下級生時から前線の一角を担い、攻撃の要として絶対的な存在感を放つ2人。無尽蔵のスタミナと高い技術でチームをけん引する早大の槍の、胸に秘めた思いとは
※この取材は12月27日に行われたものです。
「攻撃でうまくいかない時にはまず守備から」(田中)
豊富なアイデアで早大の攻撃を司る田中
――チームとしての今季これまでの活動を振り返っていただけますか
田中 コロナで難しい状況の中、4年生が中心となりずっと引っ張ってきてくれていたので、本当に気持ち良くサッカーができる環境を4年生が作ってくれたなというのが一番の感想です。今季は自粛期間もあり、シーズンが最後まで行えるか分からない状況でした。最後(関東リーグ戦)優勝には至らなかったですが、1試合1試合大事に良い準備をして戦ってこられたことが、成果として1つ出たのかなと思います。厳しい状況の中でも、このようにリーグ戦を最後までやり切れたというのは本当に多くの方に感謝しなきゃいけないなと思います。その感謝の気持ちは来年も持つべきだと考えています。
杉田 雄大(田中)も言ってくれたのですが、本当にこの1年は難しいシーズンでした。新体制になってすぐ自粛になって、今までできていたサッカーが当たり前にできなくなってきて。その自粛期間の中で、自分たちでできることを考えて行うことでチームの団結は高まったと思います。また、連戦の中でも総力戦で上手く勝ち進んだものの、最終的には優勝に至らず本当に悔しさはあります。でも、前を向いてインカレに向かって頑張っていきたいと思います。
――個人としての今シーズンここまではいかがですか
田中 自分は去年ケガでずっとサッカーができないシーズンだったので、最初はケガなくシーズンを終えられたらいいなと考えていました。その結果、(シーズン終盤に差し掛かった)今もサッカーをやれていますし、ずっと試合に関われているというのは、去年の自分からすると本当に成長した部分であり、素直にうれしかったです。でも、これだけ試合に出させてもらっても、自分が結果を出してチームを勝たせる試合はなかったので、また1つ成長して、インカレではチームを勝たせられる選手になりたいなと思っています。
杉田 個人としては、2月の中旬にケガをしてしまい、自粛期間もあって長期離脱になり、なかなか思うようにサッカーができない状況が続いて悔しい気持ちもありました。復帰してから試合には出させてもらっていましたが、雄大の言うように、自分も結果を求めている中で、結果が出ないというのは自分の力不足だと思います。4年生がまとめてくれる中で、自分たち前線の選手が結果を出せなかったことが(関東)リーグでも優勝できなかったことにつながったと感じているので。チームのためにもそうですが、自分の成長にも結果は大事になってくると思うので、そこをもっとこだわっていきたいところです。
――田中選手はケガで1年近く離脱、杉田選手も半年ほど離脱されていました。ケガを言える範囲で教えていてだけますか
田中 自分は、去年の第2節くらいまでは試合に関われていたのですが、去年のシーズンが始まってからずっと立つとなんとなく痛みがあって。結果的に肉離れをしている状態で少し無理してプレーしていました。痛みを我慢してやってきたのですが、病院に行ったときに肉離れという診断を受けて。無理した分、復帰までには長い時間がかかってしまったのですが、サッカーを失った時に何ができるか、チームにどう貢献できるかも含めて、ピッチの外から見る景色から本当に多くのことを学べたので。それは今年にも生きましたし、来年自分たちがチームを引っ張って行く中で本当に重要な経験だったなと思います。
杉田 自分のケガは、2月の合宿中に紅白戦で着地の時に起きたものです。第5中足骨骨折という診断を受けて、手術も考えましたが、医師から自然で治せるというお話を伺ったので、自然に治るのを待っているという感じでした。
――田中選手は、去年チームが苦しんでいる中で出場できないという思いもあったでしょうし、杉田選手も今シーズンチームとしての調子が良かったからこそ悔しい思いもあったのではないでしょうか
