【連載】『令和7年度卒業記念特集』第40回 西川果穂/女子ゴルフ

卒業記念特集記事2026

人に支えられた4年間

 「時間は有限、努力は無限」。この言葉を道標に、西川果穂(商=早稲田佐賀)は4年間の物語を紡いできた。商学部で培った知見をチーム運営にも注ぎ込み、主将として理想に掲げたのは、部員たちが互いに刺激を与え合い、相乗効果が生まれるチームだ。臙脂(えんじ)の誇りを胸に駆け抜けた、西川の彩り豊かな4年間の歩みを紐解いていく。

ティーショットを打つ西川

 西川がゴルフに出会ったのは5歳の頃。父親に連れられたゴルフ練習場で、握ったクラブの打感に魅了され、地元・福岡の地で一歩ずつ歩みを進めてきた。早稲田佐賀高への入学を決めたのは、その先に早大ゴルフ部でプレーする未来を見据えていたからだ。高校時代から、高いレベルで「文武両道」を体現する早大生の姿に憧れを抱き続けてきた。大学受験で競技を中断することなく、ゴルフに没頭できる環境を自らの意志で選び取る。西川が夢見ていたのは、臙脂のユニホームをまとう自身の姿だった。

 早大に進学し、念願のゴルフ部に入部を果たしたものの、「4月、5月の記憶があまりない」と振り返るほど、新しい環境に適応していく忙しい日々を過ごした。その中で訪れた最初の大きな転機が、1年時の関東女子大学春季Bブロック対抗戦(春季リーグ戦)だ。メンバー争いを勝ち抜き、入部直後にして憧れの臙脂で団体戦を戦う機会を得た。しかし、期待を胸に立ったその舞台で、西川は「早大を背負う一打の重み」という未経験の重圧に直面することとなる。

 大会初日の前半9ホール、緊張から空回りしたプレーは42というスコアに沈んだ。悔しさとチームを代表しているというプレッシャーに押し潰された。ハーフターンの休憩中、こらえきれずに大泣きしてしまった西川に、先輩たちが歩み寄って、温かい励ましの声を掛けた。そこでスイッチが入り、立ち直った後は後半9ホールを35で回る。これまで団体戦をあまり経験してこなかった西川は「チーム力を感じた」とこの出来事を振り返る。

アプローチをする西川

 2年時になると、絶対的な存在であった稲垣那奈子 (令5スポ卒=東京・共立女二)が卒業し、戦力の穴を埋めるという使命感が西川を突き動かした。チーム内での実力は2番目となり、寄せられる期待。西川は「背中で後輩を引っ張れる先輩になりたい」という理想を掲げ、1日の過ごし方から見直した。

 現状に満足せず、男子部員のもとへ足を運び、貪欲にアドバイスを求めた。どうすれば技術を効率的に高められるのか。練習メニューを自ら考案し、一打の精度を突き詰める日々。これらの「努力」は着実に結果へと結びついていく。関東女子学生選手権で記録したベストスコア69は、まさにこの時の飽くなき探求心の結晶だった。

 しかし、転機となったのは2年時の関東女子大学秋季Bブロック対抗戦(秋季リーグ戦)。西川は個人で定めた「2日間で150を切る」という目標を達成し、一定の手応えをつかんでいたが、チームの結果はCブロック降格。普段は涙を見せない先輩が泣き崩れる姿を目の当たりにし、「自分のスコアが良くても、満足はできない」という団体戦の残酷さと重みを痛感した。また、この頃からメンバーと応援組のモチベーションの差に違和感を抱き、全員が同じ方向を向く組織の重要性を意識し始めた。

 3年時、実力的には「圧倒的に勝てる」と期待されながらも、結果に結びつけられないもどかしい時期を過ごす。出場メンバーの中では最高学年という立場でリーダーシップを求められたが、「一体感や団結感」を作り出せず、焦燥感に駆られる日々。

ラインを読む西川

 そんな苦しい時期を脱却したのが主将を務めた4年生の関東女子大学春季Cブロック対抗戦(春季リーグ戦)であった。初日に91という予期せぬ大乱調に見舞われるも、西川は「明日取り返します」と仲間に宣言。不甲斐なさを自らのエネルギーに変え、翌日は70台をマークして、Cブロック優勝。続く早慶戦でも勝利を収め、早大の誇りを守り抜いた。実質的な最終戦にあたる秋季リーグ戦でのBブロック優勝は叶わなかったが、主将として率いたチームで立派な成績を残した西川。それは周囲に頼りにされる人間性と本人のたゆまぬ「努力」に要因があるに違いない。

 「部活を通して自分の考えを言語化できるようになった。本当に、人や環境に恵まれた4年間だった」

 最後のミーティングの後、同期5人が泣き笑いで思いを語り合った時間は、西川にとって一生の宝物となった。学業との両立や慣れない土地での生活。幾多の壁を乗り越えられたのは、遠方から支えてくれた両親、導いてくれた監督、そして「言葉がなくとも通じ合える」同期の存在があったからだ。

 早大で学んだ知性と、現場で培ったリーダーシップ。その両輪を携え、西川は新たな地へと踏み出す。臙脂のユニフォームに刻まれた誇りは、これから歩む新たな人生というフィールドを、より鮮やかな彩りで満たしていく。

(記事・写真 堤健翔)