【ラグビー】2025全国大学ラグビーフットボール選手権大会 準決勝 帝京大戦展望

ラグビー男子

全国大学ラグビーフットボール選手権大会 1月2日 対帝京大 国立競技場

 「大好きな4年生と1試合でも多くラグビーがしたい」。全国大学ラグビーフットボール選手権大会(大学選手権)前に語ったNO・8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)。その想いを胸にチーム野中は全員で2026年の幕開けを迎え、再び国立の舞台へと帰ってきた。準決勝で立ちはだかるのは、関東大学対抗戦(対抗戦)でほんのわずかに届かなかった因縁の相手・帝京大。昨季の決勝戦と同じカードが、この大舞台で実現した。早大は対抗戦で帝京大に敗れたあの日から立ち止まることはなかった。悔しさを糧に日々の厳しい練習と向き合い、磨き続けてきた。その積み重ねはここまでの戦いぶりが証明している。成長の先にある答えを示すことができるのか。早大は今試合で勝利をつかみ取り、決勝への切符を手にしてみせる。

対抗戦・明大戦にて力強いキャリーを見せるNO・8松沼

 早大は12月20日、大阪の地で関西王者・天理大との大学選手権準々決勝に臨んだ。2年前に涙をのんだ因縁の地で迎えた一戦。選手たちは先輩たちの想いを背負い、ピッチに立った。しかし試合開始早々、天理大にターンオーバーから自陣ゴールライン直前まで攻め込まれると、フェーズを重ねられ、開始1分で先制を許す苦しい立ち上がりとなった。それでも早大はすぐさま主導権を握り返す。SO服部亮太(スポ2=佐賀工)のキックパスに反応したWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)がインゴールに飛び込み、反撃の狼煙を上げた。以降は早大が粘り強いディフェンスで流れを引き寄せる。天理大に幾度となくフェーズを重ねられても崩れることなく、15人が繋がり続けた鉄壁の守りでピンチを凌いだ。攻守にわたる我慢の時間が相手の反則を誘発し、早大は19ー4と5点のリードを奪って前半を折り返す。迎えた後半は、ノックアウトステージにふさわしい緊迫した展開が続く。互いに一歩も譲らぬこう着状態の中、勝負を分けたのは早大のトライだった。細かなパスを繋ぎ、最後はFB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)がグラウンディング。この一撃で、早大は勝利へと大きく前進した。その後も天理大の猛攻を最後まで守り切り、試合終了のホーンと同時に服部がボールを蹴り出す。早大は、再び国立の舞台へと帰還した。

大学選手権・天理大戦にて鮮やかなステップをみせるWTB田中健

 帝京大は先週、対抗戦で一度敗れている筑波大との一戦に臨んだ。スクラムで圧倒的な優位性を保つことはできなかったものの、簡単にはボールを失わず、継続してフェーズを重ねながらボールを展開し、着実に得点へと結びつけた。トライの多くは6フェーズ以上を要するもので、粘り強くボールをつなぎ切って奪ったものだ。この試合では、大外へ大きく展開する場面は決して多くなかった。近場のFWを中心に接点で勝負し、フィジカルを生かした堅実な試合運びを見せたのが筑波大戦の特徴である。その中で好機と見るや、SO本橋尭也(帝京大)を起点に一気に大外までボールを動かし、トライを仕留め切る。緩急をつけたアタックで、相手ディフェンスを確実に切り崩してきた。しかし、早大の強みは鉄壁の防御にある。天理大戦後、早大ディフェンスを牽引するFL田中勇成(教4=東京・早実)は「自分たちのディフェンスは強いという自信を持っていた。相手にフェーズを重ねられても、無理にボールを奪いに行くのではなく、自分たちのディフェンスをやり続けることを意識できた」と語った。たとえフェーズを重ねられようとも、規律と粘りを失わない早大の守備であれば、帝京大の連続攻撃に対しても耐え切ることができるだろう。

大学選手権・天理大戦にてディフェンスを突破するLO栗田

 早大の注目選手は、両翼を担うWTB池本晴人(社3=東京・早実)と田中健だ。準々決勝では帝京大はキックを多用しなかったものの、今試合では早大のディフェンスラインに対応し、本橋とFB吉田琉生(帝京大)を中心に精度の高いハイボールを織り交ぜる可能性が高い。両翼のキック処理とその後の判断が試合の流れを左右する。確実なキャッチと冷静な判断で相手の圧力をいなすことができれば、早大は自らのリズムを保ったまま戦い抜くことができるだろう。また、帝京大はわずかな隙を突いては大外までボールを展開し、確実に得点へと結びつける。細部を逃さないその攻撃に対抗するうえで、両翼のディフェンスでの貢献度が大きな鍵を握る。池本と田中健は天理大戦において、相手の陣形を的確に見極めながら、早大ディフェンスラインのギャップに自ら入り込み、ピンチを未然に防いできた。2人の献身的な守備が、帝京大の緩急をつけたアタックを食い止めるための重要な要素となる。そして、服部とCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)という世代屈指の2人のゲームメーカーにも注目が集まる。両者がスペースへいかに正確にボールを運び、強いプレーヤーを生かす配球ができるかが勝負の分かれ目となる。CTB陣が前に出て詰めてくる帝京大の守備に対し、素早く大外まで展開しディフェンスラインを切り裂きたい。そして帝京大と対峙する上で、接点でのコリジョンバトルは避けて通れない。両LOの小林光晴(文2=福岡)、栗田文介(スポ4=愛知・千種)、さらに松沼はいずれも突破力と豊富な運動量を兼ね備えるプレーヤーだ。帝京大の堅牢なディフェンスを崩すためには、彼らのアグレッシブなキャリーが欠かせない。

大学選手権・天理大戦にてライン際をブレイクするWTB池本

 帝京大で警戒したい選手は本橋と吉田琉だ。両ゲームメイカーはいくつもの選択肢を常に持ちながら、相手の出足を見極め、余裕を持った状況判断に優れている。相手の陣形を見ながら、その場で最善のプレーを選択できる存在だ。早大はディフェンスからプレッシャーをかけ、彼らを自由にはさせたくない。また、上野凌大(帝京大)と森山飛翔(帝京大)の両PRにも注目したい。2人はともに高校時代にNO・8を経験しており、PRながら機動力は抜群だ。準々決勝の筑波大戦では、接点だけでなくフィールドの広いエリアでも存在感を示し、グラウンドを縦横無尽に駆け回った。

大学選手権・天理大戦にてディフェンスラインに接近するCTB野中

 このチーム野中でラグビーができるのは多くてもこの準決勝と決勝のわずか2試合。目の前の1試合を、1プレーに全てを注ぐ以外の他ならない。『One Shot』のそのスローガンの通り、選手、部員、そしてサポーターが一丸となって真紅のジャージを打ち破れ。

(記事:大林祐太 写真:安藤香穂、伊藤文音)

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