「今この時を大切に」歩んだ4年間
女子主将として今年の漕艇部をけん引した猪野日向子(スポ4=岐阜・加茂)。部内の活動だけでなくU23日本代表としても競技に向き合い続けた。「早稲田を選んでよかった」と話した猪野の4年間を振り返る。
全日本選手権で女子ダブルスカル3位に入賞(写真右)
漕艇との出会いは中学3年生の冬。猪野はもともとバレーボール部に所属していたが、陸上大会に出場した際、その走りを見た担任の先生に勧められたことがきっかけだった。その後、トライアルタレント育成の選考を経て、高校1年生から本格的に競技に取り組むようになった。早大への進学を決めたのは、高校の先輩への憧れがあったからだ。直接の関わりはなかったが、その先輩が早大から世界選手権に出場している姿を見て、「私もそうなりたい」と思ったという。また、体育の教員免許を取得できる学部があったことも、進学の決め手となった。入部前の漕艇部のイメージについては、「すごく強くて憧れの存在だった」と振り返る。猪野が高校生の時、早大は全日本大学選手権(インカレ)で女子総合優勝を何度も果たしており、その実力に圧倒されながらも期待に胸を膨らませていた。
早慶レガッタでは女子34連覇を達成(写真前から2番目)
1年時にはインカレのダブルスカルで準優勝。2年時には全日本選手権(全日本)で準優勝し、インカレでは前年と同じペアでリベンジを果たし優勝した。順調に結果を残していた猪野だったが、1年・2年時のU23日本代表選考合宿ではあと一歩のところで代表入りを逃していた。しかし、3年時の代表選考でついに日本代表に選出され、4年時には代表として海外遠征も経験した。
代表活動をこなしながら、女子主将として部員をまとめる役割も担った。主将として大切にしたのは「一人ひとりの変化に気づくこと、そして気持ちに寄り添うこと」。後輩からの相談には親身に応じ、「一緒に頑張ろう」と前を向かせることができたことを、主将としてのやりがいとして挙げた。4年時の早慶レガッタでは、前年まで代表選考との兼ね合いで参加できなかったため自身は初出場であり、、エイトのクルーもほとんどが初出場。勝てば34連覇というプレッシャーもあったが、OBOGや部員の支えによって伝統をつなぐことができ、「本当に感謝の気持ちでいっぱいだった」と語る。全日本、インカレでは加藤真奈(スポ3=静岡・浜松西)と組みダブルスカルに出場。代表活動や他種目との兼ね合いで十分な練習時間が確保できなかったが、それでも全日本では3位、インカレでは優勝と有終の美を飾った。
全日本大学選手権では全日本選手権と同じぺアで優勝(写真左)
社会人になっても漕艇を続けるという猪野。次の目標は2028年のロサンゼルスオリンピックで日本代表として出場することだ。実は大学3年の3月までは大学で競技を引退するつもりだったという。しかし、代表合宿を通じて「自分の可能性を止めたくない」と感じ、社会人でも競技を続けることを決意した。「今この時を大切に」——それは猪野が中学生の頃から大事にしてきた言葉。その言葉通り、今この瞬間を後悔しないために努力を続けた猪野は、かつて憧れた先輩のように、今度は自身が後輩の道しるべとなるだろう。
(記事、小島大典 写真、小島大典 近藤翔太 権藤彩乃)