第76回早慶対抗フェンシング競技定期戦 12月3日 慶應義塾大学日吉記念館
女子全種目と男子エペで勝利を飾り、早大は4勝2敗で3年ぶりの総合優勝を果たした。多くの実力者を擁しながらも、2021年から前代未聞の2連敗を喫していた早大。「最後らしく悔いの残らないような試合にしたい。1個上や2個上の先輩たちの分も勝ちたい」という強い思いを胸に、藤澤将匡主将(スポ4=宮城・仙台城南)率いるチームワセダは慶大に足を踏み入れた。今大会には多くのOB・OGと2名の応援部もかけつけ、部員らとともに大きな声援を送った。
部員全体で臨む最後の大会となった早慶戦
☆女子フルーレ(○45-24)
1試合目の女子フルーレには、森多舞(スポ3=山口・岩国工)、岡田彩希(スポ1=京都・龍谷大平安)、早川葵彩(スポ1=東京・東亜学園)のフルメンバーで臨んだ。森多が第1セットをものにし流れをつくると、その後もリードを保ったまま中盤へ。第5、6セットには森多と早川がそれぞれ5連続ポイントを決め慶大を突き放した。岡田も時間を使った粘り強いプレーでつなぎ、早大は45-24と圧勝。チームを勢いづける目覚めの1勝となった。
試合前、笑顔を見せる女子フルーレ陣
☆男子フルーレ(●33-45)
日本代表として世界でも活躍する飯村一輝(慶大)を相手にどれだけ粘れるかが鍵となった男子フルーレには、藤澤、ダグラス・ビューワーニック(スポ4=埼玉・星槎国際)、竹内隆晟(スポ2=岡山大安寺中教)の3人で臨んだ。ミスも絡み、第4セット終了時点で11点差をつけられた早大であったが、第5セットでダグラスが14ポイントを奪う怒涛の追い上げを見せ、23-25と2点差に迫る。続く藤澤も飯村に対して「ずっと相手の攻撃をつぶすようなかたちで」守りを固め流れをつないだ。しかしその後は得点を重ねることができず、33-45で敗戦を喫した。
第5セットに怒涛の追い上げを見せたダグラス
☆女子エペ(○41-37)
蓮井陽菜(スポ4=香川・高松北)、柴田華(スポ4=神奈川・横須賀大津)、池田佳央理(社1=岡山大安寺中教)のフルメンバーで臨んだ女子エペ。序盤から早大がリードするも点差はほとんど開かず、手に汗握る大接戦に。互いににらみ合った状態が続き、審判から忠告を受ける場面も見られた。しかし早大が最後までその小さな点差を守り切り、41-37で勝利。2勝目をあげ、女子の総合優勝を決めた。
試合に勝利し抱き合う女子エペ陣
☆男子エペ(○45-38)
エースの中本尚志(スポ1=山口・岩国工)が不在の中で大逆転勝利を収めた。メンバーは藤澤、周旻朗(国教4=香港・セントステフェンズカレッジ)、仙葉遼輔(国教4=秋田南)の3人。「動きが固く距離も合っていない」と焦りを感じていた周は第1セットで1ポイントしか決められず、続く藤澤も1得点と、試合開始早々慶大に大きくリードされる展開となった。しかし11点差をつけられて迎えた第5セットで、周が目を見張るほどの猛攻を見せる。「点数を気にせずに自分がやりたいことを」と考えた周は勢いに乗り、13ポイントを奪って2点差まで詰め寄った。その流れのまま仙葉が同点に追いつき、藤澤が逆転に成功。今度は早大がリードする展開となり、最後回りの周へとバトンが渡った。周は格上の相手に対し「怖い気持ちはあったが、受け身にならず点を取りに行こうと思った」と積極的にアタックをしかける。結果、周は見事点差を守り切り、45-38で勝利を飾った。この大逆転劇にはチームメイトも興奮が収まらず、試合を終えた男子エペ陣を手厚く出迎えた。
大逆転勝利を収め叫ぶ周
☆女子サーブル(○45-38)
山崎妃奈乃(スポ1=千葉・渋谷幕張)が不在のため、伊藤花乃(スポ1=愛媛・三島)に、「安心して任せられる」森多と全日本学生選手権(インカレ)で目覚ましい活躍を見せた早川の2人のフルーレ陣を加え臨んだ。前半は慶大に主導権を握られるも、第5セットに伊藤が逆転し4点をリードする。そこから勢いに乗った早大は全員で得点を重ね、最後は伊藤が「サーブル特有のフレーズでしっかりと取り切ることができた」といいかたちで試合を締めくくった。45-38と余裕を持って勝利し、女子は全種目で優勝を果たすこととなった。
早大に流れを引き寄せた伊藤
☆男子サーブル(●40-45)
田中智也(商3=千葉・東葛飾)と佐藤悠雅(人科2=福岡・西南学院)に、フルーレ専門のダグラスを加え臨んだ男子サーブル。序盤は慶大のペースで試合が進むも、第4セットで佐藤が点差を縮め、続く田中が8ポイントを奪い逆転に成功する。しかし再び慶大にリードを奪われ、その流れを取り返せないまま40-45で惜敗。11月にインカレで銅メダルを獲得した男子サーブルはその実力を見せつけたいところであったが、悔しくも本領発揮とはならなかった。
ダグラスと笑顔でグータッチを交わす田中
この代の選手・マネジャー全員で臨む最後の大会となった早慶戦。2人の1年生エースが海外遠征で抜けている中、早大は持ち前のチーム力で有終の美を飾った。「正直ほっとしている気持ちが大きい。この1勝目というのをどんどん次の世代につないでいって、これから何連勝、何十勝というところにつなげていってほしい」と語った藤澤主将。引退試合となる全日本選手権に向けては「もちろん優勝を目指して、かみしめながら頑張っていきたい」と意気込んだ。このメンバーで過ごす時間は残り2週間。一瞬一瞬を‟かみしめて”、笑顔の幕引きを迎えたい。
