【連載】『all in for the 1st』【第2回】松澤香輝副将

ア式蹴球特集

今回話を伺ったのは、2年生の頃から常に第1線で活躍をしてきたGK松澤香輝(スポ4=千葉・流通経大柏)。悔しい結果に終わった昨季から一変、副将に就任して臨む関東大学リーグ戦開幕を前に、昨シーズンの話から今季の目標まで語っていただいた。

※この取材は3月26日に行われたものです。

「背中で示せる副将」に

取材に応じる松澤

――現在のチームの状況はいかがですか

早関定期戦で勝って、チームとして少しずつ調子が上がってきてはいるのですが、まだまだ自分たちが求めている基準には達していなくて、そこを目指さなければならないと感じています。その基準というのは練習試合で専大とやったときの基準で、そこの基準をもっと求めていかなければならないし、まだまだ満足のいくようなチームづくりはできていないので、開幕戦までに固めていきたいと思っています。

――ことしで創部90周年とのことですが何か感じていることはありますか

90周年ということに対して意識はないですけど、リーグ戦優勝から遠ざかっていることがあり、自分が入ってから1年目は5位、2年目は3位、3年目では2位と少しずつ順位が上がってきているので、自分が4年生になったときには、優勝したいという気持ちが強いです。

――2月に合宿が行われていたとのことですが、いかがでしたか

ぼくは別のキャンプに参加していたので、合宿には2日間しか参加していないのですが、話を聞く限りだと、悪天候の中でもみんなが必死になってトレーニングしていたと聞いていますし、ピッチコンディションに関係なく自分たちが高めるのだという意識を持って全員で取り組んでいたと思うので、結構いい合宿だったと思います。

――厳しい合宿でもあったのですか

そうですね。2日間だけの参加でしたけど、精神的にも苦しい合宿でした。

――ここ数試合の練習試合を通して得たものはありますか

個人個人のチャレンジする意識というものは高まってきましたし、ゴールに向かう姿勢というのは、最初の立ち上げの頃と比べるとだいぶ良くなってきていると思うので、まだまだ守備のところで改善しなくてはならない部分はありますけど、攻撃のところでチーム全体で向かっていくという姿勢は良くなってきたと思いますし、攻撃の質も少しずつ上がってきていると感じます。

――守備の改善点とは具体的にどのような点があげられますか

霧島フェスティバル(第6回大学サッカーフェスティバルin霧島)に参加した時に、リスタート、セットプレーからの失点というのが多くて、そこの課題もまだ改善されていないですし、相手に対してプレッシャーをかけきれずに、ペナルティエリアの外からシュートを決められてしまうシーンというのがまだまだ多いので、そういった守備のところは改善していかなければならないと思います。

――今季の副将になられましたが、どのような経緯で決定したのですか

もともと学年リーダーが洋史だったので、主将は自然と決まっていったのですが、副将は誰を選ぶのかとなったときに、ぼく自身も主将、副将になってもいいという気持ちで常に1年間やっていましたし、そういった取り組みをみんなから評価してもらって、副将に自然な流れでなりました。

――副将に選ばれた時のお気持ちはいかがでしたか

副将になってうれしいというようには思わなかったですが、過去自分が3年間にいた中で、副将になった選手というのは背中で示せる副将だったと思いますし、サッカーの面でチームを引っ張ってきた人が副将をやっていたので、昨年はみさくん(三竿雄斗、平26スポ卒=現湘南ベルマーレ)だったり、2年前の菅井順平くん(平25スポ卒)だったり、そういう副将がいるので、自分もそういった副将になれるようにチームを引っ張っていけたらいいなと思います。

――ことし最高学年になられて学年の中で何か変化はありましたか

最高学年ということで、チームを引っ張り続けなくてはいけないと思いますし、その部分で試合だけでなく全てのトレーニングから4年生が示さなければならないという緊張感の中でやれているので、昨年とは比べものにならないほどのプレッシャーを感じながら毎日やっています。

――現在新1年生もチームに参加していると思いますが、下級生の中での変化はありますか

下の学年の3年生、2年生は、自分たちの時以上にチームを引っ張っていこうという気持ちがありますし、実際に自分たちの学年よりすごいエネルギーを感じることも多いですし、チーム全体が、自分たちが引っ張るという気持ちを持ってやれていると思いますし、特に3年生はみんな高い意識を持ってやっていると思います。

――松澤選手は関東選抜Aにも選出されましたが、その試合中で通用する、またしないと感じたところありますか

関東選抜Bの選手と比べると、Aの選手の個人の質というのはすごく高いところがあったので、自分が出ていた時に1失点したのですが、そのときに決めた仲川選手(輝人、専大)も1対1の抜け出しや、あそこで確実に決めてくるというところは感じましたし、そういった質の高い相手に自分がゴールを守る力や技術というのはまだまだないのかなと感じました。ただその中でも、コーチングの部分でチームを動かすことや、あのときには選抜でチームがなかなか完成しない状況でしたけど、僕自身のコーチングでチームを勝たすことができたというように感じているので、そういった部分では手応えを感じています。

