第3回には、今季のア式蹴球部(ア式)でボランチを担う福井寿俊(文構4=東京・国学院久我山)が登場。最終学年となった今季、ようやくAチームの主力の座をつかんだ福井が、今考えていることとは。早慶クラシコ前にさまざまなことを伺った。
※この取材は6月7日に行われたものです。
自分自身はあんまり納得いってない
中盤でパスを回す福井
―――今季のここまでを振り返ってください
福井 シーズンが始まるまでは、それこそ結構自分のプレーみたいなのができていました。できてはいたんですけど、シーズン始まって、関東リーグが始まった中で、あんまりパッとしないなっていうのが正直な自分の印象です。今出させてもらってはいますけれども、これと言ったプレーみたいなのはまだできてないのが正直ところではあります。
――パッとしないなという感じですか
福井 最初は緊張とかいろいろあるのかなっては思っていたんですけど、なんかミスも多いし、自分自身はあんまり納得いってないっていうのが正直なところでですね。
――一番納得いっていないところはどこですか
福井 もっとボールを受けれますし、 多分もっとミスなくプレイできると思います。それこそもっと脅威なプレーとかはできると思うので、その面ではミスも多いし、ボールを受ける回数も少ないので、緊張とかもあって繋げない部分とかもあるとは思うんですけど、もう少し自分がそれを引き出すプレーっていうのはしていかないといけないかなとは思いますね。
――逆に成長できてるところはありますか
福井 成長してるかな。最初、それこそ平松(柚佑主将、社4=山梨学院)がいない中、4年がリーダーシップを取らなきゃいけない状況で、声で引っ張れる人がいなかったところでは、声っていうところは意識はしていました。ただ平松が帰ってきてから、やっぱり頼っちゃうところもあって、1回、落ち気味のところはありました。でもそういったところは、やっぱり4年としてもそうですし、出てる責任もありますし、引っ張るところは、今後も続けていかないといけないところかなとは思います。
――中盤というポジションもあり、声掛けは大切にしたいところだと思いますが
福井 そうですね。あんまり声出すタイプがいないっていうのも正直ありますし、 本当に平松ぐらいしか正直いないと思うので、あそこまで声を大にしてやれるかって言ったら、それは 多分無理だと思うんですけど、出てる中では、やっぱりそれなりのリーダーシップは持ってやんないといけないと思います。その一つが、声であれば、自分が成長するためのポイントとしてはいいんじゃないかなと思います。
――3年の時と比べたら声を出せるようになったなって感じますか
福井 (今までも)出せなかったわけではないですけど、なかなか上級生がいて遠慮してとかもあったりして、そういった役職的なところもあるとは思いますけど、全体に喋れる声っていうのは、徐々にですけど、身についてはいるのかなとは思います。
――持ち味はどこまで出せていますか
福井 ここまで。本当に全然出せてないんじゃないですかね。なんか、こんなもんかっていう、 自分もうちょいできると思うけどなっていう。自分への期待なのか分からないですけど、とりあえず、あんまりここまでの出来には正直納得はいってないです。
――第7節までは全試合スタメンですよね
福井 そうですね。全試合スタメンではいますけど、それこそ最近だと途中交代も多くなってはきてますし、そういった部分は監督から直接言われてるわけではないですけど、自分自身のそういった思いと監督の評価は、自ずと関係はしてるのかなとは心のどこかでちょっと思っています。
――スタメンでずっと出ているというのは監督から評価されてる部分があると思いますが
福井 バランスとったり、リズムをつくったりとか、そういうところは評価されてるんじゃないかなとは思いますけど、それが別に自分にしかできないことかどうかは、正直分からないので、自分にしかできないってところをもう少し証明していかないと、この先生き残っていくには、きついのかなとは思います。それこそ、スタメンを取られたりすることも全然多いと思いますし、 途中交代が多い今では、そういった危機感みたいなものも持ってやんないとなとは思います。
