全国大学ラグビーフットボール選手権大会 1月11日 対明大 国立競技場
『荒ぶる』。早稲田大学ラグビー蹴球部の第二部歌。日本一の頂に立った時にだけ響かすことができる誇り高き旋律は、選手たちにとって憧れであり、覚悟そのものだ。4年間のすべてはこの歌を歌うためにある。勝利の先でしか許されないその瞬間を目指し、『赤黒』の戦士たちは歩んできた。全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝、野中組にとって、すべてを懸けたラストゲームとなる。対するは明大。関東大学対抗戦で一度敗れた因縁の相手だ。早明戦の雪辱を果たし、日本一の座へたどり着けるのか。CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)のリードのもと、『荒ぶる』を声高らかに響かせることはできるのか。早大のラグビーを斯界(しかい)になびかせることはできるのか。運命の一戦がいま幕を開ける。

大学選手権・帝京大戦にてモールの行方を見つめるCTB野中
大学選手権準決勝・帝京大戦、「歴史を変えよう」という大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)の言葉通り、早大の選手たちは自らの手で歴史を塗り替えた。試合開始早々、SO服部亮太(スポ2=佐賀工)が強気のゲームメイクで主導権を握る。「強気な姿勢で臨んだ」と語るように、自らスペースを生み出してラインブレイクを果たすと、そのままゴールラインへ。勝ち筋を示す貴重な先制点を奪った。しかし、王者・帝京大もすぐさま反撃に出る。早大ディフェンスの一瞬のほころびを突き、立て続けに2トライ。すぐさまスコアをひっくり返され、その強さを突きつけられた。それでも、この日の早大は違った。野中のPGで3点を重ねると、国立競技場に『早稲田コール』が響き渡る中、ラインアウトモールからHO清水健伸(スポ3=東京・国学院久我山)がグラウンディング。試合を再び引き寄せた。さらに服部が正確無比な右足でドロップゴールを沈め、23ー14とリードして前半を終える。迎えた後半、早大はFWを軸に力強く前進し、追加点を奪って主導権を譲らない。終盤には帝京大の猛攻にさらされたが、一人ひとりが身体を張り続け、最後まで集中力を切らさなかった。31ー21。ノーサイドの笛とともに、国立競技場は歓喜に包まれる。準決勝で帝京大の連覇を止めた早大。選手たちは、言葉ではなく結果で「歴史を変える」ことを証明してみせた。

大学選手権・帝京大戦にてモールトライを喜ぶ選手たち
それでは決勝の舞台で輝きを放つであろう早大の注目選手を紹介する。まず挙げたいのは司令塔を担う服部だ。「チームの中心にいながら、周りを生かせる10番で試合を終えたい」。そう語る服部にとって、決勝の鍵を握るのはエリアマネジメントである。重くて強い明大FWをいかに自陣へ入れないか、その答えを服部は自らの右足で示す。持ち前のロングキックで陣地を獲得し、試合の流れを掌握したい。服部は昨年の決勝で大粒の涙を流した。その悔しさを糧にこの一年を積み重ねてきた。今年の服部は一味違う。経験をまとった希代のゲームメーカーが、今度こそ『赤黒』を頂へ導いてみせる。

大学選手権・帝京大戦にてインゴールに飛び込むSO服部
そして鍵を握るのが、フロントローの3人、PR杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)、清水、PR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)だ。早大が決勝の舞台まで勝ち進んできた背景には、盤石なスクラムの存在がある。1本を押し切り、相手の誇るセットプレーをねじ伏せてきた。決勝でも明大自慢のスクラムに真正面からぶつかり、流れを引き寄せろ。

大学選手権・帝京大戦にてスクラムで反則を奪い、雄叫びを上げるPR前田
そして最後は、このチームを1年間率いてきた野中主将だ。数々の困難を乗り越えてきた歩みの中心には、常に野中の存在があった。苦しい局面でも前を向き、仲間を鼓舞し続けてきた姿が、今の早大を形づくっている。決勝の舞台は総力戦。これまで積み上げてきたすべてが試される一戦だ。その中で、野中のプレースキックは勝利へとつながる重要なピースとなるだろう。決勝は間違いなくクロスゲームになる。だからこそ、1点の重みが勝敗を分ける。自らの右足で勝利を手繰り寄せ、そしてその先にある日本一の主将になるときが来た。

大学選手権・帝京大戦にてコンバージョンキックを蹴るCTB野中
佐藤組が涙を流したあの日から、このチームは歩みを進めてきた。それから1年。幾度となく困難に直面しながらも、全員で乗り越えてきた。積み重ねてきた日々が間違いではなかったことを、今、結果で証明してみせる。あの日の涙を笑顔に変える時がきた。
(記事:大林祐太 写真:村上結太、安藤香穂)
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