第16回には今季のア式蹴球部(ア式)で主将を務めるMF平松柚佑(社4=山梨学院)が登場。主将となった今季、平松が目指す理想のチームの姿や、最後の早慶戦にかける思いなどを伺いました!
※この取材は6月7日に行われたものです。
チームが勝てればそれが本当に自分の幸せ
質問に答える平松
――今季のここまでのプレーを振り返っていかがですか
平松 (本職ではない)センターバックしかやってないんで、普通ですね。
――開幕戦の時にも伺いましたが、センターバックをやったことで視点が変わったりはしましたか
平松 そうですね。センバ(センターバック)の気持ちだったりっていうのは、ようになったと思います。センバが頑張ってくれてるんで、そういう人たちのために頑張って守備しようかなっていうふうに思ってます。
――経験という意味では、いい経験が詰めたなというのはありますか
平松 そうですね。かなりいい経験をさせてもらいました。
――最終ラインから見ていて、今季のチームはどのように映っていますか
平松 やっぱりシンプルに切り替えだったりというのは、まだ遅いなっていうふうに、後ろから見ていて思いました。そういうところで落ち込んだ試合展開が今シーズンは多いですけど。本当に一瞬のそういう切り替えが遅いとかで、1発のカウンターでやられてしまうし、実際に負けています。山梨学院戦は実際にそこでやられているので。それと、スピードだったりっていうのは、プレシーズンからずっと兵藤さん(兵藤慎剛監督、平20スポ卒=長崎・国見)が言ってますけど、まだまだ足りないなっていうのは見てて感じます。
――今季のここまでの一番の課題はどこですか
平松 試合の入りっていうところはチームの課題でもありますけど、やっぱり自分がもっと締めなきゃいけないと思います。
――センターバックでの起用は、選手がいないからいきなりやってくれみたいな感じだったのですか
平松 そうですね。天皇杯予選の法政の時にベンチに入っていて、一応ゲバ(紅白戦)とかでセンバもやりながら、ボランチもやりながらみたいな感じの中、ラスト30分ぐらいボランチで出るんじゃないかみたいにカズ(福井寿俊、文構4=東京・国学院久我山)だったり、兵藤さんと話してたんですけど、颯辰(中谷颯辰、基理4=静岡学園)がケガをしてベンチにセンバがいなかったので、必然的にそうなりました。
――急遽というかたちだったのですね。最初はやはり戸惑いが大きかったですか
平松 はい、センバは初めてだったので、声出して他の人を動かして、なるべく自分は何もやらないようにって考えています(笑)。
――声のところは平松選手の持ち味でもあると思いますが、センターバックとしてそこは生かせていたなという感覚はありましたか
平松 そうですね。声が出しやすいポジションではあるので、声はより出しやすかったです。
――センターバックでは本職ではない中で、さまざまな方とコンビを組まれていたと思いますが、どのように役割分担をされていましたか
平松 押し込まれる展開というのはそもそもそんなになかったので、1発のカウンター気を付けようねという話をしながら、基本的にボールを持つことが多かったなと思います。
――本職ではないセンターバックで起用されていたことには、監督としての起用意図みたいなのはあったと思いますが、自分の中ではどのように解釈されていましたか
平松 チームを締める役割というところかなと考えていました。後ろから声は出せるので、そこは絶やさず、90分間声を出しながら、引き締めながらというのを意識していました。
――本職であるボランチは競争が激しいポジションだとは思いますが、そこの競争についてはいかがですか
平松 自分はどちらかというとチーム主義というか、(試合に)自分が出ていなくても、チームが勝てれば第一にそれが本当に自分の幸せというか、一番ではありますけど、やっぱり出れるんだったら出たいですし、チャンスのある立ち位置にいさせていただいます。それにやっぱり同期と出たいっていうのもあるので、 カズとボランチを組んでとか、植村(洋斗副将、スポ4=神奈川・日大藤沢)、小倉(陽太、スポ4=横浜FCユース)だったり、みんな一緒に出れればいいなって思いますけど。最後は楽しんでサッカーをやろうかなと思います。
勝った時にそのカテゴリーの選手だけが喜んでるのは嫌だ
味方の得点を喜ぶ平松
