10月13日、三大駅伝の初戦である出雲全日本大学選抜駅伝(出雲駅伝)が開催された。 山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)が2区区間賞の走りで首位に立つと、ルーキー3人が懸命につなぎ、2位でアンカーへ。優勝を目指していた中で、結果は準優勝と惜しい結果になったが、2位で悔しいと思える、強い臙脂(えんじ)の姿が帰ってきた。本記事では花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)と出走した選手のインタビューを掲載する。
花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)
ーー10人のチームエントリメンバーから出走者6人を選んだ決め手は何でしょうか
今回は調子の良い選手でいこうと考えていました。まず区間エントリーで8人に絞りましたが、レース前日の練習を見て、最終的にはこの6人になったかたちです。ただ、リザーブに回った間瀬田(純平、スポ4=佐賀・鳥栖工)、宮岡(凜太、商4=神奈川・鎌倉学園)も非常に調子が良かったので、もう2区間あればなと思っていました。
ーー1年生3人を起用する構想はいつ頃からあったのでしょうか
鈴木(琉胤、スポ1=千葉・八千代松陰)と堀野(正太、スポ1=兵庫・須磨学園)は二次菅平合宿がしっかりできていて、その後の「The Road of WASEDA」5キロも想定より良い走りだったので、区間も含めて起用を考えていました。佐々木(哲、スポ1=長野・佐久長聖)はトラックシーズンで痛めた箇所の回復が遅れていて、他の選手と比べてあまり練習が積めていませんでした。それで5キロレースも出ないで練習を積ませていましたが、出雲が近づくに連れて動きが良くなって調子も上がってきました。出雲は距離が短いので、期待を込めて起用を決めました。
ーーレース前に思い描いていたプランがありましたら教えてください
1区吉倉は初めての駅伝でしたので、先頭と10秒以内でつなぐことを目標に送り出しました。仮にそれよりも遅れたとしても、2区山口智規、3区鈴木琉胤のところでは追いついて先頭に立てればと考えていました。暑さもあり、吉倉は最後は失速して、23秒差と、想定よりも差を広げられましたが、山口が全部抜いてきてくれて、ほぼ理想に近い展開になりました。
ーー各区間の選手の走りをそれぞれ振り返っていかがですか
吉倉はやはり他のチームの選手との経験の差が出たという印象です。ただ、そこまで悪い走りではなかったので、見つかった課題の克服に努めてほしいです。山口はパーフェクト、もしくはそれ以上の走りでした。頑張った分、この後疲労も出てくると思うので、しっかりリカバリーして次に備えてほしいです。鈴木はあのプレッシャーのかかる展開で、よく最後まで粘りの走りができたと思います。暑いのは得意な方ですが、今回は最後は脱水気味で足が攣ったようなので、来年は暑さ対策は万全で行こうと話しています。佐々木はスタート前に攻めの走りをしたいと言ってきたので、攻めても良いが、ラストはしっかりまとめられるようにアドバイスして送り出しました。タスキをもらった位置も一因で、ややオーバーペースで突っ込んでしまい、結果的には差を広げられてしまいましたが、国学院大の辻原君が強すぎたという印象です。堀野は予定ではもう少し競っている位置でのタスキリレーを想定していました。思ったよりも差があり、難しい展開でしたが、前半の攻めの走りは良かったと思います。本人的には悔しかったと思うので、この経験を必ず次のレースで生かしてほしいです。工藤に20秒以内でつなげばチャンスはあると考えていました。40秒以上の差でのタスキリレーとなりましたが、諦めずに果敢に攻めた走りには感動しました。暑い中で少し無理はしたと思うので、この後のリカバリーに気を配ってほしいです。
ーー準優勝という結果を振り返っていかがですか
今回の目標はどこかで先頭に立って、区間賞をとって優勝争いに加わることでした。もちろん、あそこまで行けば勝ちたかったですが、箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝)で負けている三強(青学大、駒大、国学院大)のうちの2つには勝ちたいと思っていたので、それは達成できました。
ーー全日本大学駅伝対校選手権(全日本)までの期間は、どのようなことを重視していきますか
