12月15日に早大応援部吹奏楽団による第62回定期演奏会がいよいよ行われる。普段は体育各部の応援のために演奏を披露する吹奏楽団であるが、令和7年度東京都大学吹奏楽コンクールでは金賞獲得、都大会出場など音楽団体としても腕を磨いてきた。4年生にとっては活動の集大成となる定期演奏会。吹奏楽団はどのような舞台を作ろうとしているのか。中心となる
・比嘉凪沙吹奏楽団責任者兼大吹連理事兼指揮(法4=神奈川・相模原中教校)
・松下瑛吹奏楽団主務兼演奏会広報責任者(政経4=埼玉・早大本庄)
・萩原舞花吹奏楽団総務兼器材施設管理責任者兼ドラムメジャー(文構4=大阪・早稲田摂陵)
・浅見真凜広報責任者兼インスペクター(ス4=埼玉・市浦和)
・鷲塚怜譜面管理責任者兼演奏会運営責任者(文4=東京・早実)
・鈴木冴乃美ガードチーフ(文4=東京・鷗友学園女)
の6人に本番直前での対談を行っていただいた。

写真に収まる6人。左から浅見、比嘉、鈴木、萩原、鷲塚、松下。
※対談は12月11日に行いました。
ーー自己紹介をお願いします
比嘉 本年度吹奏楽団責任者、大吹連理事、指揮を務めています。フルートパートの比嘉凪沙です。
浅見 本年度広報責任者兼インスペクターを務めている浅見真凜と申します。座奏、応援、ドリルの全てでトランペットを担当しています。
萩原 本年度吹奏楽団総務兼器材施設管理責任者兼ドラムメジャーを務めています。萩原舞花です。演奏時コントラバス、応援時パーカッション、ドリル時バッテリーを務めています。
松下 吹奏楽団主務と演奏会広報責任者を務めています。松下瑛です。楽器は座奏、応援、ドリル全部でホルンを担当しています。
鷲塚 譜面管理責任者兼演奏会運営責任者を務めています。鷲塚怜です。全てアルトサックスを担当しています。
鈴木 本年度ガードチーフを務めています。鈴木冴乃美です。座奏時と応援時はユーフォニアム、ドリル時はカラーガードを担当しています。
ーーご自身が演奏される楽器の魅力を教えてください
浅見 トランペットはなんと言っても花形の楽器なので、応援でもドリルでも座奏でも、吹奏楽において美味しいところが多く目立つことができる、とても好きな楽器です!人柄に合っていると思います(笑)
松下 それで言うとホルンは私の人柄に合っていると思います(笑)裏打ちから堅実なところもあれば、吠えるところは出るみたいなイメージで、ギャップがあると思います。
鷲塚 珍しいと良く言われるのですが、サックスはリコーダーと指が一緒ということでその簡単さが…好きです(笑)
鈴木 ユーフォニアムの魅力は、なんといっても柔らかくあたたかな音色です!曲中でメロディー、裏メロ、伴奏など、何でも担当できるところも楽しいです。
萩原 コントラバスは吹奏楽の中で唯一の弦楽器なので、弦特有の響きで吹奏楽全体の1番外側の響きを支える楽器というところが魅力だと思っています。打楽器は第2の指揮者と言われるくらい、テンポなどの演奏の要を担っているので、支配できるような部分もいいところかなと思っています。
比嘉 フルートは見た目も音もすごく華やかなところが私は好きです。また、発音体が他の楽器と全然違うが故に、表現力を発揮できる楽器なので個人的に好きです。あと持ち運びが楽です。
最上級生として
ーー最上級生の立場として吹奏楽団の練習で意識されてきたことを教えてください
浅見 演奏練習に関して、とにかく比嘉にしっかりとした方向性があり、個人的に絶大な信頼を置いていたので、私は上手く間に立ちながら雰囲気を作っていく役割をしようと意識していました。良い雰囲気で、皆のモチベーションが落ちることなく、明るく練習を進めて欲しいなという思いがあったので、音楽を楽しめて、自ら音楽を頑張りたくなる、積極的に取り組みたくなるような雰囲気作りみたいな方に私は尽力したかなと思います。
比嘉 まず、私は音楽をするための環境作りをしっかりとしたいという思いがあったので、今年は練習の前後のミーティングをなるべく設けるようにして、雑談を学年間でできる状態を育ててから、音楽的な内容についてもそこでの信頼関係の上で話せるようにする、といったことをこの1年間大事にしてきました。技術的なことに関しては、学生練習をもっとこだわってやるべきだと思ってやってきました。先生合奏に入る前に、学生側でしっかりと責任を持って負担などを解消した状態になり、1人1人が責任感を持って合奏することはどのようにしたら叶えられるのか常に考えながらやっていました。
