今年で59回目の開催を迎える東京六大学対校。今回は長距離種目での活躍が期待される山﨑一吹(新4年・早大)と野口颯汰(新4年・立大)の対談をお届けする。学法石川高出身の2人は、第102回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)6区に出走。そんな2人が箱根駅伝6区を語りつくす。また、東京六大学対校に向けた思いにも迫った。
※この対談は3月5日に行われたものです。

対談中の2人
――他己紹介をお願いします
山﨑 私は(野口のこと)を「そうちゃん」と呼んでおり、他の学法石川高校出身の選手からも「そうちゃん」と呼ばれているので、愛されているキャラだと思います。本当に話しやすいですし、相談にも真摯(しんし)に乗ってくれます。また、競技に対してはストイックで、競技を第一に考えて生活している印象があり、尊敬しています。
野口 山﨑は先輩や後輩から愛されていて、みんなと仲が良いです。そして、話しやすくフレンドリーというのが山﨑の特徴だと思います。また、高校、大学としっかり成績を出して、真面目に競技に取り組んでいる印象があります。
――お二人が長距離を始めたきっかけは何でしたか
山﨑 私が長距離を始めたきっかけは、中学生になったタイミングで、1学年上の先輩に陸上部の見学に誘われたことです。また、それ以前にトライアスロンに取り組んでおり、走ることが好きでした。
野口 私は年長の頃に、母親から陸上クラブを勧められたことがきっかけです。練習をやっていくうちに、短距離より長距離の方が向いているとクラブのコーチに言われ、そこから長距離を始めました。
――学法石川高に進学した経緯についてお聞かせください
野口 私は幼少期から箱根駅伝に出るという目標を持っており、箱根駅伝を見ると学法石川高校出身の選手が多いので、学法石川高校に入ることが箱根の近道だと感じていました。また、山口智規(令8スポ卒=現SGホールディングス) 先輩も学法石川高校に入学し、高校1年の時からとても走れていたので、私もそこに行けば箱根駅伝出走につながると思い、学法石川高校を選びました。
山﨑 私は当初、栃木県内の高校への進学を考えていましたが、その高校は家から遠く、寮生活をする予定でした。そのような中で、学法石川高校から声をかけていただきました。いずれにせよ寮生活をするのであれば、より強い環境で挑戦したいと思い、最終的に(学法石川高を)選びました。もともと箱根駅伝に出ようという意思があったわけではありませんでしたが、学法石川高校について調べていくと、箱根駅伝に出る選手がとても多く、高校進学後の進路も開けるとわかったので、学法石川高校に進学を決めました。
――高校入学後のそれぞれの第一印象についてはいかがですか
野口 山﨑は、先輩や後輩から愛される存在で、フレンドリーというのが、第一印象です。
山﨑 野口は自分から声をかけてくれる、明るい人というのが第一印象でした。
――学法石川高で学んだことはありましたか
山﨑 部員が100人規模の大きな集団だったので、秩序を守るためには厳しいルールも必要になってきます。そうした環境の中での生き方を学びました。また、寮生活を送る中で、結果が目に見えるスポーツだからこそ、チームメンバーへの気配りの大切さも実感しました。そうした経験を通して、競技者として結果の出し方についても学んだと思っています。
野口 100人を超える大きな集団の中での動き方を学びました。また、練習に対しては自分自身との勝負であり、克己心を持つことの大切さも学びました。まず自分自身に勝てなければ、他の相手にも勝てないという考え方は、今でも自分の中に残っています。
――高校3年時の全国高等学校駅伝競走大会(都大路)を振り返ってみていかがですか
山﨑 私は調子が上がらない中で3区を走ったため、正直不安がありました。早大に入学する選手も同じ区間を走っていて、今考えてみると、すごく感慨深いです。当時は、チーム内で実力がある方だったので、頼りにされることが多かったです。ただ、とても緊張を感じるタイプであり、精神的に苦しいと思うことがありました。その中でも、しっかり走り切って、後半区間にタスキをつなげたのは、私の中でもいい思い出です。
野口 私としては、高校3年生で初の全国大会ということもあり、緊張よりワクワクの方が勝っていました。2年時の駅伝で、アンカーのラスト勝負に負けてしまったことがあったのですが、都大路当日はその時の自分ではないという気持ちを持って走りました。自分を信じ、自分なりのレースをして、アンカーとしてレースをまとめられたと思います。
――2025年、学法石川高が都大路で優勝したことに対する気持ちについてお聞かせください
野口 やはり嬉しいというのが率直な気持ちです。
山﨑 とにかく嬉しかったです。山口智先輩と一緒に抱き合って、泣きそうになりながら喜び合っていました。何年経ってもできなかったことを後輩たちがやってくれて、すごく嬉しく感じます。早大には増子陽太(スポ1=福島・学法石川)が入学しますが、正直私よりすごいランナーなので、私にできることがあるか分からないですが、お互い切磋琢磨(せっさたくま)し合って、一緒に頑張れればいいなと思っています。
