【特集】野球部 スタッフ特集 第3回 宇野竜一朗×石岡泰樹×木場源樹

野球特集

 第3回に登場するのは宇野竜一朗(教4=東京・早実)、石岡泰樹(スポ4=早稲田佐賀)、木場源樹(スポ4=早稲田摂陵)。一度は選手として入部し神宮球場でプレーすることを夢見るも、ケガによって学生コーチに転向した経歴を持つ3人。選手として日の目を浴びずとも、裏方として覚悟を持って活動してきた彼らが最後の秋に思うこととは

※この取材は9月12日にオンラインで行われたものです。

ここまで全力で野球に向かってやるのはあと2、3ヶ月ぐらいで終わるので悔いのないように(木場)

――まずは他己紹介をお願いします

宇野 石岡は主に野手の方を見ていて、とにかく面白いコーチです。選手との距離も比較的近いスタッフだと思っていて、選手からの声を首脳陣に上げてくれたりとか、選手と親身に寄り添ってくれるような学生コーチなのかなっていう風に思います。

石岡 木場はスタッフの中で一番優しいのかなと思っています。その優しさがいい意味で選手への声かけであったりに反映されていると思います。そこを生かして選手への声かけだったり、選手の不平不満とかをしっかり聞くといった、コミュニケーションが取れていて、良い学生コーチだなと思います。

木場 宇野は主に野手を見ている自分たちとは違ってピッチャーを主に見ています。ピッチャーを見ている中でも優しさがありますし、もともと実力もあったので、ピッチャーについていろいろな部分を見ていてすごいなと思っています。持ってる知識も豊富なので、それを指導に生かしていて、すごいなと感じることも多々あります。

――オフの日はどのようなことをしていますか

宇野 自分は地元が浦安市で、グラウンドからも1時間半ぐらいで帰れるので、オフの前日に地元に帰って少し遊びに行ったり、家に帰って自分の飼っている犬に全然会えないので会いに行ったりしています。

石岡 あまり家にずっといるのが好きではないので、オフの日は絶対外にいますね。主に映画を見たりとか、買い物したりしている日が多いです。夜ご飯は必ず誰かしらと食べていますね。

木場 自分は結構家でダラダラというか、アニメ見たりドラマ見たりっていう感じで過ごす日が多くて、たまに誘われたりしたら遊ぶ感じですかね。基本1人で家にいることが多いです。

――お三方のプライベートでの関わりについて教えてください

石岡 あんまない。

宇野 あんまないですね。

石岡 飲み会が学年であったらって感じです。よく飲み会はしますけど、あんまり2人っきりでご飯とかはお互いないですね。

――仲の良い同期であったり、後輩先輩、チームメイトの方はいらっしゃいますか

宇野 仲が良いのは同じ投手コーチをしている石原壮大(スポ4=千葉・日大習志野)であったり、ピッチャーで早実出身の鹿田泰生(商4=東京・早実)とかです。あと自分の住んでる家が近くてよく遊んだりするのは池内零(スポ4=大阪・豊中)です。その3人が仲良いメンバーかなと思います。

石岡 僕はゼミが川内脩平新人監督(スポ4=東京・八王子)と一緒なので、学校生活では結構川内と一緒にいることが多いです。あとオフの日だったり飲みに行くってなったらリーグ戦に入ってるメンバーだと中村敢晴(スポ4=福岡・筑陽学園)とか文珠玄基(スポ4=神奈川・桐蔭学園)とか薗部将大(教4=東京・早大学院)とかが多いかなっていう印象です。

木場 自分はプライベート遊ぶとなると、田中翔太郎(教4=埼玉・春日部共栄)や、松岡慶輔(スポ4=東京・国学院久我山)、吉村懇(教4=長崎西)、小早川誉景(文4=東京・早実)が多いです。リーグ戦のメンバーだと中村敢晴に結構こき使われてます(笑)。「ノック打って」ってこき使われることが多いですね。時々温泉とかにも行っています。

自分が学生コーチになることでチームが優勝してくれれば(宇野)

――現在の役職の仕事内容を教えてください

宇野 投手コーチをしています。他に投手コーチが2人いるんですけど、同じ代の石原と、1個下に冨田大地(スポ3=茨城・日立一)がいて、石原がメインの投手コーチをやっています。来年は冨田がメインの年になるので、石原や冨田の手が足りないところを自分が補ったりしています。また早実の時も中学校の時も、いろんな方に教えていただくことが多くて、石原や冨田に比べれば投手に関する知識は多いと思うので、技術的なコーチングは自分がメインで行ってるところがあるかなっていう風に思っています。