萩原 ドリルスタッフで全体としては基礎を大事にしてやってきました。基本的にサブにやってもらっているのですが、必ず基礎の時間を取って、そこで体幹トレーニングなどを入れてもらいました。やはりドリルはどうしても見栄えがとても重要であるので、歩き方や基礎的な体力などのベースの部分を向上させることを考えてきました。そして、これはメンツの話なのですが、私が練習中に大事にしていたことは、いい部分はちゃんと褒めるということです。かなり個人にフォーカスして見ていて、逆に少しズレている時などは当事者意識を持ってもらうために名指しで1回指摘してあげて意識が根付きやすくなるようにしました。そういう部分でしっかりと考えながらみんながやるようになるためにはどうしたらいいかという部分を色々考えてメンツ(ドリル時に楽器を吹いて歩く人のこと)は練習・運営をしてきました。
鈴木 カラーガードもメンツと同様、基礎力を磨くことを大切にして練習を重ねてきました。具体的には、毎回の練習の最初に柔軟・体幹・筋トレを全員で行い、鏡を見ながら旗の基礎練習やバレエ練習に取り組みました。また、カラーガードは、ドリルステージにおいてメンツの演奏に華を添えるという役割を担っているので、表現力を養うことも大事にしてきました。練習の時から胸を這って笑顔で演技をすることを意識してもらったので、本番ではきっとその成果が発揮されると思います!

演奏会広報責任者の松下(左)と演奏会運営責任者の鷲塚(右)
ーーそれぞれの役職として1年間取り組んできたことを教えてください
松下 Spring Concertの時は、いかに新入生を含むお客様を呼び込むかということに注力したのもそうですし、Spring Concertの成功はその年を勢いづけることになると思っていたので、どうアプローチして会場を満員にするかというところについて、補佐と一緒に頑張ってきました。補佐の子達はビラやPVとかも作って色々頑張ってくれていたので、そのサポートを私なりに頑張ったかなと思います。定期演奏会はもちろん1年間の集大成をお見せする大事な演奏会なので、昨年約900名の来場だったことから、今年は予約者数1000人超えたいなというのはずっと思っていました。その人数が昨日1000人を超えてとてもうれしいですし、私が知っている中では初の記録だったので、みんなが広報を頑張ってくれてうれしいなという風に思っています。
鷲塚 定期演奏会の曲目を決める時に、なぜこの曲を選んだのかという理由までみんなが納得できるように説明するというのは意識してやっていました。コンセプトについても春は「Sparkle」、定期演奏会は「七色」という風に決めた時に、なぜこのテーマにしたのかというところまで説明したり、幕間企画についても企画内容をしっかりと全員に確認をとってからやりました。
ーー他の音楽団体とは異なるような応援部吹奏楽団の魅力を教えてください
萩原 ドリルをしているのが早稲田で応援部吹奏楽団だけなので、他の団体との違いの1つかなと思います。音楽は聴覚だけでも凄く楽しめるものだと思うのですが、ドリルはあえて視覚的にも楽しむことができることが魅力だと思います。
浅見 色んな楽器を経験できるというのもこの団体ならではなのかなと思います。人によっては応援とドリルと座奏で全部違う楽器をやっている人もいるように、自分の幅を広げられる新しい挑戦をしやすい環境というのも珍しいかなと思います。
鷲塚 コンクールで大学の部に出られるのは早稲田でここだけなのでそこも魅力だと思います。
比嘉 他の大学との関わりも、大吹連に加入しているからこその繋がりだとか、六大学の連盟との繋がりがあるからこそなので、そういう意味では広い縁というのもこの団体ならではなのかなと思います。

指揮部門の2人。左から比嘉、浅見。
ーー吹奏楽団同期4年生の魅力は
浅見 比嘉のブログに書いてあったことなのですが、どの人をペアにしても違和感がないという点は大きな魅力だと思います。これは実は難しいことで、とてもありがたいことだなあと思いました。色んな人と組んで色んなお仕事をするということが頻繁にある世界で、誰と組んでもすごいやりやすかったし、お互いにリスペクトがあって、みんなが言いたいことを隠さないような環境なのが凄くいいなと思いました。