田中 去年は、チームとしても苦しんでいる中、自分はピッチ内では何の力にもなれないという状況でした。それでも、チームとして頑張って(関東リーグ戦1部)残留というものを手にすることができて。その姿を見ていたので、正直うれしい気持ちと悔しい気持ちどちらもありました。それを今年はぶつけてやろうというのは新チームの時から思ってやってきました。最初の話に戻るようですが、マサ(杉田)が言ったように、自分たちが結果を出せていたら優勝できていたという部分も絶対にあると思うので。そういう思いを持って今シーズン迎えた中で、2位という結果に終わってしまったことは本当に申し訳ない気持ちもありますし、悔しい気持ちもすごくあります。
杉田 去年も自分はスタートでケガをしていて、なかなか苦しかったのですが、途中から苦しい中でも試合にちょくちょく出たりしていて。その中でも、自分の実力の無さというのは突き付けられましたし、チームが苦しい状況を変えることができなかったというのは、すごく悔しいことではありました。ただ、去年の4年生を中心に(関東リーグ)1部の舞台を残してくれて、今年色んな状況がありながらもリーグ戦が開幕し、終わることもできたというのはすごくうれしいことだなと思っています。今年はチームの調子が良くて、でも自分はケガをしていて、3年生という立場もあり、正直焦りや不安もありました。でも、自分の好きなサッカーをするために、リハビリもしっかりやりましたし、準備も入念にしてきました。復帰してからは試合にも出させてもらいチームの好調にうまく馴染めたのかなと思います。
――早慶戦のアンケートでお2人の印象に残っている試合をお聞きしました。田中選手が、前期の明大戦、負傷明けのスタメンだったから、杉田選手が筑波大戦、今季の初ゴールだったからという内容でしたが、今一番印象に残っている試合はどの試合でしょうか
田中 個人として、明大戦は今シーズンのちょっとしたターニングポイントかなと思っています。最初は、ケガもあって出だしが遅れ、スタメンでは(試合に)出られていなかったのですが、明大戦からスタメンで出させてもらって、本当に良い準備をしてこられたなと感じました。しかし、良いプレーをしていても結局負けてしまいました。ただ、そこからどのような準備をすればどのようなパフォーマンスが出せるというのが実感としてあったので。どのような状況に置かれていてもしっかりと準備をすることの大切さを感じたことが、自分のパフォーマンスに関しての転機になって。その先ずっと試合に関われていたので、悔しい気持ちもありますが、自分の中でも大事な1試合だったと思います。
杉田 アンケートでも書いた通り、自分は筑波大戦が印象に残っています。改めてゴールできる喜びやうれしさを感じることができたからです。その喜びやうれしさは、自分がサッカーをやる中で常に求めてきた部分ではあったので、忘れてはいけないなという思いで筑波大戦を選びました。
――その筑波大戦は駒大に0-1で敗れた次の試合で、チームとしても大量得点を挙げられたのですが、それも印象に残った要因の1つですか
杉田 筑波大戦の前までは、得点力不足がチームの課題でした。自分も、それに対して何とかしなきゃと思っていた中での筑波大戦での2ゴールだったので。チームに良い影響を与えられたなとは思います。
――後半戦は出突っ張りという状況でした。中央のシャドーのポジションでプレーすることもあれば、サイドでプレーすることもあったと思います。そこで見える景色や意識することは変わりましたか
田中 第一に、ハードワークというのは自分もマサ(杉田)も求められていることだったと思うので。そこに関しては、どのポジションに入っても変わらない部分だったかなとは感じます。また、今年のチームは良い選手が多く、試合に出続けるためには、1つのポジションだけでは足りないですし。それは、自分自身が目指すプロの世界で生き残っていくためにも必要なことであると思うので。自分の中でポジションの選択肢を増やせたというのは、1つの成果かなと思います。
杉田 個人としては、復帰して少し経ってもなかなかコンディションが上がらない状況が続き、それがプレーにも少し表れていて。個人的にはシャドーをやりたいと思っていた中で、サイドで起用されました。正直納得いかない部分があったのですが、(外池)監督と話す機会があり、まずはポジション関係なく(試合に)出られるところでアピールするのが一番だという話をしていただいて。そこで、自分の武器やできることを考え、チームのためにというところを重視して、サイドハーフでもシャドーでもプレーするようにしていました。
――今季、優勝には届きませんでしたが、昨季苦しんだ中で素晴らしい成績を収められました。この結果の具体的な要因は何だと思われますか
