81年ぶりに早稲田大学相撲部から角界入りした川副楓馬(スポ4=熊本・文徳)。三年次から相撲部主将を務め団体Aクラス入りに貢献した。小学生で全日本大会優勝。高校では総体団体優勝メンバー、個人総体ベスト8と華々しい経歴を持つ。押し相撲を得意とし大学でも白星を積み上げてきた。心技体そろった川副の早稲田での活躍を振り返る。

総体団体優勝時の写真(右から三人目)※本人提供
「早大相撲部は人として一番成長できる場所」。輝かしい経歴を持ち、鳴り物入りで相撲部に入部した川副は早大相撲部に入部した理由を次のように語る。「様々な競技のトップアスリートがそろう早大なら、競技への向き合い方や考え方を競技を超えて学ぶことができる」。他競技の部員から練習への向き合い方、試合当日の心構えを学び、自らの相撲観を広げた。川副は「対話」を重視し、多くの人と話し、様々な考えに触れることで、多角的な視点を養った。2月の安治川部屋への入門会見でも、安治川親方(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了)から「いろいろな角度から物事を考える力」を高く評価されている。

入門会見に臨む川副
三年で主将に任命された際、胸にあったのは「驚き」と「不安」であった。そんな川副をそばで支えたのは一学年上の大村(令7社学卒=静岡・飛龍)である。「稽古場で大村さんは誰よりも声を出して、チームを盛り上げてくれた」。わからないことのほうが多い中、一緒に稽古メニューを考え、時には川副自身が大村から雰囲気づくりを学びながら、共に相撲部を引っ張った。四年で主将を継続した際は「迷いはなくなり、主将という役割に集中できた」と語る。人数が多くない相撲部だからこそ、学年に関係なく本音を言い合い、競い合える環境を目指した。ここでも川副の「対話」を大切にする姿勢が表れている。

相撲を始めた小学生の頃の写真(左 川副の父竜次さん、右 川副)※本人提供
同期の鈴木大介(法4=埼玉・早大本庄)は1年の頃から川副の考えを理解し、川副が主将に就任した際も献身的に支えた。岸本恵果(人4=鹿児島中央)もマネージャーとして、部の事務的な仕事をこなしながら主将をサポートする。後輩部員らも川副に大きな刺激を与え、土俵上では一力士として互いに高め合った。サポーターズクラブの応援も川副に大きな力を与え、「応援していただけるありがたさ、大切さを痛切に感じた。」と周囲の助けに感謝を示した。
「相撲ができなくなるかもしれない経験、そして大会で大きな声援をいただいた経験。その両方が、感謝の気持ちの大切さを教えてくれた」。早大相撲部としての最後の大会(第103回全国相撲選手権大会)に川副は怪我のため出場できなかった。「非常に悔しかったが、主将として今できることは何かを考え、仲間が全力を出せる雰囲気を作った」。怪我と隣り合わせの相撲。受け入れるしかないとわかっていても悔しさは拭えなかった。そんな川副に家族を始め、友人、チームメイト、指導者が声をかけ続けた。「今は力士として活躍し、支えてくださった方々に恩返しができる存在になりたい」。川副は固く決意した。

相撲部と写真撮影に臨む川副(中央)
新弟子検査に合格し、先日プロ初勝利を挙げた川副。現在は安治川部屋で、プロとしての心構えと周囲への感謝を胸に新人として稽古、仕事に励む。現時点での目標は「関取昇進」。「愛されるチーム」を目指し謙虚に練習を重ねてきた川副。最後に、後輩へ期待することを聞くとこう語った。「後輩たちには、自分自身の相撲を磨き、のびのびと好きな相撲を取ってほしい。そして、私たちが果たせなかった団体Aクラスでの全国ベスト4をぜひ達成してほしい。これからも感謝の気持ちを忘れず、応援され続けるチームであってほしい」。早稲田大学相撲部史上二人目の関取昇進へ向けて日々稽古を積む川副の活躍から、今後も目が離せない。
記事、インタビュー 鳥越隼人/写真 池田健晟