今季、ア式蹴球部(ア式)は創部90周年を迎えた。その節目の年にキャプテンマークを左腕に巻くのが、MF近藤洋史(スポ4=名古屋グランパスU-18)だ。2年時よりワセダ随一の技術を武器に、第一線で戦ってきた近藤洋。ラストイヤーとなることし、悲願の関東大学リーグ戦(リーグ戦)優勝への想いを語っていただいた。
※この取材は3月26日に行われたものです。
「個人のプレーの質をもっと上げていかないといけない」
今季より主将を務める近藤洋主将
――新体制となって数カ月が経ちましたが、いまのチームの雰囲気はいかがですか
雰囲気はいいというか、日々リーグ戦開幕に向けて自分たちを高めるため、個人を高めるために一人一人が意識を高く持って練習に取り組んでいると思います。
――今季から主将を務めますが、主将になった経緯は
もう1年の頃から学年リーダーをやってたので、その頃から学年をまとめたりしていたのでそのまま今季は自分が主将になるというかたちでしたね。
――主将を務めるにあたって責任感などは日々感じますか
そうですね。チームのことを考える時間も長くなりましたし、いまどういったチーム状況なのかとか個人の状況だったりとかを、自分のことだけじゃなく周りのことも見ていくようにはしています。
――どういった主将を目指していますか
プレーでも言葉でも両方でチームを引っ張っていける存在でありたいと思ってます。気負いとかもそんなにないですし、ピッチ内外の面でしっかりやろうとは思ってます。
――波崎合宿が行われてましたがいかがでしたか
例年以上に毎回強度の高い走りのメニューが多くて、個人を高められる、サッカーだけを一日中考えられる環境にあったかなと思います。
――ランニングがきついと聞きますが
走りだったりフィジカルのメニューだったりとかをフォーカスする合宿なので、3部練もありましたし強度の高いきついメニューだったと思います。
――その後関東選抜Aに選ばれキャプテンも務めましたがいかがでしたか
いい経験になりました。自分も関東選抜Aの方でキャプテンやれて、いろんな他大学の選手たちとかをまとめたりだとか、声掛けたりしてチームをつくって戦っていったのですごくいい経験だったなと思います。
――レベルの高い選手が多かったと思いますが刺激などは受けましたか
理解度が高いというか、監督が要求したことに関してすぐ飲み込んでピッチで表現したりする辺りは非常にレベルが高いなと感じました。
――そういうチームをまとめるのは難しかったですか
そこまで難しさは感じなかったですね。普段ワセダでやっているようなことを伝えていこうと思ってました。普段の大学の練習から選手としてだけでなくて人としても優れた存在であっていこうとやってきてたので、それを選抜の方でもしっかり伝えていけたとは思います。
――その後第28回デンソーカップではゴール、アシスト共に記録しましたが、結果に関しては満足のいくものでしたか
うーん…。3位という結果に関してよりも関西選抜に0-4で負けたのがすごく悔しかったです。その試合でちょっとチームが崩れてしまって、それで0-4という結果になってしまったんですけど、もうちょっとそこでタフに戦えてればなと。0-2になった状況とかで、折れずに反撃できるパワーだったりとかを出せなかったのは悔しかったなと思いますね。
――崩れてしまったというのは
前半は0-1だったんですけど、その時点ではまだ全然いけるぞっていう雰囲気だったんです。でも後半の開始早々にPKを取られて0-2になった時にチームとして崩れたというか、集中力やモチベーションの面でうまくコントロールできずに負けてしまったので、そういった状況で持ち直す雰囲気とかをつくれなかったのは心残りというか、悔しいです。
――その後ア式の方に合流して第6回大学サッカーチャレンジフェスティバルin霧島の方に出場し、慶大に決勝(●0-3)で敗れてしまいましたが振り返って
慶大の無失点に抑える気迫だったりとかに対して、自分たちは何もできなかったというか、0点に抑えられ3点目も取られてしまって悔しかったです。リーグ戦を前に本気で勝ちにいってああいったかたちで敗れたっていうのはすごく刺激になりましたし、ある意味良かったというか、あそこで変に快勝するよりはいい教訓になったと思ってます。
――試合後どういった話をされましたか
まだまだ関東で戦うには力が足りないというか、これがリアリティだしここで勝てないようでは関東ではまだ戦えないという話をしました。
――ある意味いい経験だったということですか
