【特集】パリ五輪前対談 競泳・松本信歩

水泳特集

 いよいよ開幕するパリオリンピック2024。夏季8年ぶりとなる有観客での開催に、選手はもちろん世界中が熱狂すること間違いない。早大水泳部・松本信歩(スポ4=東京・東学大付)が悲願の五輪初出場を決めた国際大会代表選手選考会から4ヶ月。今回は、代表選考会での心境や自身が思う成長、そして直前に控えたパリ五輪への覚悟を語ってもらった。

※この取材は、6月20日にオンラインで行われたものです。

「楽しみもあるし、でもちゃんと結果も出さないとという気持ち


取材に応じる松本

――現在の心境は
 やはりオリンピックという舞台なので、ちゃんと自分が結果を出すということがまず第一に大切になってくると思います。そこはちゃんと自分の決めた目標が達成できるように練習して、本番に臨みたいと思っています。

――五輪出場が決まり、周りの方々の反応はいかがでしたか
 すごく多くの人が喜んでくれて、幼稚園の頃の先生とかから連絡をもらったり、中学校、高校も卒業生の方とかも含めて多くの方が喜んでくれたりして、それがすごくうれしかったです。

――環境が異なる海外での試合、不安などはありますか
 この前ヨーロッパの試合に出てきて、海外というあまり慣れない環境で過ごすこととか、海外の選手とレースするとかということは、ちょっと慣れてこれてはいると思います。オリンピックということもあり、ちゃんとした環境で臨めると思うので、あまりそこには不安はないです。逆に、世界各国のトップの選手が集まるオリンピックという大会に出ることができるので、選手たちと交流ができたらいいなと思っていて、それがすごく楽しみです。楽しみもあるし、でもちゃんと結果も出さないとという気持ちもありつつっていう感じです。

――これまでも世界大会には出場されてきましたが、やはり五輪は特別でしょうか
 今まで出場した大会は、ジュニアの世界大会と大学生の世界大会でした。シニアで日本代表として出る試合は初めてなので、すごく大舞台で多分緊張するだろうなって思っています。

――五輪を意識し出したのはいつ頃からでしょうか
 本当にオリンピックを目指して練習しようと思ったのは、ここ2年ぐらいで国内のランキングとかでも狙える位置に来たっていうのと、派遣標準のタイムに近いところでだんだん泳げるようになってきてたので、それで徐々に自分が狙えるかなって思ってきました。あとは、一緒にクラブで練習してる人たちがやはり同じようにオリンピックを目指してる選手が多かったので、そこはすごく刺激を受けながら、自分も本当にオリンピック狙うんだという意識が変わったかなとは思います。

――早大生活の中でも刺激を受けることはありましたか
 他競技の選手とも交流ができるので、早稲田大学の授業を一緒に受けた人の中に他競技だけどオリンピックを目指してる選手とかもいて、そういうのはすごく刺激を受けてきたと思います。

――五輪出場が内定した国際大会代表選手選考会について伺います。代表選考会が始まる前の心境はいかがでしたか
 ずっとオリンピックっていうことを目標に練習を頑張ってきていました。やれることは全部やってきて、あとはやってきたこと出すだけだっていう感じだったのですが、やはり試合が近づくにつれ、不安やオリンピックに行けなかったらどうしようという想像を少ししてしまうこともありました。

――自身のコンディションは
 調子は年明けからずっと上がっていて試合のタイムもちゃんと出せてきていたので、その流れからの選考会も良いスタート、200メートル個人メドレーに向けての良いスタートはできたかなとは思っています。

「あの時1回呼吸しなければ」

国際大会代表選考会での松本

―― 0.01秒差で3位となった100メートルバタフライを振り返っていかがですか
 やはり0.01秒の差だったので、そこはすごく悔しかったです。本当に200メートル個人メドレーでいけるという保証はないので本当にこの0.01秒でオリンピック逃したかもしれないとか、あの時1回呼吸しなければよかったとか、そういうことを色々考えていました。ただ、ずっと200メートル個人メドレーで代表に入るということだけを目標にやってきていたので、なんとか切り替えて200メートル個人メドレーに臨もうという気持ちでやっていました。でも、ずっと自分がいけないかもしれないってのはずっと思っていましたし、いけると思って気を抜いたら絶対駄目だと思っていたので、いけないかもしれないからとにかく全力を出すという意識でレースに臨んでいました。

――昨年の日本選手権で負けた大橋悠依(イトマン東進)選手、成田実生(金町SC)選手との対決でした
 やはりこの2人がいたから、自分もその3人の中で2番以内に入らないとオリンピックにいけないと思っていました。もっと自分がちゃんとタイム出さないとということは、2人の記録を見て思いましたし、そこはすごく影響や刺激を受けました。やはりそこの2人がいたからこそ、派遣標準よりも高いタイムでオリンピック代表権争いができたのかなと思います。

――泳ぎやレースでの自身が思う成長は
 今までは結構前半突っ込んでみたりとか、そういうレースをしたりしていました。今回はやはり最後、200メートルを泳ぎ切った時に勝つということを考えたレースをすることができだと思っています。特に今までは、自由形で最後に抜かれてしまうことが多かったので、そこをちゃんと最後まで粘って泳げたことが良かったかなと思います。

「自分もここで満足してはいけないと思わせてくれる」

パリ五輪内定直後、笑顔を見せる松本

――パリ五輪に向けて強化していることは
 全体的にタイムを上げるということは必要なので、そこのベースアップをまずやって、あとは泳ぎの細かい技術的なところも少しずつ直しながらという感じです。特に今は背泳ぎを重点的に、泳ぎのバランスや左右差が出ないように意識しながら練習をしています。

――合宿などで代表選手から刺激は
 どの選手も代表選考会がゴールではなくて、オリンピックを見据えて練習・強化している部分は、自分もここで満足してはいけないと思わせてくれています。皆さんがレースの向かい方やアップの仕方などそれぞれ違う自分のやり方を持ってるので、そこはすごく勉強になるなと思っています。

――パリ五輪について伺います。自身のレースプランを教えてください
 自分の200メートル個人メドレーの強みはやはり、バタフライにあると思っています。バタフライで大きな泳ぎで楽に他の選手より前に出て、そこからできるだけ追いつかれないように最後まで泳ぎたいと思っています。

――目標を一言でお願いします
 難しいですね。(笑)「挑戦」とかですかね。パリオリンピックとその先も含めて、今の自分がどれぐらいの力なのかということを海外の選手の中で泳いで試してみたいなというのはあります。

――家族や仲間へ伝えたいことは
 やはり家族は練習の送り迎えなど、今までの小さい頃からの支えがあってこそ、ここのオリンピックを決めるところまで来れたと思っています。そこはすごく感謝していますし、良い結果を持って帰りたいと思います。

――最後にパリ五輪へ向けて意気込みをお願いします
 オリンピックの目標は、準決勝で自己ベストを更新して決勝に進出することです。それを達成できるようにとにかく練習をまずは頑張って、試合でしっかりと結果を出せるようにしたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大村谷芳)

◆松本信歩(まつもと・しほ)
2002(平成14)年4月3日生まれ。167センチ。東京・東学大付高出身。文武両道を体現し、取材時に行われていた合宿にも勉強道具を持参していたそうです!