第93回早慶レガッタ 4月21日 隅田川(新大橋~桜橋)
4月21日、隅田川で早慶レガッタが開催された。1年で隅田川が一番熱くなるこの日のために、研鑽を積んできた早慶両校による激闘が繰り広げられる。女子はエイトに種目が変わったものの、例年通りの強さを見せ34連覇を達成。男子は第二エイトが3艇身差をつけられて大敗を喫した一方で、対校エイトでは1/4艇身差、わずか1秒差の接戦を制し2年ぶりの優勝を飾った。
34連覇を達成し歓喜に沸く女子対校エイトクルー
女子は今年も種目が変更。舵手付きフォアからエイトになった。コックスの仙田早紀(文4=埼玉・浦和一女)以外の漕手8人は初の隅田川。出発前、女子主将の猪野日向子(スポ4=岐阜・加茂)は「必ず勝たないといけないプレッシャーもありドキドキだった」と話す。しかし、早慶レガッタ通算48勝(慶大は9勝)を誇る『隅田川の女王』は健在だった。女子は1000㍍のため吾妻橋からのスタート。慌てることなく安定したスタートを切る。言問橋を超えると1艇身差をつけ、スピードを落とさずに先頭をキープした。慶大もスパートをかけてくるが、物ともせずに余裕を持った漕ぎを披露。最終的には2艇身差をつけて、今年も慶大を圧倒した。これで女子は34連覇を達成。仙田が「自分たちのしたい漕ぎが1000㍍できた」と振り返ったように、連覇のプレッシャーに負けずに30年以上つないできたバトンを次世代に渡すことができた。
男子は女子より3000㍍弱長い3750㍍。通常の2000㍍のレースよりも長いコースとなる。この長さになると自然河川である隅田川は、両国橋付近で最大角度25°で右に迂曲(うきょく)。早慶レガッタ特有のこのカーブはコックスの腕の見せ所だ。インコースを漕ぐ早大は、両国橋までにスタートの1艇身の差をいかに縮めるか、そしてボート界最長級のコースのどこでスパートを仕掛けるかが勝利の鍵を握る。
午前中のレースが終わり波が立ってきたところで、男子の先陣を切ったのは第二エイト。最後の第二エイトでの優勝は2021年まで遡る。今年は9人中8人が昨年の早慶レガッタに出場している経験豊富な布陣で挑む。順調な漕ぎ出しを見せるが、両国橋までにスタートの差を縮めることができず、オールで水をはたく場面も見られる。ここから必死に慶大に食らいついていこうとするが、追いつけない歯がゆい展開が続く。言問橋付近で一気に慶大がレート(1分間に何回漕げるかの指標)を上げてくるが、ここまで2艇身ほどの差があった早大はレートを上げることができずじわじわと離される。最終的には3艇身差で敗戦。3年連続で第二エイトは優勝を逃した。
優勝を逃しうなだれる第二エイトクルー(写真手前)
昨年と同じ1勝1敗の状況で迎えた対校エイト。阿二真樹監督(平4理工卒=東京・早大学院)はレース前に、第二エイトの敗戦で影響を受ける可能性を考慮し、「自信を持って行くこと」と「何があっても負けないこと」と声かけをした。日本代表選出経験を持つクルー4人を乗せた圧倒的なフィジカルを武器に、2年ぶりの対校エイト優勝を目指して、負けられない戦いに臨む。早大はスタートから高いレートを維持。慶大とのスタートの差を縮め、カーブになる両国橋付近では横並びに。ここから先3000㍍強の直線のコースは自力での勝負となるため、持ち味のフィジカルの強さが光る。早大が並んでから横一直線で一進一退のレースを繰り広げる両校。しかし、蔵前橋を越えるとついに早大が前に出る。
桜橋を通過してゴールまでラストスパートをかける対校エイトクルー
さらに早大は駒形橋付近で慶大との差を1艇身に広げた。このまま逃げ切るかと思われたが、慶大も黙ってはいない。東武線鉄橋にかかるあたりから慶大がスパートをかけてくる。しかし、早大はコックスの前田蓮(文3=東京・早実)のコールを中心に、焦らずに安定した漕ぎを披露。観客の待ち構える桜橋に着く頃には差が半艇身もなかったが、慶大の猛追を振り切ってゴール。2年ぶりの歓喜にクルー、観客ともに大いに湧いた。終わってみればその差は1/4艇身、タイムにしてわずか1秒。前半でリードを作り、粘り強くコンスタントに引き離したことで、慶大のスパートを振り切る理想的なレース展開ができた。沢目真直(スポ3=東京・江北)は「完敗か完勝になるかと思った」と語ったが、その思いとは裏腹に一瞬たりとも気が抜けない接戦となった。レース後は、応援席の観客に手を振りながらの凱旋ローイング。クルーは充実感に満ちた表情を見せ、隅田川に響き渡る『紺碧の空』に合わせて波に揺られた。
