7月7日に行われる早慶クラシコ2023に向けて、今季のア式蹴球部女子(ア女)の重鎮たちにインタビューを実施。第15回は今シーズン主将を務める後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)に、ここまでのシーズン振り返りから早慶戦への思いまで、たっぷりとお話を伺いました!
※この取材は6月14日に行われたものです。
押し上げがあれば関カレのメンバーもうかうかしていられない(後藤)
質問に答える後藤
――2023シーズン、ここまでを振り返っていかがですか
後藤 リーグ戦が始まる前の2月に今季のチームを立ち上げた当初は、昨季から多くのFWが抜けた中でも、なでしこリーグのチームとの練習試合でも勝利するなど良いチームづくりができていました。ただ七彩(生田七彩、スポ2=岡山・作陽)が長期離脱してしまいどのように攻撃していくか、というところで関東リーグ(関東女子サッカーリーグ)の初戦、南葛SC戦で0-0という結果になって。さらにその次の週関カレ(関東大学女子サッカーリーグ)が開幕して十文字大戦、また0-0。やっぱりどれだけ守れても得点できなければ勝てない、という部分をすごく痛感しましたし、チームの雰囲気も「やっぱり点が取れない」という感じで沈みがちでした。それでもシーズンは始まったばかりだし、始まったばかりで沈んでいてどうするんだ、というところで東京国際大戦に臨み、綺乃(笠原綺乃、スポ4=横須賀シーガルズJOY)が1点取って勝って、その次の神奈川大戦でも美月(浦部美月、スポ4=スフィーダ世田谷FCユース)と和華奈(三谷和華奈、スポ4=東京・十文字)が点を取って。やっぱり4年生が得点できるのって大きい、というところは同じ4年生として感じましたし、やっと得点できて無失点で勝利できて、心の重荷みたいなものも取れた感じでした。本当はその後も全勝でいきたかったですが、山梨学院大に負けてしまい、そんなに簡単じゃないとも感じさせられています。それでもチームとしては雰囲気も良い方向に持っていけていますし、結果としても難しい試合をしっかりと勝ち切ることができているというのは、今年のア女の強さなのかなと思いますね。
――昨シーズンからシステムや人選には変化が見られました。後藤選手に関しては今季から中盤を主戦場にされていますが、慣れてきた感覚はありますか
後藤 最初よりは慣れたと思うのですが、毎試合毎試合学びがあって、本当は中盤や攻撃の後輩たちにも声をかけたい中でもまだ、自分自身が模索しながらプレーしているという感じですね。ただ後ろに関しては歩実(夏目歩実、スポ4=宮城・聖和学園)や璃子(堀内璃子、スポ4=宮城・常盤木学園)、心菜(石田心菜、スポ3=大阪学芸)など上級生が体を張って守ってくれている中に、はる(杉山遥菜、スポ1=東京・十文字)という1年生が加わってしっかりと失点数も最小に抑えてくれていて不安はないですし、自分自身センターバック(CB)をやってきた中で、インサイドハーフやアンカーという新しいポジションにチャレンジさせてもらえるのはすごくありがたく思っています。1選手として一つのポジションしかできないと、今後やっていけないと思うので、今はきついけど楽しいという感じです。
――ご自身のキャリアを考えた際に、今のまま中盤でプレーする可能性を考えたりしますか
後藤 やっぱり自分にはCBだからこそ出せる強みもありますし、これまで見てきた中で自分よりうまい中盤の選手はたくさんいるということを考えても、自分はCBとして生きていきたいとは思います。とはいえいろいろなポジションができるに越したことはないですし、前の選手の気持ちを味わうことで後ろの選手としてどうプレーすればいいかということも分かってくると思うので、今は前で経験を積んで、最終的には後ろでプレーしたいと思います。
――中盤の選手層が今後厚くなるとも想定できると思います。そうなった際、最終ラインに戻ることはあるのでしょうか
後藤 その時のチーム状況にもよりますね。ただ今の最終ラインも強力ですし、自分が確実にそこに入れるかと言われればそうではないとも思います。与えられたポジションで自分の100パーセントを出し切るという部分は変わらないですし、シーズン終盤にチーム力が一層上がってきてポジション争いも激しくなっていかなければならない中で、チームとしても強力な選手が入ってくることはポジティブな要素ですし、そういった競争の中でチームが強くなっていけばいいなと思います。
――そういった面では関カレメンバーと関東リーグメンバーの間に、今以上に入れ替わりや競争があって良いと感じたりはしますか
後藤 自分たちは他の大学とは違って、関カレと関東リーグで完全に異なるチームをつくれません。練習も全員で一緒にやっていますし、「全員で」という言葉も大切にしています。自分が1年生の時はリーグが週末に両方あることがなかったので、出場メンバーに入るためにゲバ(紅白戦)がすごくバチバチだったんです。今はそういった環境ではないですが、もっと押し上げがあれば関カレのメンバーもうかうかしていられないというか。現状に満足していてはだめだ、と自分自身も感じることはあるんですけど、実際に痛感させられないと難しい部分であるのかなとは思います。関カレ、関東リーグという感じで分けるのも好きじゃないんですけど、関東リーグのメンバーにももっと伝えられることがあるとも感じています。
