【連載】第70回早慶サッカー定期戦直前特集 第10回 金田拓海×栗島健太×牧野潤

ア式蹴球特集

 昨季の関東大学リーグ戦(リーグ戦)優勝に貢献したMF金田拓海副将(社4=ヴィッセル神戸U18)、MF栗島健太(社4=千葉・流通経大柏)、DF牧野潤(スポ4=JFAアカデミー福島)。今季は開幕から厳しい戦いを強いられた中で、現状をどのように捉え、学生生活最後の早慶戦にどのように臨もうとしているのか。幅広くお話を伺った。

※この取材は6月21日に行われたものです。

「試行錯誤しながら中断期に入っている」(牧野)

常に攻撃を考え、守備をする牧野選手

――今年のチームの雰囲気はいかがですか

牧野 1年生が試合に出ていますし、1年生から4年生まで全体で一つのことに向かってやっていける感が去年と比べて強いかなというのは感じます。

金田 僕たちの学年は、静かな人も多いですし、盛り上げるようなタイプではなくて、背中で引っ張っていくタイプが多い中で、3年生だったりは声で引っ張っていく選手が多いので、バランス的にはいいと思います。

栗島 雰囲気がいいとは言えないんですけど、その中でそれぞれの学年であったり、立場の人たちが考えて動くということに関しては、自分たちは成長しているんだなと感じています。

――1年生はどういった選手たちですか

金田 試合に出ている選手たちは、4年生とか3年生とか年上とかは関係ないといった、メンタル的に強い選手が多いので、自分たちは歩み寄ったりとかはないんですけど、1年生がびびったりしないというのがあるので、そこはいいところだと思います。

――外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)2シーズン目を迎えていますが、現段階でいかがですか

牧野 新しく学生コーチを入れて、今年もいい結果を出そうとしている中で、前期の成績を見ても分かるように、あまりうまくいかないところが多かったです。そういう中で監督だったり、学生コーチに頼るのではなく、選手たちでやるという意識が、勝ち始めた東洋大戦くらいからより強くなってきたので、これからは学生コーチだったり外池さんをうまく利用しつつ、自分たちがやりたいことだったりを出していかないといけないかなという感じです。

金田 学生コーチなどを新たに取り入れた中、学生コーチ自身も教えるということに関しては今年が初めてで、練習メニューはほとんど任せっきりという状態があって、自分たちが何をしたいのかというのがよく分からなくなったりというのがプレーでもありました。そこを東洋大戦くらいから自分たちでどうやって点を取ろうというのを学生コーチとの間で話し合って、クロスで点を取ることとかに至ったので、もっと自分たちから早めにアクションを起こさないといけなかったのかなと思います。

栗島 基本自由にできるので、学生コーチとかができたんですけど、戦術面とかを重視し過ぎて、サッカーの本質でもある球際とか、切り替えとかがおろそかになっている部分があったので、今はそこを上げられるように取り組んでいます。

――昨年はショートカウンターが主体で、今年は後ろからのビルドアップをテーマに据えていましたが、勝ち始めてからカウンターの色が強くなったように見えました

金田 昨年は相馬くん(MF相馬勇紀、平31スポ卒=現・名古屋グランパス)であったり、岡田くん(FW岡田優希、平31スポ卒=現・FC町田ゼルビア)であったり、個で突破できる、局面を打開できる選手が多かったので、ショートカウンターだけでも点を取れるかたちが多かったということで、今年はそれだけでは勝てないということで、自分たちがボールを保持して、ビルドアップをして、ゴールに迫ることをやったんですけど、ボールを持つということだけにこだわり過ぎたというか、それが目的となって、ゴールの奪い方だったりを見失ったところが前期の課題だと思います。

――リーグ戦第4節の専大戦はシュートを18本放ってうまくいったようにも見えましたが、あまり良くなかったということですか

金田 いいかたちがつくれたと思いますし、練習でもいいかたちをつくれている場面もあるんですけど、最後決め切るところは、そこまでいけたからいいでしょ、というところが自分たちの甘さであったので、試合の結果に出たのかなと思います。

――ではこれまでの試合の総括をお願いします

牧野 僕は開幕戦の直前に怪我をしてしまって、復帰したのが5月半ばくらいだったんですけど、前期を振り返ってみると、勝てなくて、点も取れない中で、勝つために何が必要かということを真剣に考えられたのかなと思います。

金田 負け続ける中で、いつかなんとかなるだろうという考えがみんなの中にあったと思うんですけど、東洋大戦の前に僕とか牧野、分析のGM(グラウンドマネジャー)で本気になってどう点を取るのかを考え始めました。でもそれでは遅かったのかなと思います。

