【連載】『令和7年度卒業記念特集』第23回 功能誠也/米式蹴球

卒業記念特集記事2026

今を、生きる

 間違いなくLB功能誠也主将(教4=東京・西)は今を生きていた。3ヶ月前まではフィールドにいた彼が、今は外側からチームを見つめる。ただ不思議と違和感はない。思えば、この学生生活でもけがなどを理由にフィールドに立てない日々も多かった。思い通りにプレーできないことが続いても、競技を続けられたのは、間違いなくその瞬間「今」を全力で生きていたからだ。良い時も悪い時も、常に冷静にチームの日本一だけを考え、自身の役割を全うしてきた功能。汗と覚悟の物語を振り返る。

コートからチームを見つめる功能

 幼い頃からスポーツが好きだった功能。アメフト経験のある父親には、あらゆるスポーツの観戦に連れて行ってもらったという。野球やテニスにも触れたが、最も惹かれたのがアメフトだった。激しいスポーツの中にある面白さやかっこよさ。その魅力につられ、気づけば幼い頃から試合を見ていた都立西校アメフト部の一員になっていた。そこで出会ったのは、早大BIG BEARSのOBたち。甲子園ボウルへの出場や同じ高校の先輩たちの存在が早大BIG BEARSへの憧れを強くした。「日本一を目指すならすごく魅力的な組織なのかな」。他大学への受験をギリギリまで迷ったが、アメフトのため、そして日本一を目指すため、最終的に受験先を早大だけに絞り、入学を決めた。

 「功能を副将にして勝ちたい」。そう声をかけられたのは、早大に入学して2年が経った頃だ。大学入学後から、ファンダメンタルへのこだわりやクリエイティブなチーム作りに魅了され「すごく大人なチームだな」と自身の選択の正しさを確信していた。「みんなでもっともっとやろうよ」。下級生の頃から時にはチームを巻き込み、プレイだけではなくオフフィールドの部分でも自身の言葉に責任を持った。そうした言動やがむしゃらさが功能を、3年時から副将を任される存在へと押し上げた。

チームメイトに声をかける功能(写真左)

 「僕は結構ドライな性格なんです」。大きな困難にぶつかっても、すぐに前を向くタイプだと語る功能。それでもアメフトから離れたいと思った瞬間はある。「僕が発信したことが、本当にみんなに伝わるのか」。副将になった3年時には、LBからDBへのポジション変更や、副将という立場と実績のズレに苦しみ、大きな葛藤を持ち続けた。ただその中でも功能は、揺るぎない一つの思いでどうにか競技を続ける活路を見出した。「4年生を必ず勝たせたい」。試合出場の機会が少ない時には、キッキング・ゲームやスカウティングチームに集中。「功能を副将にして勝ちたい」という4年生の言葉を、功能は深く胸に刻み込んでいた。

 しかし、尊敬する先輩たちにとっても日本一の壁はずっと高かった。2024年シーズンは、甲子園ボウル出場間近での全日本大学選手権敗退。この悔し涙を、功能は誰よりも重く受け止めた。「今年1年間、チームのリーダーとして自分の全てをかけて戦いたい」。そんな強い覚悟を決め、主将に就任する。全勝と誓った春シーズンは、関西勢に圧倒的な力負け。秋シーズンは、試合を重ねるごとにチームとして着実に力をつけ、白星を重ねる中、功能自身は負傷により戦線離脱を余儀なくされた。復帰も危ぶまれ、悔しさを持つ中で功能に前を向かせたのは、チームメートの言葉だった。「功能を勝たせたい」。1年前「4年生を勝たせたい」と誓い、チームのために走り続けてきた功能。その思いは巡り、今度は自分へと向けられている。支える側だった彼は、いつしか頼り甲斐のあるチームメイト全員に支えられていた。そしてチームが関東優勝を成し遂げた時、真ん中でトロフィーを掲げた功能は、自身に関わる全ての人々に感謝の気持ちでいっぱいだった。

トロフィーを掲げる功能(写真中央)

 日本一をかけて迎えた全日本大学選手権準決勝。勝てば甲子園ボウルという中で、相手は春に完封負けを喫した立命大。そこには、プレーヤーとしてフィールドに立つ功能の姿があった。到底ドライとは言えないほど熱くチームを鼓舞する功能。さらに、それに応えるように、たとえ点差を広げられても誰一人諦めずに戦い抜く選手たちの姿があった。31点増えた得点と7点減った失点。「これ以上は、どれだけやっても相手が上回っていた」。敗れはしたが、そのスコアには、功能主将率いる早大BIG BEARSの1年間の進化が間違いなく表れていた。

プレー中の功能

 「来年のチームを楽しみにしていてください」と功能は笑顔を見せる。これからのチームに必要なのは「戦う集団になること」そして「今自分たちに集中する集団を作ること」。日本一を目指すためにコーチとしての考えは明確だ。選手としては叶わなかった日本一、その悔しさと学びがあるからこそ後輩たちに伝えられることがある。そして今を全力で生きる功能だからこそ、指導者としてのこれから先のキャリアはまだ何も見えていない。「BIG BEARSは本当に価値のあるチーム。4年間をこのチームにかけて本当に良かった」。今をがむしゃらに生きる。その精神で功能は自身の道を切り開いていく。

(記事 大村谷芳 写真 片山和香、大村谷芳)