第2回に登場するのは、攻撃を支える4年生FW、MFトリオ。大学サッカーラストシーズンがイレギュラーな形になってしまった彼女たちの心境の変化とは。
※この取材は12月10日に行われたものです。
「ピッチ外にはゴールがないから…」(松本)
ピッチ内外での自身のギャップについて語る松本
――ではまずはじめに他己紹介をしていただきたいです。まず阪本選手についてお願いします
荻原 この子とは小学校から一緒の仲なんですが、すごくにこにこしていていい子オーラが出ています。でも自分自身に向き合える子だから、チームに対しても悩んだりとか、ギャップがありますね。にこにこしている反面、すごく真剣にいろんなことを考えている真面目な部分があります。
松本 未周と知り合ったのはまず高校選手権の決勝での対戦相手でした。そのあと自分が、バスに乗る前に未周に「来年よろしくね」って。
荻原 こわ(笑)。
松本 でも未周はその時に、勝ったチームに言われたからムッとなるかと思ったのに笑顔だったから、その時からけっこう好印象(笑)。いろいろ悩むこともあったけど、未周は自分のペースで自分の道を切り開いてる感じですね。マイペースとは違うんだけど、しっかりしてるから、人に流されることは本当にずっとないですね。
――「真面目」とか「人に流されない」とか言われていますがどうですか
阪本 そうですね(笑)。
松本 ちょっと一ついいですか。サッカーに関しては流されないけど、食に関しては基本流されます。
阪本 流されるっていうか流し込んでるよね。
――では優花さんについて、お二人から他己紹介をお願いします
阪本 小学校からずっと変わらないです。変わらず荻原優花っていうのがいて(笑)。人のこともちゃんと受け入れるけど、自分の芯というか考え方の軸がずっとしっかりある感じ。でも小学校の時はお互い子供だったから分からなかったけど、大学に入ってからおぎの優しさとか、人のことも自分のことのように喜べる、人としての温かさを感じるようになりましたね。
松本 最初はけっこう不思議でした。どんな人か分からなかった。いつから分かったか分かんないけど、おぎの気持ちとか、いろんなところで、表情も豊かだし、何考えてるのか何となく分かる。だから「何があったの?」とか聞かなくても、そのままおぎを見ていれば平気だなっていう。それが問題っていうことではなくて、いいことを考えてるから、おぎ自身がこれは変えた方がいいっていう部分は自分から発信してくれるし、人の意見も聞けるし自分の軸もちゃんとあるから、協調性があるというか。話し合いも円滑に進むし、喧嘩にはならないですね本当に。おぎ自身が自分の主張だけをするんじゃなくて一度みんなの意見を受け止めてからまとめて返してくれるので、そこはいいですね。
荻原 ここにきてすごいよいしょしてきた(笑)。
阪本 わざわざいつも言わないからね(笑)。
――お二人からこう言っていただいていますがいかがですか
荻原 恥ずかしいですね。普段こんなこと言ってくれないから。
――では松本選手に移りましょう
荻原 茉奈加さんはそれこそ1年生の時から印象が変わらないですね。うまくなるためのことをするっていうイメージで。自分が上手くなるためのことを探してアクションを起こしてるってイメージです。サッカー好きなんだろうな、この子からサッカー取り上げたらどうなっちゃうんだろうなっていうくらい。
阪本 めっちゃ分かります。サッカーが上手くなることに貪欲というか、そのために先輩とか後輩とか関係なくいろんな人から話を聞いたり。自分からアドバイスを聞きに行くことがちゃんとできるっていう。私生活ではめっちゃネガティブなんだけど、サッカーになったら、ピッチにいるときに背中が2倍くらい大きくなるというか(笑)。でもそういう繊細な面があるからこそ人にやさしくできたり、人一倍人のことを見て、どうしたのとか声をかけられたり、そういうのに助けられたなと思います。
松本 正直その通りだなと思います(笑)。自分でも本当はピッチ外でもピッチみたいにしてたいんですけど、まあピッチが強すぎるんですけど、外でももう少し自身を持ちたいっていうのが4年間あったんですけど、本当に自信はないですね(笑)。
――その切り替えって?