比嘉 なんとかする力がすごいと思ってます。「なんとかなったな」みたいなことは多いけれど、実はそれは誰かがなんとかしてくれてるだけだなと思っていて。同期を見ていると色んな役職の中で、自分がなんとかしなきゃいけない状況でしっかりとやり遂げてくれる人が多いです。みんながそれぞれの場所で、ちゃんとそういうのをやっていたのは素晴らしいなと思いました。過ごしやすかった、この同期の中にいれて。
ーー4学年全体での雰囲気はいかがですか
松下 4年生になってみてすごく実感したことなのですが、下級生がしっかりついてきてくれていて。もちろん補佐の3年生もそうなのですが、今まで以上に2年生・新人も部に関わってくれている印象があります。演奏会広報部門においても、ポスターやビラを作るプロジェクトチームがあり、それは新人も入ることができるチームなのですが、過去最多人数くらいの勢いで下級生が積極的に参加してくれました。新しい風が入ってきて、今までの風潮にとらわれないアイデアや気付きがあるかなと思います。
浅見 年間目標が浸透しているということを感じています。本年度の年間目標は「輝」なのですが、1年間を通して「輝」をリマインドしてもらうことが多く、みんなもどこかで意識しながら動けている感じがしています。吹奏楽団としてのまとまりはありつつも、学年の色がはっきりしていてそれぞれの場所で輝いている気がします。
定期演奏会について
ーー定期演奏会でこだわっている部分はありますか
鷲塚 テーマは「七色」です。これには令和7年度のメンバーでしかできない定期演奏会をやりたいという意味と、部員新人1人1人がそれぞれの色で輝くという意味を込めてこのテーマにしました。「七色」や吹奏楽団目標の「輝」に関連した曲目を選んで、全体を構成したことが1番のこだわりです。
松下 演奏会広報部門としては定期演奏会のテーマが決まってから、ポスターのデザイン募集をしました。こだわりとしては「七色」と「輝」を反映できているデザインにしたいなと思って、下級生と一緒に作ったものです。あとは、パンフレットもテーマを反映させた感じにしたいねと補佐と話し合いをして、色々こだわりが詰まっているので是非当日に見ていただきたいです。
鈴木 私は、カラーガードステージ「戦場のメリークリスマス」を一番こだわって作り上げました。実は、2前くらいからこの曲で踊りたいと考えていて、どんな構成にしようかな…とたびたび妄想していました。(笑) カラーガードの優美な演技にご注目していただければと思います。
萩原 メインステージの「グレイテスト・ショーマン」は浅見が特にずっと前からラストはこの曲をやりたいと言っていて。それにはみんなが賛同するくらい、いい曲で華やかで見栄えもする曲ですし、テーマにも沿っているので曲自体はすんなり決まりました。その中でただドリルをするだけではなく、いかに「グレイテスト・ショーマン」という作品に合ったドリルを作るかという部分に重きをおいて作りました。鈴木も私もお互いにやりたいことがあって、お互いに活かしていきながら作りました。私は必然性を持たせるというのを意識しているのですが、動きと曲が合っていないとチグハグに見えてしまうので、曲と動きに「必然性」を持たせるという部分を中心にドリルステージを作らせていただきました。
浅見 映画のワンシーンが思い浮かぶような構成になっていて凄く良いです。細かい動きというよりも、全体の形を作るものが今年は多い分、自分が1個のパーツだと思うと結構覚えやすかったです。
萩原 それは人数が多いからならではだと思っていて、人数が多いからこそ変に細かい動きをしてしまうと、目が散ってしまうので、全体で形を作るという点は意識して作ったので、是非見ていただけたらなと思います。

「Spring Concert」での萩原(左)、鈴木(右)
ーー過去3回の定期演奏会から学んだ点、参考にした点などはありますか
萩原 ラストの応援曲ドリルで『暁』を披露するのですが、私たちが新人だった時の『暁』のコマからオマージュして、同じ隊形を前半で作っているので、私たちの原点回帰になりつつ、それが凄く整理されてて見栄えするという部分もあるので、そういう部分は見習っています。