田中 本当にそこに関しては4年生の存在が大きかったなと。難しいシーズンではあったのですが、4年生が熱量を持って引っ張ってきてくれたからこそ、他の学年の選手たちは伸び伸びとプレーできたのだと思います。また、チームとしては、タフに戦うこと、球際に激しくいくことを全体で共有してやれていたことが(関東リーグ戦)2位という結果にもつながったと思います。去年から4年生が考えてきてくれていた部分が本当に大きかったなと。ただ、それを(優勝という)かたちにできなかったというのは下級生の責任だと自分は感じていて。自分たち3年生以下は、インカレこそ4年生が作り上げてきてくれたものを形にできるように意識してやりたいと思います。
杉田 自分も4年生の言動がこの結果を生み出すことに大きく影響しているなと思いますし、去年の悔しさがあったからこそ、当時3年生だった今の4年生はすごく考えたと思います。その過程があったから、今年はうまくいっているのかなと思うので。今自分たちは3年生(という来季4年生になる立場)なので、学年の中でも試行錯誤しながら来年に向けてやっていきたいなと思います。
――特に杉田選手は去年チームがうまくいかない中でスタメン出場していらっしゃいました。ピッチ内の様子は去年と今年で何か違いはありますか
杉田 チームのためにと考えている選手が今年は多いと感じていて。それを一番体現しているのが4年生なので。自分もやらなきゃなという思いにさせてくれます。
――お互いに他己紹介をしていただけますか
田中 (杉田選手は)自分と背も同じくらいなので。少し僕の方が大きいのですが(笑)。チーム内でスタメン争いになるとライバルというか、直接的に争う選手だというのは自分の中でも意識してやってきました。でも、やはり同じ代のスポーツ推薦として入った仲間だなって。実際、ゴリ(加藤拓己、スポ3=山梨学院)と自分とマサがスポーツ推薦で入ったのですが、それぞれケガがあって一緒にプレーできたのが今年に入ってからなので。自分たちでチーム(の状況)を変えて、勝たせるという思いは、人一倍強く持っていますし、ライバルでありながら仲間でもあるなと感じています。プレーに関しては、ハードワークをしてチームのために戦ってくれる選手だなと思いますし、自分もマサのプレーを見てもっとやらなきゃと勇気付けられることもあります。本当に良い影響を受けていると思います。
――プレー以外の部分ではいかがですか
田中 プライベートに関してはあまりないですね。インスタグラムのアカウントを探してフォローしてあげれば、チャンスはあると思います(笑)。そこに関しては、プレーのようにもっと貪欲に頑張ってほしいなと思います(笑)。
杉田 プライベートもハードワークするっていうね(笑)。
――では、杉田選手もお願いします
杉田 自分はプライベートからいかせてもらうと、(田中選手は)充実しているなと思いますね(笑)。正直うらやましいっていうところで終わらせておきます(笑)。サッカー面で言ったら、(背が)小さいながらも(自分とは)プレースタイルが少し違うのかなと。一緒にやっていてうまいなという印象を受けていて、うらやましくなる気持ちもあれば頼りになるという部分はすごくあります。雄大も言ってくれましたが、ライバルという思いもありますが、一緒にチームを勝たせられるような関係でありたいなと思っています。お互い似たようなポジションで、ゴリも含めて前線の選手ということで、本当に攻撃のスイッチをかけられるのは自分たちだと思っていますし、それをやらなければチームは勝てないと感じているので。自分も雄大も持ち味をしっかり出してやっていきたいなと思います。
――お2人の共通の持ち味としてはスタミナが挙げられますが、その秘訣や原動力はどこにありますか
田中 そうですね。スタミナは求められている部分だというのと、それをしなければ試合には出られないと思うので。自分は、守備から入ってリズムを作る選手であり、それを高校の時からやってきました。自分の攻撃での良さを出すために必要なものなのかなと感じます。
杉田 自分も、中学から高校、大学にかけてそれは求められてきたことですし、自分の持ち味ということも分かっているので。それを発揮するに越したことはないと思っているので、意識しているというかは自然と表現できていると思います。また、そのような動きをすることで自分の中でもリズムができるので、自分のためでもチームのためでもあるのかなと思っています。