松本 サッカーってゴールがあるじゃないですか。でも外だとゴールがないので(笑)。過程があってのゴールがあるけど、過程でどこに行くべきか分かんないから…。分かんないけど(笑)。ゴールがあれば自信はついてくるんですけど、人生にはないので(笑)。
――今ゴールの話が出ましたが、コロナがあったことで、自分たちのゴールをどこに置くべきか分からなくなった時期も続いたと思います。活動休止期間を振り返っていかがでしたか
阪本 本当にだれも経験したことがなかったんですが、4年だからというのはずっと頭にあって、だから動揺するよりもまず何か手を打たなきゃいけない。チームが物理的にばらばらになるので、だからそんな中でも気持ちだけはずっと『頂』というものに置いていたり、こういうときだからこそ自分たちの理念である「人にいい影響を与える」というのを体現しようとやっていました。そのために、ばらばらになっていてもア式蹴球部女子部としてできることをやるというか。だから、何が正解か分からなかったですがとにかくできることをやろうと思って。自分は広報だったので、SNSを通じてア式蹴球部女子部として発信できることをみんなに協力してもらったりとか、チームの中でもメニューを一人一人がチームに対して作ったりとかしてました。
――それによってチームに変化はありましたか
松本 筋肉の部位ごとにやってたんですが、サッカー的な部分は難しかったけど、コミュニケーションとしてはとれたかなと思います。
――優花さんはいかがでしたか
荻原 目標自体はずっと変わってなくて。『頂』というものがあって、チームの理念、人にいい影響を与え続けるというのはぶれることがないようにというのは考えてました。そして活動ができない中で何ができるか考えたときに、広報活動だったり、部員ブログとか、部外に対して発信できることを部の理念に乗って各々がやり続けたという感じでした。あの期間は一年生が入ってすぐだったのでなかなか1年生をどううまく包み込んであげられるかが難しかったんですが、ZOOMとかを使ってうまくコミュニケーションを取りながら、ただ話すだけじゃなくてトレーニングを一緒にやるとか、孤立させないよう、飲み込めるよう、うまく考えていました。
――監督が変わったことについては?
荻原 監督は代わったことには代わって、たしかにメニューに関して違う部分はあったんですが、あくまでもア女は学生主体で作り上げるということなので、そこまで大きなずれはなかったですね。
松本 休止期間に意識していたことは、二人が言ってたことはたしかに自分も思っていたとは思います。でも、最初本当にコロナが来て思ったのは、自分本当に死ぬんじゃないかってこと(笑)。あとは、今年1年サッカーできないんだろうなって思いました。2、3月の練習メニューがすべてパーになったのがすごい最悪と思って、積み上げてきたのにできなかったことが悔しくて。その体力を落とさないようにするというのが自分の中ですごくあって。自分は2人みたいにしっかり考えて、言葉に重みをもって言えるタイプではないと思ってるから、自分はもっと得意なところを、ちょっとかちっとしすぎるところをふわっと、和やかにするところを頑張っていこうかなと思っていました。
――では中断期間中に何をしていたか伺います
松本 テニスボールリフティングにはまっていて。自分はそういうのめちゃくちゃ苦手なタイプなので、とりあえず毎日やってみようと動画を撮って、最初は10回くらいしかできなかったんですが、最後は40回くらいできるようになって終わりました。あとは車の運転ですかね。自粛で実家に帰っていてちょうどその時期に免許も取っていたので、車の練習をしてました。
荻原 私はそれこそグランドに行けなくてボールが蹴れないから、何年ぶりかにサッカーボールを買って、リフティングとかをしてましたね。一人でできるような技をやったりとか。あとはあるあるですがAmazonプライムでひたすら映画を見てました。いろんな映画を見てて、けっこう古めの洋画とかを見てました。おすすめは、トゥルーマンショーですかね。めっちゃおもしろいので、おすすめです。
阪本 自分は、ずーっとどうぶつの森。現実よりもあっちの世界で生きていました(笑)。井上萌(スポ2=東京・十文字)と一緒にやってて。
「自分は思っていたよりサッカーが好きなんだな」(阪本)
自粛期間を振り返る阪本
――大学サッカーのラストシーズンがこうしてイレギュラーになって、心境の変化はありましたか
荻原 私の性格もあるかもしれないんですが、ずっと変わらなかったです。ずっと、日本一を獲るというのが自分の中にはあって。そのために今できることをひたすらやり続けるというのはシーズン初めから思っていたので、変化はなかったです。だからあまり活動ができない不安は、自分の中でやりたいことがはっきりしてたからなかったし、チームがどうこうというのはありましたが、個人としてはやることは決まっていたので。
――そのやることとは何だったんでしょうか
荻原 自分はシーズン当初からけがをずっとしていてプレーができていない状況だったので、リハビリとか。食事も意識しましたし、もう復帰するためのことをずっとやっていました。
――今もそれは変わらず?
