関東大学対抗戦 11月2日 対帝京大 秩父宮ラグビー場

『赤黒』と『真紅』。大学ラグビーの雄が、赤に染まった秩父宮ラグビー場で相まみえた。試合開始直後、早大はSO服部亮太(スポ2=佐賀工)のキックを軸に試合を組み立て、敵陣深くへ攻め込む。フェーズを重ねて数的有利をつくり、先制トライを奪った。しかし直後、自らのミスから失点し、試合は振り出しに戻る。ここから帝京大が攻撃のギアを上げ、早大はペナルティーと自らのミスに苦しみリズムをつかめない。互いにPGを重ねる展開となり、13ー22で風下の前半を終えた。迎えた後半、風上に立った早大はエリアを取る戦い方を選択。しかし、陣地を進める一方でポゼッションを高められず、攻撃の主導権を握れない。帝京大は確実にPGを加え、点差を広げた。それでもこのまま終わるわけにはいかない。終盤、WTB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)がライン際でビッグゲインを見せ、一気に大外へ展開。反撃の狼煙となるトライを奪う。それでも最後に立ちはだかったのは真紅の壁。帝京大がボールを蹴り出し、ノーサイド。早大は20ー25で今季初黒星を喫した。

スクラムでペナルティーを獲得し、吠えるPR前田
帝京大ボールのキックオフで幕を開けた今試合。早大は服部のキックを軸にエリアをコントロールしていく。5分、服部がフラットなパスでFWを前に出し続けると、自ら空いたスペースを突き抜け、トライラインを駆け抜けた。CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)のゴールも決まり、7ー0。幸先よく先制点を奪う。このまま流れをつかみたい早大だったが、すぐに帝京大の反撃を受ける。9分、自陣でボールを継続するとミスが生まれる。こぼれ球を帝京大が素早く反応して拾い上げ、そのままトライ。試合は振り出しに戻る。さらに早大は自陣で立て続けにペナルティーを犯し、ゴール前まで攻め込まれる苦しい展開に。ピンチは凌いだものの、攻撃のリズムをつかめない。21分には逆転のトライを許し、スコアは7ー12となった。それでも25分、服部が相手ディフェンスの裏へ転がしたキックに山下が反応し、FB植木太一(人2=神奈川・関東学院六浦)が追いかけたが、惜しくもグラウンディングならず。しかし直後の26分、服部が魅せた。帝京大のドロップアウトの直後、約50メートルの距離から狙ったDGが大きな弧を描いてゴールポストを射抜く。会場がどよめく特大の一撃で勢いを取り戻した。30分にはスクラムで圧力をかける。PR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が「後ろが押してくれたから僕が前に出られた」と語るように、FW陣が真紅のジャージを押し込み、ペナルティーを獲得。野中が冷静にPGを沈め、13ー14と1点差に迫った。だが直後の31分、キックオフのミスから帝京大がそのままインゴールへ持ち込み、再び突き放される。前半終了間際にも3点を許し、13ー22で前半を折り返した。

インゴールに飛び込むSO服部
迎えた後半、服部のキックオフで試合再開。帝京大はハイボールを軸に攻撃を組み立て、球際の強さをみせた。服部のキックでエリアを取る展開に持ち込むも、ボール奪取の術を欠き、ポゼッションでは後手に回る。やがて帝京大が早大ゴール前まで攻め込み、失点すれば勝負が決する場面。ここでFW陣が身体を張り、執念のターンオーバーでピンチを凌いだ。途中出場のFL松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)も鋭いヒットで流れを呼び込む。36分、服部の鋭いフラットパスを受けた山下がライン際で巧みなボディーコントロールをみせ、ゴール前へと切り込む。松沼が素早くサポートし、起点をつくると、服部が迫るディフェンスをいなしながらCTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)がゲイン。最後はWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)がグラウンド中央へグラウンディング。野中のゴールも決まり、スコアは20ー25。1トライ差に迫り、スタンドは「早稲田」コールに包まれた。しかし、立ちはだかったのは真紅の壁。帝京大の堅守を崩すことはできず、早大は逆転にあと一歩届かぬまま、試合終了の笛を聞いた。