――田中選手について、外池監督は「キャプテン翼」みたいな選手だとおっしゃっていました。法政大戦では、結果としては負けてしまいましたが、スタートから追い回して、自分でボールを奪って攻撃までいくというシーンも見られましたが
杉田 翼くんですね(笑)。
田中 まあでも、今年はチームとしても良い守備が良い攻撃に、良い攻撃が良い守備につながっているので。先ほど言ったように、自分も良い守備から良い攻撃にというプレーで自分のリズムが出てくるので。高校の時からずっと、攻撃でうまくいかない時にはまず守備から入ってみようというのは、自分の中で決めていることなので。立ち返る場所と言うか、当たり前のことを人より高いレベルでやるということで、自分の持ち味を出せるのだと思います。自分のリズムを作るためには絶対に必要なことですね。
「1日でも多く4年生とやりたい」(杉田)
運動量と推進力で攻撃に厚みをもたらす杉田
――選手たちの中でスポーツ推薦で入学したからという自負はあるのですか
田中 (スポーツ推薦、自己推薦、一般受験などと)分けることは良いことではないのかなとは思うのですが、(スポーツ推薦で)サッカーをメインに選んでもらったという責任は絶対にあると思います。そのような意味では、サッカーへの貢献度が絶対的に求められると思うので。もちろんサッカーの面だけではないですが。(スポーツ推薦で)3人で入りましたが、誰かしらケガをしています。自分も2年生でケガをした時に、マサとゴリが活躍している姿を見て悔しい気持ちもありました。それでも、ケガが苦しい中でも頑張ろうと思わせてくれたきっかけでもあったので。そういうものも含めて、3人で戦ってチームを勝たせて、ゴリはもう決まっていますが、3人でプロに行ってまた一緒にやりたいなというのは強い思いとして持っています。
杉田 自分もスポーツ推薦と自己推薦などで分ける、スポーツ推薦だからというのは正直思っていなくて。実際自己推薦でも自分より上手い選手はたくさんいますし。そんな中でも、自分がスポーツ推薦で入れてもらったからには、自分がやらなくてはならないという責任は感じています。
――スポーツ推薦だからこその使命感があるのですね
杉田 そうですね。ただ、それを力にも変えられるので。そんなにマイナスのイメージではないかなと思います。
――田中選手は、意識している選手として加藤選手と杉田選手を挙げていました。やはりスポーツ推薦の絆やつながりというのはあるのでしょうか
田中 2人ともライバルというか意識してきた選手です。共に成長してきたので、一緒に戦っていきたいなという思いがあって。もちろん早稲田でもそうですし、この先プロに行ってもその思いは持ってやっていきたいなと思っています。
――先ほどからプロというお話も出ています。先輩たちがプロ行きを決めていく姿を見てきましたが、プロへの思いはいかがでしょうか
田中 高校時代からプロは目指していましたが、大学に入って高校の時に思っていたプロサッカー選手とはまるで違う職業だと思うようになりました。ただサッカーだけ上手くてプロに行くというのは自分に必要なことではないな、それだったらプロには行かない方がいいなと感じるようになったので。早稲田でも、色々な考えを持っている人がいる中で、それぞれの考えを吸収して応援される選手になるべきだと強く感じています。そのような部分はサッカーの上手さだけではないので、本当に大学に入って良かったと思っています。大学生活を通してプロサッカー選手の現実も知りつつ、プロ選手の素晴らしさも感じるので。サッカーの上手さだけではなく、入ったチームや地域の人から本当に愛される、必要とされる選手になりたいと思っています。
杉田 自分も高校の時にプロを目指してやっていたのですが、実力が足りなくてプロにはなれないという現実を突きつけられた中での、大学4年間の挑戦で 。正直大学に来るまでは、大学進学が正しいのか分からなかったです。でも、3年間大学で過ごしてきて、得られるものはありましたし、高校の自分と今の自分では別の人間というくらいこの組織で成長させてもらったなと感じています。今の4年生がプロを目指す中で苦しんでいる姿は見ていますが、そこに自分も挑戦したいなという思いはより強くなり、もう一段階覚悟が決まりました。
――大学サッカーを経由したからこそできた経験があるということですか