――今季は主将にも就任されましたが、主将としてのご自身はどのように分析されますか
平松 主将になったからと言って別にやることは変わんないです。今までも声を出してチーム引っ張ろうとしてましたし、ただより一層、最高学年というところになって、チームのことも気にする立場になってましたけど、別にそんなに苦痛だったりっていうのは感じてないので、引き続き問題があったらその時にみんなで話して解決すればいいし、切ることなくやっていこうかなと思ってます。
――主将として重圧はありますか
平松 (1部に)上がんなきゃいけないだったりというのはもちろんありますね、正直、来年の100周年そこに向けて、本当に歴史のある部なので100周年という節目の年に、1部にいなければならないっていうのはすごい感じます。ここから本当に強い早稲田を取り戻すためには、今年の99年目が大事だっていうのも自分自身分かってますし、そういうところでプレッシャーはもちろんありますけど、あんまりそれを考えすぎずにやっていきたいです。
――新人監督の奥田陽琉選手(スポ4=柏レイソルU18)や大橋優貴選手(スポ4=東京・早実)といった、4年生にはチームのことを見れる選手が多いと思いますが、そこで助け合ったりはしますか
平松 そうですね。ずっと陽琉が学年リーダー、大橋が寮外リーダーとしてやってくれてたので、そこはもう信頼してますし。山田(怜於主務、社4=神奈川・鎌倉)だったり、 植村だったり、カズだったりも、本当にこの間の試合を自分はベンチで見てて、試合中声を出してっていうのがあって、すごく同期も変わってきて成長してるなっていうのは感じるので、頼りにしてます。
――今年は4年生全体でチームをつくっていこうという雰囲気を感じますが、そこは大事にされてるとこですか
平松 仲が良いので、必然的にみんなで進んでいこうよとなる、今年の色なのかなって思います。それが正しいかどうかは分からないですけど、そういう色の学年なのかなと思っています。
――先週、関東リーグの試合前に行われたⅠリーグの試合も、スタンドから平松選手や奥田選手といった4年生が積極的に声を出しているなという印象を受けましたが、そうしたチームづくりは心がけていますか
平松 やっぱりIリーグだったり、FCの選手だったりというのは、自分たちの試合が終わってから、関東(リーグ)の応援をしてくれてますし。どうしても 関東優先というか、応援に関しては関東は強制っていうんですかね。FCやIは見てもいいよ、応援してもいいよっていう感じなので。どうしても応援の人数少なくなってしまうというのは、本当に申し訳ないし、(応援してくれて)ありがたいっていうのは、ずっと思っています。もちろん、関東の試合の前なので、そこにコンディション合わせるっていうのが一番大事です。それでも自分だったりは、やれることがあるならやりたいと思うし、自分たちの応援を通して試合に勝てるなら、協力したい、応援したいっていう思いは持ってるので。楽しみながらやってますけど、日頃のありがとうっていう気持ちを込めて応援しています。
――今の話にも共通してくると思いますが、改めて平松選手中心に今年はどのようなチームづくりを目指していますか
平松 チームづくりで心がけてること。やっぱりはみ出さないようにというか。もちろん、ア式は多様性を重んじているというか、受け入れてる部活なんですけど、じゃあ今年のビジョンとして、「日本をリードする」。ミッションとして、「活力を届ける。昨日以上の今日。今日以上の明日」っていうところを掲げています。加えて目標としては、日本一、リーグ制覇、一部昇格っていうのを掲げている中で、 そこは絶対ブレちゃいけない部分ですし。そこの目標だったり、ミッション、ビジョンに対してはみ出しているのであれば、そこはしっかりアプローチしなきゃいけないと思います。でもやっぱり、個人個人の考え方があって、それを表現するっていうことは何も悪くないことだなとも思うので、うまくその多様性っていうのも受け入れて、ただこれは違うよねっていうところは話してっていうことは意識してやってます。
――チーム全体の雰囲気はどのように感じていますか