(記事・写真 槌田花)
コメント
伊藤花乃(スポ1=愛媛・三島)
――山崎さんが不在でしたが、どのような役回りで試合に臨みましたか
サーブルをメインでやっているのが私だけだったので、そこは最後回りの自分が取り切れるようにということはしっかりと意識していました。あとはフルーレ陣で、舞先輩は結構サーブルを経験されている方なので、そこは安心して任せたというところと、葵彩はインカレのときにかなり活躍してくれて。そこから3人で頑張ろうと話してい増した。
――伊藤さん自身がうまくいったところを教えてください
私は、フルーレをメインでやっている人がサーブルをやるときって結構苦戦してしまうんですけど、今回はサーブル特有のフレーズでしっかりと取り切れたというのが一番良かったかなと思います。ルプリーズアタックといって、先にストップして相手を止まらせてから自分が入るというアタックを最後のエース回りのときにやって、そこで結構点数を稼げたので。そこも勝てた要因かなと思います。
――逆に改善したいところはありますか
1試合目のときに取り切れなかったところがすごい悔しくて、そこは改善するとことかなと思います。
――試合を終えての感想をお願いします
初めての早慶戦で緊張していた部分もあったのですが、先輩方やOB・OGの方々の応援もあって、しっかりと楽しんで試合をすることができました。楽しかったです。
――最後に、全日本の目標をお願いします
全日本は妃奈乃も加わるので、そこでまたさらにレベルアップしたメンバーで、インカレで日大に負けてしまったので次は悔しさを晴らせるように頑張りたいです。
周旻朗(国教4=香港・セントステフェンズカレッジ)
――同期含め全員で臨む大会は最後だったと思いますが、どのような気持ちで会場に来ましたか
僕は9月入学なので一応来年のリーグ戦までは出るんですけど、気持ち的には今大会がフェンシング人生最後だと思って、大会に向けて頑張っていました。
――中本さんが不在でしたが、3人どのような役回りで試合に臨みましたか
最後回りの中本くんがいなかったので、その場合は誰が(最後回りに)適任かと考えたときに僕だったので、そこで自分でなんとかして、自分の役割を果たしてみんなで勝ちに行くという感じでした。
――途中ものすごい追い上げがありましたが、流れがきたきっかけがあったのでしょうか
そうですね、1試合目はあまり調子がよくなくて結構焦っていて、動きが固かったですし距離も合っていなくて…ファントとか打っていたんですけど、そこでやらかしたという気持ちがあって。次から切り替えて、点差が離れていたので点数を気にせずに自分からやりたいことをやって、自分のベストが出せたらいいかなという気持ちでやっていました。
――最終セットのときの心情は
藤澤と仙葉のおかげで点差は離れていたんですけど、相手は格上の選手で。怖い気持ちはあったのですが、ここまできたら絶対に成し遂げたいという気持ちがあったので、受け身にはならないように自分から積極的に点を取りに行こうと思っていました。
――試合を振り返った感想はいかがですか本当に最高です。
――最後に、全日本に向けて意気込みをお願いします
この勢いで、今海外の遠征に行っている中本くんも含めて強い気持ちを持って勝ちに行きたいと思います。
藤澤将匡(スポ4=宮城・仙台城南)
――部員全体で臨む試合は最後でしたが、どのような気持ちを持って会場に来ましたか
やっぱり最後ですので、最後らしく悔いの残らないような試合にしたいなというのと、1個上や2個上の先輩たちの分も勝ちたいと思ってここに来ました。
――試合が終わって率直な感想はいかがですか
全部勝つことはできなかったですけど、総合優勝というところで、正直ほっとしている気持ちが大きいかなと思います。この1勝目というのをどんどん次の世代につないでいって、これから何連勝、何十勝というところにつなげていってほしいです。
――やはり主将として望む早慶戦は、今までと重みは違ったりしますか
いや~違いましたね(笑)やっぱり、1年間色々と頑張ってきたことだとか、他の部員たちを引っ張ってくるものの集大成だったので、本当に優勝できてよかったです。
――男子フルーレは慶大に飯村さんがいましたが、それぞれどんな役割を持って臨みましたか
竹内がどれくらいミスをしても自分とダグラスでどうにかカバーしていくぞと思って試合に臨んだのですが、ちょっと残念なことに自分もめちゃくちゃミスしてしまって。それでもダグラスがカバーしてくれて、どんどん食らいついていこうという気持ちでやっていました。最終的には、役回りというよりかは気持ちの戦いだったかなと思います。
――その中でも特に藤澤さんは、飯村さん相手に互角に戦っていたと思うのですが
相性はいい方で、向こうも苦手意識は持ってくれているような相手ではあったのですが、それでも結果的に5-4で負けてしまって。そこは勝ちたかったですけど、相手に好きなことをさせないフェンシングをしたいなと思って、ずっと相手の攻撃をつぶすようなかたちで頑張りました。
――最後に、全日本に向けて意気込みをお願いします
もちろん優勝を目指して、残り1か月でラストの試合にはなるんですけど、かみしめながら頑張っていきたいと思います。