今回同様、現地入りする選手全員が万全の状態で当日を迎えることです。それで全員が想定に近い走りができれば、チームとしての力は出せたことにはなるかと思います。それで勝てればもちろん素晴らしいですし、負けたら相手の方が私たちよりも力が上だったということなので、次はそれを上回れる練習と準備をすればよいかと考えています。
吉倉ナヤブ直希(社2=東京・早実)
ーー駅伝出走が決まった時の気持ちを教えてください
昨年の駅伝は全て補欠で焦っていたので、今年は出走メンバーに入れて、決まった時はとりあえずほっとしました。コンディションは合宿が終わってから疲労も抜けてきて、調子が上がってきていました。
ーー花田監督からの指示は何かありましたか
特になかったと思います。
ーーレースプランはありましたか
ある程度ハイペースで行くと思っていたので、それで粘ろうと思っていました。ですが、スローペースになったので、いつ仕かけられても大丈夫なような心構えはしながら走っていました。
ーーその中で中大の岡田開成選手がスピードを上げた時の心境はいかがでしたか
思っていたより早くから国学院大の選手に仕かけられて、そこで結構力を使ってしまい岡田選手のあの仕かけには対応できなかったです。
ーー全体を振り返って一言お願いします
初駅伝でしたが、自分としては結構悔しい走りになってしまいました。全日本大学駅伝、箱根駅伝と続いていくのでそこでしっかりチームに貢献できる走りをしていきたいと思います。
ーー今後の目標を教えてください
全日本、箱根でしっかりと結果を残していきたいと思います。
山口智規駅伝主将(スポ4=福島・学法石川)
ーー2区に決まった時の心境はいかがでしたか。また、2区でのご自身の役割をどのように考えていましたか
1、2週間前に2区で行こうという話をされました。前半の大事な区間になるので、区間賞はもちろんですが、他大からしっかりアドバンテージを取る、後続との差をつけるというのが自分の役割だったと思います。
ーー本日のコンディションはいかがでしたか
自分のコンディションとしてはまずまずでした。向かい風や暑さは、自分の中であまり得意としてない印象があったので、そこに対しては少し不安でした。実際に走り始めたらあまり不安は感じなかったので、そこはよかったかなと思います。
ーーレースプランはどのように考えていましたか
向かい風はあるにはあったので、前半はしっかり突っ込みつつも、3キロから5キロは少し貯めて、ラストでしっかり引き離せれば、というイメージをしていました。
ーーレース前花田監督から何かお話はありましたか
特に指示はなくて、本当に頼んだぞということだけを言われて送り出されました。
ーー9人を抜いて首位に立ちました。走りながらどのようなことを考えていましたか
人を抜かしていることに関しては全然考えていませんでした。とにかく1秒でも速く、一つでも順位を前に、ということを考えていました。相手の状況を見ながらですが、うまくイメージ通り走れたのでよかったなと思います。
ーーチームの結果を全体的に振り返っていかがですか
優勝を目指していたので、100点をつけることはできませんが、下級生中心のメンバー構成の中で、しっかりと優勝争いをできたというのは今後のチームにつながるレースになったのかなと思います。
ーー初めての区間賞でした
区間賞を獲らないといけない、とは思っていましたが、苦手意識のあった駅伝なので、区間賞を獲れてホッとしています。
ーー全日本に向けて一言お願いします
次の全日本大学駅伝は距離が⻑くなります。若いチームなので、少し距離に対して不安があるかもしれませんが、チーム一丸となってもっと上を目指して、貪欲に競技に向き合っていければなと思います。
鈴木琉胤(スポ1=千葉・八千代松陰)
ーー本日のコンディションはいかがでしたか
身体は万全でした。その分、暑さにやられてしまった悔しさが残ります。
ーーレースプランはどのように考えていましたか
駅伝なので流れによりますが、1位で智規さんがタスキを持ってきてくださったので、スタート直前に、攻めの走りで後続を引き離すことを目標にしました。
ーーレース前に花田駅伝監督から声かけは何かありましたか
自分を信じて走れと後押しされました。
ーー先頭でタスキを受けましたが、どのような心境でしたか
ドキドキワクワクしました。
ーー序盤は駒大と並走する展開でしたが、振り返っていかがですか
千切らないと行けないと思っていたのでオーバーで入ってしまいました。
ーー留学生選手が追い上げてくる展開でしたが、終盤の走りはどのように評価しますか