――学法石川高の強さの秘訣はどこにあると思われますか
山﨑 スピードがあるというところが学法石川高校の強さだと思っています。大学に入学してからスピードを磨くことは難しいという教えから、学法石川高校では、高校生の時からスピードを強化しています。また、2025年度の学法石川高校は、10キロや8キロの区間を走る選手たちに、スピードだけでなく、距離を踏む練習を行わせていたのではないかと考えられます。私の代は、10キロや8キロの区間を走る選手たちが、都大路当日まで5000メートルを走るような練習しかしていませんでした。正直、当日になって1.5倍から2倍の距離を走るというのは、かなり厳しいものがありました。しかし、今回長距離区間がうまくいったというのは、スピード練習に加え、スタミナを貯める練習をしっかり行えていたからなのではないかと思います。
野口 私も山﨑と同じくやはりスピードが一番の秘訣であると思います。そして、もう一つの秘訣は選手たちが克己心を持っていたことであると考えます。自分自身に勝つ粘り強さが鍵になったのではないかと考えます。
――お二人の思い出のお話についてお聞かせください
山﨑 本当に生活の中の当たり前の存在だったので、いつも近くにいるというのが日常でした。
野口 確かに。そうだね。

箱根駅伝6区を走る山﨑
――高校卒業後、早大、立大それぞれに進学した理由についてお聞かせください
山﨑 早大に入学した理由として、箱根駅伝を走れる可能性が高かったことが挙げられます。早大はスポーツ推薦の枠が数人に限られているため、私が走るチャンスがあるのではないかと感じていました。また、監督が変わり、早大が強くなるタイミングで入学できる点も魅力であったと感じています。
野口 私には幼い頃から箱根駅伝に出たいという夢がありました。私が入学を決めたときは、まだ立大は箱根駅伝に届いていませんでしたが、力がついてきて、伸びしろがあるチームであると感じていたので、箱根駅伝に出られるのではないかと考えていました。また、スピード重視の練習が多く、学法石川高校と似ている部分もあり、うまくやっていけると思い、立大に決めました。
――今年の箱根駅伝を振り返ってみていかがですか
山﨑 私としては昨年58分40秒程度で走っていたため、今年はそれ以上の57分台で走りたいと思っていましたが、実際に走ってみたら58分30秒くらいで、目標には届きませんでした。しかし、チーム全員の思いを持って走れたという面では、昨年より成長しているのかなと感じます。
野口 チームとしてはシード権獲得を掲げていましたが、力が及びませんでした。私としては、監督が指定した59分10秒というタイムはクリアはできたのですが、私は58分50秒は狙える状態であると思っていたので、そのタイムにあと10秒足らなかったことが悔しいです。
――当日のコンディションはいかがでしたか
野口 6区は朝早くに起きなければならないことに加えて寒かったので、なかなか体が動かない状態でした。そのような状況の中で、入念にアップを行い、レース前の調整もできていたので、ベストなコンディションであったと思います。また、私は登りが苦手であるため、集団についていけば流れに乗っていけると思っていたので、一斉スタートは私にとっては好都合でした。
山﨑 当日は雪が降るという予報が外れ、晴れの中で足場ができたので、精神的にかなり余裕ができたと感じます。また、昨年6区を走っており、情報のアドバンテージがあったので、寒さ対策も万全にできていました。そして、19秒差でスタートした1位の青学大には、登りで絶対に離されてはいけないと思っていたので、(青学大と)同じタイムで行こうと思っていましたが、想定以上に青学大の石川浩輝選手が早かったです。正直登りであまり早く行きたくなかったのですが、早く行かざるを得ず、結果として下りが伸びませんでした。
――出走前にお二方で会話はしていましたか
山﨑 あまり覚えていません(笑)。レースが終わった後には話したと思うのですが、レース前に話したかは覚えていません。
野口 アップ中に一度会いました。その際、私が6区が初めてということもあり、アップをする場所など、些細(ささい)なことを話していました。
山﨑 ああ、確かに(笑)。レース後には、読売新聞社の中でお疲れ様と会話をし、タイムについて共有しました。
――箱根駅伝6区にはどのような思いがありますか
山﨑 6区にはいぶし銀という印象があります。それほど注目される区間ではありませんが、やはり重要な区間でもあるので、分かっている人は分かっている、そのような区間であると思います。
野口 6区は復路の1区でもあるので、流れが大切である区間だと思います。6区で勢いが乗らないと後半の区間の選手たちに流れをつくれないので、出だしは気をつけなければならないと思っていました。
――入学前から箱根駅伝で、6区を走ってみたいという気持ちはありましたか
野口 6区には興味があったのですが、私は登りが苦手だったので、あまり6区を走りたいとは考えていませんでした。一方で、高校生の時にアンカーを任されることが多かったので、10区の方に興味がありました。