杉田 はい。
――田中選手は憧れの選手として大島僚太選手を挙げられています。田中選手が思う大島選手のすごさを教えてください
田中 自分は川崎市出身で、川崎フロンターレを見て育ってきました。(大島選手は)ずっと見てきた選手で、相手との駆け引きをしたり、ボールを持ちながら攻撃の起点になったりしている選手だと思います。うまさも備えてシュートも打てて点もとれるという選手なので、本当に自分が目指す像というか。ただうまいだけじゃなく、守備もできて点も取れるという選手なので自分の目標です。自分もそのようなプレイヤーになりたいなと思っています。
――川崎のサッカーはどのような印象ですか
田中 フロンターレはサッカーもすごく面白いですし、プロモーションや広報などその他の部分にも力を入れているクラブだと思います。自分が最初見ていた頃は、全然観客も入っていない時期だったので。サッカーの魅力を伝えるだけではなくて、地域の人を巻き込み、プロモーションなどもやって観客を集めてきたと思いますし。そのような姿を見ているとやはり、あれがプロサッカー選手の素晴らしさかなと感じます。ア式も同じような部分を目指しているので、本当に良い例として参考にしていくべきチームだと思いますし、自分もあのようなクラブに入ってプレーしたいなと思います。
――杉田選手にとって名古屋はどのようなチームでしょうか
杉田 自分は(名古屋グランパスの)下部組織で育ててもらったので、注目して見ているチームです。フロンターレがどこまでやっているかは把握していませんが、名古屋も地域のファン、サポーターの皆様に対しての活動は積極的に行っています。それを見ると、プロサッカー選手でもサッカーだけをやっているのではないなと感じることができます。大学で得たものをプロサッカー選手として表現できる環境が整っていると思うので、今の生活と名古屋グランパスの活動を照らし合わせることもあります。
――杉田選手は学年リーダーとしてやってきて、どうしても下級生の頃は厳しく、自分を律してというところもあったと思います。そのあたりの話をお聞かせください
杉田 そうですね。正直1年生の頃は、同期をずっと叱ってきた部分があって。一緒にやりたいとは思っていましたが、もっとやってほしいなというのが正直な印象でした。ただ、年を重ねていく中で学年としてミーティングを積み重ねることで、尊敬できる同期が多くなりました。自分は結構突き放すような言葉をかけてしまうのですが、先日のミーティングで、同期からそれはどうなのかという話も出たので。良くなかったのかなという反省はあります。とはいえ、あのような場面で強く言うことで、学年を重ねるごとに本音を言えるようになってきていますし。そのような関係性ができたことは自分の中ではプラスに捉えています。
――杉田選手の学年リーダーとしての姿は、田中選手にはどのように映っていましたか
田中 自分は、本当に尊敬するというか。(同期に対して強く言うのは)絶対にきつかったと思うので。でも自分が1年生の時は、少し試合にも出させてもらいうまくいっていて。チームや学年に対してはあまり関われていませんでした。話を聞いていて、本当に当時は迷惑をかけていたんだなというのはすごく感じました。自分が1年生であまり関わっていなかった時は、同期は同僚というイメージが強かったです。でもケガなどがあった中で色々考えて、プロの話もそうですが、サッカーだけでは駄目だなというのは強く感じた部分ではあるので。そのような意味で、学年に対してもしっかり関わっていこうと思うようになっています。今は、来年同期と一緒にタイトルを取ることに向けてのミーティングをずっとしています。自分やマサはプロを目指しているので、サッカー人生はまだ終わりませんが、大体の人が卒業を期に10年近くのサッカー人生にピリオドを打ちます。同期と一緒に(良いチームを)作り上げて、最後笑って終わりたいなと思っています。
――お2人から見て、同期はどのような代ですか
杉田 他の学年に比べたら、真面目な人が多いなと思っています。自分が1年生の頃から言ったことはやってくれますし、話す中でも伝える部分はしっかり伝えるという感じで。他の学年からも真面目という印象があると思います。
――1個上は熱い代と言われていますが
杉田 1個上はエンジンが多い代なので(笑)。
