【女子ホッケー】新たな仲間とともに 女子ホッケー部に新メンバーが加入

女子ホッケー

7月5日 TEAMMATES事業 早大・東伏見キャンパス

 仲間がいるから、乗り越えられる。スポーツの世界は時に残酷なほど厳しい。それでも、固く手を取り合う仲間がいるからこそ、目の前に立ちはだかる高い壁を乗り越えることができる。そして、その苦難の先には、数えきれないほどの歓喜が待っている。仲間と分かち合う喜びは、決して1人では到達できないほど、何倍にも膨れ上がるはずだ。今回の記者会見は、そんなスポーツの本質的な価値と、「仲間」という存在が持つ圧倒的な凄さを、改めて胸に刻みつける時間となった。

写真撮影に応じる一同

 7月5日、早大東伏見キャンパスにて、女子ホッケー部に新たな「仲間」を迎える特別な入部式および記者会見が執り行われた。今回の入部式は、認定NPO法人 Being ALIVE Japanが企画・運営する『TEAMMATES(チームメイツ)事業』の一環として開催されたものだ。同事業は、スポーツチームへの入団を通じて、病気で長期治療中の子どもの自立支援とコミュニティ創出を目指す取り組みであり、早大のスポーツチームとしては今回が初めての参画となった。

入部許可書へのサインに応じる様子

 温かい拍手に包まれる中、緊張しながらも笑顔で会場に姿を現したのは、急性リンパ性白血病(小児がん)で長期療養を続けている、小学6年生の星るるさんだ。体を動かすことが大好きだという星さん。今回の入部の話を初めて耳にした際、新しい環境への緊張感はありつつも、前向きにすぐ「やってみたい!」と話し、この日を心待ちにしていたという。

入部許可書を掲げる様子

 入部式では、中村信男部長とるるさんによる入団合意書へのサインが行われ、チームから臙脂(えんじ)色のユニフォームとスティックが贈呈された。ホッケーは初めての体験となるが、不安よりも期待の方が大きいようだ。「最終的にはチームのみんなと協力してプレーをしてみたい」と今後の活動への抱負を語るその表情からは、新しいスポーツに挑戦する一人のアスリートとしての頼もしさと、ワクワクした高揚感がまっすぐに伝わってきた。

安岡監督からユニホームが手渡された

 早大女子ホッケー部の大きな特徴は「個々の個性を尊重し合う」という風土。チーム側は星選手を単なる「ゲスト」ではなく、共にシーズンを戦い抜く「一人の大切なチームメイト」として全力で歓迎している。会見に登壇した伊澤幸来主将(政経4=埼玉・早大本庄)は「ホッケー部は多様なバックグラウンドを持つ部員の集まり。るるちゃんともすぐに打ち解けて、一緒にたくさんの思い出を作っていきたい」と歓迎の言葉を送った。また、安岡裕美子監督も「個の違いを認めるなど、部員たち自身も多くのことを学び、成長できる場所にしたい」と語り、中村部長は今年100周年を迎える伝統の早慶戦へのるるさんの参加にも大きな期待を寄せた。

伊澤主将からスティックが手渡された

 早大女子ホッケー部にとっても初となるこの試みは、ある一人の部員の強い情熱から始まった。その立役者が、菊地理沙子(スポ3=東京・成城学園)だ。菊地は大学入学時から同事業に深い関心を寄せていた。大学2年時の夏には認定NPO法人 Being ALIVE Japanの学生アスリートのリーダーシップ醸成事業の一環としてとしてアメリカへ渡航し、全米から集まった大学生アスリートと研修に参加。現地の大学スポーツにおける長期療養児支援のあり方を肌で感じ、「自分に何ができるか」を模索し続けた。「稲妻が走るような経験だった」と振り返る通り、その渡米を境に、彼女の見える景色のすべてが変わった。

臙脂色のユニホームとスティックを身にまとい記念写真に応じる様子

 帰国後、菊地を中心としたメンバーたちは、この日を迎えるために奔走した。星選手側とのコミュニケーションはもちろん、大学側をはじめとする関係各所への丁寧な連絡や調整、さらにはユニフォームの作成に至るまで、その業務は多岐にわたった。監督やOBOGからの指示ではなく、学生アスリートたちの自主的な意思によって始まった取り組みだからこそ、価値がある。今回の入部式は、決して偶然用意された舞台ではない。多くの人の想いと力が合わさり、形作られた、まさに結晶のようなものだ。

笑顔で写真撮影をする選手たち

 これから始まるシーズン、壁にぶつかることや、上手くいかない日があるかもしれない。しかし、星選手も女子ホッケー部も、けっして一人ではない。2つの存在が互いに手を取り合い、背中を支え、共に成長していく未来がそこには待っている。だって、もう彼女らには、お互いというかけがえのない、環境をも変えていく強くて頼もしい「仲間」がついているのだから。

(記事・写真:大林祐太)

インタビュー

◆伊澤幸来主将(政経4=埼玉・早大本庄)

