【連載】春季早慶戦直前特集 『ONE』 第2回 宮城誇南

特集中面

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 今回登場するのは、今シーズン念願の東京六大学リーグ戦(リーグ戦)デビューを果たした2年生左腕、宮城誇南(スポ2=埼玉・浦和学院)。昨年はけがもあり、思うような活躍はできなかったが、今シーズンはその悔しさをバネに神宮のマウンドで先発を託されている。ここまで4試合に登板して2勝2敗ではあるものの、着実に状態は上がってきている。そんな宮城に、今シーズンの振り返りと、早慶戦への意気込みを伺った。

※この取材は5月23日にオンラインで行われたものです。

「投げられる喜びを噛みしめながら」

――まず初めに、法大2回戦、ナイスピッチングでした

 ありがとうございます。

――その試合の疲れはもう抜けましたか

 もうだいぶ抜けて、リフレッシュできた状態になっています。

――ここまで、4試合登板がありました。その中で異なる色のグローブ(緑色と青色)を使い分けていらっしゃいましたが、その使い分けはどのように決めていたのですか

 特に深い理由はないです。最初は緑を使っていて、自分としてはずっと緑を使いたかったんですけど、緑で登板した2試合でなかなか勝てませんでした。何か変えるかみたいな、安易な考えでそこから青のグローブに変えました。そしたら東大戦で勝てたので、そのまま(法大戦でも使った)って感じです。

――慶大戦も青のグローブで登板されますか。

 そうですね。今季は青でいくと思います。

――もう一つ些細なことなのですが、高橋煌稀選手(スポ1=宮城・仙台育英)の甲子園タオル(甲子園に出場した選手が記念として作成することがあるタオルのこと)を持っていたと思います

 そうですね。今季はずっと煌稀のタオルを使っています。

――それはご本人から渡されたものですか

 なにかで甲子園タオルの話になって。それであげあげますよ、交換しますか、みたいになって。それでリーグ戦で使っています。立教戦の後から、煌稀がけがをして、ベンチにいない状況だったので、たまたまそれで何か意味があるように受け取られたのかと思うんですけど、特に深い理由はないです。

――ここからはリーグ戦の話を伺っていきます。今シーズン2枚目の先発として台頭しました。昨年冬の対談で、昨年は、けがでなかなか登板できなかったことへの悔しさが伝わってきましたが、今シーズンは登板できることに対し、素直にうれしい気持ちはありますか

 本当にその通りで、昨年1年間満足に投げられずに自分自身、悔しい1年間っていう感じだったので、今は投げられる喜びを噛みしめながら投げています。

――宮城選手のキャリアの中で、それだけ投げることができなかったというのは初めてだったのですか

 そうですね。丸々1年間、かばいながらやるっていうのは初めてで、とても長かったです。

――それでも今年は投げられるようになって、先発投手として出場する中で、チームを背負っているという気持ちは大きいですか

 今は背負っているというよりは、自分の前にはやっぱり樹さん(伊藤樹、スポ3=宮城・仙台育英)がいるので、どちらかというと、与えられたイニング、役割を、たまたま先発っていう立ち位置でいただいただけという気持ちでいます。

――今話題に上がった伊藤樹選手はここまでエースとして素晴らしい投球が続いています。その活躍をどう見ていますか

 見ていて、負けない強さがあると思います。やっぱりチームを勝たせるピッチャーがいいピッチャーって言われますけど、負けないピッチャーがチームを背負うエースだと思うので、本当にすごいなと思います。

「東大戦で何かをつかみかけた」

――宮城投手自身の投球の話について伺います。4試合登板があった中で、個人的に法大戦での投球が特に良かったと思っています。直球も変化球も低く決まっていた印象なのですが、それまでの試合と比べて何か変わったところはあったのでしょうか

 最初の立教戦だったり、明治戦だったりは、少し緊張があって、自分が思うようなピッチングがなかなかできないでいました。でも、監督さん(小宮山悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)もおっしゃられていたのですが、東大戦で兆しが見えたというか。東大戦で少し何か自分の中で何かをつかみかけて、法政戦までの2週間の中で、東大戦でつかみかけていたものを自分のものにしていこうとやっていったら、自然と調子も上がってきて、ああいうパフォーマンスが出たのかなとは思います。

――何かをつかんだ

 言葉で表すのがちょっと難しいんですけど、感覚的なところで。今までは少し緊張があった分、腕が振り切れてないというか、萎縮とまではいかないですけど、そういう部分があった後、東大戦で抑えたことで、肩の力が抜けて、法政戦は何か自分の中で地に足が着いて、落ち着いて投げられている感じが他の試合と比べて特にあったなと思います。