2年ぶりの優勝に沸く対校エイトクルー
今年も激戦が繰り広げられた早慶レガッタ。2年ぶりの対校エイト優勝を果たした早大だが、シーズンはここで終わりではない。この後は6月には全日本ローイング選手権(全日本)、9月には全日本大学ローイング選手権(インカレ)とまだまだ大会が続く。今大会で勝利した女子対校エイトクルー、男子対校エイトクルーは自信を深めてシーズンにつなげていきたい。一方で第二エイトクルーは惜しくも敗戦したが、この悔しさを胸に全日本、インカレではパワーアップした漕ぎを見せてくれるだろう。今シーズンの早大漕艇部からも目が離せない。
(記事 小島大典 写真 小島大典 近藤翔太 廣野一眞)
結果
女子対校エイト 優勝
C 仙田早紀(文4=埼玉・浦和一女)
S 猪野日向子(スポ4=岐阜・加茂)
7 加藤真奈(スポ3=静岡・浜松西)
6 小野紗耶果(スポ2=長野・諏訪清陵)
5 緒方美奈(スポ2=熊本学園大付)
4 村田友佳(スポ3=東京・墨田川)
3 藤倉望妃(スポ2=栃木・佐野)
2 横田紗弥(スポ3=岐阜・加茂)
B 吉田紗英(商3=埼玉・早大本庄)
第二エイト 準優勝
C 澁谷光太郎(政経4=東京・早大学院)
S 丸山渓太(スポ4=神奈川・逗子開成)
7 遠矢陸人(スポ4=熊本学園大付)
6 小山知起(創理3=東京・早実)
5 谷口俊之輔(政経4=東京・早大学院)
4 亀田純一郎(スポ3=東京・小松川)
3 佐藤淳平(法2=埼玉・早大本庄)
2 榎本拓海(商4=東京・早大学院)
B 沢木優介(スポ4=青森)
対校エイト 優勝
C 前田蓮(文3=東京・早実)
S 岡山凜之(スポ3=愛媛・松山東)
7 上路達也(基理4=東京・世田谷学園)
6 沢目真直(スポ3=東京・江北)
5 川上拓海(スポ2=愛媛・今治北)
4 青木洋樹(スポ4=東京・成立学園)
3 松並大智(基理4=静岡・沼津東)
2 滿園脩吾(スポ3=福岡・東筑)
B 原田燿輔(スポ3=静岡・浜松北)
コメント
※記者会見より
阿二真樹監督(平4理工卒=東京・早大学院)、松並大智主将(基理4=静岡・沼津東)
ーー試合をふりかえって
阿二 レースに関しましては、ご覧いただいた通り、非常に接戦で、早稲田、慶応それぞれがライバルとして良い試合が見せられたのかなという風に思っております。 今年に関しましては、幸いにして早稲は勝つことができましたが、 最後の最後まで慶応のクルーの頑張りに非常に苦しめられて、なんとか辛くも逃げ切ったというところかと思います。昨年度は完全に負けておりましたので、非常に肝を冷やしましたが、最後勝ち切れたというところで、学生がよく頑張ったなという風に思っております。
松並 女子は連覇を果たして良かったなっていうところと、男子は去年セカンドと対校とも両方負けてしまって、本当に苦しい思いをしたので、 今年こそは絶対勝たなくちゃいけない。そんな中で第二エイトは負けてしまって、悔しいという思いがあったんですけれども、 そこでなんとしてでも勝てないといけないと思い、最高に臨んだレースで勝てて良かったなと思っています。本当にタフなレースで、スタートはうまく出たんですけど、そこからなかなかやはり慶大の粘りが強くて、なかなか離れなくて、本当に苦しいレースだったんですけれども、最後みんなで力を合わせて、最後のところで勝ち切れたのはすごい良かったのかなと思っています。まだシーズンは終わっていないので、インカレ、全日本にむけてさらにチームとして飛躍できるよう頑張っていきたいと思います。
ーー出発前の選手にどういったお声がけをされましたか
