全国大学ラグビーフットボール選手権大会 12月20日 対天理大 ヤンマースタジアム長居
関東大学対抗戦を3位で抜けたチームに待ち構える、年越し前の大阪決戦。対するは関西王者だ。厳しい戦いになることは早大の選手たちが一番知っている。2年前の12月23日、伊藤大祐(令6スポ卒=現神戸S)率いる早大は京産大の強烈な攻撃を受け、28ー65で敗北を喫した。「あの敗北をスタートに立て直してきた2年間だった」と太田尾が語ったように、早大にとって間違いなく大きな転換点となった一戦だった。アウェイの地でチームとしての成長を見せつけ、漆黒のジャージを打ち破って2026年を迎えることができるか。シーズンは最終盤を迎える。

2023年度大学選手権準々決勝・京産大戦後にスタンドに挨拶する早大選手たち
早大は先週、全国大学ラグビーフットボール選手権大会(大学選手権)の初戦として関東学院大と激突した。20年ほど前の黄金カードだったが、早大が盤石な強さを見せつける展開となった。FB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のトライを皮切りにBKだけではなくFWもモールでインゴールを破るなど多様な得点方法でリードを広げた早大は計13トライの猛攻で関東学院大を沈めた。何より印象的だったのは関東大学ジュニア選手権での優勝を支えた選手たち。明大戦からメンバーを代えて臨んでいたことに加え、負けたら引退のノックアウトステージの初戦ということからかなりのプレッシャーがかかっていたことが予想されるが、彼らの堂々としたプレーは今季の早大の層の厚さを象徴していた。
関西大学ラグビーAリーグを無敗で終えた天理大の特徴は個々の力を生かした攻撃力だ。初戦の関西大戦、前半こそ固さが見えたものの、後半は圧巻のトライショー。キックを用いた多角的なアタックで得点を量産し、62ー0で勝利。続く摂南大、同志社大戦も危なげなく白星を挙げたが、第4戦の立命館大との一戦は点を奪い合うクロスゲームに。しかし、オフロードパスを軸に個々のフィジカルの強さを生かしたアタックにこだわった天理大が試合終盤に立命館大を突き放し、4連勝を飾った。関西学院大戦、近大戦でも圧倒的な強さを見せつけた天理大は最終節の京産大戦へと臨んだ。両者無敗の状態で迎えたこの一戦はスクラムで劣勢に立ったが、有り余る攻撃力で次々と京産大陣内に攻め込み、47ー15でノーサイド。ライバルを寄せ付けず、創部100周年にふさわしい完全優勝をしてみせた。今季の天理大の強さの象徴となっているのはやはりSO上ノ坊駿介(天理大)。類いまれなラグビーセンスと圧倒的なスキルで別格の輝きを見せつけている。その独創的なプレーを支えるSH朝倉達弥(天理大)は自ら積極的に仕掛けるアグレッシブさが魅力。超攻撃的なハーフ団に翻弄(ほんろう)されない強固な早大ディフェンスを期待したい。また、関西Aリーグトップのトライ数を誇るWTBフコフカ・ルカス(天理大)にも注意が必要。驚異的な推進力でいくつものトライを挙げてきた馬力あふれるスプリンターにスペースを与えず、沈黙させたいところだ。

2025年度大学選手権・関東学院大戦にてインゴールに飛び込むFB矢崎

2025対抗戦・明大戦にてライン際を駆けあがるCTB野中

2025対抗戦・慶大戦にてディフェンスに仕掛けるCTB福島
早大の注目すべき選手、筆頭はやはり矢崎。日本代表の15番として活躍するスーパースターとしてのプライドを見せつけるかのように、圧巻のパフォーマンスで早大をけん引している。厳しい展開が予想される今試合だからこそ、個人で局面を打開できる矢崎のランニングに期待したい。また、アタックでは両CTBの野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)、福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)の連携も見逃せない。野中の巧みなパスワークと福島の豪快な突進で昨季から何度もディフェンスラインに風穴を開けてきた。天理大の攻撃を上回る攻撃力で早大にスコアをもたらしてほしい。FWではLO栗田文介(スポ4=愛知・千種)、NO・8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)に注目だ。栗田の体躯を生かしたダイナミックなプレー、松沼のスピードを生かしたボールキャリーはチームに流れを引き寄せる起爆剤になるだろう。以上で紹介した5選手はいずれも2年前、ヨドコウ桜スタジアムで敗北を経験した3、4年生たち。実際にグラウンドでプレーし、直に味わった悔しさを今試合で晴らし、チームを年明けに導いてほしい。

2025年度大学選手権・関東学院大戦にてモールを押し込むLO栗田

2025年度大学選手権・関東学院大戦にてスクラムからボールを持ち出すNO・8松沼
「全てを懸けないと勝てない」と意気込んだFL田中勇成(教4=東京・早実)。『総力戦』の文字のごとく、早大は持てる力全てを天理大戦に注ぎ込む。大阪の地へは153名の全部員が集まり、Aチームの2025ラストゲームを見届ける。この試合をチーム野中の最後の試合にしてはならない。国立で『荒ぶる』を響かせるその瞬間まで、歩みを止めてはならない。このメンバーでラグビーを続けるため、漆黒のジャージを打破せよ。
(記事:村上結太 写真:川上璃々氏、村上結太、大林祐太、伊藤文音)
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