栗島 個人的にはいいプレーができなくて、実際このチームに必要かと言われれば、必要な存在になれていなくて、そこは悔しいんですけど、今のチームを見たときに点を取れる選手がいないので、今は点を取るというのを重点的に意識して取り組んでいます。

――金田選手と栗島選手は昨年より点を取ることへの意識が強くなっているということですか

金田 点を取る選手が少ないので、自分が点を決めないと勝てないという気持ちは昨年よりあります。

栗島 結局パスをつないでも入らないですし、狙えるならとりあえず狙おうという感じです。

――リーグ戦9位という位置をどのように捉えていますか

牧野 他のところを見ても、妥当だなと思います。練習量とか練習の質とかを他の大学の選手から聞いたりすると、自分たちはまだまだ足りないと思います。試合をやっていても、今明治は1位ですけど、本当に強いなと実感するので、そういう練習に対する結果が順位に表れているんだなと率直に思います。

――今年はいくつかのフォーメーションで試合に臨んでいる点はいかがですか

牧野 自分はGMというかたちで相手を分析して、戦術や戦略を外池さんと話しながらフォーメーションとかメンバーを決めていく中で、鍬先(MF鍬先祐弥、スポ3=東福岡)はボランチだったりサイドバックができますし、1年生で山下(MF山下雄大、スポ1=柏レイソルU18)とか存在感がある選手が入ってきているので、そういうフォーメーションを相手に対して変えられるのが去年から継続してできている強みかなと思っています。そこに対してメンバーの人たちが不満とかを持つのではなくて、そういうことならやろうという意識があるので、いいことだなと思います。

――昨年は基本軸がありましたが、今年は見え始めましたか

牧野 去年は勝っていたので、それを軸にして少しずつ変えることができていたんですけど、今年は勝っていなかったので、駒沢戦も3バックでやってみたり、試行錯誤しながら中断期に入っているのかなと思います。

――勝利を一つの要素とするのであれば、リーグ戦第7節・東洋大戦、第8節・流通経大戦はいかがでしたか

牧野 東洋戦の入りと流経戦の入りはそこまで変わっていないと思うので、結果が全ての世界でやっているので、そこは結果にはなっていると思います。

――連勝の中で、1年生や2年生の新戦力の活躍が目立ちました

金田 僕はアンケートの一押し選手に山下を書いたんですけど、1年生とは思えない技術で、ロングボールをサイドに振り分けられますし、メンタル面でも強いところがあります。戦術理解面でも1年生とは思えない、圧倒的なところがあるので、軸となる選手だと思います。

栗島 自分は加藤(FW加藤拓己、スポ2=山梨学院)が武田(FW武田太一、スポ4=ガンバ大阪ユース)に代わる新たな早稲田のストライカーだなと思います。(ボールを)収められるし、自分でもシュートを打ててすごいと思います。山下もスタメンを取られるくらいすごくうまいし、西堂(FW西堂久俊、スポ1=千葉・市船橋)も縦に突破してくれるので、チームが助かります。

――その反面、怪我人も増えてきていますが

金田 怪我人が出たことは仕方ないですし、怪我していた藤沢(MF藤沢和也、商4=東京・早実)であったり、神山(MF神山皓太、商4=栃木・真岡)が戻ってくるので、自分的には怪我人が出ていることに対して悪いイメージはないです。

――現在までの試合でターニングポイントとなった試合はありましたか

金田 悪い方向にいってしまった点で言えば中央戦かなと思います。セットプレーで先に得点を取れた中で、その後もチャンスが多くあったんですけど、最後に防げるところで失点をして、同点になってしまって、そこで勝ち切れていたら、その後の専修であったりは勝ち切れたかもしれないし、みんなの自信がなくなっていったというか、半信半疑になっていってしまったので、あの試合が大きな意味があったのかなと思います。そこで自分たち4年生が変えることができなかったのが前期の弱さだったのかなと思います。

牧野 悪い方が出たので、僕は東洋戦で、下位のチームでしたけど、リーグ戦で1勝できたのが前期の中では一番良かったと思います。その後の流経戦も勝てましたし、そこも1つのターニングポイントだと思います。

栗島 自分も東洋戦で、ベンチから見ていたんですけど、明らかに今までの試合とみんな違って、戦っていましたし、1点先に入れられても、自分たちがやることははっきりしていたので、そこを信じてみんながやり続けて、結果的に勝ちで終われたので良かったと思います。

――リーグ戦第7節・東洋大戦前には外池監督と4年生が話し合われたと伺いました

金田 外池さんがいる中で、学年の中で本気で言い合える関係があったのかということを言い合ったという感じです。言われる側だったので、僕に関しては苦い思い出です(笑)。