荻原 はい。
阪本 自分は、自分が思っているよりもサッカーが好きなんだなっていうことに気づけて、嬉しかったです。それまで自粛に入る前は、ボール蹴ってる姿を人から見られたときに、「本当にサッカー好きそうだよね」とか「楽しそうにボール蹴るよね」とか、けっこう言ってもらってたんですが、自分としてはそんなことないんだよなと思ってたんです。自分の中の一つのタスクというか、決めた目標があって、そのために毎日やってるだけというか。楽しさ以上に、やらないといけないというか、使命感を感じていたので、それが一回遮断されたときに、初めてボール蹴りたいなと思って。あと、すごく晴れてて観客もたくさんいて、試合前にみんなで円陣組んで、がんばろうって言ってるときにわくわくしすぎて目が覚めるとかもあって(笑)。あ、自分ってこんなにサッカー好きだったんだ、というのに気づいて、今もその余韻でやっているという感じです。
――それまではつらかったんでしょうか
阪本 毎日追われてるというか。何にかは分からないんですが、オフでも動かなきゃとか、自主練しなきゃ、人より動かなきゃとかあったんですが、それが自分の中で重荷で。ちゃんと自分の好きなことができてると分かってからは、心が軽くなりましたね。
松本 6月8日からシーズンが始まって、その時は正直不安があったんですが、シーズンが始まった感じがしたのが、自分としては初戦、関東リーグの東洋戦でした。そこで初めて始まったと思えて。でも、変わってないからあんまり覚えてないのかなと思うんですが。でも勝たなきゃいけない、関東リーグは12連覇、皇后杯4連覇、インカレ奪還とか、毎年同じような流れだったから、気持ちの変化とかはあんまりなくて。今年は最後の年だったし、どうなるんだろうって思って、楽しみと少し不安というのはありました。
――皇后杯、関東予選4連覇ができなかったことなどありましたが、チームにとって転機になった、特に印象に残っている出来事はありますか
阪本 筑波で負けたのと、皇后杯でハリマに負けたのと。
松本 自分としては神大戦ですね。関カレの。
阪本 負けだね全部。負けて気づくというか。
――負けからどんな学びを得ましたか
阪本 それまでの取り組みを後悔するということではなく。その時はちゃんとみんな全力でやってたんですが、どこかで勝つことに慣れちゃってるところがあって。そこを何度も、自分たちが獲りたいのは日本一で、そのために何が足りてないとかを毎回の負けで改めて思い知らされるというか。今までも課題はちゃんと見てきたけど、勝ててたっていうのがあったから、どこかに課題をちゃんと受け止めきれてなかった部分がありました。でもちゃんと負けを受け止めることで一回課題と向き合ったり、そういうのに気づけたかなと思います。
荻原 似たような話になりますが、やっぱり慢心というか。みんなレベルが高いので勝ててしまう部分があって、自分はそれをピッチ外から見てて嫌だな、どこか変えたいなとはずっと思っていたんですがなかなか変えられず、負けてやっと気づくというか。言い方は悪いんですが、負けてよかったと思っている部分はあって。もちろん負けたくないし、どんな試合も落としたくないです。でもやっぱりチームの成長や気づき、一歩上の段階に進むためにはそういう挫折というか、負けという目に見えるかたちとして、事実をしっかり受けとめることで気づけることもあるし、また何か変わるアクションもあるだろうし。負けたことに対して私はそんなにネガティブには捉えなかったです。
松本 負けから学ぶというのは、自分的にめっちゃ悔しいし嫌なんですが、でも本当に負けて何が足りなかったというのは絶対考えるし、その考えるというのは負けたらできるというのは正直あって。未周もおぎも言ったように、やってきたことは全然否定することではないんだけど、負けたっていうとそれが証明されちゃうわけで、それはそれで次に行くためのステップアップになる負けだったっていつもポジティブに考えていて。負けていいことなんてないんですが、負けから強くなるというためには必要かなと思っていて。常勝軍団って言われてるから、勝ちが当たり前になってて、相手がそんな強くないから勝てる自信があると思うんですが、そこで圧倒できるのか、そこで満足してしまうのかは全然違うので、全力を出せるなら負ける必要はないけど、負けてはいけないけど、負けて得るものはア女には絶対必要。慢心になるんだったら一回折れた方がいいというか。本心は負けたくないですけど(笑)。でもそれが積み重なって、ア女という組織が分厚くなるならそこはいいかなと思います。
