早稲田大学の系列校の1つに早稲田実業高校がある。そんな早実から『ア式蹴球部』のマネジャーになるという選択をした佐藤慧一(政経2=東京・早実)、菊池朋香(政経2=東京・早実)の2人。ア式、ア女の違いはあれど、チームのためにという根幹の部分は同じ。未来の『ア式蹴球部』を引っ張る2人はなぜ入部を決め、現在どのような思いを抱いているのか。その思いに迫った。
※この取材は4月16日に行われたものです。
「菊池にカバーしてもらってますね(笑)」(佐藤)
早実出身の二人
――大学入学前からお二人は顔見知りだったのですか
佐藤 同じクラスになったことはないのですが、自分と仲が良い友人が菊池と仲が良くて、それもあって知り合いという感じでした。
――同じ学部とのことですが、大学に入学して関係は変わりましたか
菊池 授業も被ってないんだよね。
一同 (笑)。
佐藤 でも、東伏見(グラウンド)では毎日のように会う気がする。いつもア式が最初に練習して、その後にア女が練習します。ア式の練習後に忘れ物が残っていると僕が怒られるのですが、そのようなところは菊池にカバーしてもらってますね(笑)。
――お二人が思う早実とはどんな学校ですか
菊池 良い学校です(笑)。
――高校から早実に通われているのですか
菊池 私は高校からですね。
佐藤 僕は中学からです。
――早実での経験が今に生きていると感じることはありますか
佐藤 これは僕がマネジャーになることを決めたきっかけでもあるのですが、早実で僕はサッカー部に所属していました。サッカーは選手として小学校から高校まで続けていましたが、高校のサッカー部は選手が、本部・会計・主務というマネジャー職を担っており、僕は会計をやっていたのでマネジャーの仕事を少しやっていたという感じです。この経験が役に立っているとは思いますね。大学でマネジャーを始めた時に違和感などは感じなかったです。
菊池 私は高校時代に陸上部のマネジャーをやっていて、もともと私はお節介というか、人のために動くことが好きで、高校入学当時も自分で運動をすると言う選択肢はなく、迷いなくマネジャーを選択しました。大学も同じようにマネジャーをやりたいと思ってア女に入ったのですが、個人競技の陸上と団体競技のア女では勝手が違います。しかし、どうしたら選手のためになるのかということは高校の頃から考えていたので、大学に入ってからもその点で苦労はしなかったです。
――他に何かありますか
佐藤 あとはつながりですね。最初にア式に入った時も、ア式には先輩がいたり、監督(外池大亮監督、平9社卒)も早実出身だったりするので、入りやすかったということもあります。最初からアウェー感はなく、マネジャーでも入部しやすかったなとは思いますね。そこのつながりも良いところなのかなと思います。
菊池 東伏見に行けば、他部活にも早実出身の人が多くいるので、東伏見ですれ違いざまに会話できることはうれしいです。
佐藤 僕は昨年の早慶戦担当で、試合の前にいくつかのサークルの方々にパフォーマンスをしていただきました。その時にショッカーズの代表やミンクスの渉外担当の方が早実出身だったので、とてもやりやすかったというのはあります。体育会とサークルの間には壁があると思うのですが、そこの壁は簡単に壊すことができました。そのようなつながりというのも早実の強みかなとは思いますね。
――入部したきっかけは何ですか
佐藤 高校3年生の12月に僕は引退したのですが、引退が近づくにつれて大学で何をやるのかということを考えるようになりました。僕は小学1年生まで札幌に住んでいて、そこでよさこいチームに入ってやっていたこともあり、ダンスサークルに入ろうかなと思っていて、実際に早稲田祭にも行き、「パフォーマンスサークルって輝いているなあ」とも思っていました。引退してから1ヶ月間、学校も休みになったので友人と遊んでいたのですが、1月春高に出た早実の男子バレー部を見に行くと、バレー部にマネジャーの女の子が目に入りました。元々その子は女子バレー部で9月までは選手でキャプテンだったのですが、引退したあと男子バレー部にマネジャーとして入部したという経緯があって、実際に僕はその子がマネジャーの仕事をしているのを上から見ていた時に、親近感がわきました。僕も選手時代にはマネジャーのような仕事もしていて、公式戦でも裏方に回ることが多くユニフォームをたたむなどのベンチ周りの仕事をしていたこともあったからです。彼女のその姿がきっかけでマネジャーの興味を持ちました。