――金田選手はリーグ戦開幕前にバランスの取り方に悩まれていましたが

金田 今ははっきりしました。そういうのではない、と気付いたので、試合中だったり練習中に自分が示す、プレーで引っ張っていくということに向き合ってやっていくべきだと思ったので、そこに向けてやっている感じです。

――牧野選手と栗島選手は4年生になって意識の変化はありましたか

牧野 意識の変化は特にないんですけど、自分のプレーを発揮してからでないと、下は付いてこないと思っているので、サッカー面では引っ張っていかないといけないと思っています。あとは、相手を見て自分たちの戦術、戦略を決めるGMという役職で、信頼されたり、こいつが決めた戦術でやろうと思われなければいけないので、後輩とかとコミュニケーションを取りながらも、ピッチ内では存在感を出していかなければいけないと思っています。

栗島 自分はあまり変わったことはないんですけど、好きなことだけをやれないというか、チームを引っ張らなければいけないという思いがありますし、より責任感はあります。

――苦しい戦いが続きましたが、今までの試合でMVPを選ぶとすればどなたですか

金田 甘いかもしれないですけど、大桃(DF大桃海斗主将、スポ4=新潟・帝京長岡)にしたいなと思います。苦しい状況の中で、あいつが一番チームのことを考えていましたし、プレーはどの試合もコンスタントに自分のプレーを出せていたと思うので、大桃かなと思います。

「みんなぶっ飛んでる」(栗島)

誰よりもサッカーを楽しむ栗島選手

――それでは他己紹介をお願いします

金田 とりあえず牧野。

栗島 一緒の部屋だけど、あまり喋らない…(笑)。牧野は意識が高いです。風呂上がりとかは絶対ストレッチをしています。プレー面は対人能力ですね。去年は三苫(MF三苫薫、筑波大)を唯一止めた男ですし、あとは周りを見て気を使ったプレーができる。あとは…。

金田 以外とチャラいでしょ?(笑)。アンケートにも書きました(笑)。

――金田選手はいかがですか

牧野 プレーは本当に絶対的という感じで、点も取れるし、ゲームもつくれるし、戦えるし、彼がいなければ成り立たないんじゃないかというくらい頼りになります。

栗島 今言ったことが全部です。

牧野 私生活はなくない?(笑)最近は落ち着いているかなと思います。顔もかっこいいと思うので…(笑)。

金田 いつも落ち着いてるよ!(笑)

――栗島選手はいかがですか

牧野 プレーを見ていて、楽しんでいるなという感じです。相手をおちょくったりとかそんな感じです。

金田 正直足元の技術は圧倒的に一番うまいと思いますし、栗が言っていたんですけど、自分のプレー以外のところに向き合っているというのは感じます。その中で自分の好きな、得意なプレーをより出していけていると思うので、素晴らしい選手だと思っています。私生活は謎なので、僕は分からないです(笑)。

牧野 一緒の部屋なんですけど、ずっとYouTubeでゲーム実況みたいなのを見ているんですよね。

――どういうゲーム実況を見られていますか

栗島 PlayStation4でFPS系です。

金田 自分もやるんですけど…。

牧野 一番楽しそうにやってます。

金田 ヘッドホンを付けて…。

牧野 まじで気持ち悪いです(笑)。

――金田さんは1人部屋ですか

金田 1人の時間が必要なタイプなので、1人部屋にさせていただいています。

――大桃主将はどのような方ですか

金田 一番ぶっ飛んでいるんじゃないかな…。

牧野 付いていくのが精一杯…。

金田 たまに訳の分からないことを言ったり、たまに怖い感じです…(笑)。

栗島 みんなぶっ飛んでるじゃん(笑)。

――牧野選手はアンケートの意外な一面がある選手でFW中園健太郎選手(社4=東京・早実)を記入されていました

牧野 見た感じめっちゃしっかりしてそうじゃないですか…。全然しっかりしていないんですよ。部屋も綺麗そうだなと思うんですけど、超汚いです(笑)。

金田 泥棒が入ったんじゃないかなというくらい…散らかっていますね(笑)。

――トゥーロン国際大会やコパ・アメリカには相馬選手やGK小島亨介選手(平31スポ卒=現・大分トリニータ)、他大学の選手が出場していましたが、どのように感じましたか

牧野 単純にすごいなと思いました。去年まで相馬くんとかこじくんは一緒に練習をしていて、そういう選手が世界と戦って、相馬くんとかは自分の武器を発揮して、結果も出しているので、尊敬しています。