――攻撃系ということで対談を組んでいるんですが、今年は攻撃陣が厚いと思います。後輩に対する評価はいかがですか
松本 生意気ですね(笑)。とりあえず生意気なんですよね(笑)。いい意味もあるんですが、下だからとか関係なく自分のプレーをちゃんと出せるというのは強みだし、そのトップレベルの2年生2人が4年生になったときは楽しいだろうなというイメージは湧いています。自分もFWとMFとやることはあるので、負けたくないという気持ちはありますし、負けてるつもりもないですが、あの二人といると、まずひろ(廣澤真穂、スポ2=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)だったら、キープ力もあるし、何人に囲まれてもドリブルで打開したりとかポイントになったりとか、そういうプレーはすごいなと素直に思います。献身的だし、常にやっぱり自分がゴールを決めたいという気持ちが一番出ている選手だと思うので、点を取ったときは、うれしい、さすがだなと思う反面悔しいという気持ちがありますね。ひな(髙橋雛、社2=兵庫・日ノ本学園)に関しては、あまり喋らないというか、淡々と自分のことをやるタイプだけどすごく中には熱いものをずっと持ってて、自主練とかでも自分のかたちをひたすらやり続けるし、コミュニケーションも取れたし、ゴールに入らないという時期を乗り越えて本戦とかでも点も取れるようになったし、今年の1年で変わったなという印象があります。
荻原 やっぱり2人とも自分の課題にすごく真剣に向き合っていて、それを克服するための努力量がまずすごいなと思います。毎回練習終わるたびに2人は自主練すぐ入ってすごいなというか。そういう貪欲さがFWだなって思うし、向上心もそうだし、点を取ることに対してもそうだし、サッカーに対してすごく貪欲な2人だなと思います。やっぱり新監督になって改めてサッカーを教わることが増えたので、それによる吸収量もすごかったと思うし、そういう面も含めて外から見てすごく成長を感じてます。
阪本 1年とかで言うとわかな(三谷和華奈、スポ1=東京・十文字)とか。やっぱりわかなとかがのびのびと、1年目って感じさせないくらい自分のプレーをしてくれて、うれしいなと思います。それだけのチームが作れてるという証だと思うので。個人的には、ひなは一皮むけたというかそれが嬉しいなと思います。これまでなかなかうまくいってなくて、それをひな自身は自分から出したりしないんですが、自分の中でいろいろ吸収したり考えたり自主練したりして、今はちゃんと結果を残しつつ、点を取るだけじゃなくて、それ以外の仕事も守備から全部やってくれる、めちゃくちゃいいFWだなって思います。心から嬉しいなって、毎試合後ろから見てて思います。
阪本 あと自分的にはのんちゃん(加藤希、スポ3=アンジュヴィオレ広島)。けっこうずっと真ん中の選手だったけどサイドに行って、サイドでものんちゃんらしさというか、のんちゃんを中心に右サイド組むというのがあって、そういうのがあるから監督ありがとうという感じだし、サッカーが今すごく楽しいし、後輩には感謝しかないです。
――チームの出来を100点満点で表すと何点でしょうか
荻原 もともと理想が高いのは大前提にお話しするんですが、6割くらいですかね。というのも、自分たちが目指していたのはもちろん日本一もあるんですが、なでしこリーグのチームに勝つというのももう一つあって。やっぱりそこができなかったというのは、何か足りないところが自分たちにはあって、細かいところかもしれないんですがそうした違いがあったから勝てなかったと。まずそこを詰めて、もっとできる、残り少しの期間でまだできるという期待を含めての6割ですね。
――なでしこリーグのチームに勝つために、ア女に足りなかったものというのは優花さんの中でどのようなものでしょうか
