Vリーグチームの高い壁に阻まれ敗北 前田主将体制、静かに幕を閉じた

男子バレーボール

天皇杯全日本選手権大会ファイナルラウンド 12月12日 東京体育館

 天皇杯ファイナルラウンド2回戦、早大はアイシンティルマーレ碧南(アイシン)と対戦した。Vリーグチームの高い壁に苦戦し1、2セットを落としたが、第3セットはこちらがペースをつかんで奪取する。しかし、競った展開をものにできず、4セット目を落とした。セットカウント(24―26、23―25、25―22、23―25)で敗北を喫し、1年半に及んだ前田主将体制が終了した。

 第1セット、MBローゼンマーク有廉ジュニア(スポ2=茨城・土浦日大)のクイックでブレイクしスタートを切った。しかし、相手のサービスエースやクイックなどで連続得点を許してしまう。対する早大は、攻撃の突破口を見つけられず徐々に差が開く展開に。セッター前田凌吾(スポ4=大阪・清風)主将のブロックポイントやリベロ布台聖(スポ3=東京・駿台学園)のディグから起点を作り、OH小野駿太(スポ2=静岡・聖隷クリストファー)が切り返すなどVチーム相手にに食らいつく。終盤にはOP川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園)のサービスエースを中心に、サーブで相手を揺さぶった。布台のレシーブポイントでデュースまで追いつくも、相手の粘り強いブロックにクイックを何度も阻まれる。最後は切り替えたサイドからの攻撃がブロックされ、26―24でセットを落とした。

 麻野堅斗(スポ3=京都・東山)のブロックポイントから始まった第2セット。川野がサーブで崩し、小野がバックアタックを決めブレイクした。さらに麻野のブロックポイントが起点となり、一歩リードする。しかし中盤では、相手に4連続得点を許すと形勢は一転した。オポジットとして出場した中上烈(スポ1=京都・洛南)がスパイクやサービスエースで勢いをもたらす。さらに板垣慧(政経4=京都・洛南)の意表を突いたフェイントでの得点に前田が思わず驚きを見せる。落としたくはないセットだったが、最後は相手サイドが連続得点し、23―25で再びセットを献上した。

得点し、喜ぶ板垣

 挽回したい第3セットは、いきなり相手のサービスエースが出るも落ち着いて立て直した。MB菅原啓(教3=山形南)のクイックや徳留巧大(スポ2=長野・松本国際)のスパイクでブレイクする。一進一退の展開へ持ち込むと、川野が相手レシーブをサーブで崩し、確実に菅原がクイックで仕留め、小野が欲しいところでサービスエースを決めるなど要所で得点を重ねる。菅原、前田のブロックで畳みかけ、最後は菅原が相手コートにボールを抑え込んで25―22でセットを奪取した。

チームを常に鼓舞してきた梶村颯汰(スポ4=東京・安田学園)

 粘りたい第4セット。ローゼンのブロックポイントでスタートを切ると、徳留のバックアタックで連続得点し、勢いづく。布台がブロックから抜けたボールを確実に前田のもとへ届け、菅原が連続得点を果たすなど、攻守が噛み合い7―4と前に出る。しかし、中盤に相手の4連続得点でリードを許すと、拮抗した展開が続いた。川野、菅原のブロックでの連続得点で相手の背中を捉えると、小野のバックアタックが連続で決まり、前に出る。しかし、最後は相手のブロックに阻まれ、23―25でセットを奪われてしまい、セットカウント1ー3と苦杯を喫した。

トスをあげる前田

 不本意ながら前田主将体制最後となる試合となってしまった。全日本大学選手権(全日本インカレ)からわずか1週間も経たずに行われたため、疲労が取れていなかった。しかし、ここぞというところで踏ん張りきることができなかったのも事実だった。ただ、今年1年を振り返ってみれば、全日本インカレで「全てを出し切る」ことを目標にやってきた1年間として、文句なしの出来だった。今大会を節目に4年生は次のステージへ、3年生以下は日本一に向けての道を再び歩み始める。「異常を極めた」彼らのこれからをそっと見守っていきたい。

(記事 井口そら、写真 井口瞳)

セットカウント
早大

24-26
23-25
25-22
23ー25

アイシン

スタメン

アウトサイドヒッター 佐藤遥斗(スポ3=東京・駿台学園)
アウトサイドヒッター 小野駿太(スポ2=静岡・聖隷クリストファー)
ミドルブロッカー 菅原啓(教3=山形南)
ミドルブロッカー ローゼンマーク有廉ジュニア(スポ2=茨城・土浦日大)
オポジット 川野琢磨(スポ1=東京・駿台学園)
セッター 前田凌吾(スポ4=大阪・清風)
リベロ 布台聖(スポ3=東京・駿台学園)

