忘れられない思い出
「一つ一つが本当に忘れられない思い出です」。そう笑顔で振り返ったのは、今年度主将を務めた妻鹿愛(政経4=大阪桐蔭)。競技人生は決して楽な道のりではなかったが、上京、シンクロとの両立など、悩みながらも前へと進んできた。たくさんの人への感謝を胸に、大好きなスケートに向き合い続けた妻鹿の大学4年間を辿る。

笑顔で演技をする妻鹿
スケートを始めたのは小学3年生のとき。たまたまスケートリンクに遊びに行ったことがきっかけだった。それから10年、家族の支えを受けながら練習に打ち込んできた妻鹿に、転機が訪れる。大学進学を機に地元神戸を離れ上京する決断を下したのだ。
上京に伴い拠点が変わり、長く共に過ごしたコーチやリンクメイト、家族と離れて過ごす日々。大学の授業も始まり、練習に取れる時間は大幅に減った。さらに苦しんだのは、2年生のときに始めたシンクロ。コーチに勧められ習い始めたものの、シングルとの両立や、慣れない団体競技ならではの人間関係など様々な課題にぶつかった。「神戸にいたら今どうなってたんだろう」。そう夢想することの多い3年間だった。

部員たちにハイタッチで送り出される妻鹿
迎えた大学4年。同学年の選手は妻鹿1人のため、同時に主将の役割も任された。「(今までの主将が)本当に皆さん優秀な方ばかりで」と苦笑い。個人競技で練習拠点もバラバラなフィギュアスケート部員をまとめる難しさを感じた。そんな中後輩から何度も上がるのは「愛ちゃんは優しい」の声。「部を引っ張っていく力が欠けている」と悩んだが、きっと妻鹿なりの主将のあり方が愛されてきた。
そしてもう一つ、大きな変化が。大学4年になり授業が減ったことを機に、地元神戸へ帰省したのだ。練習量が増えただけでなく、「小さい時からの先生やクラブのメンバー、仲間がいるというだけですごく心強かったり、自分も練習頑張らなきゃって思える環境に戻ってこれた」といい、充実した練習ができるようになった。

東インカレで『ニューシネマパラダイス メインテーマ〜愛のうた』を演じる妻鹿
その成果が発揮されたのが、10月の東インカレ。練習を重ねてきた大技3回転トーループを着氷させる会心の演技で、自己ベストに迫る72・84点を記録。なかなか思い通りにならない試合が続く中で、ようやく練習の成果を存分に発揮することができた。結果としても、個人団体ともに6級女子1位に輝く。今までの競技人生で一番思い出に残っている試合に挙げ、「本当に幸せな試合だった」と笑顔が溢れた。
悩みの多い4年間だったが、その分だけ得たものもあった。シンクロでは周囲にスキルを合わせる必要性に迫られより高いレベルのスケーティングを身につけたし、シンクロの世界選手権に出場し自信もつけた。それまでの何一つ無駄にはならない、全てが結実したシーズンだった。

中野コーチらと出番を待つ妻鹿
競技生活には今シーズンで終止符を打ち、来年からは社会人として新しい道を歩んでいく。現役最後の舞台は3月7日のWASEDA ON ICE。部員たちが力を合わせて一から作り上げた早大フィギュア部門主催のアイスショーだ。「感謝の気持ちを最大限に伝えられる場所」と妻鹿は語る。悩み、挑戦してきたからこそ実感することができた、支えてくれた人たちへの感謝を胸に舞う最後の舞台。妻鹿のスケート人生が詰まった滑りを観に、ぜひ東伏見のリンクへお越しください。
(記事、写真 荘司紗奈)