田中 思いを表現するのが上手いですね。自分たちの代も思いを持っている選手はたくさんいるので、それをうまく自分たちなりに表現することは絶対に必要だと思います。
――今回、同期の大西選手と倉持選手にもお話を伺っています。そのお2人の印象もお聞かせいただけますか
杉田 めちゃくちゃたくさんありますね(笑)。倉持(快、人3=神奈川・桐光学園)は桐光(学園で一緒だった田中選手)に任せます
田中 あいつ自身も高校の時にケガがあって。高校3年生の時は、選手権やインターハイには出られなかったので、本当に苦しい高校3年目を過ごしたと思います 。高校からずっと一緒に過ごしてきて、大学も一緒にサッカーをすることになって。そんな日々も来年で終わりを迎えます。高校の時に悔しい思いをした分、来年は本当に良い景色を一緒に見たいなという思いはありますね。
――倉持選手のパーソナルの部分ではどうですか
田中 自分が高校時代キャプテンで、快が副キャプテンをやっていたので。そのような立場上監督から怒られることもたくさんあって。練習を外されて一緒に自主練習をすることもありました。それでもやはり高校の経験があったからこそ、今に生きている部分も絶対にあるので。本当に快はしっかりしていて頭もいいですし、優しいやつです。自分が(キャプテンとして)引っ張っていかなきゃいけない立場だった中で快が隙を埋めてくれていました。彼のそのような部分を信頼しています。
――大西選手に関してはいかがですか
杉田 大西(翔也、スポ3=浦和レッズユース)も倉持もそうなのですが、2人とも頭が良くて真面目でしっかりしている印象です。翔也に関しては、本当に陰で支えてくれています。キャラ的にも表にはなかなか立たないのですが、しっかりサポートしてくれますし、自分が困っている時には寄り添ってくれるような存在です。それはチームとしてもすごく助かるなと感じています。その分、自分の感情を押し殺しているのかなと思うこともあるので、そこも聞いてほしいです。また、大西に関してはサイコパスという話も出ているので(笑)。意味が分からないところでニヤついていたりとかして(笑)
田中 試合中も、自分と快と翔也という並びになった時に結構ふざけてしまうことがあるので(笑)。
杉田 ふざけたくてふざけているわけではないと思うんですけど。ちょっと不気味ですね翔也は(笑)。
田中 翔也は寮を出るまで同部屋でしたが、ずっと本を読んでいましたね。
杉田 翔也は、自分が読んだ本を感想も含めて、(Instagramの)ストーリーに載せたりするのですが、同じ本を2回載せたことがあって(笑)。ちょっとやっているなというのはありましたね(笑)。
田中 先ほど翔也は基本ふざけているという話をしましたが、逆に言えば、それだけ試合中もリラックスできているということだと思いますし、それはすごいなと思っています。もちろん試合中のプレーはすごく上手いです。サイドバックながらゴール前まで行ったりもして。
杉田 めちゃくちゃ試合中ミスしたらどうしようって考えるらしいよ。
田中 そうなんだ。
杉田 それでも、平然とした顔を偽っていると(聞いたことがあります)。あーって感じを出さないんですよあいつは。それも意識していると言っていたので、あいつやばいなとは思いますね正直(笑)。
田中 あの演じている感じね(笑)。
――来年は最高学年になります。ミーティングもしているというお話がありましたが、今の時点で来シーズンのチームの理想像などは話しているのですか
田中 基盤としては、今まで自分たちが経験してきた3年間というのがありますね。外池監督(大亮、平9社卒=東京・早実)は自分たちと一緒に入ってきた監督ですし、最後に良い結果を出して終わりたいなと考えています。自分が1年生の時から『日本をリードする存在になる』ということを掲げてきて4年目になります。そのビジョンをより体現できるような学年でありチームでありたいです。そこによりフォーカスして、より責任を持って取り組んでいきたいなと思っています。
杉田 先ほども話したように、自分たちの学年は優しくて真面目な人が多いです。そのような面でうまく下級生を巻き込んでいきたいです。本当に一体感のあるチームを自分としても学年としても目指しています。真の意味でそうなるための下級生へのアプローチや自分たちの姿勢にこだわりながら1年間やっていきたいと思っています。自分たちの学年が(持てる力を)最大限発揮するというのももちろん大事ですが、自分たちが掲げる目標を達成するためには下級生の力が本当に必要となってくるので。来年の理想は、全学年が本当に団結して目標に向かえるような一体感のあるチームです。