途中出場

板垣慧(政経4=京都・洛南)
麻野堅斗(スポ3=京都・東山)
徳留巧大(スポ2=長野・松本国際)
中上烈(スポ1=京都・洛南)

コメント

※前田主将のみ囲み取材のため、他媒体と内容が同一となります。ご了承ください。

前田凌吾主将(スポ4=大阪・清風)

――最後のトスについて、色々な選択肢がある中で、小野選手(駿太、スポ2=静岡、聖隷クリストファー)に高いトスを上げたというのは、後輩に託すようなメッセージ性のあるトスだなと感じましたが、どのような思いであげましたか

 練習が始まってからも、次学年上がるからというのは自分からも言っていました。最後の2点差というところで全部のセット落としてるので、全カレではその2点差が取れていたのですが、今日は取れてないというところは自分たちの弱さが出たと思うので、そこは来年以降もっと頑張ってやってほしいと思います。今年の締めくくりとしてはあんまりいいかたちではなかったかなとは思います。

――現体制が終了して、また次のステップに向かうと思いますが、前田選手自身はどこを目指していますか

 新しいチームでプレーするので、しっかり自分の持ってる力を出せるように、そして試合に絡んでいけるように頑張っていきたいなと思います。しっかり自分の力をもう1回鍛え直してやっていきたいなと思います。

――早稲田の4年間は

 バレーボールもそうですが、バレーボール以外のところの大切さやトレーニング、食事、自分の体のメンテナンスをこの4年間で学びました。自分がキャプテンを1年半やってきて、チームに対しての自分の立ち振る舞いを学べたので、ほんとにいい4年間だったなと思います。

――天皇杯までの2日間の練習で、他にどういったことを後輩に伝えたいと思っていましたか

 今日負けてしまって、次から学年が上がるというところで、早稲田は学年ごとに役割が決まっているのですが、今の2年生は3年生になって、上級生という分類になってくるので、上級生になるという自覚をもっと持たないといけないと思います。今4年生はコートに入ってないので、プレー面はおそらく大学では1番だと思いますが、それ以外のところで日本一にならないといけないと思います。自分たちはそこを目指してきてたので、そういうところを伝えれたらいいかなと思って練習はしてました。

――ここまでのバレーボール人生を振り返って改めてご自身の強みは

 コートの中でコミュニケーションとか、チームがダメな時に声を出すところはできるかなと思います。ワクワクするようなトスを上げたいと思って高校生からやってきて、自分自身が楽しい時は本当にいいトスも上がっていると思います。もう少し安定性をSVではつけていかないといけないかなと思うし、速いトスにもなってくるので、しっかりもう1度自分の強みを持ちつつ、また新しい武器を時間をかけて作っていければなと思います。

――この4年でセッターとして色々苦しいことがあったと思いますが、その中で身についた1番大きいものは何だと思いますか

 チームやスパイカーを信頼することが大事と思いました。下級生に対して余裕を作ってあげるトスをあげることや、自分が下向いたりしている時はあまり上手くいっていないので、スパイカーに対してもっと思いやりを持つということはよりできるようになったかなと思います。

――試合を振り返って

 東レさんと次やりたかったっていうのは本音です。この強い下級生たちとバレーができないというのは寂しいですが、僕も次のステージがあるので、そこに向けてやっていくしかないと思います。今日負けたことはもうしょうがないと思うので、前向いてやっていきたいなと思います。

――ここまで厳しいこともあったと思いますが、一緒に戦ってきた仲間にメッセージをお願いします

 同級生には本当に感謝しかないので、もうしっかり伝えていかないといけないなと思いますし、下級生も自分のトスををずっと打ってくれてたりしたので、来年はセッターだけ変わると思うのですが、しっかり下級生のセッターを大事にして欲しいです。僕みたいにオラオラというか、そういうタイプじゃないと思うので、大事にやってほしいなと思います。

――これからの意気込みは

日本代表とかもそうですが、、まずチームでしっかり活躍したいです。自分のこれから行くところにも僕が目指してるセッターの方がいるので、その方をしっかり越せるようにやっていきたいし、学べるところもあると思うのですが、学ぶだけではなくて、追い越さないと自分も上がっていけないと思うので、そこは躊躇なくどんどんやっていきたいなと思います。

――学生最後の試合が東京体育館で、春高の時もここのコートで終わりましたが

ここは負ける体育館です。なので僕は来たくありません。縁起が悪いです。しかも同じコートで負けました。

布台聖(スポ3=東京・駿台学園) 

――試合を振り返って 

 インカレが終わって天皇杯で大人のチームとやるというところで、入りとかが難しくて自分たちのバレーができませんでした。結局最後まで自分たちの力が出し切ることができなくて負けたっていうのが試合の感想です。 

