【連載】『令和7年度卒業記念特集』第33回 井上慎太/準硬式野球

卒業記念特集記事2026

「まさか」の主将就任からリーグ優勝へ

2025年度東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)で2季ぶりの優勝を果たした早大準硬式野球部。そのチームを率いたのが主将の井上慎太(スポ4=埼玉・栄東)だ。チームメイトらは井上を「背中で語る主将」と評する。しかし、その背中の裏には多くの悩みと苦労があった。井上はそこで何を考え何を思ったか、葛藤と成長の4年間を振り返るーー。

 

小学生の頃から白球を追い続け、早大でも準硬式野球部に入った井上。野球に集中できる環境を求め、このチームを選んだ。入部当初は思うように試合に出場できず、スタメンでの出場を目標に日々の練習に励んだ。井上は「3年生まで本当に自分が試合に出るためにという軸で動いていた」と振り返る。

 

転機を迎えたのは最上級生となった3年生の冬。周囲からの推薦により主将に就任することとなった。野球人生で初めてのことだった。予想だにしなかったまとめ役に「まさか主将になるとは」と最初は戸惑いもあったという。特に頭を悩ませたのは「自分たちはどういう勝ち方をしたらいいのか」であった。一つ上の代が卒業したことにより、レギュラー陣がほとんどいなくなった新体制はまさにゼロからのスタート。一からスタメンを考えるところから始まった。そうした中で井上は今まで以上に周りに気を配ったり、他の選手の特徴を見つけたりとチームのために意識を大きく変えていく。それまでの「自分のため」の時間を「チームのため」に費やした。慣れない役割を務めながら、少しずつ自分らしい主将像を見つけていった。

 

苦難の冬を越えて迎えた春季リーグ戦。井上が「4年間で一番記憶に残っている」と明かす慶大との第2戦はまさに激闘だった。点を取り合う展開で進んだゲームは10‐5と早大リードで最終回へ。しかし、9回表に6失点を許しまさかの逆転に。場内は慶大ムードの中、その裏の攻撃で井上は先頭で打席に入る。何とか出塁したい一心でバットを振るとライトの前に落ちる安打に。井上のヒットを皮切りにそこから打線がつながりチームはサヨナラ勝ち。壮絶なシーソーゲームを制すことができた。この試合で勢いづいた早大は、開幕から8戦負けなしと無類の強さを見せ、2季ぶりのリーグ優勝を飾った。「勝つために何をするべきか」を常に自問自答し、これまで以上にチームのことを考えてきた井上にとって、この優勝は大きな達成感と自信をもたらした。

 

準硬式野球部での4年間を振り返り、井上は「もちろんすごく思い出に残っているけど、それ以上に成長できた場」と語る。「高校生の時は地区の初戦で負けるようなチームにいた選手から、甲子園出場経験のあるチームにいた選手まで、このリーグには幅広い選手がいます。その中で結果を残せたのは野球選手として成長できた点です。それに加えて主将という今まで全くなかった経験を周りに支えられながら1年間全うできたことは非常に成長を感じることができました」と野球選手として、そして人としても井上にとって大きな財産となった4年間だった。

 

 

就任当時は「まさか自分がなるとは」と驚いた”主将”という大役。そこから幾多の困難を乗り越え「我ながら成長を感じることができたかな」と語る井上の笑顔からは主将の貫禄さえ伺えた。準硬式野球部で学んだのは、野球の技術だけではない。それ以上にチームを思い、仲間と協力することの大切さだった。井上は自身が果たせなかった全国制覇の目標を後輩に託し、ここでの全ての経験を糧にして、新たなステージへと踏み出していく。

 

(記事、写真 平 壮真)