荻原 たぶんそんなに大差はないと思うんですが、やっぱりちょっとしたパスのずれだったりとか、ちょっとした質の違いとか、動きの違いとか、予測とかの部分、すごく細かいところなんじゃないかなと思っています。シーズン頭から比べたらすごく成長していると思うし、守備に関しても攻撃に関してもチームでうまく連動してできている部分はすごく増えてきているんですが、じゃあ点を取るために、ゴールを奪うためにもう1つ2つ足りない部分、例えばイメージを作ることもあるかもしれないですし、一つのパスやボールタッチ、動きなど、すごく細かい部分が足りないし、まだまだ全然積み上げられる部分なのかなと思います。
阪本 自分は、72点(笑)。積み上げられてるものはちゃんとあるんですが、今のチームに足りないのは、勝負を決める力だと思っていて。前に皇后杯予選くらいの時期に得点力を課題に挙げていて、そのころよりは確実に点が取れるようになって、去年までとは違って誰が取ってもおかしくないような状況を生み出せてはいます。でもその分一人一人のここぞという時の強さの違いを、最近のなでしこリーグとの違いを感じて。精神論で片づけるわけではないけど、ア女はみんな上手いからきれいにサッカーをやってしまう。だけど、最後はどういうかたちでそれがきたってゴールに入らなければ終わってしまう。逆にぐちゃぐちゃでも、何とか押し込んで入ることだってあるし、そういうところを一人一人がもっと強く出せれば、チームとしてできたらいいんじゃないかと思って。最近またその必要性に気づいてたんですが、でも前よりはちょっと上がったなっていう2点(笑)。
松本 私は70点くらい。未周が言ってたことにすごく共感してるんですが、サッカーをもっとシンプルに考えていいんじゃないかな、って。もっとやることとか当たり前の基準とかは練習の中で高まってきてるんですが、でもサッカーってゴールを取ってなんぼの競技だし、頑張ってゴールを取りに行くのがあるんだったら、シンプルにゴールを狙ったり、シンプルにプレーしたり、理想が高いからこそやれるし、こういうことをしたいっていう高いレベルの中でやってきたと思うけど、そこに強さを加えればもっと強くなれると思うから、期待を込めて70点です。
――それでは、個人として今季を振り返っていただきます。まず、松本さんにお聞きします。1年時から出場機会を得て、3年時はスタメンとして活躍されました。現在はスーパーサブという役割にどのような思いを持っていますか
松本 いい気はしないですよね。でも、逆に言えばここでスーパーサブと言ってもらえるぐらい出場機会はスタメンの人の次にあると考えた時に、自分のやらなきゃいけないことに目を向けたら、限られた時間で自分のいい部分をどう出すかということになってきます。結構自分との闘いっていうか、人と比べたってしょうがないことですし、自分が今出ている人よりも出来ることはないかということを常に考えて練習しました。折れそうになることもあったけど、折れそうになる心を支えてくれたのや同期だったり、出れていない選手の頑張りでした。自分なんかが折れちゃいけないと思わせてくれる仲間がいっぱいいたので、自分はこの1年間いろんなことがあったけれど(仲間が)純粋にサッカーを楽しめる環境にしてくれたなってすごく感謝してます。自分が出るときに思うのは、自分だけの出場機会じゃないと思っているから、やっぱり無駄にしたくないし1分1秒それくらいの時間しかなくてもどう結果を出すか、どうチームを助けるかということにフォーカスを当てているので、やることは明確だから変なところに目を向けないで勝つためにはどうするのかということに常に目を向けるようにしています。
――荻原さんは、けがもあってプレイヤーとしての出場機会には恵まれない中で、熱い気持ちで発信をすることを心掛けていらっしゃるかと思います。ご自身のア女の中での役割は何だとお考えですか
荻原 自分がどんな状況に置かれていようと、今シーズンが残りわずかであろうと、選手としてピッチに立ちたいという思いは誰よりも強く持っている自信はあるし、絶対にあきらめたくないです。それまで果たせなかったことがたくさんあるからこそ、足を引きずっていようが何をしようが、なんとしても絶対に選手としてピッチに立ちたい、選手として日本一を獲りたいという思いはずっとあります。自分の中でそれを何とかして達成したいという思いがあるゆえに熱くなっちゃうというか、もしかしたら求めすぎる部分があったかなと思うのですが、いくら自分がピッチに立てたからといって自分ひとりの力で日本一を獲ることはできません。サッカーはチームスポーツなので決勝まで行く過程もそうですし、決勝で最後勝つということもそうですし、全部の過程において全員の力が必要になるので、だからこそ勝つためにできることをやっていかなきゃいけないという思いで発信してきました。