――――そういったことも含めてプレー中、一番意識されているのは
福井 ボールを受ける回数を増やすというのはずっと意識はしていますし、それこそずっと顔を出し続けるってところは 意識しているところではあります。けど、実際の公式戦になって、それが、多少相手のプレッシャーも感じて、つなげない部分っていうのもチーム的にもあるので。そういったところで、1回ボールを経由してもらうじゃないですけど、そういった役割をもう少し増やしていかないといけないかなとは思います。
――福井選手は気が利くプレーも多いなという印象ですが
福井 性格が関係してるのかな。そうですね。カバーとかは、それこそ、小倉(陽太、スポ4=横浜FCユース)が例えばセンバ(センターバック)をしたりしたら、空いたスペースのカバーとか、 そういった常に周りが見れるポジションではあるので、そういったところは今季からではないですけど、ずっと意識してることではあります。
――今季、いろんな人とボランチを組んでいますが、それぞれのやりやすさみたいなのっていかがですか
福井 うですね。基本、僕は合わせる派なんで(笑)。周りはやっぱり特徴ある選手が多いですし、植村(洋斗副将、スポ4=神奈川・日大藤沢)も小倉も山市(秀翔、スポ2=神奈川・桐光学園)も、伊勢(航、社3=ガンバ大阪ユース)も。そういったところでは、本当にバランスサーみたいな感じになってしまうんですけど、やりにくいって感じる人は正直いないですし。誰とやってもやりやすいかなとは僕は思っています。
――自身で合わせるタイプとおっしゃられていましたが、裏を返せばだれとやってもプレースタイルが変わらないということなのかなとも思いますが
福井 求められてることっていうものはあまり変わらないと思いますし、そういったバランスの意味も含めて出させてもらってるかなっていうところもあるので、そういった誰とでも、いつどんな時でもプレーが変わらない安定性ってところは、 もう一つの自分の武器でもあるのかなとは思います。
夢っていうものを挑戦せずにはぶらしたくはなかった
前線にボールを送る福井
――――少し前のことになると思いますが、ア式への入部が1年遅れた理由は何かあったのですか
福井 ランテスト分かりますか?ランテストがあるんですけど、僕、奇跡的に走れなくて。素走りが本当に苦手で。それもあって受けてはいたんですけど。全敗しました。
――最初は入部基準をそこで満たせなかったのですか
福井 そうですね。そもそも仮入部すらさせてもらえないっていう感じでしたね。
――2年のタイミングでランテストに受かったのですか
福井 そうですね。2年のタイミングで。
――入部後って結構苦労されましたか
福井 高校明けて1年間ブランクあっていきなり大学生だったので、スピードも強度も違いますし、 そういったところでは多少、苦しんだところはありますけど、技術とかそういったところに関しては、ある程度の自信はあったので、そこで別にやれないなっていう感覚は正直なかったです。
――入部できなかった1年間は何をされていましたか
福井 それこそ自分で公園でボール蹴ったり、知人の紹介で、2、3カ月ぐらい社会人チームにもいました。 それ以外は高校の練習にたまに行くぐらいでした。
――1年目で入れない中、諦めなかった理由はあったのですか
福井 プロには行きたかったので、その夢っていうものを挑戦せずにはぶらしたくはなかったです。やってみて無理ならいいけど、やらずにやめるのは嫌だなって。そういったところで、挑戦はしようかなと。さすがに2年目も落ちたら辞めてたと思います。
――挫折しなかったのですかその1年間は
福井 挫折ですね。それでもう1年間は本当にめちゃくちゃきつくて。でもそれのおかげもあって、メンタルが鍛えられたなって正直思いますし、それ以降落ち込むことはなくなりましたね。試合に出てなくても、それこそ2年目はずっとBチームでしたけど、腐ることはなかったし、そんなにメンタルが揺さぶられることは正直なかったです。