ーーこのようなお話を受けた時のお気持ちを教えてください

 正直、最初はびっくりという感情でした。しかし、ホッケー部という少しマイナーな競技のチームでこのような事業に取り組めることは、自分たちの成長に繋がると感じました。また、大学への貢献にもなる良い取り組みだと思い、やりたいと言ってくれた理沙子(菊地)をはじめとするメンバーの皆様にすごく感謝しています。

ーー早稲田大学女子ホッケー部でこのような取り組みを行うことはどのような意義があると思いますか

 私たちのチームは経験者ばかりではなく、様々なバックグラウンドを持った選手が集まっています。そうした子たちや自分自身にとっても、すごく刺激になると思います。また、少人数の中で強い大学に勝っていくことが私たちの強みの一つです。助け合い、支え合いの精神において、今回の取り組みを通じてより一層一体感が強まっていくのではないかと考えています。

ーーるるさんにどのような姿を見せたいですか

 部員みんなが楽しんでいる姿を見せたいです。部活動をしていると、時にぶつかり合ったり悩んだりすることもありますが、一番は仲間と喜び合える瞬間が「やっていて良かった」と思える時です。そうやって楽しんでいる姿を見てもらいたいです。

ーーどのような力をるるさんからもらいたいですか

 るるちゃんはホッケーの経験がないとのことなので、プレー面というよりは、練習に来てくれることで生まれるポジティブな笑顔や、選手とのコミュニケーションを通じた明るい力をいただきたいです。それが毎回の練習の活力になるような、そんな存在になってもらえたらと思っています。

ーー今後の意気込みをお願いします

 チームの目標としては、秋のリーグでの決勝進出と、早慶戦での優勝を掲げています。今年はホッケー部創部100周年という節目の年でもあるので、去年果たせなかった優勝をしっかりと勝ち取りたいです。春季リーグは4位という結果に終わったので、チームの課題を整理しながら、秋季リーグでは目標である2位以上を達成できるよう頑張ります。

 

◆菊地理沙子(スポ3=東京・成城学園)

ーーどのようなきっかけでこのようなことをやろうと思ったのですか

 私自身、幼い頃に長期療養児が身近にいた経験があり、本人や家族、きょうだいの苦労を身近に感じてきました。大学生になり、スポーツ科学部での学びを通じて「スポーツをする権利は誰もが持つものだ」と改めて気づかされたことが大きな転換点です。その後、Being ALIVE Japanのリーダーシッププログラムに参加し、アスリートが子供たちに機会を提供するだけでなく、私たち自身も彼らから学ぶことが非常に多いと体感しました。この素晴らしい意義を自分のチームでも実現したいと思い、導入を進めてきました。

ーー早稲田大学女子ホッケー部でこのような取り組みを行うことはどのような意義があると思いますか

 女子ホッケー部は人数が少なく規模が小さく、またフィールドホッケーという競技は全44部からなる体育各部において非常に知名度の低い存在です。しかし、長期療養児の自立支援活動に、競技レベルや知名度は関係ないとこれまでの活動を通して体感してきました。たとえ部員が少なくても、知名度が低くても、チームメートとなる子どもにとって仲間になれると私たちが証明していきたいです。だからこそ、ホッケー部がこの活動の先駆者となり、早稲田スポーツにおいて長期療養児の自立支援活動を広めることは、非常に大きな意義があると考えています。また、学生アスリートが競技に取り組むだけでなく、広い視野を持って社会や地域とつながり、自らの発信力や影響力を誰かのために生かす。そのような思いを持つ学生が増えてほしいという願いも込めています。

ーー今日という日を迎えるまでにどのような苦労がありましたか

 前例がないことだったので、チームのみんなに事業の意義を一から理解してもらうのが大変でした。プレゼンテーションをしたりアンケートを取ったりして、体験したことのないメンバーにどう伝えるか工夫を凝らしました。また、大学や競技スポーツセンターから許可をいただく際にも、活動の背景や価値をしっかりと伝えることに最も注力しました。

ーーるるさんにはどのような姿を見せたいですか

 ホッケー部には多様なバックグラウンドを持つ仲間が集まっています。競技を楽しむ姿はもちろん、学業や私生活なども含めて学生生活を全力で充実させている姿を見てもらい、本当の仲間として一緒に過ごしていきたいです。

ーーるるさんにはどのような力をもらいたいですか

 病気と向き合ってきた彼女自身のパワフルさや、緊張しながらも一生懸命コミュニケーションを取ろうとする姿勢から、私たちの方が「もっと頑張ろう」という勇気をもらえます。練習や試合で辛い時、彼女が困難を乗り越えてきた経験が、きっと私たちを奮い立たせてくれると思います。

ーー今後の意気込みをお願いします

 チームとしては、秋季関東リーグでの決勝進出と、早慶戦での優勝という2つの大きな目標があります。これらを達成できるよう、自分自身もしっかりとチームに貢献できるよう努力していきたいです。