【連載】『all in for the 1st』【第3回】近藤貴司

ア式蹴球特集

 1年目から主力として活躍し、激しいポジション争い勝ち抜いてきたMF近藤貴司(教4=三菱養和SCユース)。快足を活かしたスピードを武器に、ワセダでも突出した個の力でチャンスを生み出してきた。いよいよラストイヤーを迎える今季、ケガを乗り越えどのような思いを胸に戦っていくのだろうか。

※この取材は3月26日に行われたものです。

「自分はスタメンでピッチに立つべき存在」

インタビューに答える近藤貴

――新体制に入りましたが、新しいチームの雰囲気はどうですか

 開幕まで2週間ですが、開幕戦という緊張が自分自身にまだ足りていないと思います。スタメンのメンバーの中でも、自信を持って関東リーグ(関東大学リーグ戦)に出られる選手が全員かというとそうではないので、まだまだチーム全体がレベルアップしていかなければいけないと思います。

――1年生の印象はいかがですか

 入部するまでは、出身地や高校だけ見たらすごいメンバーが入ってきたのですが、やはりまだワセダの価値観というものを習得できていません。まだ高校の価値観を持ってサッカーをやっているので、そこの部分で新入生はもがきながらやっています。自分たち4年生が手助けして良い方向に持っていければ、ポテンシャルは高い選手たちなので、伸びしろはとてもあると思います。

――4年生が引退された影響はありますか

 とてもあります。新チームで始動した時も、4年生の存在がとても大きいなと感じました。ピッチ内外において、自分たちは先輩に乗っかっていただけなのかなと。それだけ、ワセダにあるべき行動をしていた選手が上の代にはたくさんいたので、自分たちもそこを目指して高めていかなければいけないと思います。

――4年生としてどのようにチームを引っ張っていきたいですか

 役職としては、グラウンドマネージャーに就かせてもらいました。監督(古賀聡監督、平4教卒=東京・早実)と連携しながらチームとしての方向性をチームに促していくという仕事です。やはり自分が公式戦のピッチに立って、得点やアシストでチームを導くことが求められているので、そこにはこだわりを持ってやっていきたいと思います。それ以外も大切ですが、一番は、サッカーをこの組織でやりに来ているので。プレーの部分は自分が一番示していきたいと考えています。

――グラウンドマネージャーとは具体的にどのような仕事ですか

 古賀監督とチームの状態を話したり、リーグ戦が始まれば毎試合の試合展開を反省したり、次の試合はどうしたら良いかということを選手に伝えていくという仕事です。監督のサポートというより、自分自身の意見を言うことで、監督も選手がどう考えているかということを分かるので、そういう意味で必要な役職だと思います。

――古賀監督体制も5年目ですが、ことしの方針を教えてください

 いままでと同じように、攻守の切り替えや球際の部分をベースに、個人としての個性を前面に出していくように監督と話し合いました。いままではワセダのサッカーをしなければならない、例えば攻撃の選手だったら、この時にアクションを起こさなければいけない、ディフェンスの選手だったらそれに合わせて配球しなければいけないと決まっていました。自分自身の特徴や個性をもっと引き出していければ、チームとしてもっとレベルアップできると取り組んでいるところです。

――MF近藤洋史主将(スポ4=名古屋グランパスU-18)の印象はいかがですか

 1年目から学年リーダーとして自分たちをまとめてくれましたし、3年目からはどうすればチームを良い方向へ持っていけるかを人一倍考えていました。ことしは主将になって、より責任感も増し、練習の中でも厳しい要求をして、プレーでも示し続けてくれているので、自分たちにとっても頼もしい存在だと思います。

――オフシーズンについて伺います。2月に合宿がありましたが、いかがでしたか

 自分はつい最近復帰して、合宿はやっていませんでした。合宿先はとても風が強く、自分たちが行った時は雨も降っていて台風並みの天候でした。そのような状況でもやらなくてはいけないと取り組みました。監督の方からは、自分たちで居心地の悪い環境を作らなければならないという話がありました。試合の中でも、思うようにいかない状況や苦しい状況がありますが、そういった状況の中でどれだけ自分と向き合って戦い続けるかということが求められます。監督からは、合宿で雨風が強かったことも、自然が居心地の悪い環境をつくり出していることに感謝しなければいけないと言われました。そう考えて、前向きに取り組めたことが良かったと思います。

