【連載】『令和6年度卒業記念特集』第25回 向中野蓮/体操

卒業記念特集記事2025

「続けてみたらなんだかんだ楽しい部分もある」日々積み重ねの競技人生

 得意のあん馬をはじめ、早大体操部を引っ張ってきた主将・向中野蓮(スポ4=千葉・市船橋)。だが振り返ると、「決して楽しい瞬間ばかりではなかった」と口にする。大学生活4年間のみならず、彼の競技人生に迫った。

 向中野が体操を始めたのは6歳のころ。自ら興味を持ち、近所の体操教室に連れていってもらったという。その後、教室の「選手コース」に昇格。体操競技への道を歩み始めた。中学までは地元のクラブ、高校では部活で競技に打ち込み、勉学にも力を入れたいと早大進学を決意した。大学でのデビュー戦は、4月の全日本体操種目別選手権。大学生になって最初の大会でも、「練習通りやれば自分の演技ができる」と自信を持って臨んだ。しかし、その練習を続けるのは簡単なことではない。

 体操の技を行うには、体力や筋力などの基礎固めが不可欠だ。そのような泥臭いトレーニングの過程が「面白くない」という。技を習得してからも、それを安定させたり演技に組み込んだりするのは難しい。多くの技がある中で、特定の技が急にできなくなることも多い。常に「この技の調子悪いな」と感じており、体操競技を辞めたいと思ったこともあった。それでも「続けてみたらなんだかんだ楽しい部分もある」と考え、16年間、日々努力を続けてきた。

 最終学年となった今年度は、「今までの3年間とは異なる気持ちで過ごした」と口にする。試合の結果は、「自分が主将であった代のもの」として残る。チームを背負って勝たせようと部員のモチベーションを高く保つため、月に1度部内の演技会を開き、後輩へアドバイスを行った。そんな向中野最後の大会は、全日本学生体操競技選手権(全日本インカレ)。完璧な出来ではなかったが、やり切った気持ちで競技人生を終えた。

 卒業後は体操競技から離れるが、今までどおり日々コツコツと積み重ね続ける。体操をできていたことへの重みや、周りの人への感謝は忘れずに。「今後は、自分も支える側に少しでもなれたら」と新しい道を歩み始める。

(記事 中澤なつき、写真 早大体操部提供)