石岡 主に野手を見ています。新人監督の川内は選手に指示を出したり、全体を見ないといけないので、私は試合やシートバッティングの審判やノック、バッティングピッチャーなど、何でも屋として練習を回す立場で活動してます。

木場 自分は石岡と川内がAチームの練習を見ることが多いんですけど、そこの足りない部分を補うのと、あとはBチームとCチームの練習を大西(創志、人3=東京・城北)と一緒に手伝ってやっている中で、その中で目立った選手を川内に伝えることであったり、練習の補助やノックなどを主にすることが多いです。

――学生コーチのやりがいについて教えてください

宇野 やりがいは自分が教えていた選手や、目をかけていた選手が結果を残してくれたり、練習に向き合う態度が変わってきたり、そういう変化が見られた時に、自分もその変化に1つ手助けできたのかなっていう風な実感が湧いた時にはすごいやりがいを感じています。

石岡 シンプルに勝った時が選手同様すごい嬉しいなって思っています。やっぱり支える立場ですけど、チームの一員には変わりないので嬉しいですね。2つ目は宇野とほとんど一緒なんですけど、 自分がバッティングピッチャーだったりをしている中で、苦労している姿を見ていた選手が結果を残してメンバーに入れてもらえたりとか、リーグ戦でヒットを打ったりっていう瞬間は、苦しんでる姿を見てるからこそ、結果が出たことが本人のように嬉しいなって思う時があります。

木場 僕も一緒でやっぱり練習してる姿見てるからこそ、BチームやCチームで頑張って、それで上で頑張っている選手が結果を出したりすると、良かったなと思いますし、やりがいを感じます。あとは、補助をしていて感謝の言葉をもらったりした時もやりがいを感じます。

――学生コーチの皆さんは首脳陣と選手の橋渡し役を担っていますが、その立場だからこそ感じる難しさを教えてください

宇野 やる気を出させて本気で1軍で神宮を目指すマインドにさせるのがすごい難しいなと思っています。技術的なところは教えればできる人もいますし、それでどんどんうまくなっていく子もいます。ただ、マインドの部分を変えるのは、自分たちの手ではどうにもできないようなところなのかなと思うので、そこはすごい難しいなと思います。

石岡 主にAチームを見ているので、私が現役時代より下手な選手は本当に1人もいません。もちろん技術を教えることも難しい事なのですけど、1つ難しいなと思うことは(Aチームにいるのは)一流の選手たちなので、それぞれのやり方でずっとキャリアを積んでいった中で、監督やコーチが決めた練習をやってほしいと伝えた時に、やっぱりそれを納得できない選手がいます。そこを納得させるというかまとめるという部分が一番難しいと感じてます。

木場 やっぱりBチームやCチームを見ていると、なかなかやる気やモチベーションを高めれない選手がいるので、そういった選手をうまく練習する気持ちに持っていけるようにするのが部分が難しいと思っています。コーチや監督はAチームの方を見てしまいがちになるので、そういった方々に BチームやCチームの選手の魅力であったりを伝えるのには結構苦労しています。

――早大を志したきっかけや、野球部に入部したきっかけを教えてください

宇野 自分は早実出身なのですが、高校を選んだ時にはちょうど清宮幸太郎くんが 活躍してた時でした。清宮くんが神宮球場で早稲田のユニフォームを着て活躍してる姿を見て、自分も神宮で早稲田のユニフォームを着て活躍したいと思って早実への進学を決めました。その後、大学にはそのまま内部進学という形で進学しました。

石岡 私は高校1年生の頃に見た神宮球場でのリーグ戦がきっかけになっています。私も早稲田佐賀高校の出身なのですけど、入学当初は全然早稲田大学に興味はなかったんです。ですが、その試合を見た時から早稲田大学の野球部に憧れを持ちました。(早稲田佐賀高校は)系属校で全員が進学できるわけではなかったので、一生懸命勉強して、早稲田大学に進学して、憧れの野球部に入部したという形です。

木場 僕はネームバリューと言いますか、早稲田大学という名前の大きさや野球部が日本でもトップレベルのチームであるという部分に惹かれました。日本のトップレベルの大学に行きたいというところから早稲田を目指し始めました。そのため、高校選びから早稲田に行く事を目的にして、大阪の系属校の早稲田摂稜に入りました。各学年30人ぐらいしか早稲田大学には行けないんですけど、勉強を頑張って、内部進学で入りました。

