【特別企画】WEリーグ開幕記念特集 第1回 村上真帆選手×松本茉奈加選手 前編

ア式蹴球特集

 第1回を飾るのは、今年早稲田大学を卒業されたMF村上真帆(大宮アルディージャVENTUS)選手とFW松本茉奈加(ノジマステラ神奈川相模原)選手です!相思相愛のお二人に、近況やチームの魅力などを伺いました。

※この取材は8月6日にオンラインで行われたものです。

 

「(村上が)大好きです」(松本)

愛を伝える村上(左)と喜ぶ松本

――ア女時代に何度も伺ってきましたが、恒例の他己紹介をしていただきたいです!

松本 他己紹介(笑)。真帆(村上)はかなりマイペースですが自分の芯はしっかりあって、それが一切ぶれないので信頼できる人だなってずっと思ってます。社会人になったから分かんないけど、顔はキマってますね(笑)。

村上 (学生の時から)全く変わってないですね。車に乗るようになって、人を乗せたりするんですけど、いつも待たせてます(笑)。「急いで急いで」って言われて。運転する準備が遅いんです。着替えたりするのが人より遅いんですねきっと(笑)。

松本 何かと遅いね(笑)。

村上 そう。直したい!でも直らない(笑)。

――村上選手から見て松本選手はどんな人ですか

村上 誰とでもフレンドリーに話せるのと、負けず嫌いで何事も熱くて「絶対に負けない!」という気持ちが前面に出ているのは強いなと思います。

松本 真帆には負けるよ(笑)。

村上 えーー、なんでよ?

松本 さっき言ったけど、誰に何を言われようとブレないんで、真帆には及ばないなって思います(笑)。

――お互いにリスペクトし合っていて、大好きなんだなっていうのが伝わります

松本 大好きです(指でハートを作る)。

村上 うふふ(指でハートを作る)。

一同 (笑)。

――今年の春に卒業されましたが、最近はどう過ごしていますか

松本 全体練習が11時半くらいに終わって、そこから個人トレーニングをするので13時半頃まで体を動かしています。何か食べたりしてから体のケアをして、15時とか16時くらいにはフリーになるという感じですかね。その後、体が大丈夫であればジムに行ったり、完全にオフにしたりその日の体調に合わせてスケジュールを考えています。

――ケアではどのようなところに気を付けているのですか

松本 自分のその日のコンディションを把握して、練習で100パーセントが出せるように準備するために、(練習)前と前日のケアは大事にしています。

――村上選手はいかがですか

村上 私も午前中の練習が終わってからご飯を食べて、それから職場に向かいます。17時の定時まで働いて帰宅します。

――どんな業務をされているのですか

村上 大学の事務職員として働いていて、総務課で電話をとったり、お茶出しもしますし、会議の資料をコピーしたり、物品管理、発注とかいろんなことをやっています。先輩から学びながら、今までやったことがないようなことをしているので、すごく毎日楽しいです。学生の時やっぱり暇だったんだなと(笑)。

――東京五輪期間中で同世代の活躍に刺激を受けることもあると思いますが、印象的な試合はありますか

村上 男子サッカーのスペイン戦(8月3日、準決勝、●0-1)で、負けてしまったんですけど最後まで粘り強く戦い抜く姿に感動したし、ボールを受ける位置やタイミングという技術面でも、日本だけじゃなくてスペインからも学ぶことがたくさんあって、すごく勉強になりました。

松本 もちろん女子も観ていたんですが、男子がめちゃくちゃ応援したくなるサッカーをしていると思いました。手に力が入るくらいの試合を観たのが久しぶりだったので、人の心を動せるサッカーを五輪で見せてもらえてよかったです。自分もプロとしてWEリーグでそういう部分を求められる中で、全然足りていないなと。(クラブの)キャンプ中に(チームメイトと)みんなで見ていたので、刺激をすごく受けました。東京で五輪をやってくれてありがたかったですね。

 

「『当たり前の基準』が高い」(松本)

「意識レベルの質が上がった」(村上)