ボールキャリーをするWTB山下
試合の入りは良かったが、決め切るべき場面で取り切れなかったことが、勝敗を分けた要因となった。「率直に悔しい。自分たちの準備が足りず、遂行力も欠けていたと思う」と野中主将は冷静に試合を振り返る。敗北は喫したものの、悲観する必要はない。やり返す舞台はまだ先にある。全国大学選手権で借りを返せばいいだけだ。チーム野中の航海は、いよいよ佳境に差し掛かる。残されたチャンスは多くない。次こそ確実に仕留めてみせる。
(記事:大林祐太、写真:村上結太、安藤香穂、伊藤文音)
コメント
※記者会見から一部抜粋
◆大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今試合の総評をお願いします
この試合に勝つためにたくさんの準備を積んできて、ラッキーやまぐれではなく勝利を収めることを目指してきましたが、わずかに及ばず悔しい思いでいっぱいです。この敗戦を糧にまた次戦以降準備をしていきたいと思います。
ーー帝京戦に向けてのテーマを教えてください
チームスローガンである『One Shot』でした。この試合に向けてチーム一丸となって戦うこと、コンタクトの場面で引かないことを伝えてきました。また、チャンピオンチームだとあまりし意識しすぎずに、自分たちがやってきたことを意識してほしいと伝えてきました。
ーー今試合の悔やまれる場面を挙げるとしたらどこですか
準備してきたプレーはいくつもあったのですが、細かなポジショニングミスやボールロストで自分たちのラグビーを体現できなかったことです。帝京大学さんに上回られてしまったと、それに尽きます。
ーー試合全体を通じてペナルティーの多さが目立ちましたが、振り返っていかがですか
どんなことが起こっても勝つチームを作らなければいけないと強く思いました。
ーー特に後半におけるディフェンスを振り返って手ごたえはいかがですか
ゴール前に攻め込まれた時間が長かったのは早稲田だった思うのですが、モールでインゴールを割られなかったことなど粘り強く戦えていたことは評価できると思います。帝京大学さんのゴール前での圧力は確かなものがあるとは思いますが、それを防ぎ切れたのは良かったと思います。今回取られてしまったトライがアンラッキーな形であったことが悔やまれますが、それらも含めて守り切るようなチームを作っていかなければならないと思います。
ーー全勝を逃しましたが、率直な思いをお聞かせください
それぞれの大学さんで特徴を持っているのが対抗戦の良さだと思いますし、帝京大学さんを中心に切磋琢磨できていると思います。全勝は逃しましたが、次の早慶戦、早明戦に向けて自分たちがどうあるかということを再確認できた試合だったと思います。このようにたくさんの学びをもたらしてくれるのが対抗戦だと思っています。
◆CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)

ーー今試合の敗戦に対する思いをお教えください
率直に悔しいです。自分たちの準備してきたことがまだまだ足りなかったと思いますし、遂行力に欠けていたと思います。今日の結果は自分たちの足りなかったところそのものだと思うので、上井草に帰って細かいところを突き詰めていきたいと思います。
ーー試合全体を通じてペナルティーの多さが目立ちましたが、振り返っていかがですか
レフェリーとのアジャストで苦戦してしまったところなどはありますが、それらも含めて自分たちの規律の乱れだと思うので、修正していきたいです。
ーー特に後半におけるディフェンスを振り返って手ごたえはいかがですか
試合を通じて粘り強いディフェンスができていたと思いますが、アンラッキーなかたちであるかどうかにかかわらずトライを取られてしまっていることは変わりないので、不運な場面でも取られないチーム作りをしていかなければならないと思います。
◆PR杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)

ーー今日の試合のコンセプトを教えてください
去年の決勝の敗因の一つである遂行力を課題にして試合に臨みました。
ーー帝京大を相手にペナルティーを獲得しましたが、スクラムの手応えはいかがですか
帝京大の強みであるバインドプレスに対してテーマである8人でまとまって、ヒットにフォーカスすることが出来たので手応えを感じています。
ーーチーム全体のディフェンスの完成度に関してはどう感じますか
日々の練習から意識している横とのコネクトとラインプレッシャーが強くなっていると感じました。
ーー今後の意気込みをお願いします
対抗戦全勝優勝はできませんでしたが、『荒ぶる』に向けて修正していきたいです。スクラムは一貫して全チーム押します。
◆PR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)

