王座)優勝に貢献するなどチームをけん引した渋谷樹里(スポ4=エリートアカデミー)。自身の長い不調や2度の王座決勝での敗退など、アーチェリー部での4年間では苦しみの連続だった。「自分一人が頑張っただけじゃなくて、すごく人に支えられた4年間」と大学生活を振り返る渋谷の軌跡をたどる。

渋谷の出身・滋賀県の国民スポーツ大会に向けた、「次世代のアスリート発掘プロジェクト」へ小学校5年生の時に参加。色々な競技に触れるなかで、担当スタッフから性格や適性を踏まえてアーチェリーを勧められ、「的に中てる楽しさ」を感じた経験が始めたきっかけだった。中学時代、地元でアーチェリーを行っていたのは渋谷のみ。そのため、近隣の大津商業高校アーチェリー部で高校生に混じって練習をしていた。高校時代はエリートアカデミーに所属し、トップレベルのコーチから指導を受けつつ週6回の練習を行った。コロナ禍で制限されながらも、トップクラスの実力を持つ他の選手と切磋琢磨して充実した3年間を送った。

行射する渋谷

早稲田大学に入学した理由は、スポーツに関するハイレベルな知識を授業で学び、競技に活かせる点に魅力を感じたこと。そして、エリートアカデミー時代から尊敬していた園田稚(令7スポ卒)が活躍しており、背中を追うかたちで進学を決めた。入学当初のアーチェリー部のイメージとして、コーチに一方的に指導されるのではなく、「完全に学生主体で動くことが新鮮で刺激的だった」と振り返る。渋谷は入学してすぐ王座のメンバーに選ばれたものの、調子が悪く自信はなかった。しかし、「早稲田の応援の雰囲気とか、全員で戦っている感覚があって、自信はないけど楽しい試合だった」そうだ。早大アーチェリー部の強みである一丸となった応援に魅了されていた。しかし、その後は「的前に立っても良いイメージが湧かない、怖い」と思うほどの大スランプに陥る。「自分のなかで悪いところが分かっていながらも、挑戦してうまくいかないと考えると怖い」として自分のなかで葛藤し、一歩踏み出せない苦しい期間が続いた。

行射を終え射場を後にする渋谷

1年生の時から続く調子の悪さは、2年生の後半で立ち直った。「ただひたすら練習するのではなく、しっかり自分の弱さや不安を言語化して行動する」と練習への取り組み方を変えたことで長い不調を乗り越えた。そして、3年生で2度目の王座に挑戦する。大エース・園田がワールドカップ出場のため不在など戦力が揃わず、どこまでいけるか分からない「チャレンジ精神」で挑んだという。しかし、予想とは裏腹にどんどん勝ち進み、決勝まで駒を進めた。そのため、決勝で敗退するも「やれることはやったから、負けちゃったけどよくここまで頑張った」という感情が大きかったと渋谷は語る。

笑顔でピースをする渋谷

王座直後に、渋谷は早大アーチェリー部の女子主将に就任する。「1年生の時も3年生の時も王座決勝の最後の最後で決めきれなかったため、最後の1年は絶対に優勝を決めに行く」という強い覚悟を持ってのスタートだった。一方で、今までリーダーとして力強く仲間を引っ張ってきた経験がなく、主将が務まるかという不安も抱えていた。しかし、途中から「その人それぞれのやり方があるな」と気づき、明るく色んな人に話しかけたり、後輩と親密に接したりと、「チーム全体が明るくなるような雰囲気づくり」ができる主将になるよう意識していたという。

4年生になって迎えた最後の王座。「自分が主将として引っ張りつつ、団体戦で初めて3番手を務めたため、正直言って怖かった」という。だが、渋谷自身は王座の前から今までにないレベルで調子が良く、「自分の調子の良さをどこまで試合で出せるかという楽しみもあり、緊張したけど良い気持ちで挑めた」試合だったそうだ。結果は、3度目の正直を果たすように悲願の王座初優勝を達成できた。主将を務めるなかで、お互い一生懸命だからこそ同期同士で意見が衝突する難しさや、頑張っているとは分かりながらも後輩が上手くいかないことへの悩みなど苦労が多かった。しかし、「結果として、応援も含めてかなり良い雰囲気で王座初優勝できてすごい良かった。周りの色んな人からの応援もあって、つらかったのも忘れるくらい最高な1年間だった」と当時の心境を振り返る。

表彰式での王座優勝メンバー(右から2番目が渋谷)

「つらいことや難しいことがたくさんあったが、そういうことから逃げずにしっかり向き合って頑張り続けること」がアーチェリー部の活動を通じて学んだことだという。卒業後は一旦アーチェリーから離れるが、いずれは「アーチェリー界に恩返しできたら」と考え、後輩指導に意欲を見せる。

最後に、アーチェリー部の仲間へのメッセージとして、「不安定だったし心配もかけたけど、無条件に支えてくれた。色んな人に支えられたからこそ踏ん張ることができた。感謝の気持ちでいっぱい」と感謝の言葉を述べる。様々な苦悩を乗り越え、王座初優勝という華々しい結果を残して有終の美を飾った渋谷。アーチェリー部で得た「逃げずに粘り強く頑張り続ける力」と「つらい時に仲間と支え合う尊さ」を胸に、新社会人として一歩踏み出していく。

 

(記事 飛田悠那、写真 神田夏希、飛田悠那)