いい経験にしなきゃいけないですね。
――その後は練習試合を多く組んでましたが手応えはいかがですか
練習試合一つ一つの中で個人が課題を持ったりだとか修正したりとかをして、そういったことを繰り返して個人とチームを成長させていきました。そういった意味でもこの時期に多く試合を組んだ意味だとかっていうのを一人一人が感じながらやれてるんじゃないかなと思ってます。
――専大とも練習試合を組んでましたが勝てませんでした
本当に個人、チームの質という点で違いを感じましたし、戦う姿勢だったり勝負にこだわる姿勢を一番だしてきたのも専大だったので、毎年優勝しているチームに勝利へのチームの土壌や個人の力を感じました。そこに全日本大学選抜(全日本)から戻ってくる選手もいるので、層が厚いしいい刺激を受けました。
――このシーズン前の時点でチームの完成度は何パーセントくらいですか
何パーセントとかは難しいですね…。ただこの現状でリーグ戦で優勝するために何連勝もしていけるのか、勝ち続けられるのかっていうのを考えたらやっぱり力が足りないのかなっていうのが現状だと思います。
――第91回早関定期戦が行われ(○3-1)、快勝後に「もっと基準を上げていかないと」という話をされてましたが
相手も全日本の選手が二人いませんでしたし、こっちのホームということもあって多少自分たちが有利でした。だから勝ったといって喜んでばかりもいられないですし、自分たちに目を向けて自分らのレベルはどうなのか、質はどうなのかっていうのに向きあっていかなければと思います。
――『基準』というのは個々のプレーの質ということでしょうか
そうですね。やっぱり専大とかと比べても個人のプレーのレベルをもっと上げていかないといけないですし、リーグ戦で優勝するためにもっと個人が局面を打開できるようにしないといけないと思ってます。
――今季からボランチにポジションを移しましたが手応えは
元々真ん中でやってたので、大学では左でやってましたけど別にどっちでもできるので、そんなに特に難しさはないです。
――ボランチではMF園田慎一郎(社4=東京・早実)選手とコンビを組みますが手応えはいかがですか
園田も頑張ってるというか、急成長していて手応えもつかんでるのでいいと思ってます。ただ先ほどの話にもつながるんですけど、関東で一番になるためには自分と園田の二人の関係をもっと高めていかないといけないと思います。
――昨年の4年生が抜けた穴を感じる場面あどはありますか
個人的にはそんなにないですね。きょねんはきょねん、今季は今季のチームなので。まあ誰がいないとか誰が抜けたとかは感じず、いまのメンバーでどうやって高めていくかというところにフォーカスしている感じです。
――先ほどからチームを高めるという話がありますが、具体的にどういったところの質を上げていますか
基本的な面でまずはワセダのベースでもある攻守の切り替え、ハードワークです。そこにプラスして攻撃の中でのパス、シュートの質や、相手をみてプレーするってところを高めていこうと思ってます。
――ご自身の現状でのプレーに関しての満足度はいかがでしょうか
まあ実際いまできていることがリーグ戦でできるとは限らないですし、いまはリーグ戦を想定して練習することしかできないので、実際始まってみるとどうなるか分からないので現状に満足せず自分を高めていくしかないと思ってます。
「あのピッチに立ちたかった」
正確な技術で左サイドを制圧した
――それではここからは昨シーズンを振り返りたいと思います。昨年はリーグ戦で優勝を逃してしまいました
2位という結果もそうですけど、首位と勝ち点を15くらい離されての2位だったので本当に悔しかったです。
――リーグ優勝のために何が足らなかったと思ってますか
前半戦は勝てるんですけど後半戦で毎年勝てなくて、他大学が勝つために完成度を上げてきたときに自分たちの質が足らないというか、勝つために力不足を感じていてそこを改善できなかったのが優勝できない要因だと思ってます。
――専大との差はやはり個の力でしょうか
一人一人が強いというか、自信の持ち方も違いますしそういう気持ちの部分の違いは感じます。3連覇してるというのもあると思うんですけど、自信を持ってプレーしているところに差を感じます。
――後期から近藤洋選手がシュート練習を強化して、得点も重ねるようになりましたがいまもシュート練習は継続的に行っているのですか