――Aチームに初めて上がったのはいつでしたか
福井 あれは3年の夏ですね。
―――1回アミノバイタルカップで出場機会がありましたよね
福井 アミノの専大戦で途中から出させてもらいました。あれまでは、Ⅰリーグで正直調子が良くて、Ⅰリーグ自体もすごい楽しいサッカーをしていて、 その中でも自分が結構、中心としてやらせてもらってたってところもあって、評価されたのかなと思います。
――Bチームの中ではかなりの手応えがあったなという感じでしたか
福井 Aチームと紅白戦とかしても、割とやれるなっていうイメージみたいなのができていたので。そういったところは評価につながったのかなと思います。
――Aチームに上がっても変わらずという感じだったのですか
福井 そうですね。別に何か特別変化をさせたわけではなくて。ただ、同じ自分の武器とかを、 変わらずAチームでも続けてやれてたのが評価されたのかなと思います。
――そんな中で今季はAチームで主力級という感じになっていますが、自身の中で何か変化はありましたか
福井 変わらないですね。あんまり変わらないです。変わったなというよりかは、シーズン当初でケガ人が多かったっていうのが正直あって。平松もいなかったし、植村もいなかったし、小倉も伊勢もいなかったんですよ。一旦ケガして、その後また頭もやってとかで、伊勢もいなくて。 本当に僕と山市ぐらいしかいなくて。そもそも中盤がいなかったってところで、アピールできたのかなとは思います。特別変化したってわけではないです。
――そういった機会で良いプレーができたから、監督にも評価されたってところは絶対ありますよね
福井 そうですね。シーズンオフとかプレシーズンとか。割といい感触で自分自身できてたところはありますし。そういったところで評価は結構されたのかなと思います。
――最初はFCやⅠリーグでプレーしていた中、Aチームまで今は上り詰めたということについてはいかがですか
福井 (自分みたいな選手は)あんまりいなくて、稀ではあると思うので、FCの選手に希望じゃないですけど、そういう力も与えられればいいかなと思います。
――先ほど入部できなかった時期にメンタルが鍛えられたことで、腐らずやれたとおっしゃられましたが、そこはつながっていると思いますか
福井 そうだと思いますね絶対。腐らずに1年間やれましたし。そのままの勢いで3年生の春からⅠリーグにはずっといられましたし、徐々に徐々にステップアップしてきたかなとは思います。今までの僕も、中学も高校もそんな感じで、ずっと出てるわけではないので。
――AT(戦術担当)としてのここまではいかがですか
福井 ATとしてか。4勝2敗1分(6月7日時点)、まあ納得はいかないですよね。勝てる試合もありましたし、2試合負けてるっていったところでは、戦術的にどうこうってところもありますけど、ずっと攻撃の部分を、練習で落とし込んできた中で、得点が、例えば、青学戦(△1-1)とか、1点にとどまったり、そういったところで、 まだまだATのところからの落とし込みも足りないのかなとは思いますね。
――ピッチでやっていて、徐々に兵藤早稲田の色は浸透してきていると思いますか
福井 徐々に浸透はしてきてるとは思いますし、練習でもそういったかたちはやっぱり出ることは多いので、練習でやったことをどれだけ試合に出せるかってのが、最終的な優位にはなってくると思います。今は人の関わりとかを攻撃のメインでやっていますけど、そういった関わりの良さから生まれるゴールみたいのを(もっと出したいです)。正直、流れからの得点はあんまりないじゃないですか。流れからの得点がもう少し生まれてくると、より兵藤早稲田の色が出てくるんじゃないかなと思います。
――流れからの特典を取るために必要だなと思うことはありますか
福井 結構押し込めることは多くはなってきてますし、それこそ立正大の時も後半20分とかはずっと押してました。ああいった中で、クロスからの得点の練習とか、あとゴール前の練習とかは結構やっているので、ゴール前で崩して、最後クロスで押し込むだけとかは、攻め切ろうという一つのかたちが徐々に出てきてはいるので、そういったところで、やりきるところで点が取れれば、徐々にチームも波に乗ってくるんじゃないかなと思います。
