努力のその先に
「努力を続けることの大切さを学んだ7年間だった」。今年度早大弓道女子部の主将を務めた橋本美優主将(スポ4=東京・國學院)は高校時代を含め、これまでの弓道人生をこう振り返った。主将としてチームを牽引しながら、ひたむきに自身の射を磨き続けてきた橋本。しかし、試合に出られない日々が続き悔しさや苦悩とも戦ってきた。「弓道が好き」という真っ直ぐな思いを糧に、逆境の中を乗り越えてきた橋本の軌跡に迫る。
橋本が弓道と出会ったのは、高校生の時。きっかけは「珍しいな」という純粋な興味からだった。しかし、新型コロナウイルスの影響で練習や試合が制限され、思うように弓を引くことができずに終わる。高校時代を振り返り、「不完全燃焼な気持ちが強い3年間だった」と語った。大学でも弓道を続けることを選んだのは、高校でのやりきれない思いがあったからだという。次々と的中をしていく大学弓道を目の当たりにし、その格好良さに惹かれて入部を決意。先輩を見て強い早稲田の弓道部に入りたいという思いが強まったことも大きかった。
1年目は、早大弓道女子部が一部リーグへの昇格を果たした年だった。昇格へと導いた先輩の大きな背中に憧れを抱きながら、「基礎を磨く期間だった」と語る。2年生になると、新人戦への初出場を果たした。試合経験が多くなかった橋本にとってこの新人戦に向けての準備期間は非常に濃厚なものとなり、「新人戦の期間の練習は、自分の選手生命にとって本当に大きな期間」だったと語る。試合に出場したいという強い思いを胸に高い目標を掲げて練習する日々が続いた。しかし、2年生のうちにその目標は達成することはできなかった。
3年生となり挑んだ、橋本にとって2回目の新人戦。第2回戦と準決勝では同中のため一手競射までもつれ込んだが、プレッシャーの中どちらの競射でも皆中し勝利につなげ、最終的に早大は優勝を果たした。インタビューの中で橋本は、「緊張した場面でやり切ったことで競射の自信がつき、忘れられない試合になった」と思い出深い試合だと語る。ところが、勝利に貢献した新人戦の後、リーグ戦への出場は果たしたものの全関東学生弓道選手権大会(全関)や全日本学生弓道選手権大会(インカレ)などへの出場はまたしても叶わなかった。紆余曲折のこの時期を「高い目標を追いかけながら、苦しんだ期間だった」と振り返る。苦悩を抱えながらも、橋本を突き動かしていた原動力は「弓道が好き」という真っ直ぐな思いだった。レベルの高い環境下に身を置くことで、弓道が好きだという気持ちがますます強くなっていったという。好きという思いこそが、辛い時期をも乗り越える武器となっていたのだ。

最後の年、全関で弓を引く橋本主将
そして迎えた最後の一年は、主将としての責任を背負いながら駆け抜けた一年間だった。もともと自分が主将になるとは思っていなかったが、「同期の中でも周囲の意見をまとめる立場にいることが多かったため、それが主将という立場へとつながっていったのではないか」と話す。主将を務める上で理想像としていたのは、橋本が1年生のときに主将を務めていた井上采香氏(令4文構卒)。井上氏について、「たくさんのことを言葉にするわけではなかったが、自分の背中や行動で示し、必要なときに必要な言葉をかけてくれる聖人のような方」と語る。井上氏を含め他の多くの先輩たちの立ち振る舞いも意識してきた。特に大切にしていたのは「芯を曲げない」こと。同期や後輩からの意見を尊重しつつも本質からずれることのないように。また、自身の目標に忠実になることができるように、芯を固く持つことを心がけてきた。主将として活躍したと同時に、選手としても躍進を遂げた橋本はついに全関へ出場し、インカレへの個人出場も果たす。これまでの悔しさと、必死に続けてきた努力が報われた瞬間だった。加えて、主将は大会へ出場するメンバーを決める立場でもある。だからこそ、勝ちたいという思いだけでなく、色々な部員を出させてあげたい、次につながるようなシーズンにしたいなど、常にチームの発展を考え続けてきた。主将としてだけでなく選手として過ごした最後の一年を、「一個一個が最後のものになっていくため、それぞれにかける思いがどうしても強くなっていく。本当にあっという間に感じていて、充実して駆け抜けられた一年間だった」と振り返る。

インカレ個人決勝で的を狙う橋本主将
「道場で仲間とコミュニケーションを取る時間が楽しかった」と話す橋本。特に、共に4年間を過ごした同期については「個性が強く、固い意志を持った同期」だと語る。それぞれが強い信念を持っているからこそ、本音でぶつかることも多かった。「友達というよりは戦友」であった同期の存在は、橋本の中で大きな支えとなっていただろう。後輩については、「自分の見てきた中で一番練習し、勝ちに対してこだわりを持っている代で、頼りがいしかない後輩」と語り、揺るぎない信頼を寄せた。
橋本を突き動かしていた原動力は、「弓道が好き」という真っ直ぐな思いだった。不完全燃焼で終わった高校時代から、主将として奮闘した大学4年生まで、橋本が積み上げた努力は計り知れない。「努力を続けることの大切さを学んだ7年間だった」。その言葉通り、暗闇の中でも折れずに芯を曲げず努力を続けたからこそ、「様々な感情や結果、景色と出会うことができた」のだろう。卒業後は、「趣味として弓道と関わっていきたい」と語った。「弓道が好き」という思いは、変わらず橋本の心に根を生やし続ける。弓道を通して得た「努力を継続させる力」は、これからも橋本を成長させ更なる飛躍へと導くに違いない。橋本が築き上げたチームへの想いは、後輩へと引き継がれていく。
(記事・写真 上杉美結、編集 河野紗矢)