――そのような精神面を鍛えるような事はきょねんの合宿でもあったのですか

 きょねんも朝は砂浜を走って、午前は練習して、午後もトレーニングという合宿でした。ことしは特に、みんなの表情が相当苦しそうでしたね。

――ご自身のケガについてお聞かせください

 自分の調整ミスですが、僕はシーズンが始まる前に筋トレや走り込みで自分を追い込んでいたら、ケガをしてしまいました。シーズンの初めから復帰するまでずっとチームに迷惑をかけてきました。いまは復帰してAチームに戻れましたが、自分はスタメンでピッチに立つべき存在だと思うので、まだまだ自分の能力を発揮しなければいけないし、存在感を出していかなければならないと思います。いまはもう完治しました。

――第91回早関定期戦ではBチームで出場されていましたが

 あれはAチームのサブメンバーで出たというかたちです。その後も、Bチームで90分間試合に出させてもらって、そこでコンディションや試合勘を上げさせてもらう機会を得ました。いまはAチームに上がりましたが、技術や感覚という面では劣ってはいないと思います。

――プレーを再開されたのはいつ頃ですか

 3月13日に部分合流しました。

――リハビリはどのようなことをされたのですか

 痛みが引いてから、ランニングや筋トレをやりました。ですが、もう少しで復帰できるという前にまた痛めてしまい、病院に行ってもなかなか良くなりませんでした。良い病院に巡り合い、そこでもう一度体の作り方や使い方を見直しました。それでケガも治り、いまはコンディション的にはまだまだですが、完璧に向かっています。前向きに捉えれば、ケガをしたことで自分自身の体やケアの大切さを身をもって感じられたので、今後ケガをしないように体作りを続けていけたらと思います。

――ケガをされていた間、同じポジションの選手が試合に出ているのを見てどう感じましたか

 やはり悔しかったです。サイドハーフの選手がゴールを決めたり、活躍している姿を見ると悔しかったですし、それが早く復帰しなければというモチベーションになりました。今はまだAサブという立場ですが、まずは今スタメンで出ているサイドハーフの選手に勝たなければいけないと思います。

――ケガをして初めて知った体のこととは具体的に何ですか

 毎年足首の捻挫で離脱してしまっていて、そこに関しては足首のトレーニングやテーピングで補えるということが分かっていたので、捻挫に関しては大丈夫だと感じていました。今回、体の使い方が悪かったために負荷がかかってケガにつながったので、そこはケガをしなければ気付かなかったところです、前向きに捉えて、今後ケガをしないように気を付ければ良いと思います。

――ことし、ア式蹴球部が90周年を迎えますが、伝統についてどのように考えていらっしゃいますか

 90周年を迎えられるのも、歴代のOBの方々がいて、いま自分たちがこうしてサッカーをしているので、この環境は当たり前ではありません。ワセダだからこそ感じる責任だったり、環境の中でプレーできる感謝は、常日頃から感じてプレーしています。

――1年生から3年生までと、4年生で、何か意識は変わりましたか

 特に変わりはありません。自分自身1年目からワセダのサッカーを体現しなければいけないとは感じていなくて、いままでサッカーをやってきた自分自身の価値観がたまたまワセダにフィットしたから試合に出られたのかなと思います。出られたからこそ感じられたものもありますし、1年目から試合に出ている選手はほとんどいないですし、そういった経験を下級生に伝えて、常にチームのことを考えてプレーしなくてはいけないという責任感は芽生えてきたと思います。

「どうして負けてしまったのだろう」

早関定期戦で復調をアピールした

――昨季のことについてお聞きします。リーグ戦2位という結果は、夏に力を伸ばし切れなかったという要因があると思うのですが、具体的にどのような点が原因ですか

 毎年ワセダは、前期は調子が良くて上位にいることが多いのですが、それは他の大学が自分たちのサッカーを確立できていないのに対して、自分たちは古賀監督が就任してからずっとワセダのサッカーを積み重ねてきて新入生が入ってきたりしている中でも、そういうのを植え付けてチーム全体でやるべきサッカーというのを前期からやれているからなんです。夏を経ると他の大学は力を付けて自分たちのサッカーに磨きをかけている中で、ワセダは成長率という点で劣っているから苦しんでしまっているのかなと思います。