――ATを今やられてるからこそ、ピッチ上で生かされてるなって思うことってありますか
福井 それこそ分析は学生コーチの濵田祐太郎(商2=埼玉・市浦和)とか、それこそ、監督とか、オザさん(小澤雄希コーチ)とか、フジ(藤本隼斗、スポ4=柏レイソルU18)とかがやるんですけど。そういった分析はやってるんで、そこの相手の情報は自分たちが一番持ってるってところでは、 相手のウィークとか強いところとかは分かっているつもりではあるので、それを試合中どれだけ突けるかってところは、ATをやっていて生かされてる部分かなと思います。
――ポジション柄そこを把握しているのは大きいですよね
福井 中盤としても、ポジション的にも分かってると、攻めやすさだったりちょっと今日は相手変えてきてるなとかも分かるので、そういったところは、やってるからこそっていうところも正直あると思います。
(早慶戦でも)やることは変わらない
質問に答える福井
――早慶戦に向けての話になるのですが、福井選手にとって早慶戦ってどういう舞台ですか
福井 自分が(今まで)出てないので分かんないですけど、多くの人が関わってつくってくれる大きなな舞台ではあるので、例えリーグの勝ち点とかに関わらないにしても、非常に重要な一戦であることに変わりないのかなと思います。
――出れば初出場ということになると思いますが、やはり出場したいという気持ちはありますか
福井 それはもちろんあります。自分も今まで、運営の立場として2、3年の時は見てきましたし、出たい思いはみんなあると思いますけど、特に4年目っていうところもありますし、出たい思いは人一倍あるかなと思います。
――早慶戦は実力差が関係ない試合だと思います。慶大に勝つためにどういったことが必要になってくると思いますか。
福井 これまでの早慶戦の戦績を見ても分かる通り、 そこまで大きな差は正直ないと思うんで。本当に自分たちがやってきたサッカーを出すだけだと思いますし、場に飲み込まれずに、いつも通り戦うことで勝利に近づくんじゃないかなと思います。
――早慶戦の舞台でどういうプレーをしたいですか
福井 変わらないですね僕がやることは。リズムつくったり、バランス取ったり、正直、今までのプレイと変わることはない。変われないというのも一つあるんですけど。別にいつも通りです。変わることはないと思います。どの舞台でも僕は。いつも通りのプレーができれば、みんなにも安心感を与えられるかなと思います。
――兵藤慎剛監督(平20スポ卒=長崎・国見)も日体大戦の際に、硬くなってしまうような試合で、一つ肩の力を抜けるような選手が出て来てほしいとおっしゃっていましたが
福井 そうですね。そういう存在になりたいですね。どっちかっていうとばって目立つよりかは空気も落ち着かせられるじゃないですけど、飲まれずに。そういった選手に、自分はなりたいですね。
――最後に早慶戦に対しての意気込みをお願いします
福井 慶応との一戦ということで、負けられない。両校のプライドもありますし。個人的にも負けたくない相手がいるって言ったところでは。まだ1カ月先ですけどなんとか試合に出て、チームの勝利に貢献できるようなプレーができればいいかなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材、編集 髙田凜太郎、荒井結月 写真 大幡拓登)
早慶クラシコに向けての思いを書いていただきました!
◆福井寿俊(ふくい・かずとし)
2001(平13)年4月16日生まれ。169㌢、63㌔。
東京・国学院久我山高出身。文化構想学部4年。慶大には主将の山本献選手を含め、高校時代の同期が多く所属しているという福井選手。「正直負けたくないという思いは誰よりもある」とのこと。出場すれば大学に来て初めての対戦ということもあり、楽しみにしているそうです!