女子の熱き戦いも忘れてはならない。早慶女子定期戦(早慶戦)は今年で18回目を迎える。ア式蹴球部女子(ア女)は現在3連覇中。伝統の一戦を前に、今季主将を務めるMF高瀬はな(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)に関東女子リーグ戦(関東リーグ)前期の振り返りや早慶戦への意気込みを伺った。
※この取材は6月20日に行われたものです。
『一つになって戦う』ことを意識しています
味方に指示を出す高瀬
――関東リーグ前期を振り返っていかがですか
率直に言うと、勝つことは難しいなと思いました。今まで10連覇してきたというのはありますけど、それが当たり前じゃないと痛感したリーグでした。
――新体制になってから意識していることはありますか
卒業した4年生は1年生からスタメンとしてチームを引っ張ってきた学年だったので、自分がいたこれまでの3年間はどちらかと言えば、そこまでチームが変わることはありませんでした。今年はメンバーが大きく違うし、新しいチームをつくるという感じだったので、とにかく『一つになって戦う』ことを意識しています。プレーでもそうですが普段のところから積極的に『一つになる』という意識、声掛けというのを4年生として意識してきたつもりです。
――主将になってからプレー面で変わった部分はありますか
正直これまでコンスタントに試合に出ていなかったのですが、中盤というのもありますし今年は4年生でキャプテンということで、一つひとつのプレーに対する責任というのは今までより感じます。
――前期2位という結果はいかがですか
もっとできることがあったのではないかという歯がゆい部分は大きかったのですが、試合を重ねるごとに手応えを感じる部分だったり、良くなっている部分も少なからずあります。ゆっくりでも後期は必ず巻き返せるという自信はあるので、焦らず後期につなげていければと思います。
――第2節で早くも敗戦を喫しました。チームに焦りはありましたか
2戦目で負けてしまったことは正直焦りました。ですが逆に言えばまだ新しいチームだし、やり方によってはどんどん直せるというか強くなれるという確信もありました。ここで自分が焦ったらチームにも伝染するし、自分がいかにここで落ち着いてというか、しっかりと状況を見ながら、焦らずに今できることをしようとしていました。
――それ以降は負けなしですが、調子が上向くきっかけとなった試合はありましたか
結果的にも浦和レッズレディースユース戦です。先制点を取られてしまったのですが、そこからの巻き返しという点は、気持ち的にかなり自信になったと思います。これまでは先制されると悪い流れを引っ張って負けてしまうことが多かったですが、そこから巻き返せたというのは自信になりました。
――MFの立場からア女の守備面をどう評価していますか
ラインが上げ切れず間延びしてしまうことだったり、簡単に失点してしまうことだったりと最初は課題がすごく多かったです。ただメンバーが変わっていく中で、チームとしてこうしようというのが段々試合を重ねるごとにつくれてきているというか。直近の練習試合でもみんながチャレンジしながらいい方向に進んでいるなという実感はあるので、後期は無失点の試合というのを増やせていければなと思います。
――主力の4年生が離脱し、1、2年生が最終ラインを担う試合が多かった印象です。練習の中で何か意識していたことはありますか
学年は試合に出てしまえば関係ないのですが、1年生は少なからずやりにくさはあると思います。いかにそこをやりやすくしてあげるかが自分の役割だと思うので、普段から前向きな声掛けやコミュニケーションは意識しています。
――前期はクリーンシートが1試合のみでした。特にミスからの不用意な失点が多かった印象です
おっしゃる通りで、なかなか無失点に抑えられないというのが今年一番の課題です。その中でもそれ以上点を取れば勝ちにはつながるのですが、やっぱり無失点で抑えたいと自分たちも思っていて。でもまだ奪った後の切り替えですとか、簡単にボールを失ってしまうことが多かったので、後期は失い方だったり、攻撃陣のリスク管理を徹底していければなと思います。
――前期はフォーメーションの変更が多かったですが、その中で守備の安定は難しかったですか
どちらかと言うと去年と比べて選手層に差があまりないので、拮抗(きっこう)している中の力の差で試合に選ばれる人選ばれない人がいました。その中でいきなり試合の出番が回ってきても、みんなしっかり準備できた状態で試合に臨めていたと思います。そういった意味でもサブ組やメンバー外の底上げはもっと必要かなと思います。
――MFの立場からア女の攻撃面をどう評価していますか
開幕戦ではけっこう点が取れたのですが、結局ヒロ(FW廣澤真穂、スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)の個人能力に頼ってしまった部分が大きくて。それ以降なかなか点が取れなかったり、チャンスをつくり切れない場面がとても多かったと思うので、攻撃の引き出しはもう少しチームとして持っておかないといけないと思います。
