【男子バスケ】三浦健一 スランプ乗り越えMVP「本当に今までの努力が実ったんだな」

男子バスケットボール

 早大が57年ぶりの優勝を手にし、約2カ月間の戦いに幕を下ろした関東大学リーグ戦(リーグ戦)。早稲田のエースとして躍動したF三浦健一(スポ3=京都・洛南)は、リーグ戦の最優秀選手(MVP)賞に輝いた。優勝とMVPを手にし、順風満帆だったかに思える三浦の今シーズン。しかし、歩んできた全22試合の道のりは、決して平坦なものではなかった。シュートが入らない苦悩の日々。チームメイトの活躍により早稲田旋風が巻き起こる中、ただ一人スランプに陥った。それでも壁を乗り越え、つかみ取った優勝とMVPの称号。苦しんだ日々こそが今季の躍進につながっていた。今回は波乱万丈であった三浦の今シーズンを振り返る。

苦悩の序盤戦

 持ち前の得点力を武器に、1年時から多くのプレータイムを獲得した三浦。上級生となった今年は飛躍の1年だった。3月の東京六大学リーグ戦で得点王に輝くと、関東大学選手権では早稲田のエース格として3P王を獲得。強靭(きょうじん)なフィジカルを生かしたドライブも、昨年より破壊力を増していた。

 大学屈指のスコアラーに成長したこの勢いのまま、リーグ戦ではさらなる活躍を。チームの柱としての期待を一身に背負い、オータムリーグ開幕を迎えた。

 しかしリーグ戦序盤、三浦は深刻なシュートスランプに陥る。放った3Pシュートはことごとくリングに弾かれ、成功率は10%台で低迷。チームが高確率な3Pシュートで快進撃を続ける中、唯一三浦の調子だけが上がらなかった。「なんで入らないか分からない」。試合後に弱音を吐いた時もあった。

東京六大学リーグ戦で3Pシュートを放つ三浦

不振の中で磨かれた新たな武器

 それでもシュートを積極的に打ち続ける姿勢は崩さなかった三浦。第6戦の東海大戦に転機が訪れた。この日も外のシュートが入らない三浦であったが、ミドルシュートやポストプレーを中心に攻め続け、31得点を記録。タフショットでも強引にねじ込み、チームの逆転勝利に貢献した。「本当に我慢してきたので。」試合を振り返る三浦の表情は久しぶりに明るかった。21歳の誕生日を迎えたこの日、早稲田の怪物スコアラーは復活を果たした。

 ここからは次第にシュートタッチを取り戻し、1巡目が最終週を迎えた頃には完全に復調。チームが11連勝を続けると共に、表情豊かにプレーする場面も増えていった。また、苦悩の序盤戦もただ苦しかっただけではない。壁を乗り越えたことは、自身の成長にもつながっていた。

「別にスリーが入らなくても大丈夫だと考えるようになってきています。最初はスリーが入らなかったら点が取れないと思っていました」

 不調の中で磨き上げた2Pの得点力。これが三浦をもう一段上の選手へ押し上げた。

多少のタフショットはものともしなかった

 後半戦の活躍は圧巻だった。どんな展開でもオールラウンドに得点を重ね、2巡目は1試合平均20.8得点を記録。チームのオフェンスが停滞する苦しい場面では、新たな武器である2Pのスコアリングでチームを救った。高い精度の3Pシュートが注目を集めた早大であったが、その裏には堅実に得点を続けた三浦の貢献があった。

 また、ディフェンス面もすさまじい活躍を見せた。スモールラインナップを中心とする早大では、相手のビッグマンとマッチアップする選手の働きは失点を左右する。その中でチーム1のフィジカルを持つ三浦は、留学生をはじめとした相手ビッグマンとマッチアップする機会が多かった。

 190センチとインサイドを守るには小柄な三浦だが、フィジカルでは互角に対抗。失点を最小限に抑えたこの献身的な働きがなければ、早大のスモールラインナップは成り立たなかったと言っても過言ではない。

三浦のディフェンスはチームに欠かせなかった

早稲田旋風を支えたフィジカルの進化

 その源となったのは、週4回のウエートトレーニングで果たした肉体改造だ。昨年から体重を4キロ減らしながら筋肉量を増やしたことで、スピードを維持しつつフィジカルを強化。現在の肉体は、1年生の頃と比べて見違えるほどのたくましいものになっている。

 「当たりのところでしっかり耐えて、オフェンスにも余力を残せたと思います」

 ディフェンスでは全員で耐え、オフェンスではスピードのミスマッチから得点。今年の早大が生み出した対留学生の「必勝パターン」は、まさに今までの鍛錬の成果だった。

左が1年生時、右が3年生時の三浦

4年生との最後の舞台へ

 リーグ戦後の表彰式でMVPを受賞した三浦。「本当に今までの努力が実ったんだな」と、波乱万丈の秋を振り返った。誰よりも苦しんだ分、誰よりも最高の結果が待っていた今シーズン。全22試合の旅路の中で、三浦はリーグトップのプレーヤーへと成り上がった。

 約1カ月後には全日本大学選手権(インカレ)が控える。関西の強力な留学生や、相手の3P対策を打破するにあたって、三浦の働きは勝敗を左右するだろう。これまでの感謝を抱く4年生と、最後の歓喜をつかむために。覚醒の怪物スコアラーが全国の舞台で暴れ狂う。

(記事 石澤直幸)