――ブログで「ア女としての強さを感じない」「緩みがあるのではないか」ということを発信されていましたが、どのようなところから感じたのでしょうか
荻原 勝てていた時期でチームとしてできることが増えてきて結果も出せていた時期で、選手たちは全然感じていなかったと思うんですけどどこか満足してるんじゃなかな、本当にこれでなでしこリーグのチームを倒せるのかと率直に感じました。だから自分たちが目指しているのはどこというのを気づかせたかった、できていることは増えているけれどそれだけでいいのか、本当にそれで日本一になれるのかっていうところまで突き詰めてほしかったがゆえにあんな感じになりました。
――試合勘は置いておいて、今は出場できる体はできていますか
荻原 そうですね。結構不安要素はありますが、この体なりにできることは練習の中でいろいろと見つけられてきているので、試合でやってみないと分からない部分や、メンバーによっても自分のプレースタイルを変えなきゃいけないこともあると思うんですけど、それでもできることは色々見えてきたのでまだやれるチャンスはあると思います。
――阪本さんもシーズン途中までは2人のように悔しい思いをされていたかと思います。でも、今はスタメンを勝ち取るまでに好調になった要因を教えてください
阪本 自分の中で一気にプレーが変わったという感覚はあんまりなくて、今まで3年間ほとんど出られなかったんですけど、メンバーから外れて紅白戦にも出れない時もあったのですが、文字通り泣きながらボール蹴ったり一人で会泣きながら走ったりということをずっと続けてきて、その延長で今があるという感覚なので、ある日を境にとかはないですね。今何をしているから、今どういうメンタルでプレーしているからというよりは、本当に3年間積み上げてきたものが今やっと実っているのかなという感じです。
――仲間への想いも聞かせていただけますか
阪本 3年間(試合に)出ていなかったので、誰よりもピッチに立っている11人以外のメンバー気持ちが痛いくらい分かるというのが自分の強さだとも持っています。本当の意味でそういう人たちの気持ちを背負って戦うのが自分に一番できることだと思うので、そういう意味で1分1秒手を抜いちゃいけないし、そういう姿や戦いを一瞬でも見せちゃいけないと思っています。今ここにいる2人もそうですけど、自分が出れない時期も(支えてくれた仲間に)一生かけても返せない恩がたまりにたまっていて(笑)。ここにいない人たちの思いにもすごく助けられてます。1年生の時から練習後毎日泣いてましたね。悔しすぎて。だからそういう自分を見ていてくれた人たちが、今自分が試合に出て点を決めたりした時に一緒になって喜んでくれるのがすっごく嬉しくて。ゴールを決めたこと以上に、仲間の存在があることにすごく幸せをかみしめていて、だからこそあと1か月もないけれど、自分はその人たちのために戦いたいし、その人たちのために勝ちたいなってずっと思っています。
荻原 シーズンが始まるときからずっと思っているんですけど、単に日本一になるだけじゃなくて(試合に)出ている人も出ていない人も学生スタッフも、全員が心の底から日本一を納得して喜べるチームを作りたいと思っています。それぞれの立場での全力を出してほしいなと思っていますし、それが結果につながってくるので、常に全力であり続けてほしいなと思います。