――FW山田仁衣奈(スポ4=大阪・大商学園)が開幕戦で負傷。廣澤選手も活躍していますが、まだ1年生という中で攻撃のオプションにはやはり課題がありますか
ゴール前では決定力がある選手なのですが、そもそもゴール前でいい状況をつくれないという課題があって。仁衣奈もけが続きで本人も苦しいとは思うのですが、そういった中でもみんなで戦っていけるチームだと思うので、他のFW陣にも期待したいです。
――前期の攻撃の軸を教えてください
ア女の強みはサイドに足の速い選手がいてサイドを崩してクロスという流れで。これが今までの得点パターンとして多かったですが、そのパターンだけになると相手に分析されやすくなってしまうので、これに加えてプラスアルファ攻撃パターンというか自分たちの強みをつくれればなと思います。
――前期はビルドアップにも課題が残りましたが、この点についてはいかがですか
もともと「つなごう」という意識が強くて、それを状況によって変えられればいいのですが、どの状況でもつないでしまったり、焦ってつなぐというのが今まで多くて。状況を見て、この時はこうしようというのがだんだんチームとして共有できていると思うのですが、なでしことか上のレベルの相手と戦った時に、もっと質を上げていかないといけないと思います。先日ノジマステラ神奈川相模原と練習試合をさせていただいたのですが、質の部分にかなり差があるなと感じました。
――4年生のスタメン出場が少ない中で、前期は1年生など下級生の活躍が光りました
4年生になって、去年から自分たちの代で試合に出ている人が少なかったので、今年はピッチ上で引っ張っていきたいという思いはあったのですが、実際そう簡単にはうまくいかず難しいなと思いました。4年生が引っ張るというのはピッチの外でももちろんそうですし、できることはいっぱいあると思うので、いかに後輩がプレーしやすい環境をつくるかということも大事ですし、あまり試合に出れないからといってくよくよしている時間はないなというのが一番の感想です。
――離脱の原因はやはりけがでしょうか
けがと教育実習で抜けてしまって、なかなかチームに一緒にいれませんでした。後期はどうなるかまだわからないです。
――4年生のスタメン出場が少ない中で、意識していたことはありますか
出ていても出ていなくても、最後試合に勝ちたいという気持ちが一緒じゃないといけないとすごく感じます。出ている人は出ていない人の気持ちも背負っているという自覚を持たないといけないし、出ていない人も最後はピッチに立っている11人を応援しないといけないと思うので、お互いがそういう気持ちになれるような環境づくりというのは、自分としては意識しているところです。
――ア女は学年を超えて仲が良い印象ですが、その中で気持ちを一つにすることはやりやすいのですか
普段仲がいいというのは前から言われてきたのですが、去年の経験からだと試合に出れないと素直に応援できないというのが多かったです。これはしょうがないことなのですが、そこでいかにみんなが同じ気持ちで試合に臨めるかが特に今年のチームでは大事だなと思うので、大切にしていきたいです。
――高瀬選手自身のプレーをどう評価していますか
攻守ともに関わるポジションではあったのですが、攻撃にも守備にも課題が残った中で個人的にももう少しチームに貢献できたらよかったと思います。個人的にも難しい試合が続きました。
――具体的な課題はありますか
すごく課題はいっぱいあるのですが、一番は簡単に失点してしまったり、攻撃のスイッチを入れる縦パスを出せなかったという点が、中盤としてもっと仕事をしないといけなかったなと思っていて。すごく攻守に関わるポジションなので、もう少しボールに関わってチームのリズムをつくれればよかったと思います。
――今年はプレーしていて、やはりプレッシャーは感じますか
プレッシャーはあまり感じないのですが、今は発展途上のチームで、今まではかたちになっているサッカーをしていたので、まだ出来上がっていないというか、探りながらプレーするという点は少し難しかったです。
――探りながらプレーする中で、チームの成長は感じますか
(成長は)感じています。特に後半の試合ではやっと勝てるようになってきたり、直近の練習試合でも確実に進んではいるなという実感はあるので、これをどんどんこの先の公式戦でかたちにできればなと思います。
――後期へ向けて取り組んでいることはありますか
一番は守備の部分で、『無失点』というのを自分たちは絶対やろうという気持ちが強くて。その中でも、ボールを奪った後の攻撃パターンをもう少し増やしていければという話はしているので、この取り組みが大事になってくると思います。
オフがあったらカレーを頻繫に食べに行きます
大好きなカレーについて笑顔で語る高瀬
――最近のマイブームを教えてください
