101年目を迎えた東京六大学野球。最終カードの早慶戦は天皇陛下が御観戦され、32年ぶりの「天覧試合」に。まさに新たな歴史が始まろうとしている。ここまで泥沼の5連敗を喫し優勝を逃した早大に対し、勝ち点獲得で優勝が決まる慶大。そんな中で早大の選手たちは口をそろえて「早慶戦は負けられない」と強く意気込む。目前での胴上げという屈辱を回避するため、そして101年目の伝統の一戦を勝利で飾るため、それぞれのプライドをかけた戦いが今、始まる。
本格化した大器 憧れへの挑戦
早大の第一先発は、髙橋煌稀(スポ3=宮城・仙台育英)が予想される。昨秋ついに本格化した大器は、今季もここまで防御率リーグ3位の1.84をマーク。しかし勝ち星は1つのみともどかしい結果になっている。リーグ通算22勝を挙げ、髙橋煌が「憧れ」と語る伊藤樹(令8スポ卒=現楽天)から受け継いだエースの役割を果たすため、チームを勝たせる投球が求められる。
ここまで4試合に先発した宮城誇南(スポ4=埼玉・浦和学院)は防御率7.00と絶不調だ。中継ぎとしてマウンドに上がった明大2回戦でも4失点を喫するなど、本来の投球からはかけ離れている。しかし、同じく思うような投球ができなかった昨秋とは異なり「あともうひとつまできている」と語る左腕。早慶戦で自身の殻を破り「あとひとつ」へたどり着いてほしい。

対する慶大は何といっても絶対的エース・渡辺和大(4年)の存在が大きい。今季6試合で5勝をマークすると、防御率はリーグトップの1.11。圧巻の投球を披露し慶大の躍進の立役者となっている。また、鈴木佳門(2年)や広池浩成(4年)らの活躍も見逃せない。鈴木はここまで7試合にリリーフとして登板し、未だ無失点。一方の広池は150㌔超の直球を武器に15イニング3失点とこちらも好調。少ないチャンスをものにできるかどうかが慶大投手陣攻略のカギを握る。
早稲田の次世代を担う強打者たち
打線のキーマンとなるのは阿部葉太(スポ1=神奈川・横浜)、川尻結大(スポ1=宮城・仙台育英)の1年生1、2番コンビだろう。阿部は横浜高時代にセンバツで優勝し、鳴り物入りで早大の門を叩いた。初のリーグ戦は「1番・中堅」としてスタメン出場を続けるも自慢のバッティングセンスを生かせず、打率は.200と低迷。明大2回戦ではスタメン落ちも味わった。伝統の一戦では勝負強いバッティングでチームに歓喜をもたらしたい。
不振にあえぐ阿部とは対照的に、打撃絶好調の川尻。東大3回戦でスタメンに抜てきされると、1本塁打を含む3打数3安打の大活躍で鮮烈デビューを果たした。立大戦からは主に2番・指名打者として出場し打率.364と好成績をキープ。自身初の早慶戦でも思い切りの良さを活かし、そのバットで神宮を沸かせたい。

さらに、5番に座る德丸快晴(スポ2=大阪桐蔭)は現在打率リーグトップの.389をマーク。2位には同じ大阪桐蔭高でプレーした法大・境亮陽(2年)がつけ、打率は.383と僅差の戦い。「境には負けたくない」と語る德丸の首位打者争いにも注目が集まる。
対する慶大は六大学の中でチーム打率が唯一3割を超えている強力打線。中でも全試合で4番を務める中塚遥翔(3年)は要注意だ。パワフルな打撃に今季は確実性も備わり、ここまで本塁打2本、打率.324と伝統校の4番にふさわしい活躍を見せている。また、小原大和(4年)、今津慶介主将(4年)らが中軸を担い、切れ目のない打線を演出している。どこからでも得点できる布陣をどう抑えるか、早大投手陣との対決が見逃せない。

101年目の新たなスタートを切った六大学野球。この連盟の歴史は早慶戦なしには語ることはできず、それほどまでに重要な一戦である。ここまで積み重ねてきた勝ち星は早大247勝、慶大202勝。早大野球部は弛まぬ努力で勝ち星をつかみ、1世紀をかけて勝ち越しに成功した。向こう100年もその強さを見せつけ、覇者であり続けるための決戦の火蓋が、今切られる。
(記事 平壮真)