ーー今日の試合のコンセプトをお願いします
FWの戦いになるというのは話し合っていたのでセットプレーだったり、セットのところでしっかり前に出ていこうということを意識しました。
ーー秋の公式戦での帝京大戦に出場されるのは初めてだと思いますがいかがですか
春とか夏とは違った圧力があって、会場も違う雰囲気に包まれていました。自分のプレーが途中で途切れちゃった場面もあったのでそこは課題かなと思います。
ーー持ち前のスクラムで力を発揮していましたがいかがですか
8人で押すということをずっとテーマにしていて、僕がスクラムで前に出れたのは後ろの人がいいスクラム組んでいたからだと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
目標は日本一なので、ここで負けても落ち込まないで修正して、選手権でリベンジできるように頑張ります。
◆FL田中勇成(教4=東京・早実)

ーー今試合を振り返っていかがですか
力負けという印象です。しかし、自分たちのディフェンスの粘り強さの成長を感じた一戦でもありました。攻め込まれた展開でも最後に逆転のチャンスをつかみかけたのは手応えだったと思います。積み上げてきたものは間違っていないと思うので、あとはグラウンドで全て出すだけかなと思います。これからは負けたくないです。
ーーペナルティーの多さに関してはどうですか
レフェリーとのアジャストで苦戦してしまった印象です。僕たちはブレイクダウンで戦い続けることにフォーカスしていますが、細かいところで反則を取られてしまいました。
ーー後半はスコアレスの展開でしたが、どんな声かけをしていましたか
『我慢』というテーマがあった中で、どちらが先にスコアするかの勝負ではあったと思うので、常に我慢することをチームには伝えていました。
ーー去年との違いはどうですか
去年の対抗戦ではボールが自分たちに転がり込んできましたが、今日は帝京さんにボールが入った展開だったと思います。この負けを覆すためには勝てるチャンスをつかみとる『One Shot』にこだわっていきたいです。
◆FL松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)

ーー後半からの出場でしたが、どんなことを意識していましたか
負けている状態だったので、自分の強みをしっかりアタックに活かしてチームに影響を与えようかなと考えていました。
ーー投入直後からキャリーでインパクト見せていましたが,それについていかがですか
タックルはまずまずという感じだったのですが、ディフェンスは結構引いてしまう部分あったので、そこが課題かなと思います。
ーーゴール前でのディフェンス、アタックともに良かったように思ったのですが、自己評価はいかがですか
ディフェンスは全然です。もっと頑張ります。
ーー帝京戦を通して、今後『荒ぶる』を取るために必要なことは何だと思いますか
どれだけ想定外のことを自分らも想定外にできるかというのが大事だと思うので、レフリーのアジャストやルーズボールなどそのようなところをもっとしっかり全てやっていきたいなと思います。
ーー最後に今後の意気込みをお願いします
慶應・明治と負けられない試合があって、対抗戦優勝のチャンスはまだ残ってると思うので、しっかり自分たちを見つめ直して勝利できるよう頑張っていきます。
◆SO服部亮太(スポ2=佐賀工)

ーー今日の試合のコンセプトを教えてください
タイトなゲームになるということでエリアを意識して、自分たちが持てるアタックとディフェンスをしていこうという気持ちでいきました。
ーー春と夏に帝京とは試合をしていると思いますが、秋の公式戦では初めてだったと思います。昨年の決勝での悔しさは晴らせましたか
僕自身、まだまだなところがあります。キックだったりランというところでもっとチームを引っ張っていかないと『荒ぶる』は取れないと思うので、もう一段階ギア上げて頑張っていこうかなと思います。
ーー風下の前半はDGも見られましたが、どんなゲームメイクを考えていましたか
風下はとにかくエリアを意識して無理に攻めるのではなく、キックを蹴るということを意識しました。
ーー後半はエリアをとっていましたが、いかがですか
40分あることから、焦らず自分たちのアタックすれば得点は取れるというのはわかっていたので、焦った感じはなく自分たちのプレーをしようというのにこだわってやっていきました。
ーー今日の敗戦を受けて残りの対抗戦、選手権に向けての意気込みをお願いします
今日出た反省というのはかなり大きいものがあると思うので、しっかり修正して次戦に向けて頑張っていきたいと思います。
ーー10番として相手の10番に勝たないといけないとおっしゃっていたと思いますが今日の試合はいかがでしたか
チームを勝たせられなかったというところで上回っていないのかなと思うので、しっかりそこは映像見たりしてどのような10番が勝たせられる10番なのかというのを意識してやっていきたいと思います。
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