山﨑 やはり注目される区間であり、エース区間と言われる区間なので、私は2区と5区を走りたいと高校生の時は思っていました。しかし、私は夏の練習に弱く、貧血持ちなので、夏合宿でスタミナを貯めることができない問題に、大学入学後に直面しました。その中で、志したのが6区でした。6区はスタミナよりスピードが重要視される区間であるので、貧血でスタミナがつくれない私でも、出走を目指せるのではないかと考えたのがきっかけで6区を志望しました。
――6区を走る前と後でコースに対する印象の変化はありましたか
野口 急きょ6区の出走が決まったこともあり、あまり準備ができていませんでした。その中で、登りでとにかくペースを上げて走れれば、後半下りで波に乗って走れるだろうと思っていました。しかし、登り終わって下りに入り、特に小涌園前までがとてもきつかったです。そして、ラストの平地は全く体が動かなかったので、6区はこんなにもつらいのかというのが走った後の印象です。
――山﨑選手は2年時に6区を走る前と後で印象の変化はありましたか
山﨑 正直辛いコースなのだろうなという想像はついていたのですが、走った後の不調が長引いたので、6区は見た目以上に体に負担をかけるコースであると走ってみて感じました。
――今年も6区を走られましたが、何か成長はありましたか
山﨑 コース取りを意識して走るようにしました。曲がりやすい角度で走ったり、できるだけスピードを落とさずコーナーを曲がったりするように心がけました。スピードを出して曲がるので、道を曲がりきれないこともあり得るため、コース取りやスピードの調整はできるようになったと感じます。
――トラックと箱根駅伝との両立の難しさについてお聞かせください
山﨑 私はもともとトラックが大好きで、5000メートルで活躍したいという目標がありました。ただ、箱根駅伝6区を走った後のトラックシーズン序盤は、不調に悩まされることがあります。このようなところに両立の難しさを感じます。
野口 私は大学1年、2年と不調でうまく走れていない中、ちょうど昨年の東京六大学対校からやっと状態が上がってきました。そのままの流れで箱根駅伝予選会や箱根駅伝を走ることができたので、今のところはうまく両立できていると思います。
ーー6区の対策を始める時期について教えてください
山﨑 私は夏合宿が終わったあたりから、6区に向けて練習しています。また、早大は少ないメンバーの中から山下りを選出しなければなりません。昨年は私一人で山下りの練習をしていました。自主性が求められるチームであるので、自分で練習を考え、計画を立ててそれを実行するということを一人でやらなければいけないところに難しさを感じていました。
野口 下りに対しての対策は特に何もしてなくて、大体3週間から2週間ほど前に6区を走ることになり、そこから私だけ練習メニューが別になった感じです。

箱根駅伝6区を走る野口(写真提供:月間陸上競技)
――東京六大学対校で、出場したい種目についてお聞かせください
山﨑 5000メートルか1万メートルのどちらか又は両方に出走したいと思っています。状態にもよりますが、私がベストの状態で臨めるのであれば、5000メートルを13分40秒台で走りたいです。順位としては優勝を目指して頑張りたいです。
野口 私も5000メートルに出走したいです。トラックシーズン一発目のレースなので、まずは14分1桁をマストで目指していきたいなと思います。その中で、関東インカレ(関東学生対校選手権)の標準タイムも狙っていきたいです。
――それぞれの大学で東京六大学対校で注目してほしい選手についてお聞かせください
野口 私と同い年の松尾宥汰(新4年・立大)です。彼は昨年ケガで1年間ずっと苦しんで、大学3年時は一度もレースに出場しなかったのですが、今年に入ってから練習を着実に積み、今では練習を全て余裕そうにこなしているので、東京六大学対校が楽しみです。
山﨑 増子陽太です。学石マインドで頑張ってほしいです。
――今年のトラックシーズンの目標についてはいかがでしょうか
山﨑 5000メートルで13分30秒台を出すことが私の昔からの目標でした。今年は引退の年になる可能性も十分にあり、少なくとも区切りになる年であると思うので、13分30秒台を出したいです。
野口 私は、5000メートルで高校生の時から13分台を目標にしていたのですが、なかなかタイムを出せていない状況です。今年は大学最後の年となるので、13分台を出して締めたいなと思います。
――早大としての今年の目標はいかがでしょうか
山﨑 早大として掲げている目標は、箱根駅伝優勝であるので、目標を達成できるように最終学年としてチームを引っ張っていきたいと思っています。
――立大としての今年の目標はいかがでしょうか
野口 立大としては、まずは箱根駅伝予選会で3位以内を目標に掲げています。
――東京六大学対校に向けての意気込みをお願いします
野口 シーズン始めのレースとなるので、昨年同様、いい流れを持ってくるレースにしていきたいです。タイムとしてはどんな状態でも14分1桁以内で走りたいと思います。
山﨑 大学入学後、大きな競技会での優勝経験はあまりないので、優勝を目指して頑張りたいです。
ーーありがとうございました!
(取材・編集 石本遥希、取材協力 中原亜季帆/慶應スポーツ新聞会、立教大学体育会陸上競技部、早稲田大学競走部)