引退試合となった早慶戦後に同期と記念撮影(前列右から2番目が松本、後列中央が村上)

――松本選手はいち早くノジマステラ神奈川相模原への入団が決まりましたが、決め手は何でしたか

松本 大学時代からプロにチャレンジしたいという気持ちがあったので、WEリーグに参戦するというのを一番に考えたいと思っていました。神奈川出身だけど神奈川でプレーしたことがなかったので地元を盛り上げるっていう部分でもいいなと思いました。プロとしての責任とか自覚が芽生えると思ったので、より厳しい世界に身を置きたいと思ってノジマに決めさせてもらいました。

――村上選手はなぜ大宮アルディージャVENTUSへの入団を決めたのですか

村上 卒業するぎりぎりまでサッカーをするか迷っていたのですが、4年生の時のインカレ(全日本大学女子選手権)で初戦敗退してしまって、「このまま辞められないな」と思いました。それで前から声を掛けてくれていた大宮アルディージャVENTUSに話を聞きに行ったら、受け入れてくださるということだったので「ここでもう一回頑張ってみよう」と思って入団を決めました。

――ア女とプロは違いますか

村上 自分はプロ選手ではないけれど、プロチームの一員としてやっているので、サッカーに対する姿勢を新たにしました。今までなでしこリーグでプレーしていた選手と一緒にプレーするようになって、意識レベルの質が上がりました。「こんなところまで意識できることがあるんだ」と気づくことができました。

松本 今までとは責任が違いますね。今はプロサッカー選手としてお金をもらっていますし。なでしこジャパンも言われているように、(女子サッカーで)人の心を動かすべきだし、サポーターやファンの方々にお金を払って観に来てもらっているというところが違うので、そこの重みもあります。福さん(福田あやア式蹴球部女子部監督)も言うと思うんですけど、「当たり前の基準」が高いので、そこはレベルが上がるんだろうなというのは感じています。

――具体的にどんな場面で意識レベルの差を感じましたか

松本 ディフェンスだと寄せやパスの質とかスピードとか、基礎の部分の差はすごく感じるし、そこが当たり前にできた上での連携なので。意識をしていない人も多いと思うんですけど、最初の頃は追いつくのに時間がかかったなと思う部分です。

村上 難しいことをしているわけじゃないけど、ボールを止めるときも軸足よりも前でとめるか、横か後ろかという位置を使い分けるだけでも相手にとってやりづらくなるというのもあります。あとは当たり前ですが、蹴るときも3人目のことまで考える。1本のパスのメッセージ性が今までよりも強いなと感じます。

――逆に、ア女とプロとの共通点はどんなところですか

村上 (ア女では)すっごい面白い人がいたり変な人がいたり、いろんな人が集まっていてそれを大事にしようという雰囲気がありましたが、それは大宮アルディージャVENTUSでも変わらないですね。ベテランの選手が多くて、10歳以上離れている選手もいるので、最初はそういう選手たちが声を出してやるのかなと思っていたんですが、「むしろ下からどんどん言ってほしい」って。もちろんベテランの方から指摘を受けることもありますけど、自分から疑問に思ったことはすぐに聞けるし、的確に答えてくれます。言葉のキャッチボールがすごくできる環境ですね。ア女も学年関係なく仲が良くてなんでも言い合えたんですが、それと同じようにオンとオフも過ごせています。

松本 サッカーに集中できる環境ですね。一人一人が勝ちたいという気持ちはア女もノジマもあって、変わらずに自分も継続できていると思います。ケアに関してもア女もプロもみんな気を遣っているので、ア女の基準は高いんだなと思いましたし、プロに入ってもギャップを感じませんでした。ア女は「学生主体」というのがあって、自分で考える力も養われました。思考を止めることなく自分がやれることを考えるのは大事だし、ずっと必要なことだと思います。

――ア女での経験が生きていると感じることはありますか

村上 全部が生きてるんですけど、その中で特に「チームが勝つために何ができるか、そのために自分がすべきことは何か」を4年間たくさん考えてきたので、自分の中でベースになっています。自分のプレーをどう生かしてチームの勝利につなげるかっていうのは自然と考えてできるようになっているので、ア女でやってきたことは生きていると感じます。