そうですね。昨年は左サイドだったんで左からのシュートだったんですけど、ことしはまた場所も違うのでまた変わった位置、角度からのシュートっていうのを心掛けてます。ボランチだけど守備で終わりたくなくて、得点も取りたいんでこだわってやってます。
――早関定期戦ではFKからの得点もありましたが、セットプレーに対しての意識は
やっぱりセットプレーも狙ってます。自分のキックで得点やアシストにもつながってきますし、チームとしてもそこで点が取れるようになれば大きいので、意識してやってます。
――きょねんは早慶サッカー定期戦(○3-0)以外はタイトルを取れませんでしたが、タイトルのためにどういったことがチームに必要だと実感していますか
本当に練習の中で高めていくというところと、あとタイトルを獲るんだ、っていう強い気持ちが大事ですね。タイトルを獲るべく練習してますし、自分たちが優勝する、っていう自信が重要なのかなと思います。
――きょねんの4年生のメンバーはタイトルに向けての意識が強かったと思いますが、それでもまだ足りなかったということでしょうか
きょねんは『獲りたい』っていう思いが強くてそれを表現できていたんですけど、さらに『獲る』っていう思い、自信が必要なのかなと思ってます。
――チームの中でもその意識は強いですか
自信をつけるべく高めていますし、自信を持つためにはトレーニングの中でやれるっていう感覚を得なくちゃいけないので、普段のトレーニングの中から積極的にチャレンジしていくっていうのを伝えてます。
――全日本大学選手権(インカレ)では惜しくも初戦敗退(●1-2関学大)でしたが振り返っていかがでしたか
2年前に優勝していただけに悔しいというよりは、終わってしまったという感じでしたね。相手も関学大ということで、ことしその悔しさをバネに勝てたので良かったですけど、あの時はすごく悔しい思いをしました。
――最後のCKからのパスミスを後悔する発言もありましたが、いまでも悔いは残りますか
そうですね。あそこからカウンターをやられたんで、すごく責任は感じました。
――一つ一つのプレーへの意識は変わったりはしましたか
多少なりとも変わりましたね。ことしは最終学年ですし、プレーでも他の人のミスをカバーするだったり、自分がチームを引っ張るとかは意識してます
――試合終了後は先輩から何か声を掛けられましたか
あの時は試合終了してすぐに航平君(MF中田、平26スポ卒)が慰めてくれました。
――インカレが終わっていつ頃から自分たちの代になったと実感しましたか
インカレ終わって二日後に東京ユースカップが始まって、その時から4年生がいなかったので自分たちが一番上になるということで、インカレ後すぐはあまり実感しませんでしたけど、二日間オフを挟んで集まった時には自分たちがやるんだという実感がありました。
――インカレ決勝戦は見ていてどのような思いでしたか
自分たちが決勝で戦える自信もありましたし、あのピッチに立ちたかったというのはありますね。
――その後はオフ期間はどう過ごしていましたか
オフは実家に帰ってゆっくりしていました(笑)。
18年ぶりの悲願へ
――それではここからまたリーグ戦について話していきたいのですが、リーグ戦開幕を目前に控えて緊張感などはいかがでしょうか
ます初戦に勝つためにいい緊張感を持ってやれてますね。
――開幕戦の相手である東京国際大についてはどういうイメージを持ってますか
正直あんまり試合を見たことがないのでよく分かんないんですけど、ただきょねん2部で優勝していて勢いがありますし、開幕戦ということで何が起こるか分かんないのですごく怖さは感じてます。
――開会式直後の試合となり注目度も高いと思いますが緊張していますか
そんなにはしてないですね(笑)。むしろ楽しみな部分の方が大きいので。ただチームとして思うようなサッカーができるか分かんないですし、開幕戦のピッチで普段のプレーができない選手もいるかもしれないので、そこで自分のプレーで落ち着きとかを与えられればなと思います。
――専大にここまでいい成績が残せていないですが、やはり専大に勝つことへの気持ちは強いですか
そうですね。たぶん勝ってないと思いますね、自分が入学してから。勝ちたいです。
――ことしも優勝争いの最大のライバルは専大となってくると思われます
ただとにかく専大という感じではないですね。いまはリーグ戦のレベルもすごく高くて、どの試合も勝つのが難しい状況になってると思います。そういう意味では専大が優勝争いのライバルになるのは間違いないですけど、優勝するためには一つ一つ勝っていくしかないなと思いますね。
――ことしのチームの目標などはありますか