――その後どのように決断を下したのでしょうか
佐藤 早実の先輩でもある俊也くん(鈴木俊也、商3=東京・早実)に連絡して、1月末に見学へ行き、そのまま仮入部を始めました。
――ア式以外の選択肢はなかったのですか
佐藤 そうですね。思いつきませんでした。あとは俊也くんの存在ですかね。一つ上の代の高校最後の試合後にも僕はユニフォームをたたんでいて、俊也くんにもユニフォームを渡したのですが、「今までありがとう」と言ってもらいました。普段ツンツンしているので、そんなこと言ってもらえるなんて思わなかったので、そこから個人的にファンになったということがあります。俊也くんがいたことも入部した理由の一つではありますね。
――菊池さんがア女に入部したきっかけは何ですか
菊池 元々大学に入ったら体育会のマネジャーをやろうと思っていて、やるなら絶対に女子部のマネジャーが良かったという理由があります。今の社会って男社会じゃないですか。その中で早稲田というどんなスポーツも強い大学の中で女子が活躍していることが純粋に格好良いと思っていて、同じ女子目線で格好良いと感じられる人のサポートをしたかったということが一番の理由です。
――その中でア女を選んだ理由は何でしょうか
菊池 正直なことを言うとア女のことは入部するまで知らなかったです。ア式は早実の先輩方が入部しているイメージでしたが、ア女のことは知りませんでした。しかし、深夜に部活のインスタグラムを見ていたら、とても楽しそうに笑っているア女の写真が出てきました。とても面白そうだなと思って見ていたら、今の私の同期の最初からいた6人が「同期募集中です」という内容の動画をアップしていて、それがとても元気で、「この子たちと4年間過ごしたい」と思ってしまって(笑)。夜中の12時頃に勢いで「メッセージを送らなくては」と思って、スタッフアカウントにメッセージを送ったら、夜中なのにすぐに返事が返ってきました。私も深夜でテンションが上がっていたこともあって、すぐに見学の日にちが決まって、体験に行ったという感じです。
――初めてア女に行ってみた最初の感想はいかがですか
菊池 体験に来ている私がいるのにも関わらず、それとは別の場所で盛り上がっていて、最初はとてもアウェーだと感じました。しかし、それと同時に直感で「ここがいいな」と思いました。さらに練習前はあんなに騒いでいたのに、いざ練習が始まるとすごく格好良くて、同期にも「来てくれてありがとう」と言われてしまったら、「楽しい」と感じてしまって…。気づいたら入部していましたね。
「自分のやったことがチームの勝利に貢献できたと思うと、とてもやる気が出る」(菊池)
熱い気持ちがあふれでる菊池
――具体的にはどのような活動をされているのですか
佐藤 僕らはア女よりも人数がいるので割と分担して仕事をしていると思います。自分はOB年会費回収の見習いをしていますね。今年は4年生の歩希さん(高原歩希、文構4=埼玉・早大本庄)が担当なので、その育成してもらうためにも見習いというかたちでやらせていただいています。あとは本当に細かいことになってしまうのですが、ミカサさんから購入しているボールの修理手配や、公式戦で必要なエンジ製品(アシックス製品)をリストにして、今徐々に入部し始めている1年生に購入してもらう手続きなどをしています。
――練習中はいかがでしょうか
佐藤 練習中は水をくんだり、選手が脱いだ上着をたたんだりしています。ア式が一つ特殊だと思うことは練習で使用するマーカーやコーンなどのグリットをマネジャーがつくることですね。練習が始まる前にアナライズチームのリーダーである小林くん(小林将也、基理4=群馬・高崎)からメニューが監督とスタッフに伝えられて、スムーズに練習が行われるようにグリット作りをしています。基本的にグラウンドがマネジャーのメインの場所で、それに付随して裏でやる事務仕事があると言う感じです。
――菊池さんはいかがでしょう