松本 ア女に入って本当に仲間の大切さ、心の底から応援してもらう側もする側も経験したから、本気で出ている人を応援できるということは、日ごろのその人のプレーがなければできないことだから、ア女はそれを考えているので、自分の中で素直に応援できない時期もあったと思うけど、その人たちも責任をもってやっているのが見えるし、見えない時はもっとやれるだろうと言いますけど、基本的に思いを持ってやってくれている人がピッチ内にいるっていうのがすごく安心だし、だから気持ちを託したい。スタメンにはそう思うんですけど、普段ア女にいる皆に思うのは、サッカーとそうだけど、サッカー以外の部分でも助けられている。やっぱり女子って色々あるじゃないですか(笑)。でもそれがないんですよ。本当に家族みたいな感じなんですよ。自分はみんなのこと家族だと思っていますし、初めてそう思ったんですよ。結構自分昔から仲間はライバルだと思っていたんですよ。でも、プレー中も日常でも家族みたいに思っているし、自分も助けられるし、自分も助けたいと思える仲間、ア女のみんなに会えたことは本当に良かったし、あと1か月で終わっちゃいますけど、自分の愛を届けられたらいいと思います(笑)。
「(インカレでは)4年生全員を見てほしい」(荻原)
同期全員への思いを語る荻原
――最後に、インカレについて伺っていきたいと思います。注目選手を挙げるとしたら誰でしょうか
阪本 和夏(船木和夏、スポ2=日テレ・メニーナ)かな。結果だけ見るとゴールを決める人が注目されたり、派手なプレーをする人に注目が行くと思うんですけど、やっぱりサイドバックから試合を作っているのは和夏だと思っています。速報とか結果には見えないんですけど、攻守に置いてア女のサッカーを組み立ててくれるのが和夏だと思うんですけど、今年に入って人間的に変わった感じがします。今までの自分に対してめちゃくちゃストイックにやるっていうのは変わらないんですけど、プラスアルファで「なんとかしろ」じゃなくて「なんとかしたらいいよ」ってチームにプラスに声をかけるのがどんどん出てきているので、そういう意味でも去年以上の活躍を見せてくれるんじゃないかなと期待しています。
荻原 多いんですけど、4年生全員を見てほしいです。プレーもそうだし、姿というか4年生のすべてを見てほしいです。
阪本 一人ずつ解説して!(笑)
荻原 まずキャプテンの佐和子(鈴木、スポ4=浦和レッズレディースユース)に関しては、あのチームのゴールを守り続けてきたたくましい肩といい、後姿をしっかり目に焼き付けていただきたい(笑)。
松本 広めのね(笑)。
あとキャプテンとしてすごく責任感をもってこれまで1年間やってくれたので、そういうキャプテンシーを見てほしいなと思います。次にとみー(冨田実侑、スポ4=岡山・作陽)は色々けがとかもあってなかなか思うようにプレーできない時期があったと思うんですけど、それでも自分の中での葛藤だったり嫌な思いをしてきたと思うので、そういう人のプレーには人を惹きつける力があるんじゃないかなと私は思っています。とみーがちっちゃいながらにも持ち前のスピードでピッチを駆け抜ける姿を見ていてほしいです。で、呼子(佐々木、スポ4=宮城・常盤木学園)は後ろからの声掛けとか、シュート性の鋭い縦パスですね。
阪本 まじであれ収めるの難しいからね(笑)。
荻原 素晴らしいパスを後ろから供給してくれるので、それを見ていてほしいです。未周はすごく気の利くプレーができて、そもそも運動量がすごくあるのでプレー一つ一つもそうだし、個人的には未周の得点にも期待しているのでそういうところを見ていただきたいと思います。次は真帆(村上、スポ4=東京・十文字)はいろいろあるな。運動量がすごいし、いろいろパスのバリエーションもあってチームの攻撃を創ることができるので、そういう視野の広さだったりキックの精度を見てほしいです。個人的にはセットプレーからの得点を期待しているので、そういうところを見てほしいです。まつは得点!一番と言っていいくらい得点を期待しているし頼りにしています。まつがボールをもってゴールに向かうと点が入るんじゃないかっていうわくわく感があるので、そういうゴールに突き進む姿からの得点をぜひ期待してみていただきたいと思っています。涼朱(川端、スポ4=東京・十文字)はビルドアップがすごく上手なので、チームのリズムを作ったりとかできる選手なのでそこを見てほしいし、人一倍チームへの思いが強いし日本一に対してほんとはすごく熱いところがあるのでそこを見てほしいです。たか(菅原貴幸、スポ4=福岡・八女学院)はもしけが人が出てしまったときの初速の速さを見ててほしいです。
阪本 めちゃくちゃ速い(笑)。
松本 フォームのきれいさね(笑)。ぶれないから。
荻原 左足の絶妙なキックね。アップとかでボールを蹴っている姿を見ることがあればぜひ(笑)。以上です!