――その点はどう改善すればいいと思いますか

 前期を通じてワセダのサッカーに対して対策を取られてしまうと、自分たちは試合中にそれに対して改善できたり修正したりする力がいままであまり無かったんです。自分たちがどんどん前に前にいくサッカーをしていく中で、相手にある程度退かれてしまったときに打開する力が一番欠けていて。今もそういった課題はあるんですけど、ただその課題が今出ていることはある意味良いことだと思います。ことし他の大学がどのようなサッカーをするかにもよるんですけど、自分たちのサッカーをぶらさずにやる中で相手がどういった対策をしてくるかを見極めていったりとか、どういうサッカーをしてきているのかを見極めて、対応していくことができれば自分自身勝てると思います。

――では昨季の全日本大学選手権(インカレ)でまさかの初戦敗退した時のお気持ちはいかがでしたか

 正直試合終了のホイッスルを聞いた時は、本当に終わってしまったのかなという気持ちでした。自分自身の感覚としてはチームの雰囲気も良かったですし、その試合も決して悪い内容では無かったので、ワセダのサッカーができていたからこそどうして負けてしまったのだろうという気持ちが湧き上がってきました。4年生があれだけ引っ張ってきてくれた中で自分の力不足で負けてしまったなと試合後に感じました。

――試合後には4年生とどのような話をされましたか 

 あまり話していないんですけど、4年生が1人1人話してくれた中でやっぱり後悔という言葉を口にしている人たちが多くて、もっと早くから練習や自主トレを取り組んでいればもっとうまくなったというふうにみんな言っていました。自分はケガをして出遅れてしまったんですけど、やっぱり練習だけでは補えない部分があって、それをアフタートレーニングでどれだけ高められるかが大事だとも4年生は口々に言っていました。自分たちはそのような後悔をしないためにも関東リーグで優勝して、それが4年生の思いの助けにもなると思うので、やるしかないという気持ちです

――試合後に「一人一人の決定力の無さ」で負けたと話していらっしゃいましたが、今季はその面はいかがですか

 Aチームで試合をしていないのであまりわからないのですが、練習でフィニッシュのトレーニングがあってもゴールがたくさん入るかと言ったらそうではないですし、自分自身そこが課題なので、そこは一人一人の意識でいかようにも変わるので、決定力を高められるようにしたいです。

――近藤貴選手自身もことしはゴールに積極的に絡んでいくということですか

 そうですね。きょねん自分も決定機を外してしまうシーンが何度もあって悔しい思いをしているので、そこの部分に関しては人一倍取り組んでいかなければならないです。やっぱりゴールやアシストという目に見える結果を残さなければ自分自身、上のステージには進めないと思っています。

――では、昨季課題であるとおっしゃていたセットプレーからの失点に関してはどう改善していくつもりですか

 セットプレーに関してはあまり自分が口を出せる立場ではないんですど、やっぱり最後は気持ちの部分で体をぶつけられるかとか、本当に守るんだという気迫とかがあれば、守れると思っています。いま練習でセットプレーに対してはより意識を持っていますし、実際に公式戦始まってみないとわからないですけど、もっと高めていかなければならないと思います。

――そのほか何かチーム全体の課題はありますか 

 いまずっとBチームでやっているんですけど、Bチームに関しては一人一人の技術があまりにも低くて、ワセダのサッカーを体現できる、できないと言う前に、技術の部分でレベルの低い選手が多いので、その部分を高めていかなければチーム全体での底上げにつながらないと思います。

――AチームとBチームの間には大きな差があるということですか

 そうですね。Bチームには技術的に劣っている選手がいると思いますし、かと言って今Aチームでスタメンで出ている選手が技術面で圧倒できているかと言えばそうではないのが現状なので、チーム全体でそこの部分に取り組んでいかなければいけないと思っています。

「自分が勝利に導く」

――では4月5日に開幕を控えるリーグ戦についてお聞きします。近藤貴選手が注目している大学はありますか

 正直あまり他の大学には興味が無くて(笑)。自分たちがどういったサッカーをするかとか、自分たちのサッカーができるかによって、勝てない相手はいないと思っているので。

――それは昨季のリーグ戦1位だった専大も含めてですか 

 そうです。専大は技術的には高いんですけど、自分たちのやりたいサッカーをできないかって言ったらそうではないので、関東リーグ優勝もできると思っています。

――初戦の相手は2部から昇格してきた東京国際大ですが、研究はされていますか

 この間ケガ人の人たちがスカウティングに行ってくれてまとめてくれていると思うんですけど、イメージとしてはブロックを退いてそこからカウンターっていうのが強みなのかなと感じています。自分たちは退かれる相手には手こずるというか、ボールを持つとうまく攻撃ができないというところがあるので、そこの部分をやっていかなければならないと思います。

