日本グランプリシリーズMDC GP 5月30日 東京・世田谷区立大蔵運動公園陸上競技場
栃木での熱戦から1週間。東京・世田谷区にて日本グランプリシリーズMDCが開催された。GP男子1500メートルBに岩下和史(スポ4=神奈川・神大附)と佐々木哲(スポ2=長野・佐久長聖)が、GP男子1500メートルAには本田桜二郎(スポ1=鳥取城北)が出場した。本田は、山口智規(令8スポ卒=現SGホールディングス)が昨年マークした3分38秒16の早大記録を更新。U20アジア陸上競技選手権大会に出場できなかった悔しさを晴らした。

レースに臨む佐々木哲
「調子の良さを示せたと思う」レース後にこのように語ったのは佐々木哲であった。このレースが始まる前、佐々木哲の自己記録は3分46秒台。関東学生対校選手権(関東インカレ)3000メートル障害の疲労もあっただろうが、自己記録更新を目指して走った。GP男子1500メートルBには岩下も出場。関東インカレで無念の予選敗退となった岩下にとっても、大事なレースとなった。

レースを走る岩下(写真左)、佐々木哲
号砲とともに佐々木哲と岩下が勢いよく飛び出し、集団前方に位置取る。800メートルを過ぎたところで佐々木哲が一気にスパート。調子の良さをうかがわせる軽やかな走りでトップに躍り出る。一方の岩下は、第1集団と第2集団の間で単独走を強いられる難しい展開に。ラスト1周、2番手、3番手を走る選手がペースを上げ、佐々木哲が後退する。最後は岩下と佐々木哲のラストスパート合戦へ。どちらも譲らぬ戦いとなったが、佐々木哲が先着し、3分45秒22の組2着でゴール。「結果的に自己記録を出せて、狙い通りのレースをすることができた」と笑顔で語った。岩下は佐々木哲に競り負けるも、3分45秒53をマーク。1500メートルで日本選手権出場の可能性を秘める岩下の覚醒に期待したい。

レースを終えた本田
U20アジア陸上競技選手権大会に出場できなかった悔しさを常々口にしていた本田。今大会はその悔しさを払拭する素晴らしいレースとなったことだろう。本田が今大会で記録した3分37秒72は、文句なしの早大新記録。入学式に憧れの選手として名を挙げていた山口智規の記録を、1年生のうちに更新する怪物ぶりを発揮した。

レースを走る本田
レース前から注目選手として大きな歓声を浴びていた本田は、今大会でも積極果敢(かかん)なレースで会場を沸かせた。集団中盤で仕掛けどころをうかがっていた本田が動いたのは、1000メートル過ぎ。関東インカレでの飛び出しを彷彿(ほうふつ)とさせるキレのあるスパートを見せる。迎えたラスト1周。U20日本記録も狙えるペースだっただけに、「ラスト1周で(タイマーを)見た時に(U20日本記録更新が)いけるかもしれない」と感じていたという。ラスト100メートルまで大学1年生とは思えない走りで、先頭を引っ張っていた本田だったが、最後は飯澤千翔(住友電工)、森凪也(ホンダ)ら実業団選手に抜き去られてしまう。それでも、ゴールラインまで力を出し切った本田は、組5着でゴール。惜しくもU20日本歴代2位となったものの、「結果的に3分37秒72を出せたことは、すごく満足している」と話した。