――下級生というお話も出ましたが、このチームでの戦いは多くても5試合となりました。改めてどのような4年生でしたか
田中 先ほども言ったように、本当に思いを表現するのがすごく上手な人たちだなと思います。僕たちは1個下の学年で、1年生の時から関わってきた4年生であるので、4年生のために自分は結果を出して、1月23日(の決勝)までやりたいなという思いがあります。1日でも長く4年生と一緒にプレーをして、次のシーズンを迎えたいです。
杉田 今年の4年生は、本当にチームのことを考えてみんなが行動をしてくれているなと自分はすごく感じますし、チームメイトもおそらく同じように感じているからこそ、4年生のためにという思いが自然と出てきているなと思います。だから雄大も言っていましたが、1日でも多く4年生とやりたいという思いはあります。そのためには結果が必要なので、それを自分たち下級生が出していかなければならないなと感じています。
――早慶戦の後に、西堂選手(久俊、スポ2=千葉・市立船橋)からは「4年生のためにも絶対に勝ちたかった」とおっしゃっていました。そんな4年生と戦うのも最後になります。全国大会に向けて個人としてチームとしてどのような思いで戦っていきますか
田中 まず個人としては、リーグ戦でなし得なかった、チームを勝たせられる選手になるというのを意識して取り組みたいと思っています。チームとしても難しい(シーズンの)中で、インカレもコロナの状況の中でどのようになるのか分かりませんが、今まで積み上げてきたものを形にできるようにやっていきたいなと思います。
杉田 自分は、天皇杯の予選の時に PK を外してしまって。4年生の Jリーグのチームと戦う機会を奪ってしまったというのは今も強く思っていて。だからこそ、インカレは4年生のためにという思いは人一倍強いと思います。その中で自分ができることをしっかりやって結果につながれば最高だと思うので、そこを目指してやっていきたいなと思っています。チームとしては、今年も目標として日本一を掲げているので、その目標を達成するチャンスが残っているからには、本当に全員が目指していかなければいけないなと思っています。
――天皇杯は杉田選手個人としてもやはり大きかったですか
杉田 そうですね。あれが復帰戦でもあったので。試合に出場できたのはうれしかったのですが、チャンスでも決められず PK も外してというところで。本当にやってしまったな、申し訳ないなという思いはありますね。
――あのあと一ヶ月ほど、リーグ戦のメンバーにも入っていませんでした。あの試合含めコンディションがあまり上がってこなかったのですか
杉田 軽いケガもあり、なかなかコンディションも上がらずという感じでした。
――最後に全国大会に向けての意気込みを教えてください
田中 自分がハードワークをして結果を出してチームに貢献できれば良いなと思います。個人としてプロの世界に行くために必要なことでもあり、やらなければいけない大会だと思います。チームのためにも、自分の将来を切り開いていくためにも頑張って取り組んでいきたいなと思います。
杉田 繰り返しにはなりますが、4年生のためにということでやりつつ、その結果として自分もアピールできればなと思っています。他の地方のチームともやれる全国大会というのが今年初めてではあるので、少しワクワクしています。
――ありがとうございました!
(取材、写真 橋口遼太郎、安岡菜月 編集 初見香菜子)
全国大会への意気込みを書いていただきました!
◆田中雄大(たなか・ゆうだい)(※写真左)
1999(平11)年12月14日生まれ。162センチ。神奈川・桐光学園出身。スポーツ科学部3年。ヨガにハマっているという田中選手。始めたきっかけは相馬勇紀選手(平31スポ卒、現名古屋グランパス所属)が朝ヨガをしていたことで、体幹を固めることよりも、ヨガの方が自分には合っていると感じるそうです!
◆杉田将宏(すぎた・まさひろ)(※写真右)
1999(平11)年11月24日生まれ。164センチ。名古屋グランパスU18出身。スポーツ科学部3年。毎朝、魚を焼くのが日課だという杉田選手。朝ごはんはしっかり食べたい派で、朝食の準備のために、早起きができるとのことです!