松本 真帆も言っていましたが、ア女で上下関係があまりなくて意見交換をしていたので、今も物怖じせず先輩や後輩に意見を求めたり聞いたりできていますね。高校の時はビビっちゃって全然できていなかったので(笑)。団体スポーツではコミュニケーションが勝利につながってくるので、「全員で戦う」ア女で4年間やれてよかったなと思います。

 

「課題や弱さをシーズンが始まる前までに徹底的に改善していく」(村上)

2021年5月29日のプレシーズンマッチで対戦した松本(左)と村上

 

――プレシーズンマッチの結果についてどう捉えていますか

松本 私たちのチームは全部負けてしまって、何もできないというか、力の差を感じたというか、情けなさだったり虚しさだったりをすごく感じるプレシーズンでした。チームには若い選手が多くて、既存の選手と新加入で半分半分のチーム編成になっていたので、合わせるのが既存の選手たちも難しかったでしょうし、新加入(の選手たち)も今までやっていたサッカーとの変化で、難しいところもありました。全部を出し切れたかって言われたら、多分全員が出し切れたとは言えない試合だったと思います。でもその4試合があったから全員の気持ちはまとまったし、勝ちたいっていう気持ちがさらに強くなりました。ある意味危機感を早い段階で感じることができて、プロって負けて悔しいだけでは終われないという部分も感じることができました。負けに対しては本当に情けなかったし、「何かやれよ」って自分自身に思ったんですけど。シーズンが始まる前にチームメイトとサッカーについて話す環境を作れたのはすごく良かったなって、ポジティブに考えています。

村上 私たちのチームは2勝2敗で、2敗したのがどっちもホーム戦でした。2800人くらいのファン・サポーターの方が来てくださったのですが、そこで力を出し切れなかったっていうのが自分たちの弱さでもありますし、そのうちの1試合は0-4で完敗しました。自分たちの課題が見えた試合だったし、2月の設立から作り上げてきたチームなのでまだまだ完成してない、足りなかった部分が多く分かった4試合でした。自分たちがゼロから作り上げたチームがどのくらいの完成度なのか、どれくらいの位置にいるのかっていうのを知れたことはすごく良かったなって思います。出てきた課題や弱さをシーズンが始まる前までに徹底的に改善していくための練習を行っています。

――プレシーズンの中で印象的だった試合はありますか

松本 自分は大宮戦。やっぱり葉月(源間葉月選手)と真帆がいて、2人とは高校と大学で一緒にやってきたので勝ちたかったんですよ、シンプルに(笑)。(プレシーズンマッチで)最後の試合っていうのもあったし、真帆たちとできるので、めちゃくちゃ勝ちたい気持ちが強かった試合だったので、すごく印象に残っています。

村上 私が印象に残っているのは、初戦のジェフ戦ですね。チームで初めての公式戦だったので、絶対勝ちたいという思いは強かったです。その気持ちを持って全員戦い、勝利にもつなげられたっていうのはチームにとって一歩前進した試合なのかなって思います。

――ありがとうございました!次回は個人としての目標についても伺っていきます!

 

(取材、編集 早稲田スポーツ新聞会 手代木慶、前田篤宏)

(ア式蹴球部女子部 澤田美海)

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◆村上真帆(むらかみ・まほ)(※写真右)

1998(平10)年6月15日生まれ。163センチ。東京・十文字高出身。2021(令3)年スポーツ科学部卒業。大宮アルディージャVENTUS所属。背番号25番。WEリーガーとしての抱負を「プレーでチームの勝利に貢献する」と笑顔で語っていただきました。

◆松本茉奈加(まつもと・まなか)

1999(平11)年2月10日生まれ。164センチ。東京・十文字高出身。2021(令3)年スポーツ科学部卒業。ノジマステラ神奈川相模原所属。背番号20番。WEリーガーとしての抱負を「名前を残す!」とガッツポーズ決めながら語っていただきました。