平松 基本的に明るくみんながやってるんじゃないかなとは思います。やっぱりサッカーは楽しいもんだし、もちろん結果も大事ですけど、 正直、楽しいサッカーがみんなしたいと思います。練習やピッチ外でも、本当に明るくみんなが今のところやってくれてると思うので。ただ、そういうのはなんていうんですかね。楽しいには2種類あると思います。ふざけて楽しいのか、本気でやって楽しいのかっていうのは、 同じ楽しいですけど、本当にそれはもう、天と地の差というか、部活が結果を求めている限りどっちが正しいのかっていうのは、みんなに聞けば100人が同じ回答すると思うので、そこだけはぶらさず、楽しい中でも厳しさを求めながら、みんな今のところはやってくれてるかなと思います。
――ア式が掲げるビジョンに対して、今おっしゃられたように一体となってやれているという感覚はありますか
平松 100パーセントやれてるのかって言われたら、課題だったりというのはありますけど、それも含めて組織ですし、そういう人を切り離すっていうことはできない。しないでできるのであれば、そういう人も含めて進んでいきたい気持ちは強いですね。なので、その人の考えを折らずに、うまく融合させていければと思っています。
――一つになり切れてないという印象はありますか
平松 そうですね。100人もいる組織だから自分たちが抱えてるビジョン、ミッションに賛同できない人ももちろんいるし、 自分たちの練習のつくり方や雰囲気は、もちろん不安でて当たり前だと思うんですけど、 強制しようと思えば、監督とかに言ってもらって、もうこうだからこうやれよっていうふうにはできるとは思いますけど、それじゃ面白くないよねと思うので、(違う考えの)人がいるのもいいことなのかなって捉えて、もしかしたらそういう人は組織を逆に良くするかもしれないし、新しい風を吹き込んでくれるのかなと思ってるので、基本的にならせるっていう感じでやってます。
――個性というか一人一人は尊重しつつという感じですか
平松 そうですね。もちろん度を超えたら、おかしいものはおかしいっていうふうにちゃんと言うべきだと思いますし、ある程度は強要するというか、善悪の判断はみんな冷静に考えればできると思います。特殊なこともちょっとはみ出ちゃってるよね今、というのも全然いいと思うんですけど、社会に出た時にその行動、言動って本当に大丈夫なのというのを問われた時に、みんなある程度大学生にもなって分かると思うので、もちろん暴力はダメですし、人を馬鹿にするような発言とかは良くない。ただ、本当に自分の芯の通ってるサッカーへの向き合い方だったり、人生においての考え方っていうのはみんな持ってると思いますし、 それを否定する権利は自分たちはなないと思うので、その中でも日本をリードするっていう自分たちが考えているビジョン、ミッション、目標に対して進んでいければベストかなと思います。
――先ほどもありましたが、今年はチーム全体で声を出す選手が多くなっているという印象があります。そこについては平松選手はどうお考えですか
平松 声を出さない、出すっていうのはもちろん個人の自由ですけど、出すに越したことはないです。出して悪いことはないので、例えば「相手来てるよ」でも、その一言だけでもいいですし、ピッチの中でのコミュニケーション、声っていうのが増えてるのはすごいいいことだなと思います。
――理想の主将像みたいなものはありますか
平松 正直、嫌われてもいいと思っています。もちろん嫌われていいと思ってサッカーやってるし、そう思って強く言う時は言ってます。ただ、僕が試合に出れなくても、チームが勝てるような、そして最後に全員が勝てて良かったと思えるチームづくり。そういう主将にはなりたいと思います。やっぱり勝った時に、そのカテゴリーの選手だけが喜んでるのは嫌なんですよ。例えば、俺がAチームで出てて、Bチームの選手に対して傲慢な態度をとって嫌われてて。で、試合に勝ったら、なんであいつらが出てんだよっていうふうなチームにはしたくなくて。もちろんトップチーム以外にも、FCだったらFCの勝利を部員全員で喜びたいし、Iリーグの勝利も全員で喜びたいし、それが自分の思う理想のチームなので、そういうふうなチームをつくれるようになりたいなと思います。
――平松選手自身が悩むことはありますか
平松 あります。もちろん。本当に今年になって多くなりました。でも(そういう時に)話せる人がいるんで、サウナ行って話したり。そういうとこで発散しながら。
――誰に話したりするのですか