レースを終え笑顔の3人(写真左から岩下、本田、佐々木哲)
今大会の本田は、間違いなく観客を魅了する走りを見せた。また、本田や佐々木哲のみならず、鈴木琉胤(スポ2=千葉・八千代松陰)や山口竣平(スポ3=長野・佐久長聖)も関東インカレで先頭に立ってレースを引っ張る姿を披露しており、「圧倒的な個」の強さを示している。その力は、日本を越え、世界で戦うためには必要不可欠なものであろう。「早稲田から世界へ」。この言葉を体現すべく、まずは2週間後の日本選手権で、名古屋をエンジに染め上げる。
(記事 石本遥希、写真 石本遥希、永尾早渡)
結果
▽GP男子1500メートルB
佐々木哲(スポ2=長野・佐久長聖) 3分45秒22(組2着/全体12位)
岩下和史(スポ4=神奈川・神大附) 3分45秒53(組4着/全体14位)
▽GP男子1500メートルA
本田桜二郎(スポ1=鳥取城北) 3分37秒72(組5着/全体5位)
コメント
佐々木哲(スポ2=長野・佐久長聖)
ーー関東インカレの3000メートル障害からどのように調整されましたか
関東インカレから今日まで1週間しか期間が空いていなかったので、関東インカレの調子を維持するというよりも、2週間後の日本選手権に向けて練習量を少し増やして、今大会にピークが来ないようにしました。今大会は、日本選手権に向けての刺激や練習という意味で出場を決めました。
ーー今大会の出場を決めたタイミングはいつですか
関東インカレの翌日に、花田さんと話し、出場を決めました。MDCは大会の雰囲気の良さから、走りたいと思いました。関東インカレからの期間は短かったですが、出場したいと思っていたので、走らせてもらいました。
ーー設定タイムは決められていましたか
自己記録が3分46秒台で、3分46秒から前後2秒程度のタイムを目指していました。ラストスパートや(キツくなってから)粘れることを、意識して走りました。結果的に自己記録を出せて、狙い通りのレースをすることができました。 調子の良さを示せたと思います。
ーー関東インカレに向け、3000メートル障害の調整の仕方を変えられていたと思いますが、日本選手権に向けてはどのような調整をされますか
(日本選手権まで)2週間しかないので、自分の実力を大きく上げるより、溜まっている疲労を抜きながら、調子を上げていきたいです。関東インカレで良いかたちで走ることができたので、その流れで、やるべきことをしっかりやっていきたいと思います。
ーー最後に日本選手権に向けての意気込みをお願いします
関東インカレが終わり、アジア大会も見えてきたので、狙える大会は貪欲に狙っていきます。今シーズンの上半期をいいかたちで締めくくるために、まずは日本選手権で今までやってきたことを出せるように、残り2週間を集中して練習していきたいです。
本田桜二郎(スポ1=鳥取城北)
ーーハイレベルなレースでしたが、振り返ってみていかがですか
関東インカレから約1週間の期間で、疲労もありましたが、そのような状態での3分40秒切りを目指していました。結果的に3分37秒72を出せたことは、すごく満足しています。
ーー1500メートルのU20日本歴代2位のタイムとなりましたが、佐藤圭汰(NIKE)選手の記録は意識されていましたか
レース前半は意識していませんでしたが、ラスト一周で(タイマーを)見た時にいけるかもしれないと思いました。ですが、ラストに(動きが)止まってしまい、(U20歴代)2位になったと思います。
ーー山口智規さんの早大記録(3分38秒16)を超えられた感想はいかがですか
特に意識していませんでした。3分40秒を切れたらとは思っていました。(早大記録を出せて)嬉しいですが、あまり実感はないです。
ーー残り500メートルで先頭に出られましたが、どのような意図がありましたか
今回のレースは、飯澤(千翔、現住友電工)さんには手も足も出ないと思っていました。ですが、走ってみると意外と余裕がありました。ラスト500メートルで飯澤さんが少し後ろに下がって来たので、前に出ようと思いました。 ラスト100メートルで抜かれてしまいましたが、良いレースはできたと思います。
ーー関東インカレから期間も短かったですが、この大会の位置づけはいかがでしたか
3分40秒切りを目指し、日本選手権に向けて、自信のつくレースになればと思っていました。実際にこの大会を走ったことで、(日本選手権への)自信がつきました。
ーー大会の雰囲気はいかがでしたか
大会自体がお祭りのような雰囲気で、自分よりも格上の選手たちと走ることができて、本当に楽しかったです。
ーー今日のレースの一番の収穫は何ですか
前に出たことです。智規さんのようになりたいと思っているので、そのために智規さんのレースの(スタイルを)真似することが一番の近道だと思います。この大会で格上の選手たちに対し、一度でも前に出れたことは、すごく収穫になりました。
ーー今シーズンのトラックシーズンの目標はいかがですか
現在行われているU20のアジア選手権に出場できなかったため、MDCのレースに出場しました。その悔しさを持ちながら練習していたので、まずは日本代表に選ばれ、U20の世界選手権でメダルを獲得することがトラックシーズンでの目標です。
ーーその目標に向けて、本日のレースは自信になりましたか
かなり自信になりました。
ーー目標とする山口智規選手と一緒に練習される機会はありますか
たまに練習させてもらっています。練習を智規さんと一緒にすることは、自分にとって、とてもプラスになっています。
ーー現在は1500メートルに特に力を入れていますか
自分は5000メートルに力を入れたいと思っていますが、得意なことと好きなことは違うと思っています。まずは日本選手権の1500メートルで活躍できるようにしたいです。
ーー日本記録(3分35秒42)も超えられそうだと感じましたか
全く感じませんでした。この結果に慢心せずに、基礎固めの練習や補強に力を入れていきたいです。まずは基礎から固めていきたいと思います。