――日本各地の大学サッカー選手が集まる第28回デンソーカップ(デンソーカップ)に出場されましたが、そこで刺激を受けたことや感じたことなどはありますか

デンソーカップで相手と試合をして感じたというよりは、その試合前に各大学の選手の取り組みというものを見ていたのですが、専大の選手や駒大から選ばれた平尾優頼(駒大)という選手は、試合前でも自分たちのトレーニングに集中していて、トレーニング前の準備の質や全体練習が終わった後の自主トレーニングでの意識の高さを感じましたし、生活面の部分でも10時くらいに寝る選手が多くいて、試合に備えて取り組んでいる意識の高さというもの感じました。そういう意識の高い選手がほかの大学にいると感じて自分自身刺激を受けましたし、そういった試合以外のところで得た部分というものは多かったです。

――大学サッカーフェスティバル決勝では慶大に敗れましたが、その結果や敗因についてどう感じましたか

慶大には負けたくないという気持ちで臨んだのですが、相手もそれ以上に自分たちに勝つという気持ちを持って臨んできましたし、いままでの慶大とは思えないくらいのサッカーのスタイルでやってきたので、その部分に手を焼いたというか苦しめられました。サッカーの本質をお互い追求していた中で、ゴールを奪うゴールを守るというサッカーの本質を自分たちより相手の方が追求していたのかと感じています。ボールを持ったときにゴールに向かって仕掛けていく姿勢や、思い切ってシュートを打っていくというところでは、慶大の方が上回っていたと思いますし、そういった部分を自分たちが守り続けられずに失点をしてしまいました。実際に慶大はフェスティバル期間全試合無失点で優勝していて、絶対に失点しないぞという強い思いを慶大の選手から感じられましたし、サッカーの本質で相手が上回っていたのかなと思います。

――慶大との試合の失点の中で、気になったところはありましたか

相手の端山豪(慶大)という全日本にも選ばれているような個人の能力も持った選手がいるのですが、その選手の突破から最終的に違う選手にそこからチャンスをつくられて、失点してしまったので、気になったところというよりは端山個人の力が得点のチャンスになると感じました。

――早関定期戦では3―1と勝利しましたが、その中でもDF陣として改善点はありましたか

相手がボールを動かしてくる中で、どんどんプレッシャーをかけていく、そこで恐れずにボールを奪いにいく守備をしていかなければいけないと考えましたし、最後にシュートを打たれる場面では体を張る選手がまだまだ少ないと感じたので、もっともっとボールに対してアプローチかけなければならないし、ゴール前でも遠いところからでも決めてくる選手というのは大学トップレベルにはいると思うので、最後のシュート打たれる場面でもっと寄せきり、体を張るというところをチームとしてもっと意識高くやらなければいけないと感じました。

「勝負どころで勝ちきれなかった」

大学トップクラスのフィードで攻撃の起点となる

――昨シーズンをチームとして振り返ってみていかがですか

昨シーズンは勝負どころで勝ちきれなかったことが多くて、勝てる試合引き分けにしてしまったり負け試合を引き分けに持ち込めなかったりといったところが多くて、実際に1点リードしていても追いつかれてしまったり、終盤にゴールを奪っても最後の最後で追いつかれたというゲームが多かったと思います。そういった勝負どころで決めきれない、ゴールを守れないということが昨シーズンのチームだったと思いますし、それが専大との差だったのかなと思います。実際にトーナメントでもすべての大会の途中で負けてしまって、なかなか勝ちきれなかったのでトーナメントにも弱さがありましたし、PK戦での弱さというものは昨シーズンのチームにはあったと感じています。

――GKという立場からして、リーグ戦後期全試合失点という結果についてはいかがですか

どうやったら失点を防ぐことができるのかということは難しいところではありますが、実際にリスタートからの失点、セットプレーからの失点があまりにも多かったのではないかと感じています。試合の流れの中での失点もそうですけど、まずはセットプレーで全員がしっかり守っている状態でもやられてしまうことがあるので、実際に後期からセットプレーからの失点というのは増えましたし、そういったところで個人の守る力やチームとして全員が守るのだという気持ちを表現してプレーできなかったということは感じています。セットプレーで何度も失点するようなチームは勝てないと思いますし、それが課題だと思います。

――昨季リーグ戦1位だった専大とは具体的にどういった差があったのでしょうか

力を出すときに、しっかりとした力を出すことができるということが違いだと思います。仲川選手の場合は、試合の中で消えている時間というのはありますけど、勝負どころでしっかりと点を取りきるといったところ、100パーセント力を出すときに100パーセントを出すことができるところが専大だと思います。実際に自分たちが決めたいという場面で相手のGKに防がれてしまったりシュートが入らなかったり、逆にここは守りたいという場面で専大の選手に決められてしまったりと、力の出しどころの部分で相手の方が出し方も知っていましたし、実際に100パーセント以上の力を出してきて得点を奪ってきたりと、決定力の差ということも間違えなくひとつあると思うのですが、個人のところで出したいときに力を出せる選手が専大の方が多かったのではないかと感じています。