平松 話す時は大体サウナに行くので、フジモン(藤本隼斗、スポ4=柏レイソルU18)、リータ(森璃太、スポ4=川崎フロンターレU18)。平野右京(人4=兵庫・滝川)。 普通にその辺には 今こうなんだよねみたいな感じのことを話したりします。リータとかフジとかは良いこと言ってくれます。右京とかは何言ってるか分かんないです(笑)。これちゃんと書いといてください。
――今後のチームづくりをしていく上で、もっとこうしていきたいって感じてるとこはどこですか
平松 もっと下級生から発信してもいいのかなっていうのはすごい感じてます。やっぱりずっと外池さん(外池大亮前監督、平9社卒=東京・早実)の下でサッカーをしてきて、大学サッカーは4年が大事だというふうに言ってもらっていて、今実際にそれを感じてますけど、ピッチ入っちゃったら本当に学年は関係ないですし、全員がチームを引っ張れればそれはまたすごくいいチームになると思います。なので、4年もまだまだ働いてないですけど、3年生、2年生、そして1年生。最近、鈴木(大翔、スポ1=ガンバ大阪ユース)は試合に出始めましたけど、もっと自分の顔を出してチームを引っ張るぐらいやってもいいんじゃないかなとは思っています。
――もっと下からの声がほしいなという感じですか
平松 そうですね。まあそれが今後のア式を良くすると思いますし、彼らが上級生、4年生になった時にやりやすくなるというか、大事になるところだとは思うので、今のうちからやってってほしいなと思います。
自分にとって早慶戦はいつだってリベンジ(の舞台)
Ⅰリーグの試合の得点後に喜ぶ平松
――昨年の早慶戦ではMVPを獲得するなど大活躍でしたが、振り返ってみていかがでしたか
平松 特になんもしてないですけど(笑)。まあ緊張しましたね。本当に特別な舞台ってすごく思っているし、 負けられないので緊張しましたけど、勝ててよかったなって思います。
――去年が初出場でしたよね
平松 そうですね。2年の頃はずっとベンチだったので。もう90分間ベンチで。去年初めてで、緊張したとこもあったけど。なんとかやりました。
――早慶戦に限らず、会場の西が丘は平松選手と相性がいいのかなと思いますが
平松 そうですね。西が丘はいいですね。デビュー戦が西が丘だし、初ゴール西が丘だし。サッカー人生ラスト西が丘になるかもしれないので。まあでもチームが勝てればそれでいいです。
――そこはブラさずという感じですね。改めて、ご自身にとって早慶戦ってどういう舞台ですか
平松 自分にとってはいつだってリベンジですね。やっぱり2年の頃にベンチに入って、90分間ベンチで見て、その時に最後負けた時の 玄記君(西川玄記、令4スポ卒)だったり。悠君(田部井悠、令4スポ卒=現ザスパクサツ群馬)だったりの顔が本当に今でも忘れられないです。あのなんとも言えない表情が、ずっと今の自分の頭にも焼き付いてるというか。
なので、そういう人たちの分も。別にそれで勝って、その人たちの悔しさが報われるわけじゃないですけど。自分的にはそういう早慶戦にかけてた強い思いを持ってた人たちの分も、 リベンジしにいきたいと思います。
――早慶戦勝利のために鍵となることは何ですか
平松 勝ちたいっていう思いを全員が出そうとすること。本当にやる人、運営する人、してくれる人関係なく、全員が慶応に勝ちたいんだっていう思いを表現できれば負けることはないと思います。
――最後の早慶戦となりますが、どのようなプレーをしたいですか。普段と変わらずという感じですか
平松 そうですね。いつもと変わらずチームのために走って戦ってっていう感じです。
――今年もMVP獲得とゴールを狙いますか
平松 そこは大丈夫です(笑)。チームが勝てれば。
――自分の代で勝ちたいという思いはやはり強いですか
平松 そうですね。やっぱり後輩にも悔しい思いはさせたくない。本当にOBの人も慶応にはっていうのはみんなが思ってることなので。OB・OG 全ての人の思いも背負って、全員で慶応に勝ちたいなと思います。
――では最後に意気込みをお願いします
平松 全部勝ちます!
――ありがとうございました!
(取材、編集 髙田凜太郎 写真 荒井結月)
早慶クラシコに向けての思いを書いていただきました!
◆平松柚佑(ひらまつ・ゆう)
2001(平13)年9月16日生まれ。173㌢、73㌔。山梨学院高出身。社会科学部4年。ピッチ上ではチームのために走り、戦い続ける姿が印象的な平松選手。早慶戦でも、自身の「気持ち」が表れたプレーに注目してほしいそうです!