――チーム内で期待している選手はいますか

 FW上形洋介(スポ4=東京・早実)。あいつは3年目の途中でケガして骨折して手術して本当に苦しい思いをしていて、今やっとスタメンに戻ってきたんです。チームを勝利に導くためにゴールにこだわってプレーしている姿を見て自分自身刺激を受けています。

――今季のリーグ戦は、昨季のインカレで初戦敗退して一から挑戦するという意味合いでもチャレンジャーという立場にあると思うのですが、それに対してはどのような意識をお持ちですか

 チャレンジャーという立場であっても、どこが相手でも自分たちのサッカーができれば勝てると本当に思っています。インカレ初戦敗退だからチャレンジャーというのはあると思うので、その思いも持ってやっていきたいです。

――今季はラストシーズンとなりますが、特別な思いはありますか

 振り返ってみても、ケガをしたりして満足のいくシーズンは送れてなかったし、リーグ戦に目を向けてもゴールやアシストという結果を残せていないのでやってやろうという気持ちしかないです。

――具体的にリーグ戦では目標にしているゴール数はありますか

 具体的には考えていないんですけど、とりあえず相手よりゴールを取れていれば勝てるわけなので、特に先制点にはこだわりを持ってやりたくて、自分が最初にゴール決めればチームは楽になって試合もうまく進められるので、そこにはこだわりを持ちたいです。

――今季のチームの目標をお聞かせください

 最大の目標は、18年ぶりの関東リーグ優勝です。OBの方々とお話ししても、やはりどうしても関東リーグは優勝してほしいと言われます。特にいま専大が3連覇しています。自分が1年目の時から専大が優勝し続けているので、その専大に勝たなければ、関東リーグに優勝できないと捉えています。色々な人の期待を背負ってプレーしなければいけないので、そういった目標に向かってやればチームとしても絶対に良い方向に進むと思います。そういったプレッシャーを乗り越えれば必ず強くなると思うので、目標に向かって、頑張っていきたいと思います。

――リーグ戦はなぜ優先度が高いのですか

 リーグ戦は4月から始まり、前期後期で、最終的に12月まで続いていくのです。トーナメントはある程度勢いや組み合わせで決まる部分があるのですが、リーグ戦は必ず2試合同じ大学と戦うので、シーズンを通して力のあるチームでなければ優勝できません。そのような意味で、関東リーグ優勝が一番難しい目標なのだと思います。

――個人的に今季の具体的な目標はありますか

 毎試合ゴールを決めるという気持ちをより強く持って練習やトレーニングマッチに臨んでいます。やはりゴールを決めなければスカウトの目にも留まらないと自分も思っていますし、周りの人からも言われるので、そこに対しては本当に向き合ってやっていかなければならないと思っています。

――今のところプロを目指しているのですか

 はい、そうです。

――ワセダからプロに行った選手の活躍は気になりますか

 三竿くん(雄斗、平26スポ卒=現湘南ベルマーレ)にはとても仲良くしてもらったので、今ベルマーレのスタメンで活躍してこの間の試合も決勝点を決めていて、それはすごく刺激になります。大卒でもやれるんだっていう思いを持つことができたので、自分自身このワセダでもっともっと高めていければ、プロの世界でも活躍できると思ったので、もっとうまくならなければいけないなと思っています。

――最後にリーグ戦への意気込みをお願いします

 関東リーグで優勝するために毎週勝ちにこだわっていかなければならない試合が続く中で、やっぱり4年目ということもありますし、自分が結果を出せばチームを勝利に導けると思うので、自分が勝利に導けるようにやっていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 伊藤なつ実、辛島寛文、丸山美帆)

◆近藤 貴司(こんどう・たかし)

 1992(平4)年4月26日生まれ。167センチ、63キロ。東京・早大学院出身。前所属・三菱養和SCユース。教育学部4年。足の速さはチームメイトからも称賛されるほど。リーグ戦ではスピードスターとしてゴールを奪う姿に期待大です。