菊池 練習中は慧一が言っていたように、練習前に監督やコーチにメニューを聞きに行って、そのグリットのサイズをメモして、それを準備します。水をくむこともそうですし、監督がいらっしゃらない時には練習中のビデオを撮って、それをユーチューブにアップすることで、監督が見られなかった部分を見られるようにしています。また、練習の最後にやるゲームやゲバの際にもビデオに撮っていますね。
――練習の時間外にはどのようなことをされているのですか
菊池 私はマネジャーと同時に副務という役職も兼任しているので、裏方の仕事は私と4年生マネジャーの夏季さん(山下夏季、スポ4=静岡・浜松北)でやっています。今抱えている仕事で言うと、私は関東女子サッカーリーグの早稲田担当で、試合に関係することは相手チームと連絡をとって、ユニフォームの話やバスの手配などをしていますね。リーグ全体の中の早稲田の仕事もあり、早稲田は会計という仕事なので、リーグの参加費回収や審判費振り込みなどもしています。リーグの予算案を考えたり、決算をしたり、大会を運営するために必要な仕事をしていますね。何をしているのかと言われるといろいろとしか言えないです(笑)。ア女は人手不足に悩まされているので、4年生のマネジャーがベンチに入って、私は本部で公式記録を書くという日もあります。
――やりがいを感じる瞬間はいつでしょうか
佐藤 普段の練習も楽しいですし、裏の仕事も学ぶことが多いのですが、僕は一番やりがいを感じたのは早慶戦の運営ですね。早慶戦は全部学生で作るじゃないですか。早慶戦は早稲田と慶應の学生だけ作り上げているということを大学に入って初めて知って、すごいなと純粋に思いました。そこに昨年自分が実際に立ち会って、サークルの方々と連携をとってパフォーマンスに来ていただいた時にはやりがいを感じましたし、際に自分が上級生になった時にも早慶戦は頑張って取り組みたいと思います。応援部の方々や観客も含めて学生で作り出すあの空間が早慶戦の魅力なのかなと思います。
――菊池さんはどの瞬間にやりがいを感じますか
菊池 正直なことを言うと、業務が多くて苦しい時もあります。しかし、自分が試合の運営や練習中の仕事をしていて、選手が次にメニューに進んでいるところを見ると「今、自分うまくグリット並べられた」、「すごくスムーズに誘導できた」と思えるのでうれしいです。この間久しぶりに公式戦をして思ったのですが、やはり雰囲気が他の練習試合などとは違っていて、チームだと感じる瞬間も多いですし、そのような瞬間に立ち会った時にはやりがいを感じます。私は自分の仕事を裏方だとは思っていませんが、いわゆる裏方と思われるような仕事でも、自分のやったことがチームの勝利に貢献できたと思うと、とてもやる気が出て、「頑張っちゃうぞ」なんて思ってしまいます(笑)。
――ア女だからこそやりがいを感じる瞬間はあるのでしょうか
菊池 ア女は同性だから自分の変化に気づいてくれることが多くて、「大丈夫?」とか「元気ない?」とか声をかけてくれます。そこは選手とマネジャーの関係での会話ではないのですが、その流れの中で「本当にありがとう」という言葉をポロッと言ってくれると、私の中にグサッとその言葉が刺さって、「今日も頑張ろう」と思えます。そこはやりがいですね。
――早慶戦についてはいかがでしょうか
菊池 昨年はコロナの関係で男女別開催だったのですが、慶應の女子とア女だけでやらなければいけない上に、慶應がとても人数が少なかったので、ゼロから、さらに女子部だけでやるということは初めてでした。いつもは男子部が先導してくれるところに女子部はついていくかたちだったのですが、今年は違いました。昨年の主務だった川端涼朱さん(令3スポ卒)が中心となってやってくださって、私は早慶戦にすごく興味があったのにも関わらず、何をすれば良いのかがわからなかったのですが、涼朱さんは1年生だった私にも仕事を任せてくれました。また、自分の同期の選手も一緒に企画を考えてくれました。自分は運営に関わることが多かったのですが、タイムスケジュールなども1から考えて、学生が創り上げるものってこんな感じなのだとも思いましたね。学生でもこれだけできるのだと思いました。早慶はライバルだけど一緒に大会を創り上げるということを言っていて、「そんなの本当かよ」と思っていたのですが、慶應の担当の人と毎日ZOOMをしていて「当日本当に戦うの?」という気持ちになるまで仲良くやらせていただきました。学生の力って無限大だとも思いましたし、自分たちでいろいろ作り上げることができるのだと思いました。これは『ア式蹴球部』にいないとできない経験なので、その時はやりがいを感じましたね。