――昨年を通して松澤選手の個人的に成長した部分はありますか

正直昨年を振り返ったときに、自分自身が成長したなといった感覚がなくて、2年目にインカレで優勝したりしたので、そのときのパフォーマンスと比較したときに、自分の調子も上がっていないと感じますし、一年を通して調子が上がらなかったというかチームを救うプレーというものをあまり出すことができなくて、昨シーズン一年を通してだめだったなと思います。自分自身成長したという意識はないですけど、ただ1つ言えば、そういった苦しいときに何をしなければならないのかということを考えるようになりました。自分が悪くなったときにいらいらして精神的に落ちてしまう場面が多いのですが、悪いときにこそ何ができるのかを考えましたし、自分がけがをして阿部くん(雄太、平26人卒)が出たときに、サブの選手としてチームにどのように刺激を与えられるか考えて、サブだからこそ気付くことや伝えられることがたくさんあるというように感じたので、うまくいかないときにこそ何ができるのかを考えるようになったというところで、人間的な成長はあったのかなと感じます。

「勝利へ導きたい」

――いよいよリーグ戦開幕となりますが、意気込みはいかがですか

昨シーズンチームを勝利に導くことができなかったので、自分の力で何としてでも勝利へ導きたいという強い気持ちもありますし、自分自身が将来目指していることにもかかっているので、毎試合毎試合がアピールの場なので、そういった意味では毎試合絶対に勝って、ゴールを守って自分のおかげで勝ったといえるような試合を毎試合できたらいいなと感じています。リーグ戦は優勝しか考えていないので、まずは初戦を勝てるように頑張りたいと思います。

――プロへの意識というのは大きいのですか

そこしか考えたことしかないので、実際に1年生の時からそれだけを追い求めてやってきましたし、プロになるにはリーグ戦で試合に出ていいプレーをしなければならないと思うので、ひとつひとつのプレーにこだわってやっていきたいと思います。

――今季初戦の相手が東京国際大ということですが、どのような印象をもっていますか

2部でも優勝していて、チームとしてまとまりがあるチームだとぼく自身も感じていて、実際に昨年の2部リーグの中で、断トツの首位で折り返したと思うのですが、そういった前期のような力でチームとして完成して開幕戦に臨んでくると思いますし、実際にリーグ戦で戦ったわけではないですけど、記事とかを見たところ、ハードワークに徹するチームと書いてあり、自分たちと似たようなスタイルでやってくるようなチームなので、結構手ごわい相手なのかという印象があります。

――リーグ戦の中で今季特に意識している選手はいますか

福島春樹選手(専大)ですね。昨シーズン専大と戦った時に、彼には本当に苦しめられたというか、自分たちのチャンスをことごとく防がれて、専大に勝てなかった理由の1つだと思うので、僕自身同じGKとして負けたくないというかいいライバルだと思っています。彼に勝たないと、自分がプロになることもないと思いますし、専大に勝ってリーグ戦で優勝することもないと思うので、福島春樹だけには何としてでも勝ちたいですし、ベストイレブンもあいつにだけには取られたくないので、自分が取るという強い思いを持ってやりたいです。

――三竿選手などプロにいった選手たちの活躍は気になりますか

みさくんこの前点を取ったと思うのですが本当に刺激でしかないです。自分と一緒にプレーをしていた選手が、Jリーグで結果を残しているというのを考えると、ぼく自身もまずプロになりたいなと強く思うようになりますし、そういったア式を出ていった選手の活躍というのは常にチェックしていますし、みさくんやとみくん富山貴光(平25スポ卒=現大宮アルディージャ)だったりゆずくん(島田譲、平25スポ卒=現ファジアーノ岡山)だったり、そういった選手の活躍は常に刺激になっています。

――今季ワセダの選手の中で期待する選手は誰ですか

良くなってきている選手も多いので難しいですが、今のチームで1番良くなってきていると感じるのはMF園田慎一郎(社4=東京・早実)です。いままでとは比べものにならないくらい自信に満ち溢れているというか、常にチャレンジする気持ちを持って取り組んでいますし、実際にスタメンで出て、かなりいいプレーをしているので、そういう意味ではその(園田)の成長がチームの成長といっても過言ではないほど期待していますし、同じ4年としてそのとかが活躍することは自分自身の刺激にもなります。に期待してほしいです。

――松澤選手自身の今季の目標を教えてください

リーグ最少失点とベストイレブン。この2つにします。

――最後にチームの今季の抱負をお願いします

関東リーグ優勝、以上で。それだけではないですけど、今まで近いところまできて届かなかったタイトルなので、専大に勝って優勝したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 辛嶋寛文、栗田麻里奈)

◆松澤香輝(まつざわ・こうき)

1992年(平4)4月3日生まれ。182センチ。千葉・流通経大柏高出身。スポーツ科学部4年。大学サッカー界を代表するGK。今季は副将としてワセダを引っ張り、リーグ戦優勝を目指します。そんな松澤選手の趣味は美味しいランチを食べること。大学最後となる今シーズンは私生活の方でも充実した日々を過ごして下さい!