金田 相馬くんとかこじくんとかを見ていて、練習でも圧倒的でしたし、自分たちが苦戦している大学リーグでも誰も相馬くんを止められなかったですし、こじくんも圧倒的な存在感、シュートストップがあったので、あそこまでいくのが当たり前なのかなと思います。大学サッカーで活躍すれば、あの舞台でできるんだなと思いました。

栗島 自分は相馬くんとかこじくんみたいな日本を代表する選手と今まで一緒に練習していたことはすごいことだったと思いました。

――そういった選手の活躍によって、現在地を再認識することにつながりますか

金田 そういうのは自分で評価できることではないと思います。

栗島 どのくらいというよりは倒したいという気持ちになります。

「見に来てくださる方に大学サッカーの面白さを伝える責任がある」(金田)

ハードワークでどこにでも顔を出す金田選手

――公式戦とは違って早慶戦とはどのような舞台ですか

牧野 慶応には負けては駄目というのが年々強くなるというか、1年生の頃は対して思い入れはなかったんですけど、やっぱり身近なものになっていくにつれて、負けたらいけないんだなと強く感じるようになりました。

金田 あと、大学サッカーの中で一番観客が入る試合なので、大学サッカーを象徴する試合でもあると思います。自分たちは見に来てくださる方に大学サッカーの面白さを伝える責任があると思うので、そういうプレーをしていきたいです。

栗島 最後に自分たちの代になって、すごく不安というか、負けたらどうしようという部分がありつつ、去年の早慶戦は近くの人にも声が通らない歓声があったりして、すごく楽しくて、またやりたいという気持ちがあります。

――慶大は現在2部の首位に立っており、早大が勝利した2年前と逆の構図になっていますが

牧野 一発勝負ですし、(リーグの立ち位置は)関係ないと思います。その時に力を発揮できた方が勝てると思います。

――今年の慶大にはどのような印象をお持ちですか

金田 あまり去年と変わっていないんじゃない?

牧野 去年から出ていた選手がいるので…。

金田 慶応は早稲田より早慶戦に対する思いが強いんじゃないかというほど分析とかをしてくるので、厳しい戦いになるのは間違いないと思います。

――アンケートでは、金田選手が牧野選手、牧野選手が大桃選手、栗島選手が加藤選手を注目選手として挙げていただきました

金田 理由はないです。とりあえず牧野を見ていたら面白いと思います。ちょっとふざけました(笑)。

牧野 やっぱりキャプテンで早稲田の象徴なので、注目してほしいです。

栗島 期待を込めて、点を取りそうな人を書きました。

――ご自身はどのようなプレーで勝利に貢献したいですか

牧野 昨年まではバランスとかを意識していたところから、もう一つ上のところで、結果に結びつく、アシストだったり得点を狙えればいいかなと思っていますけど、まずは守備のところで僕はサイドバックなので、相手のサイドハーフの選手に対して、1対1で負けないというところを一番強く意識したいです。

金田 自分の中でボランチは、ボールを奪えて、ボールを奪われない、というのが全てだと思っていて、ボランチが中盤を制圧できれば負けないと思うので、攻守において存在感というものをしっかり発揮したいです。

栗島 僕はとりあえず点を取って、MVPを取ります!

牧野 頼もしい(笑)。

金田 僕も取ります(笑)。

牧野 軽いな!(笑)

――最後に早慶戦に向けて意気込みをお願いします

牧野 早慶戦は内容はともかく勝ちが全てなので、結果にこだわってやっていきたいと思います。

金田 最後の早慶戦になるので、楽しみつつ、見に来てくれる方を楽しませて、絶対に勝てるようにやっていきたいです。

栗島 早稲田の代表として、慶応には絶対に負けないという気持ちで戦います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石井尚紀、森迫雄介)

色紙を持つ3人

◆金田拓海(かねだ・たくみ)(※写真中央)

1997(平9)年4月22日生まれ。176センチ、70キロ。兵庫・神戸学院大付高出身。前所属・ヴィッセル神戸U18。社会科学部4年。MF。チームの心臓として、ピッチを縦横無尽に駆け回ります!

◆栗島健太(くりしま・けんた)(※写真右)

1997(平9)年4月19日生まれ。175センチ、71キロ。千葉・流通経大柏高出身。社会科学部4年。MF。ア式NO.1のテクニシャンが、観客を魅了します!

◆牧野潤(まきの・じゅん)(※写真左)

1997(平9)年8月25日生まれ。165センチ、64キロ。福島・富岡高出身。前所属・JFAアカデミー福島。スポーツ科学部4年。DF。抜群の対人守備で、相手キーマンを抑え込みます!