為せば成る
幼少期に味わった「中途半端な自分」へのリベンジを誓い、大学で合気道の道を選んだ坂井。2度の大きな怪我に見舞われながらも、彼は「辛さを楽しむ」精神を武器に、全国2位という結果と主将としての責任を全うした。4年間の継続が確固たる自信へと変わるまでの記録である。
坂井が合気道に出会ったのは、大学入学の春だった。紹介されて訪れた体験会で、凛とした袴姿の部員たちに憧れを抱いたことがきっかけだった。入部を決めた背景には、もう一つの強い想いがあった。幼少期から打ち込んだ野球と剣道をどちらも「やりきれなかった」という後悔があったことだ。「今度こそ一つのことを最後まで継続し、本当の自信を手に入れたい」という決意が、坂井を入部へと突き動かした。
入部早々、坂井を待ち受けていたのは膨大な数の「型」を身につけるという試練だった。早く先輩に追いつきたい一心で、隙間時間を見つけては同期と練習に励んだ。その結果、1年目にして多くの型を習得することができた。厳しい練習に投げ出したくなることもあったが、彼を支えたのは当時の主将の言葉だった。「辛い練習こそ、無理矢理にでも楽しめた方が得」という教えが、その後の4年間を支える支柱となった。
入部早々、坂井を待ち受けていたのは膨大な数の「型」を身につけるという試練だった。早く先輩に追いつきたい一心で、隙間時間を見つけては同期と練習に励んだ。その結果、1年目にして多くの型を習得することができた。厳しい練習に投げ出したくなることもあったが、彼を支えたのは当時の主将の言葉だった。「辛い練習こそ、無理矢理にでも楽しめた方が得」という教えが、その後の4年間を支える支柱となった。
2年生になり、周りに実力を認められ始めた坂井は、より多くの試合で活躍したいという意気込みを持ってシーズンに臨んだ。しかし、思いとは裏腹に、二ヶ月の戦線離脱を余儀なくされる大きな怪我に見舞われる。毎日継続してきた練習ができず、上達の機会を奪われた感覚に、正直心が折れかけた。そんな時、1年時に教わった「辛さを楽しむ」という言葉を思い出した。「練習ができるようになった時、より楽しく稽古できるように今できることをしよう」と考えを変えた。その結果、前向きな気持ちを取り戻すことができた。怪我から復帰した直後、他選手の欠員により全日本大会個人戦のメンバーというチャンスが舞い込む。この好機を絶対にものにすると誓って挑んだ結果、全国2位という大きな成果を収めることができた。怪我の最中に後ろを向いたままだったら、この結果はなかった。自分の成長を確信した瞬間だった。

技をかけようとする坂井
全国で通用したという実感を胸に、新調した黒帯を締めて迎えた3年生。監督から「君たちはもう入門者ではなく修行者なんだ」と言われ、黒帯がただの帯以上の、自分を律するための鎖のような重みを持つことを実感した。日々の練習に対する向き合い方を改めて考える契機となった。毎日の自主練を怠らず、ベクトルを自分に向け続けた。そして、大きな成長を遂げて挑んだ全国の舞台。決勝の相手は、怪我から復帰した最強の先輩だった。「必ず勝って優勝する」と意気込んだが、結果は大敗だった。手も足も出ず、信じてきた技が次々と無力化されていく。相手の実力は分かっていたつもりだったが。どこかで期待していた自分もいた。勝てなかった悔しさを噛みしめ、「来年は絶対に優勝する」と心に誓った。
4年生になり、昨年の悔しさを胸に全国制覇を掲げて合気道部の主将に就任した。「チームを勝たせる」ことと「個人の目標」の両立を目指し走り出した直後、再び肘の靭帯損傷という試練に襲われる。腕を吊り、畳の端から見守るしかないもどかしさに焦燥感が募った。しかし、一歩引いた場所から眺めることで、今まで気づかなかった後輩の癖やチームの弱点が手に取るように見えるようになった。自分の稽古時間をすべて後輩への指導に注ぎ込む。それが主将としての戦い方だと定め、裏方として声を出し続けた。その結果、下級生たちが春の大会で続々と結果を残すなど、チームの状態は上向きになった。個人の稽古においても、決しておごることはなかった。道場が閉まるまで自主練を行い、テスト週間でも時間を作って道場に足を運んだ。その積み重ねが大きな自信となり、早慶戦や関東大会でも、揺るぎない自信を持って畳の上に立つことができた。迎えた最後の全国大会。目標の優勝には届かなかったが、坂井の視界は不思議とひらけていた。一人で打ち込みを繰り返した日々や、怪我で道場の隅から眺めた景色が脳裏をかすめる。届かなかった結果よりも、出し切った自分の技に、初めて自分自身を肯定することができた。

試合中の坂井
坂井は、この4年間を「成せばなる」という言葉で締め括った。それは膨大な練習量と継続に裏打ちされた言葉だった。振り返れば、型の習得に苦しみ、怪我に泣き、準優勝で悔しさを味わった日々だった。それでも前を向き続けたことが、今の確固たる自信に繋がっている。合気道部で得た「継続の重要性」と「自信」を武器に、4月からは社会人としての新たな挑戦に臨む。
(記事 本多鼓瑚)