―守備の面でワンタッチボールをつないだり、ディグで上げたシーンがあったりしたと思います。そこから切り返して得点というところにつながらない場面が多かったのかなという印象ですが、振り返っていかがですか 

 相手が大学生じゃないので、インカレの時は相手がブロック低いとかあったのですが、今日はしっかりブロックが高くて、そこに普通に打ってるだけでちょっと打つだけになってしまったので、もっとプッシュで決めたりとか、リバウンドからの展開っていうところをもっと作れたらよかったのかなっていうのは思います。 

――全日本インカレ明けすぐ天皇杯を迎えましたが、調整で難しい部分はありましたか 

 インカレという一つの目標に向かってそこにずっと気持ちを作ってやっていたので、その後の天皇杯は難しい部分もあったのですが、自分の中でVともやれるし、SVともやれるっていうチャンスだったので、やっぱりそこは結構ちゃんとインカレから切り替えて気持ちを作ってやったっていうのはあります。 

――個人のプレーを振り返って 

 もっと上げれるボールがたくさんあったかなって思います。調子はあまり良くなかったかなっていう印象です。 

――4年生と試合できる機会としては最後でしたが、改めて4年生へのメッセージをお願いします 

 SVとやる機会を作ることができなくて本当にすごく申し訳ない気持ちなのですが、この1年間4年生が作ってきたチームをこれからしっかり引き継いで、また新たに自分たちが良いチームを作っていきたいと思っています。4年生は安心して自分たちに任せてほしいですし、この1年間、自分は3年間ですけど、本当にありがとうございましたという気持ちでいっぱいです。  

徳留巧大(スポ2=長野・松本国際) 

――試合を振り返って 

 天皇杯は、全カレ優勝した後で、気が抜けがちなのですが、4年生の最後の大会ということで、全員で気緩むことなく練習だったり試合前はできていたと思います。4年生の最後の試合なので、全部出して終わりたいというのはあったのですが、もうちょっとできたんじゃないかなと思います。 

――全日本インカレ明けすぐ天皇杯を迎えましたが、調整で難しい部分はありましたか 

 そうですね。全カレの六連戦の疲労があって、すぐ天皇杯っていうのがあったので、そこはちょっと難しかったと思います。 

――チームとして、1セットで目でクイックが相手にブロックタッチされて封じられているという展開が多かったと思います。その時に試合を外や中から見ていてどのように感じましたか

 Vということで大人の方で、やっぱり高い部分がどうしてもあったので、そのパスが自分たちがあまり返っていなかったというところで、パスの精度をもう少し工夫していけば、サイドがもうちょっと楽になるんじゃないかなと思いました。 

――4年生と試合できる機会としては最後でしたが、改めて4年生へのメッセージをお願いします 

 4年生は全カレ優勝しても気を抜いていなくて、全カレで勝って終わりという姿勢ではなくて、どんな試合でも全力でやるという4年生でした。ここまで連れてきてくれた4年生にありがとうございますというのと、来年、自分たちが中心となってやると思うので、1年間頑張って来年の全カレでこれぐらい成長しましたっていうのを、見せられるように頑張りたいと思います。 

中上烈(スポ1京都・洛南) 

――試合を振り返って 

 雰囲気をつくるのが難しい試合だったなと思っていて、いつもだったら決まっているものが決まらなかったり、そういうところはそれぞれのポジションで難しいところがあるなと感じました。 

――オポジットとしての出場でしたが個人のプレーを振り返って 

 交代で出させてもらったのですが、一本目から調子を上げることができなかったものの、二本目はちゃんと決めることができましたし、サーブでエースを取ることができて、自分の思ったコースにしっかり打てました。レベルの高い相手の方々に対して自分のサーブが通用するというのは感じたので、そこの精度をこれからもっと高めていかないといけないなという課題を感じました。 

――どのような意気込みでコートに入りましたか 

 自分はチームのキャラ的に雰囲気を盛り上げるだったり流れを変えるということが仕事になるので、そこに関しては入った時から出るところまでしっかり全力でパワーを出して走り回ってプレーしようという風に思ってプレーをしていました。 

――4年生と試合できる機会としては最後でしたが、改めて4年生へのメッセージをお願いします 

 4年生は本当に自分たちに積極的に接してくれて、すごく優しくて楽しくて面白い4年生たちだったので、これから一緒にプレイできなくなるというのは悲しいです。全カレのときも悲しいと言っていたのですが、ここからは切り替えて、来年、再来年、自分たちが4年生になった時にも、全カレ優勝を目標に掲げて、常に一位というような結果をお届けできるように見といてくださいという気持ちが今は大きいです。