浅見 第Ⅰ部で演奏する「スター・パズル・マーチ」は私たちが新人の時のドリルステージにて、オープニングを飾るファンファーレとして演奏した曲です。曲を決める時に何かマーチをやりたいというのと、何か「輝」にまつわる要素を入れたいとなった時にこの曲が浮かび上がりました。
比嘉 新人の時から成長して、この団体を次の世代に渡すというストーリー性があって凄く良いと思います。
浅見 やはりどの代にとっても、多分一番最初の、新人の時の定期演奏会というのは思い入れ深いと思っていて、それが顕著に出ているかなと思います。今の新人にとってもそういう演奏会になって欲しいですね。
ーー定期演奏会の見どころを教えてください
松下 現地にいらっしゃったらこだわり満載のパンフレットも見られますし、入り口からワクワクする構成をたくさん感じられます。
浅見 本当に始まる前から終わるまで瞬き厳禁という感じですね。
比嘉 本当にそのレベルでボリューミーですね、見どころしかない。
浅見 「ディズニー・アット・ザ・ムービー」は私が指揮を振って、鷲塚がアクションを考えているのですが、有名な曲だからこそできる表現があって、耳でも目でも楽しい曲になってます。私は個人的に指揮を振るときに、球場でも同じなのですが端から端まで全員見るというのがポリシーなので、みんなとアイコンタクトを取りつつ、一体となって作るという意味でいいステージにしたいと思います。
比嘉 「三つのジャポニスム」はノーカットでやるのですが、それはかなり挑戦だなと思いました。吹奏楽界で知らない人はいないような名曲なので、ハードルは高かったですが、忙しい中頑張って取り組んできました。1年間取り組んで成長してきた成果をこの大曲で発揮できるように頑張りたいです。
萩原 ドリルステージは最も全体で作るものだと感じられるステージだと思うので、本当に全体を見ていただきたいなという風に思っています。全体を見て楽しめるようにこちらも作っているので是非楽しんでいただけたらと思います。
鷲塚 1つ目の幕間企画には劇を行うのですが、Spring Concertだけで行っていた企画が遂に定期演奏会に進出ということで、その劇で応援部吹奏楽団を振り返るという内容を用意しました。応援部吹奏楽団について知らない人も、どのような活動をしてきたのか知っていただけると思うので、その流れで2部、3部と見ていただきたいです。2、3部間にはバンド曲メドレーをやります。これはおそらく初の試みで、幕間企画も全員が関われるようにしたかったという思いがあります。各学年が新人の時のバンド演奏曲を我々4年生と一緒に演奏していきます。最後はスペシャルゲストの登場もあるかも!?です。
鈴木 私も萩原と同じく、ドリルステージに注目していただきたいです!複雑な隊形移動も楽しんでいただけるように、是非2階席からもご覧になっていただきたいなと思います。
ーーありがとうございました!
(取材・編集 土橋俊介)
◆比嘉凪沙(ひが・なぎさ)
神奈川・相模原中教校出身。法学部4年。吹奏楽団責任者兼大吹連理事兼指揮。最近のブームは六大学各校のインスタアカウントの投稿を見ること。引退公演にまつわる投稿が増えていることから、頻繁に見てしまうそうです。
◆松下瑛(まつした・はな)
埼玉・早大本庄高出身。政治経済学部4年。吹奏楽団主務兼演奏会広報責任者。最近は定期演奏会のチケット予約者数を頻繁にチェックするそうです。
◆萩原舞花(はぎわら・まいか)
大阪・早稲田摂陵高出身。文化構想学部4年。吹奏楽団総務兼器材施設管理責任者兼ドラムメジャー。引退後は「ドラゴンクエスト」のリメイク版を全てやりたいそうです。
◆浅見真凜(あさみ・まりん)
埼玉・市浦和高出身。スポーツ科学部4年。広報責任者兼インスペクター。温かいお茶を飲むこととさつまいもを食べることがマイブームで、定期演奏会に向けて腸活をしているとのこと。
◆鷲塚怜(わしづか・れい)
東京・早実高出身。文学部4年。譜面管理責任者兼演奏会運営責任者。引退後は東京に期間限定で出店する「ふなっしーランド」に行きたいそうです。
◆鈴木冴乃美(すずき・このみ)
東京・鷗友学園女高出身。文学部4年。ガードチーフ。最近のブームは朝に豆乳、夜にR1を飲むことだそうです。