――勝敗に直接関わらないスタッフだからこそ、もどかしさを感じる瞬間などはあるのでしょうか
菊池 自分はすぐに熱くなってしまうので、勝った時は本当にみんなと同じ温度で喜ぶことができます。本部にいるので、中立でなければいけないのですが、点が入ると小さくガッツポーズをしてしまいます。しかし、チームが負けた時などは選手が悔しがっているのを見て、いくら自分が悔しかったとしても、やはり直接プレーをしている選手と同じ悔しさとは違って、そこには壁があると感じます。どうしても同じ気持ちを共有できないことはあるので、それは当たり前でもあるのですが、そこで同じ温度の悔しさを感じられないことはもどかしいですし、マネジャーの限界を感じます。力不足だなと感じてしまいますね。
佐藤 自分はあまりそのような悔しさを感じたことはないですね。何度も同じ話になってしまうのですが、自分が高校の時に実際にメンバーに入らないけれど選手のサポートをするということは3年間していたので、高校の時はもどかしさだったり、「自分も出場したい」という気持ちが最初の頃はあったりしたのですが、高校3年生になった時には2年間やってきていたので、納得もできていました。そのような意味ではもどかしさも感じません。もちろん勝ったらうれしいですし、負けたら悔しいです。特に自分がベンチに入ってサポートをしている時には強く思います。しかし、菊池と比べたら感情的になる場面は少ないかなとも思います(笑)。
『ア式蹴球部』としての共同制作
佐藤の努力を熱弁する菊池
――『感謝』の横断幕を2人で制作することになった経緯を教えてください
佐藤 ア式とア女が毎日グラウンドで顔を合わせる割には関わりがないという話になって、菊池が外池監督に「ア式と関わることがしてみたいです」と話したことがきっかけだと外池さんから聞いたという記憶があります。
菊池 言いました(笑)。
佐藤 僕に伝えわってきたのは突然で、昼間に携帯を見ていたら外池さんから『MISSON』という文章が送られてきました(笑)。「ア女と共同制作をせよ」みたいな内容がツイッターのDMで送られてきました。その時点では、監督がマネジャーに対してツイッターのDMを送ってくることがあるのかということに驚きましたね(笑)。最初は何をすれば良いのか分かりませんでした。
――なぜ引き受けようと思ったのですか
佐藤 他の先輩や同期の英吉(藤間英吉、スポ2=神奈川・鎌倉)だったら審判をしていますし、平川(平川功、スポ2=岡山・作陽)は新入生紹介の動画を作ったりするなど新しいことに挑戦している中で、実際僕は早慶戦の運営を除けば特に何もしておらず、淡々と業務をしているだけだったので、良い機会だと思ったのがきっかけです。マネジャーとしてア式の中で自分の存在価値を出す上では良い機会だと思って、菊池と話し合いを始めました。
――その後どのように制作を進められたのでしょうか
佐藤 何が良いのか分からなかったので、ます僕の同期とその時にキャプテンだった杉山さん(杉山耕二、令3スポ卒=三菱養和SCユース)の代にア式から連想できる言葉を聞いてみました。そこでいろいろな言葉が出てきた中で『感謝』や『仲間』という言葉が多かったです。そこでそれらの言葉に関係することをやりたいと思うようになりましたね。
――何かターニングポイントになったのでしょう
佐藤 一昨年に『歴史的残留』という横断幕があったじゃないですか。僕はそれを見たことがあって、ふとそれが思い浮かびました。そこで横断幕っていいなと思ったのが始まりです。何を書こうかなと思いましたが、アンケートの際に『感謝』という言葉が多かった印象があったので、それを書くことにしました。コロナ禍という時代もありますし、今年はア式の中で『感受性』という言葉が大切にされていることもあって、僕も実際に選手ではないので直接勝敗に関わることができず、公式戦中ではできることも限られてしまうので、その中で僕は何ができるかと考えた時に、『感謝』の横断幕という結論に至りました。