阿二 自信を持っていけということで第二エイトが負けていましたので、非常にそこのところで影響を受けるんじゃないかなと思っていましたので、自信を持っていけということ。それから、何があっても負けないでいくということを声をかけさせていただきました。
※試合後インタビュー
猪野日向子(スポ4=岐阜・加茂)
ーー出発前の気持ちを教えてください
猪野 必ず勝たないといけないっていうプレッシャーもありましたし、ドキドキでした。
ーー今日のレース振り返ってみていかがですか
猪野 今までの力はほんとに発揮できたなと思っています。 全員で楽しんで勝てたことは嬉しかったんですけど、それよりもその34連覇を次の子たちにつなげられたっていうことが本当に嬉しくて、ホッとしています。
ーー隅田川の波の感じとかはいかがでしたか
猪野 練習よりも少しうねりがあって、コンディションが難しかったです。
仙田早紀(文4=埼玉・浦和一女)
ーー出発前の気持ちを聞かせてください
仙田 出発前は緊張したというより、最近の目標が大きく漕ぐことだったので、それがのびのびできたらいいなって思って、半分緊張、半分楽しみみたいな気持ちでした。
ーーレース全体振り返ってみていかがですか
仙田 自分たちのしたい漕ぎが1000メートルできて、それで大きく慶大を離してゴールできたっていうのがすごく楽しかったです。今後の自信にも繋がったかなと思います。
ーークルーへの声かけはどういうのをされましたか
仙田 覚えてないんですけど、いいよーみたいな声かけをしたような気がします。
沢目真直(スポ3=東京・江北)
ーー今日のレースの振り返っていかがですか
沢目 接戦になるってあんま予想してなかったんですけど、 完敗するか完勝するかと思ってたんですけど、ほんとに思ってた以上に接戦で、慶大も早大も最後は意地のぶつかり合いで出し切って勝てたかなと思います。
ーーコックスやバウに関してはいかがでしたか
沢目 コックスが出る前に実はハプニングがありまして。荷物を最後みんなの分渡すんですけど、そん時に渡すタイミングでなんか落ちちゃって。半分以上頭から落ちちゃって、 マイク全部流されちゃう。予備のもうほんと2分ぐらいで交換する。危ないアクシデントもあったんですけど、 そんな中でみんな冷静に大丈夫大丈夫って声かけ合ってできたのかなと思います。
前田蓮(文3=東京・早実)、滿園脩吾(スポ3=福岡・東筑)
ーー今日の試合振り返ってみていかがですか
前田 タフな試合でした。
滿園 すごい痺れる試合でした。
ーー最後慶応の追い上げすごかったですけど、振り返っていかがですか
前田 冷静に自分がもう行くしかないってところでスパート入れて、みんながそれに反応してくれたので、最後詰まってきたけど、また離した感じでゴールできたので、すごい良かったです。
ーー滿園選手はバウペアとして声かけはできましたか
滿園 後ろから声出してて、後ろの原田君も今までにないぐらい声出してて、船のリズムをしっかり作って、バウペアでしっかり(スピードを)上げることができたんで良かったです。
松並大智(基理4=静岡・沼津東)
ーー今日のレース振り返っていかがですか
松並 ちょっと整理できてない(笑)。記憶になんもないんですけど、スタートでカーブのとこ(両国橋付近)で追いついて、もう粘り強くコンスタントに引き離して、今までの練習の中でもきついレースだったんですけど、 最後もうコックスの声に全員で反応してあげれたので良かったです。
ーーコックスの前田選手どんな声かけをしてましたか
松並 前田は俺たちが一番最高のパフォーマンスを出させるような、もう最高のコールで、ずっと名前呼んだり、 最後の相手が仕掛けたタイミングでいいコール入れてくれて相手を引き離したりとか、めっちゃ良いコールしてくれたので、ほんとに頼もしいコックスでした。
ーー最後の慶大の追い上げが凄かったですがいかがでしたか
松並 慶大がめちゃくちゃ上げてきて、気迫を感じてめっちゃ怖かったんですけど、絶対ここは負けないぞって気持ちで全員で1つになって勝てたので、それが良かったかなと思います。