――選手として入部されましたが、学生コーチに転向したきっかけを教えてください

宇野 高校3年生の時に膝をケガしてしまって、大学に入ってからも膝の痛みが消えずに、思うようにプレーすることができていませんでした。その中でプレー中のアクシデントで3年生の秋に腰をケガしてしまって、その時に監督室に呼ばれて、学生コーチをやったらどうだという話をいただきました。自分の父が指導者であることや将来的に指導の道に進めたらいいなと思っていたので、監督からの提案もあって学生コーチになりました。

石岡 新人監督をしている川内からの提案というか、(学生コーチに)なってくれないかって話をもらって、そこで興味が湧いたのがきっかけです。そして3年の秋に自分の立ち位置や実力などを考えた時に、4年生で神宮で活躍することを目指すよりは、チームを支える方が貢献できますし、大学4年間がよりいいものになるのではないかと思って、 学生コーチになる決断をしました。

木場 自分は大学2年の冬に手術をしないといけないケガをしてしまって、 復帰までに1年強かかるので、(復帰した時には)もう引退間近で、そこから野球やるのは厳しい状況になっていました。その中でチームのためにできることないかというのは、新人監督の川内であったり、印出主将(太一、スポ4=愛知・中京大中京)に聞いたりして、それなら学生コーチが1人でも多く欲しいっていう声をいただいて、チームのためになるならという思いで学生コーチになることを決めました。

――学生コーチに転向するにあたって葛藤などはありましたか

宇野 自分も腰のアクシデントがあるまでは神宮球場でプレーするということを目標にずっとやっていました。監督に呼ばれて急に学生コーチにならないかという話をもらった中で、自分自身が中学、高校まで第一線で活躍していた選手だったので、周りからの目というか、自分が学生コーチになって悲しむ人はいるんじゃないかと少しは思ったりもしました。ただ、自分が学生コーチになることでチームが優勝したり、1人でも多くの選手がやる気になってくれたり、神宮球場でプレーすることができたら良いなという思いがありました。自分の野球人生には区切りをつけて、これから指導の道に回ろうと考えて学生コーチに転身しました。切り替えるのは大変でしたね。葛藤はすごくありました。

石岡 やはり高校1年生の時に早稲田のユニフォームを着て神宮で戦っている人たちに憧れたというのがあったので、葛藤もありましたし、悩みました。学生コーチになるということは、その立場に自分がいけないということなのですごく悩みました。ただ、多分選手を続けていてもあそこに行くことは難しかったのかなと今でも思っていて。それならと思って学生コーチという立場になるという決断をしたので、悩みはしたんですけど、この決断してよかったかなと思ってます。

木場 葛藤はあまりなかったです。ですが、やっぱりケガをして悔しいという気持ちは強かったです。もともと選手として周りと比べてレベルが低くて、このままチームの一員になれずに終わるよりかは何かチームに関わっていきたい思いがありました。悔しさはありましたけど、気持ちを切り替えてできたのかなと思っています。

――学生コーチという立場だからこそできた経験や得たものを教えてください

宇野 学生コーチになって思うのは、選手たちを見ていて、こういう選手がうまくなって、こういう選手が伸び悩むというのをこの立場だからこそ明確に見えるなと思います。練習中にしっかり考えながら、自分の課題に対してこれが必要だというのを考えながら練習してる選手はすごく伸び続けるなと思います。ですが、やらされている練習をずっとやってる選手はずっと伸び悩んでるなと。今後、人を指導する立場になった時に考えることの大事さを教えていけるのではと思っています。

石岡 上と下をつなぐ仕事が学生コーチでないと経験できなかったと思います。監督さんが指示したことを(選手に)どうにか納得してもらうような言葉に自分で変換して伝えて、逆に選手の不満などを上の方が動いてくれるような言葉に変換して物事を動かす経験を学生の間にできたのは、社会に出てからも生きると思います。そこは学生コーチになってよかったことかなと思います。

木場 周りを見る力、チーム全体を見るという部分で力がついたと思います。選手としてやっていると自分が試合に出るためにどうやっていけばいいかを考えることが多かったです。ですが学生コーチになってからは、それぞれの選手を見て、ここの選手はどうしていけばいいのかであったり、人の人との意見をすり合わせてチームを1つにしていくことであったりが、難しいなっていう感じるとともに、少しはうまくできるようになったのかなと感じています。

肩、肘飛んでもバッティングをピッチャー頑張る(石岡)

――ここまでの4年間を振り返って一番印象に残っていることは何ですか

宇野 春に自分たちが入学してから初めて六大学で優勝できたことが一番印象深いです。 入部してから一度も優勝を経験できていなかったので、スタンドからではあったんですけど、早稲田が優勝することができてすごく嬉しかったです。