ことしはまず早慶戦に関しては定期戦で勝とうということですね。それ以外はリーグ戦、インカレ、総理大臣杯、アミノバイタル杯の全てで優勝すること。そして天皇杯では本戦に進んで、Jリーグのチームとやって勝つっていうのを目標にしてます。IリーグもJrリーグも全て勝つことを意識づけてやってます。
――獲れるタイトルは全て獲るということですね
そうですね。どの一試合も重みは変わんないですし、ワセダとして全ての試合で勝たなくてはいけないという重みは感じながらやってます。
――古賀監督のサッカーも5年目ということで成熟してきたと思いますが
ワセダのサッカーの理解っていうのはみんな長くやってきているので深まってきていると思います。ただそこに個々の力っていうのを加えていかなくてはいけないのかなとは思ってます。
――古賀監督はどんな存在ですか
すごく真面目な方ですね。自分たちに対して常に刺激を与えてくれるというか、いろんな視点、観点で刺激をもらってます。
――主将という立場で監督と話す機会は多いですか
そうですね、やっぱりチームのことに関して常に話し合ってます。
――個の力という話がありましたが、近藤洋選手だったらどういった部分に磨きをかけていきたいですか
僕はことしボランチをやるんで、守備の場面では予測からボールを奪いきるところですね。攻撃の面ではボールを受けて前に運ぶところや決定的なパスを出すこと、そして自分でも積極的にシュートを打つといったとこですね。やっぱりチームの真ん中にいるんで、攻守両面で存在感を出していきたいです。左サイドを2年間やらせてもらって、自分でドリブルで仕掛けでゴールを奪うっていうことを経験させてもらって、そういった経験をボランチでも生かしていけたらなと思います。ユースの頃にやってたボランチとはまたタイプが違いますね。
――左サイドはことしはもうやらないということですか
どうですかね?多分ないと思います。監督が決めることなので分かんないですけど。
――ア式はことしで90周年を迎え、その節目の年にキャプテンとしてリーグ戦を戦うことに関してはいかがですか
ア式蹴球部にとって節目の年ですし、いろんなOBの方にも結果を見られたりとかアドバイスも受けるので、とにかく結果を出していろんな人に喜んでもらいたいと思ってます。
――OBといえばDF三竿雄斗選手(平26スポ卒=現湘南ベルマーレ)が早速活躍されてますが、刺激になりますか
すごくいい刺激というか、うれしいですね。今まで一緒にやってた人がプロの世界でも活躍してて、そういう情報を聞いたりするのはうれしいです。
――結果を残すということで言うと、リーグ戦では近藤洋選手は得点やアシストで目標とする数字はありますか
数字はあんまし気にしてないですね。目標は…言葉というよりイメージをしていますね。感覚的なところなので言葉にすると難しいんですけど(笑)。関東の中で自分が納得できるプレーだったりとかを出していきたいと思ってます。
――リーグ戦に向けてチーム内で期待している選手を一人挙げてもらってもよろしいでしょうか
期待ですか…難しいですね(笑)。うーん…。園田ですかね。ことしから試合に出るようになって、自分の隣にもいるので、やってほしいなと思います。同期の4年生の中でいままでは試合に出場してこなかったんですけど、今回ポジションをつかんで成長してきているところに期待したいというか、関東でどれだけやれるかっていうところに期待してます。
――今季のリーグ戦で戦うのを期待している選手はいますか
やってみたい人は…いないですかね(笑)。まあ名古屋グランパスユース出身の人は頑張ってほしいなとは思います(笑)。
――それでは最後に、間もなく始まるリーグ戦に受け改めて意気込みをお願いします
まずは初戦だと思うので。優勝はもちろん念頭に置いてますけど、まずは初戦が大事だと思います。一戦一戦勝つための雰囲気っていうのはいままでにはないものになってるなと思うので、もっと練習の中から高めていって、18年ぶりのタイトルに向けて戦っていきたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 辛嶋寛文、増山祐史)
◆近藤 洋史(こんどう・ひろし)
1992(平4)年10月12日生まれ。174センチ、66キロ。愛知・安城高出身。前所属・名古屋グランパスU-18。スポーツ科学部4年。取材中は終始リーグへの強い想いを語っていただきました。その風格はすっかりキャプテンのもの、今季に向け頼りになる主将となるでしょう!