――東大戦で初めて勝ち星がつきましたが、登板した試合でチームが勝利するというのは精神的にも楽になれましたか

 そうですね。開幕から2戦投げて、2試合とも負けてしまって勝てていなかったので、東大戦での1勝というのは、自分自身少しほっとしたというか、そういう部分はあります。

――宮城選手の投球を見ていて、ゴロアウトが多いなと思っているのですが、ゴロでのアウトが増えるというのと、ご自身の調子の良さは比例してくるところですか

 そうですね。法政戦は、印出さん(太一主将、スポ4=愛知・中京大中京)との話の中で、高さに気をつけようというところを試合前の共通認識の中で持っていました。低めに投げることを意識して、結果としてゴロアウトが増えたのかなというふうに思います。

――法大戦後、他のメディアの取材で6回が山場だと思っているとおっしゃっていたと思うのですが、なぜ山場だと考えていたのですか

 立教戦も明治戦もどっちも6回に点を取られていました。正確に言うと、4、5、6回が自分の中で山場ではあったんですけど、特に6回に点を取られることが多かったので(6回が山場と話しました)。自分の中でそこを0点で抑えられれば、仮に7イニング目以降も投げたとしても、自分のテンポで抑えていけるという自信がありました。今までは4、5、6回で長いイニングを投げていこうと意識して、先を見ちゃうと、無意識に抑えてしまうというか、調整してしまうというか、そういうところがありました。それで疲れも出てきて、点を取られてしまっていたので、6回を0点で抑えるって意味での山場というところで自分の中で設けてやっていました。

――法大戦では6回で交代して安田虎汰郎選手(スポ1=東京・日大三)が登板しました。東大戦では越井颯一郎選手(スポ2=千葉・木更津総合)が登板することもありましたが、救援陣への信頼感というのはありましたか

 今年はとにかくリリーフ陣が非常に安定しているので、先発で投げる前も自分が1点も取られなければ、後ろにつながるときも、点を取られずに0点で守ってくれて、負けることはないなと思いながら投げています。

――越井選手や香西一希選手(スポ2=福岡・九州国際大付)、加えて先日は森山陽一朗選手(スポ2=広島・広陵)もベンチ入りされましたが、やはり同期の活躍は励みになりますか

 そうですね。下級生ながらこれだけベンチ入りさせてもらって、同期の中で、今年のピッチャーは下級生が多くなっている分、下級生で頑張ろうじゃないですけど、一緒に頑張っていこうみたいなのはあると思います。

――リリーフで目覚ましい活躍をしている安田投手をどう見ていますか。

 いやもう、神宮が庭って感じで(笑)。それぐらい非常に落ち着いていて、1年生とは思えないというか。落ち着いたマウンドさばきだなと思います。

――リーグ戦が始まる前に打撃のことについても少しお話させてもらったと思います。捉えた当たりが外野へ飛ぶこともありましたが、打撃の練習の時間も取れていますか

 そうですね。リーグ戦が始まってからは、先発するピッチャーと何人かはバッティング練習をしています。

「何が何でも慶応に勝って優勝する」

――最後に早慶戦へ向けた話に移ります。早慶戦まであと1週間と少しとなりましたが、チームの雰囲気や状況はいかがですか

 法政戦が終わってから浮ついた感じも特になく、いい雰囲気だと思います。とにかく早慶戦では優勝どうこうというよりは、昨年の秋に早慶戦に敗れて優勝を逃してしまっているので、そこのリベンジっていうところが大きくて、早慶戦で勝ち点を取るということにチーム全員が向かっていると思います。

――日々の練習の中で慶大を想定して対策されることは多いですか

 投手陣がどうこうというよりは、どちらかというとやはり外丸投手(外丸東眞、3年)が非常に良いのでその対策というところを、野手陣でされているのかなと思います。

――投手陣の中で、警戒している打者はいますか

 昨年と比べると、主力が抜けてしまっている部分があると思うので、今はとにかく、それぞれが持っている最大限の実力を各々が発揮できる準備というところに重点を置いてやっています。

――ここ数日もそうなのですが、早慶戦では暑さが予想されると思います。宮城投手は、暑さを苦にしないタイプですか

 高校3年間を埼玉県で過ごしたので、暑さには慣れていると思います。

――早慶戦はサークルの新歓なども兼ねて、野球にあまり馴染みがない人も多く観戦に来ると思います。そういった方たちに、自分の見てほしいところはありますか

 淡々とスコアボードに0を刻みます。

――最後に早慶戦への意気込みと、応援している早稲田ファンの方へ一言お願いします。

 昨年に悔しい思いをしている分、今年は何が何でも慶応に勝って優勝するってところに大きな意味があると思うので、まずはそこに向かって、残りの時間、今できる最大限の準備をしていこうと思っています。あとは、近年は早稲田は優勝できていなくて、ファンの皆さんの期待に応えられてない状況だと思うので、今季こそは優勝して、強い早稲田をファンの皆さんに、優勝という形で恩返しできれば一番かなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石渡太智)

◆宮城誇南(みやぎ・こなん)

2004(平16)年9月5日生まれ。174センチ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。先発はあくまでも与えられた役割と話し、自身の活躍におごり高ぶることのない宮城選手。先発が予想される慶大2回戦で、早大に勝利を運んでくれるに違いありません!