いきなりきましたね(笑)。なんだろう、全然思いつかない(笑)。 最近と言われると難しいですが、オフがあったらカレーを頻繫に食べに行きます。こればっかり答えているのですが(笑)。
――カレーはいつ頃ハマったのですか
大学に入ってからです。気づいたらカレー屋さんをめちゃくちゃ探すようになっていて。いろんなおいしいところを調べては行くというのが続いています。
――最近行っておいしかったカレーは何かありますか
行くところ行くところ全部おいしいのですが、国分寺にある100時間カレーのカツカレーですね。めちゃめちゃおいしいです。でも多分カツカレーだったら何でもいいんですよね自分は(笑)。本当にカツカレーが好きで。でもカツカレーはやっぱり重たいし、次の日のこととかけっこう気にしてしまうので、しょっちゅうは食べられないじゃないですか。だからこそひさびさに食べると本当においしいなと思います。
――オフの日は何をされていますか
友達とご飯に行ったりするのですが、そんなに遠出をしなくて。オフも生活が地味ですね(笑)。
――女子ワールドカップはチェックしていますか
夜中の試合はさすがに見れないですが、なるべく見るようにしていて。同じ女子サッカーなので、これを通して女子サッカーが盛り上がってほしいというのは一つありますし、見ていて自分自身勉強になるので見るようにしています。
――好きな選手は誰かいますか
うーん、好きな選手というか同じポジションで同期の三浦成美選手です。クラブチームの時によく対戦して、その時からうまいなとは思っていたのですが、なでしこで活躍するのはすごいなと思いますし、刺激になります。
早稲田のプレーを見て勇気とか感動を感じてもらえるようにしたい
――高瀬選手は今まで早慶戦への出場はありませんが、早慶戦へのイメージは何かありますか
出る出ないに関わらず、試合の企画、運営すべてにおいて学生主体で行うというのは、あの規模で学生が主体となってやることはそうないと思うので、試合に出たことはないですが、あの雰囲気をつくり上げる達成感や携われた喜びは大きいですし、普通の公式戦とは違うなと思います。
――現在早慶戦は3連覇中です。慶大は2部リーグで下位に沈んでいて絶対に負けられない試合になると思いますが、早慶戦へのモチベーションはいかがですか
関東リーグの後期が開幕するということで、今すぐに早慶戦早慶戦という気持ちにはならないですが、慶大も2部の下位にいるとはいえ、早慶戦となるといつもとは違う実力を出してくると思うので、順位は全然関係ないと思います。でもやっぱりプライドはあるので、負けられないなと思います。
――慶大の主将工藤真子選手とはお知り合いのようですね
クラブチームは違ったのですが、東京都の選抜チームで一緒にプレーしていて。以前対談する機会があったのですが、絶対負けたくないと思いましたね。
――早慶戦のキーマンを挙げるとすると誰になりますか
いっぱいいるのですが、仁衣奈(山田)にします!けがでギリギリ間に合うかどうかというところなのですが、仁衣奈も多く試合に出ている中で早慶戦には出たことがないので、ここに懸ける思いは強いと思いますし、出れば確実に何かしてくれる選手なので、ぜひみなさんに見てもらいたいと思います。
――早慶戦ではどのようなプレーをしたいですか
あれだけ多くの人の中で試合ができるというのはなかなかないと思うので、自分自身も楽しみたいですし、自分のプレーを見て、早稲田のプレーを見て勇気とか感動を感じてもらえるようにしたいです。ありきたりですが、こういう部分は必ず感じられると思うので、みなさんに楽しんでもらえるようなプレーをしたいと思います。
――当日は試合に出られない人も多くいると思いますが、早慶戦でも『一つになって戦う』ことを意識しますか
当日はバラバラの行動になるので、気持ちを一つにすることはなかなか難しいと思うのですが、早慶戦に勝つということもそうですし、早慶戦を盛り上げる、成功させるという部分で一つになれればいいなと思います。今の段階で準備が進んでいる中で、試合に出る出ない関係なく協力して準備を進められれば一つになりやすいかなと思うので、そこは意識しています。
――改めて早慶戦への意気込みをお願いします
毎年行われているのですが、1年生からだんだん勝ちたいという気持ちが強くなっていて。今年最後なので、絶対勝って終わりたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 永池隼人、石井尚紀)
早大東伏見サッカー場で色紙を持って撮影に応じる高瀬
◆高瀬はな(たかせ・はな)
1997年(平9)7月31日生まれのO型。161㌢。東京・清瀬高出身。前所属ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18。スポーツ科学部4年。足元の技術に定評がある高瀬選手。後期はパフォーマンスも向上中です。色紙には丁寧な字で『結束』と書いていただきました!ア女の一丸となって戦う姿に注目しましょう!