石岡 チームとして個人としても優勝したことがやはり一番大きかったと思います。4年間の間で一度でも優勝したいと思ってたので、すごく良かったです。また、個人としてはフレッシュリーグでヒットを打ったことが一番思い出に残っています。リーグ戦ではありませんでしたが、神宮で活躍する1つの夢を叶えられた瞬間でもあったので、それがすごく印象に残っています。

木場 自分も春優勝した時は学生コーチになってよかったなと思いました。スタンドからではあるのですが、応援していて嬉しかったです。

――秋季リーグ戦開幕を控えた現在のチームの雰囲気はいかがですか

宇野 ピッチャー陣はエースの伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)が中心になります。ただ4年生のピッチャーが今のところ鹿田(泰生、商4ー東京・早実)しかいません。下級生を中心にチームを勝たせるというところで、自覚を持って練習に取り組んでくれてますし、オープン戦でもすごい頑張ってくれています。下からいい刺激をもらって、4年生たちも頑張ろうとなっているので、いい雰囲気で秋に臨めるんじゃないかなと思っています。

石岡 ピッチャーは春に比べてAチームで投げるピッチャーが増えました。春は故障者がいたのですけど、それが秋には復帰してしっかり投げれてるので、ピッチャーの層もしっかり厚くなっていますし、それぞれの能力も上がっていると思います。打者の方は確実に春よりバッティングが良くなってるなというのが、バッティングピッチャーや審判をしていて思う印象です。投打のレベルが確実に上がってると思うので、しっかり噛み合えば優勝をしっかり狙えるようなチームになっていると思います。

木場 やっぱり新潟でのキャンプを通して、守備もバッティングも力がついてきて、それが結果として練習試合でも出ていると思います。いい感じで仕上がってきていると思っています。

――お三方もこの秋がラストシーズンです。何か特別な思いはありますか

宇野 春に達成できなかった日本一という目標に向かって、できることは少ないですけど、できることを精一杯、これからも最後までやり抜いていきたいなっていう風に思ってます。

石岡 最後のシーズンなので、全力でやろうと。 正直バッティングピッチャーで肩、肘が飛びそうなのですが、もう今後投げることはないので、肩、肘飛んでもバッティングをピッチャー頑張ってやろうと思います。

木場 自分もここまで全力で野球に向かってやるのは、もうあと2、3ヶ月ぐらいで終わるので、悔いのないように最後までやり切りたいです。同時に、春準優勝で終わってしまったので、最後日本一取れるように選手を応援していきたいなと思います。

――今季の注目選手を教えてください

宇野 髙橋煌稀(スポ1=宮城・仙台育英)です。彼は昨シーズンはケガで投げることができなかったのですが、秋からは本格的に投げると思います。彼の実力が神宮球場で発揮されることをすごい楽しみにしているので、頑張ってほしいです。

石岡 薗部と反町(惠眞、スポ4=埼玉・早大本庄)に注目してほしいです。同期なので期待していますし、活躍してほしい願いもあります。彼らはおそらく右の代打の薗部、左の代打の反町という形でリーグには登場すると思います。少ない機会をものにして早稲田の勝ちにつながるような打撃をしてくれたらなと思っています。

木場 中村敢晴と吉田瑞樹(スポ3=埼玉・浦和学院)です。やっぱり敢晴は普段からノックを打っていて練習している姿を見ることが多いので、期待していますし、チャンスで打ってほしいなと思います。吉田瑞樹は印出主将の下でなかなか出場機会が得られず、あまり目立ってはいないのですが、 練習試合を見ていても結果を出していますし、この秋は代打でやってくれるんじゃないかと思っています。

――最後に今秋への意気込みをお願いします

宇野 春できなかった日本一という目標を最後の最後で達成できるように精一杯頑張っていきたいなっていう風に思います。

石岡 僕たちは神宮球場で戦う側ではない、日の目を浴びることのない立場ですが、選手と同じように1つ1つのプレーや1秒1秒を大切に全力でやっていきます。 結果はもう神のみぞ知るという形で、やれることをしっかり頑張ります。

木場 日本一に向けて、細かなところまで気を配って、どこか少しでも選手の力になれればと思って、一生懸命練習のサポートであったり応援に回れたらと思います。

(取材・編集 近藤翔太、林田怜空)

◆宇野竜一朗(うの・りゅういちろう)

2002(平14)年8月5日生まれ。183センチ、82キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。

◆石岡泰樹(いしおか・たいき)

2002(平14)年7月30日生まれ。173センチ、75キロ。早稲田佐賀高出身。スポーツ科学部4年。

◆木場源樹(こば・げんき)

2002(平14)年5月18日生まれ。175センチ、78キロ。大阪・早稲田摂陵高出身。スポーツ科学部4年。