松本 どうしようかな。自分的に和華奈(三谷、スポ1=東京・十文字)かな。なんでかって言われると気持ち悪いけど…。気持ち悪いっていったら言いづらくなっちゃった(笑)。
一同 (笑)。
松本 親近感がわくというか、寮が一緒なんで食事とか一緒なんですけど、いろいろ話していてもプレーにおいてボールをこういうタイミングでほしいというのがめちゃくちゃ合うんですよ。プレースタイルは一緒かって言われたら違うんですけど、1年生なのに堂々とプレーして試合で自分の良さを出せるところが期待できるし、自分は同じポジションだった時もあるから思いをのせることが出来るというか、「まあやってくれるでしょ」っていうことを思っているからこそ和華奈が出ることに嫌な気持ちがまったくなくて、全員そうなんですけど、スタメンが決まった時にはみんなやってくれるって思っているけど、和華奈を特に注目選手として挙げています。見てほしいところはアップの時からそうなんですけど、シュートの威力。あのお尻と太ももから繰り出されるシュートはえぐいんで(笑)。
荻原 もう男子だよね(笑)。
松本 あと、速いのにタッチとか切り返しがうまいのでそこはみんなに見てほしいですね。
――ご自身の注目ポイントは何ですか
松本 自分が(ボールを)持った時にみんなにわくわくしてほしいですね。そう思わせられるようなプレーが絶対できると自分では思っているのでゴールまで行く姿を見てもらいたいです。
荻原 まずインカレの舞台に私が立っているというその姿自体を見てほしいというのがひとつと、プレーに関して言うなら絶妙なシュートで(笑)。
阪本 なんだろう…。自分のプレーがもともと派手じゃないというか、気づかれないところに良さがあると思っているので。そもそもずっとサイドハーフでやってきたのでボランチとしてインカレに出るのは初めてで、そこからの転身ぶりかな(笑)。
――最後に、インカレへの意気込み、熱い気持ちを聞かせてください
阪本 個人的には、ずっとスタンドから見る3年間で正直同じチームだったけどちょっと遠い存在だと思っていました。でもその中でも自分が自分なりに積み上げてきたもの全部が報われるのがこのインカレだと思っているので、今までの自分のためにも最後の最後にピッチの中で日本一を獲ってみんなで喜びたいなというのがすごくあります。それが自分が報われる瞬間だと思っているので、そこは何があっても絶対に譲れないです。チームとしては、今年コロナだったり監督が変わったり、いろいろあって後輩たちを振り回してしまったかもしれないという感覚がありました。その中でもついてきてくれて、自分たちの良さをチームにどんどん還元してくれて、ついてくるだけじゃなくて後輩とか関係なくみんなで作り上げたのが今年のチームだと思っています。去年も一昨年もあと一歩で届かなかった『頂』を絶対に獲ります!!
荻原 個人的にはピッチに立つことも、日本一を獲ることも最後の最後まで絶対に諦めません!!チームに関しては、自分たちが1年生の時には一応日本一は獲ったのですけど正直自分も含め、出てなかった選手に関してはいまいち実感がない。私の中では他のチームを見ているような感覚で、私はそれがすごく嫌だったので。最後今年しか日本一を獲る機会はないので、そこだけじゃなくて、チーム全員が当事者として日本一を実感できるようなチームを最後の最後まで作っていけたらなと思います。
松本 いつの間にか最後になってしまったインカレなんですけど、自分はインカレで点を取ったことがないので今年こそはどうにか点を取れるように、まず出るチャンスがあるようにずっと準備してきたので、それが実になるようにしたいです。1年生で優勝した時、自分もベンチ外だったので、そのベンチ外ということも悔しいし優勝に自分はなにか関われたのかという意識がずっとありました。自分が年を重ねるごとに思うのは、本当に一人一人がこのチームで優勝した、優勝に関われたと思えるチームを作ることです。優勝しないとそうは思えないと思うので、まず優勝することは大前提だけど、それがチームの仲間みんなに思ってもらえるように、あと1か月最後やれることをやって笑顔で卒業できるようにしたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集・写真 手代木慶、朝岡里奈)
インカレへの意気込みを色紙に書いていただきました!
◆荻原優花(おぎわら・ゆうか)(※写真左)
宮城・常盤木学園出身。スポーツ科学部4年。誰よりも熱い思いを持つ荻原選手。インカレの舞台でも「私らしく輝き」ます!
◆松本茉奈加(まつもと・まなか)(※写真右)
東京・十文字出身。スポーツ科学部4年。観客をわくわくさせるプレーが魅力の松本選手。「魅せる」プレーでア女を勝利に導きます!
◆阪本未周(さかもと・みちか)(※写真中央)
大阪・大商学園出身。スポーツ科学部4年。今季からボランチに転身し、ア女に欠かせない存在となった阪本選手。努力を続けた「大器」が、インカレの舞台で「晩成」します!