【連載】『令和7年度卒業記念特集』第55回 吉澤明宏/山岳

卒業記念特集記事2026

自由

4年間山を登り続けた吉澤明宏(教4=東京・早実)。なぜ山を登ったのか、登山で何を得たのか、山岳部での4年間を振り返ってもらった。

 

 幼少期に野球を始めた吉澤。清宮幸太郎などの偉大な先輩に憧れ、名門早実野球部の門をたたく。早実野球部は、部員が約50人いる中でベンチ入りできるのは20人。そしてスターティングメンバーはたったの9人という競争の激しい世界だった。仲間と競争をすることへのプレッシャーを感じたこともあり、吉澤は高校で野球に区切りをつける。

 

 大学入学後は、探検部というサークルに入会。洞窟探検や国内外の登山など、好きなことができる自由なサークルだった。吉澤はサークル活動の中で、特に登山に魅力を感じた。1年時の秋にヒマラヤ山脈に登った吉澤は、「見たことのない景色を見れる」と徐々に山の魅力に惹かれ始めた。

危険な登山に挑戦する吉澤(山岳部提供)

 1年11月、知り合いに誘われて山岳部に入部。高校まで規律の厳しい野球部に所属していた吉澤にとって山岳部は、「自由」だった。対戦相手がいた野球とは一転して、山を登ることは自分との戦い。吉澤は「自分が思っている限界より頑張れるところ」が登山の魅力だと語る。限界から1歩、また1歩先へ登り続けた。

 山の自然は吉澤を魅了するが、登山は命の危険が伴った。少し間違えれば命を落とすという感覚は、山でしか感じられないものだった。「これからの人生でどんな失敗をしても死ぬことはない」。危険が隣り合わせの環境で得た、達観した心境だ。

 

 山岳部での活動は、達成感に溢れた4年間だった。吉澤は、チームでは徳島県の剣山に登ったこと、個人としては北海道でアイスクライミングをしたことが心に残っていると振り返る。山岳部は部員は少ないものの、多彩な顔ぶれだ。自由で個の志向が強い部員が多いことは、チームスポーツをしていた吉澤にとって新しい感覚だった。個の力によって自由に活動できることが山岳部の面白さだ。

喜びを表現する吉澤(山岳部提供)

 吉澤は4年間で得たものは、「仲間」だと振り返る。現在活動している部員は6人。少人数ながら、自由で個性的な仲間を得たことはこれからの人生の財産になるだろう。吉澤は後輩に向けて、「自由に、型にはまらずにやりたい登山をしてほしい。」と思いを託した。「個性を大事に」。吉澤にとって山岳部での4年間は、「自由」だった。

(記事 山口愛結)