――制作中に苦労されたことはありますか
佐藤 本当に時間がなかったことですかね。横断幕を作ると決まった後はULTRAS WASEDAさん(早稲田大学ア式蹴球部サポーターグループ)に布をもらうと聞いていたので、布をもらうところから始まりました。書き方を聞くと、プロジェクターで文字を写して書くとのことで、それはかなり大変でしたね。広い場所を探すところから乾かすまで事件続きでした(笑)。
――その横断幕はどのような場面で利用されたのでしょうか
佐藤 スタメンに帯同していたマネジャーの先輩に張っていただいたりしました。実際に張ってあるのを見た時にはやってよかったなと思いましたね。ゲキサカさんにも取り上げられていたり、キャプテンもそこにコメントしてくれたりして、2月の新シーズン前には主務の拓矢くん(人4=東京・駒場)から「去年のあの横断幕は全国大会の力になった」とLINEで言われました。それを見た時に、マネジャーは直接勝敗に関わることが難しい中で、その横断幕制作を経て、チームの力になれたり良い影響を与えられたりしたことはよかったと思っています。
菊池 私が早慶戦でも感じたことなのですが、男子と女子ではやはり男子の方が全てにおいて規模が大きいですし、ア式に関して言えば、企画も最前線のことをやっています。そのようなことに憧れもあって、そこで女子部も同じくらい盛り上げることができれば、ア女もア式も『日本をリードする存在』になれるのかなと思います。自分が入部した理由にも関係があるのですが、女子の地位をあげるということでもないですが、早稲田として男女でそうなるということを私の4年間の目標として掲げています。ア式と今のうちから横断的な企画をしてみたいと外池さんに話したことから始まって、慧一と早実というつながりがあることも話した上でこのようなかたちになりました。そこで慧一がたくさんやってくれたので、今度は任せっきりにせずに、自分もなんとか頑張って、早慶戦も女子の方で盛り上げていければ、より観客数も望めるのではないかと思います。ア式とア女が盛り上げていければ、男女関係なく大学サッカーというものに対して自分たちが卒業するまでに『早稲田』という名前の知名度を上げていければ最高だなと思います。次の企画は自分も頑張りたいです(笑)。
――『感謝』という言葉に込めた思いをお聞かせください
佐藤 ア式から出てきたこの『感謝』の言葉ですが、コロナ禍という現状の中でのメッセージというものも込められています。実際に医療従事者に向けて横断幕にメッセージを書いた選手もいました。ア式蹴球部が『日本をリードする存在』となるためにも、他の大学にはない企画ができたのかなとも感じています。また、3月11日には東日本大震災から10年ということで、自分が朝起きた時にあの横断幕を使おうということを決めました。今の時代だからこそこの『感謝』という言葉はいろいろな方向に伝わると思いましたし、そのような意味で『日本をリードする存在』に少しでも近づけたのではないかと思いました。
菊池 形にも残ったしね。
「いろいろな大学生のかたちがある中でア式を選んだのは自分だから」(佐藤)
ア式蹴球部に関わる魅力を語る佐藤
――新入生に向けて『ア式蹴球部』のスタッフの魅力を教えてください
佐藤 幅広い活動ができるというところがア式のマネジャーの魅力です。グラウンドでのサポートはもちろんですが、OBの方々とのやり取りなどの裏方などにも加えて、自分でいろいろなことを発想して実行に移すということができる場所です。それは今の4年生の人たちが作ってきてくれた部分でもあるのですが、実際に林くん(林隆生、スポ4=東京・小石川中教育校)だったら学連で、試合運営にマネジャーとして関わっていますし、玄記くん(西川玄記、スポ4=石川・金沢桜丘)だったらユニサカ、さらに玄記くんは早慶戦に対しての熱がすごいので、昨年も熱を出して倒れて入院してしまったくらいで…
菊池 本当にすごいと思う!
佐藤 男子女子の関係なしにいろいろなことに挑戦できる場所ですね。同期を見ても、英吉は審判をやっていますし、最初は「何を言っているのだ」と思ったのですが、両立できています。
菊池 それも本当にすごいと思う!