思ったよりかは追いつかれるまでに時間がかかったという印象です。粘れました。
ーー区間順位とタイムへの印象を教えてください
順位は良かったと感じる反面、日本人選手に負けてしまった事に悔しさが残ります。タイムはまだまだでした。
ーー全日本に向けて意気込みをお願いします
切り替えてがんばります。
佐々木哲(スポ1=長野・佐久長聖)
ーー今日のコンディションはいかがでしたか
今日に向けてしっかり調整はできていたので、ある程度の自信を持ちながら走ることができました。
ーーレースプランを教えてください
琉胤が先頭で競ってタスキを持ってきたので、自分の区間でしっかり前に出ることをスタートの時は意識していました。ただ勢いが余りすぎて、始めに出過ぎてしまいました。結果的に、後半、前を走る国学院に付ききれなくなってしまい、自分の区間で国学院の優勝を決定づけてしまうかたちになりました。プランとしては、自分のところで前に出たかったのですが、大学駅伝の厳しさを痛感しました。
ーー監督からの指示は何かありましたか
なかったです。自分から「チャレンジしてもいいですか」と聞いたら良いと言っていただいたので、自分のやりたいようにやらせていただきました。その中での自分の失敗は、しっかりと受け止めたいと思います。
ーー1年生同士でのタスキリレーとなりましたがいかがでしたか
1年生3人でつなぐというのは特別な思いがありました。琉胤もボロボロになりながらも自分につないでくれて、その思いを自分が引き継いでいくという、駅伝ならではの感動と言いますか、醍醐味を感じることができました。3年後にはもっと化けて、また3人でつなぎたいと思います。
ーー国学院大、城西大と並ぶ展開でしたが、改めてレース全体を振り返っていかがですか
僕の区間までは、先頭が目まぐるしく変わっていく展開だったのですが、自分のところで離されてしまいました。下を向いている暇はないので、次の全日本、箱根に向けて、心を入れ替えて練習に励んでいきたいと思います。
ーーご自身の区間順位とタイムの印象を教えてください
目標タイムはクリアできたのですが、駅伝はタイムだけではないので。レースの流れに乗るという点においては失敗してしまった部分がありました。駅伝の走り方と個人レースの走り方は違うので、改めて駅伝の走り方を改善してやっていきたいと思います。
ーー全日本に向けて意気込みをお願いします
今回の出雲駅伝で大学駅伝の洗礼を受けて、このままではだめだということが分かったので、それをしっかりプラスに捉えようと思います。逆に言えば今よりもっと努力していけばもっと上の順位だったり、早稲田の優勝に手が届くということが分かった大会でもありました。そこは自信にもつなげながら、次に向かっていきたいと思います。
堀野正太(スポ1=兵庫・須磨学園)
-ー出走が決まった時の気持ちについてお聞かせください
夏合宿で順調に練習ができていたので、出雲駅伝を走れるかなと思っていました。走れると決まって、ホッとしました。
ーー今日のコンディションはいかがでしたか
結構調子は良かったのですが、実際の走りはあまり良くなかったので、悔しいです。
ーーどのようなレースプランでしたか
できるだけ前半に突っ込み、国学院大学さんに追いつけたらと思っていたのですが、中々追いつくことできませんでした。後半に少しバテてしまいました。
ーー花田監督からはどのような指示が出ていましたか
花田さんからは特に何か言われたわけではないのですが、レース前に練習を詰めているから、今日は自信持って頑張って、みたいなことを言われました。
ーーレース全体を振り返ってみていかがですか
やはり前半突っ込んだため、中盤後半と少しペースが落ちてしまったので、そこを次の全日本や箱根で修正できたらと思います。
ーー好記録を出した先々週の記録会からの練習の組み立てについて教えてください
記録会後は特に強い練習はしませんでした。その疲労をどれだけ抜けるかを重要視していたので、特段やったことはないです。
ーーアイビーリーグの選手に追いつかれた時の心境について教えてください
やはり来たか、と思いました。勝ちたかったのですが、ラストで抜かれてしまい、工藤さんが苦しい展開になってしまって申し訳ないです。
ーー区間順位とタイムの印象についてはいかがですか
追い風であった分、区間タイムは良かったのですが、追い風ということを考えると、そこまで良いわけでもないので、悔しいです。
ーー全日本に向けての意気込みをお願いします
全日本こそはもっといい走りができるように頑張ります。