――6月13日に女子W杯のメンバーが発表されました。後藤選手と同じメニーナ出身の選手も多く選出されましたが、率直にどのように感じましたか
後藤 今回の発表では、自分がユース時代に一緒にプレーしたことのある選手も選出されて、それこそ千葉玲海菜選手(現ジェフユナイテッド市原・千葉レディース所属、元筑波大)なんかは大学に来てからもバチバチ対戦していた選手です。そういった選手たちがW杯の舞台に立つというのはうらやましい気持ちもありますし、逆に自分も狙うチャンスはゼロではないのかなというのも感じました。ただそこを目指すにはまだまだ壁はあると思うので、毎日の一つ一つの練習から手を抜かずにやっていくしかないのかなと。それと、率直にW杯がどうなるのかなと楽しみにしていますね。
準備してきてくれたことに対しては、勝利で感謝を伝えたい(後藤)
関カレ第8節、日体大戦で指示を出す後藤。自身の主将像について「プレーで示していきたい」と話すが、百戦錬磨のキャプテンの一声はやはりチームメイトを引き締める
――それでは早慶戦の話に移ります。1年生の時出場して以来の早慶戦になると思いますが、率直にどのような印象をもっていますか
後藤 早稲田に入る前から早慶戦が伝統の一戦であるということはもちろん知っていました。ただ自分たちが入学した年はコロナウイルスが流行して、インカレ(全日本大学女子選手権)が終わった後に引退試合のような感じで観客にも制限があって。2年生の時も慶応の下田グラウンドで、伝統を紡ぐという観点ではやることが大切だったのは分かるのですが、そこまで大きな規模ではなかったので思い描いていたものとは差がありました。昨年はようやくある程度お客さんが入った中でも、やっぱり男女同日開催ではなかったので、今年はようやくそれができるという意味でも、最高学年となる今年にそういった舞台を整えてもらったというのにはすごくありがたく思っています。自分自身2、3年時ケガで出場できず運営に関わっていたことで、運営してくれる方がいるからこそ試合ができるということを十分に理解できましたし、だからこそやっぱりあのピッチでプレーしたいというのは強く感じていたので、今は7月7日がすごく楽しみです。
――今季のア女は「誇闘」(こどう)というスローガンのもと、「早稲田の誇りをもって闘う」ということをアピールされていますが、早慶戦の舞台ではやはりそこは強く意識する部分ですか
後藤 伝統のある一戦ですし、いろいろな方がおっしゃっていますが、結果以上の何かが求められる試合だと思います。慶應が(関カレ)2部だから、早稲田が1部だからということ関係なく、やっぱり慶応は早稲田を倒すという強い気持ちでくると思うので、相手をリスペクトしたうえで、早稲田の誇りをもって最後まで闘いたいと思います。
――後藤選手の注目選手、スタッフを教えてください
後藤 得点を決める選手が注目されがちですが、自分はやはりディフェンスの選手ですし、普段は目立たないディフェンスの選手に注目してほしいです。また朋香(菊池朋香マネジャー、政経4=東京・早実)は主務としてずっと支えてきてくれて、今回の早慶戦委員会にも入っていろいろとやってくれていると思います。裏で支えてくれる人がいるから今年も早慶戦という舞台ができていると思いますし、ピッチではなかなかフォーカスされないので。準備してきてくれたことに対しては、勝利で感謝を伝えたいです。
――男女共催になったことに対してはどのように感じますか
後藤 自分が2年生の頃から男子が西が丘でやっている試合を見させてもらっていて、やっぱり男子の盛り上がりはすごかったですし、女子の試合の開始が15時30分なのでどれくらいの方が来てくれるのか読めないですが、応援団の方たちも来てくれるということでそこはすごく楽しみにしています。これまで男女部の関わり合いがそこまで多くなかった中で、早慶戦の舞台で一緒に戦うことで同じア式蹴球部の仲間として絆を深めて、早慶戦に限らずア式蹴球部が日本一を目指していく中で、一緒に頑張っていけたらなと思います。
――最後に、早慶戦への意気込みを聞かせてください
後藤 やっぱり注目されていても、伝統の一戦であっても、どんな試合でも勝ちを目指すというところは変わらないと思いますし、相手をリスペクトして最後まで全力で戦うという部分は全員でやっていきたいと思います。あとは先ほども言ったように、早慶戦を開催するにあたってたくさんの人の尽力があったと思うので、そういった方たちへの感謝の気持ちを勝利で届けたいです。今季のア女のスローガンである「誇闘」、早稲田の誇りをもって全力で闘うという部分は前面に出していきながら、早稲田に来てやっと、初めての早慶戦と言っても良いくらいなので、とにかく全力で楽しみたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材、編集、写真 大幡拓登、星野有哉)
早慶戦への意気込みを書いていただきました!
◆ 後藤若葉主将(スポ4=日テレ・メニーナ)
2001(平13)年6月4日生まれ。162センチ。日テレ・メニーナ出身。スポーツ科学部4年。本職はセンターバックながら、今季は中盤でも活躍をみせる。フィジカル、技術共に能力は高く、サッカーセンスも抜群。ア女の精神的支柱として、チームをまとめあげている。