佐藤 挑戦に対しては責任や自覚が必要になるので、誰でも簡単にできるというわけではありません。しかし、自分の意思次第ではいろいろなことに挑戦できます。そのいろいろなことにも決まった枠はありません。企画や動画、つながりを作ることができる環境はア式蹴球部マネジャーの魅力なのかなと思いますね。
――菊池さんはいかがでしょうか
菊池 ア女の良さとして、学生スタッフと選手の境目が本当にないということがあります。自分は高校の時もマネジャーをやっていたのですが、選手とマネジャーのカテゴリーは本当に違うということを感じていました。大学に入ってア女を見ると、本当に選手とマネジャーの境目はなくて、同期からも「マネジャーとしてではなくて、ア女の部員として朋香のことを見ているよ」と言われることがあります。線を引くのではなく、同等に関わってくれるからこそ、練習前後で騒いでいる時も「自分はスタッフだから」というマイナスな気持ちも持ちません。同等に扱ってくれるからこそ一緒に喜ぶことができます。さらに、自分が同期の好きなところとして『一緒に笑えるし、一緒に泣ける』というところがあります。最近同期と話していた時に、熱くなって2人で笑いながら泣いてしまうということがありました。こんなに熱くなれることって大学生活でここ以外にないのではないかとも思います。日本一を目指す場に立つことを本気で目指すことができて、それが絶対に叶わない夢でもなく、実現できる位置にいて、高いレベルに身を置けて、同じ温度で日本一を目指せるということがア女の魅力かなと思います。
――最後に今後の意気込みを教えてください
菊池 自分は来年からマネジャーの一番上になりますし、主務という立場にもなっていく中で、今の知識や把握量では全く足りません。もっと事務的なこともできるようにならなければいけませんし、マネジャーとしての知識量も増やさなければいけません。学ばなければいけないことがたくさんあるので、特に2021シーズンは上にマネジャーの先輩がいるので、多くのことを吸収していかなければいけないと思っています。入部した日に4年後の目標をノートに書きました。その内容は『日本一のマネジャーになる』ということです。言葉そのままの意味での日本一のチームのマネジャーになるという意味と、スキルとしても日本で一番のマネジャーになるという2つの意味があります。それは選手の要求もそうですし、社会人スタッフの要求もまた同じです。自分はそれを目指して、3年後にはそのような姿になるために、高みを目指して頑張っていきたいです。それを踏まえて、自分は今年の抱負に『ア女を一番想うマネジャーになる』ということを掲げています。ただマネジャーの業務をするのではなく、自分はチームの誰よりもチームのことが好きでいるということです。チームのためにということを考えなければ、いくら仕事ができていても、一番自分が納得しないので、一番にア女を思ってア女を大好きでいて、いろいろなことを学ぶ一年にしたいと思います。
佐藤 一番は選手に寄り添えるマネジャーになるということですね。これからマネジャーとしてア式蹴球部という部活で活動していく中で、一番は選手に寄り添える人になりたいなと考えてやっています。4年間を通して「佐藤がいればここは任せられる」と思われるマネジャーになりたいとは思っていますね。もう一つは、マネジャーとしてというよりはア式蹴球部の一員として、考えていることです。昨年のチームミッションには『誰かの明日の活力になる』という言葉があって、自分の中ではその言葉が入部の時にも響いていました。もともとその言葉のイメージを持ってア式蹴球部に入った中で、実際に早慶戦の時も『誰かの明日の活力になる』という意識でサークルの方々と接しました。早慶戦が終わった後には「コロナ禍でパフォーマンスが多くできない中で、あのような場所でパフォーマンスできて良かったです」という言葉もいただけて、続けたいと思いました。体育会に入部することに勇気が必要だと思います。しかし、いろいろな大学生のかたちがある中でア式を選んだのは自分だから、そのような『誰かの明日の活力になる』という部分を4年間かけて体現できるように、人として成長できるように、少しずつできることを増やしていきたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 内海日和、手代木慶、橋口遼太郎)
2021シーズンの抱負を書いていただきました!
◆菊池朋香(きくち・ともか)(※写真左)
東京・早実高出身。政治経済学部2年。ア女のことを大好きでいたいと話す菊池マネジャー。今シーズンはチームの運営はもちろん、関東女子サッカーリーグの運営も任されているそうです。菊池マネジャーの『ア女愛』でチームを高みへと導いてくれることでしょう!
◆佐藤慧一(さとう・けいいち)
東京・早実高出身。政治経済学部2年。『ア式蹴球部』の『感謝』の横断幕を先頭に立って制作した佐藤マネジャー。文字を書く際には、ドライヤーも使用しなければならないほどの事件が起きてしまったのだとか。『感謝』の言葉を胸に、選手に寄り添えるマネジャーとして今シーズンも駆け抜けます!